StudyMed医師国家試験

朝のお薬は何錠?―処方箋を「1回量」と「剤形」で読み解く

第109回医師国家試験 H問題 第14問

国試問題にチャレンジ

第109回 H問題 第14問

ある患者の処方箋の抜粋を図に示す。  この患者が朝食後に服用する錠剤の個数はどれか。 1   レボチロキシンナトリウム水和物錠 50μg    1回2錠  (1日2錠) アルファカルシドール錠 0.5μg    1回1錠  (1日1錠) ラベブラゾールナトリウム錠 10mg    1回1錠  (1日1錠)  1日1回  朝食後  14日分 2   チザニジン塩酸塩錠 1mg    1回1錠  (1日2錠) イルソグラジンマレイン酸塩錠 2mg    1回1錠  (1日2錠)  1日2回  朝夕食後  14日分 3   沈降炭酸カルシウム末 0.5g    1回0.5g  (1日1.5g)  1日3回  朝昼夕食後  14日分

  1. a.4
  2. b.5
  3. c.6
  4. d.8
  5. e.11

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は処方箋を正しく読めるかを問う問題だ。医学知識というより、医療安全に直結する実務の力が試されている。注目点は「いつ飲むか」という用法、「1回量か1日量か」、そして「錠剤かどうか」の3つだね。
医学生医学生
薬の数を足すだけなら簡単そうですけど、ひっかけがありそうですね。
ドクタードクター
その警戒心が大事。処方箋は処方ごとにまとまっていて、同じまとまりの薬は同じ用法で一緒に飲む。まず1つ目の処方は1日1回朝食後だ。朝に飲む錠剤はいくつになる?
医学生医学生
レボチロキシン、アルファカルシドール、ラベプラゾールの3種類なので3錠……あ、レボチロキシンは1回2錠でした。
ドクタードクター
そう、種類と個数は違う。レボチロキシン2錠、アルファカルシドール1錠、ラベプラゾール1錠で、朝食後に4錠だ。種類を数えてしまうと答えがずれるから気をつけよう。
医学生医学生
これで4錠。でも4錠で終わりにすると、2つ目の処方を見落としますよね。
ドクタードクター
その通り。2つ目のチザニジンとイルソグラジンは1日2回朝夕食後で、それぞれ1日2錠と書いてある。ここで1日量を足してしまうのが典型的なミスだ。朝の1回分は?
医学生医学生
1回1錠ずつなので、朝はチザニジン1錠とイルソグラジン1錠の2錠です。1日量の2錠ずつを全部足すと、1日の合計の8錠になってしまうんですね。
ドクタードクター
まさに。8錠は1日に飲む錠剤の総数で、朝の分ではない。では3つ目の沈降炭酸カルシウムは?朝昼夕食後だから、朝にも飲むね。
医学生医学生
朝も飲むので1つ足して7錠……いや、「末」と書いてあります。薬理学の実習で「末は粉薬」と習いました。
ドクタードクター
よく気づいた。末、散、細粒、顆粒はいずれも粉の剤形で、錠剤ではない。問われているのは錠剤の個数だから数に入れない。したがって、1つ目の処方の4錠と2つ目の処方の2錠を合わせて、朝食後の錠剤は6錠が正解だ。
医学生医学生
1日の8錠に粉薬の3回分を足すと11になるので、それもひっかけの選択肢ですね。
ドクタードクター
そう、11は「朝に限定しない」「散剤を数える」という2つの誤りを重ねた数だ。選択肢はどれも、ありがちな読み違いから作られている。
医学生医学生
臨床実習で病棟の薬剤師さんが、患者さんに一包化した薬を説明しているのを見ました。あれもこういう整理をしているんですね。
ドクタードクター
そうだね。実は処方箋の記載方法そのものも、1回量と1日量の取り違え事故を防ぐために見直されてきた。2010年の厚生労働省の検討会報告書では、内服薬は1回量を基本とし、1日量を併記する書き方が推奨されている。この処方箋もその形式だ。
医学生医学生
1日量しか書いていなかった時代は、3倍量を投与してしまうような事故もあり得たということですか。
ドクタードクター
その通り。過量・過少投与は重大な医療事故につながるから、書くときも読むときも両方を確認する習慣をつけてほしい。もう一歩踏み込むと、この処方にはレボチロキシンとカルシウム製剤が同じ朝に入っているよね。
医学生医学生
何か問題があるんですか。
ドクタードクター
レボチロキシンはカルシウム製剤、鉄剤、アルミニウムやマグネシウムを含む制酸薬と一緒に飲むと消化管で吸着されて吸収が落ちることがある。実臨床では服用時間をずらすなどの配慮がなされるんだ。甲状腺機能低下症の補充がうまくいかないとき、飲み合わせを確認するのは大事な視点だよ。
医学生医学生
数を数えるだけの問題かと思ったら、薬の組み合わせまで見るきっかけになるんですね。
ドクタードクター
そう。処方箋は患者さんの病態を映す情報源でもある。甲状腺ホルモン、活性型ビタミンD、PPI、筋弛緩薬、胃粘膜保護薬と、それぞれ何のための薬かを想像しながら読めると、処方の意図や問題点に気づけるようになる。

まとめ

処方箋は処方ごとに用法がまとまっており、「いつ飲むか」「1回量はいくつか」「剤形は何か」を整理して読む必要があります。本問では、朝食後のみの処方でレボチロキシン2錠を含む計4錠、朝夕食後の処方から朝の1回分として2錠を数え、「末」と記された沈降炭酸カルシウムは散剤なので除外し、朝食後の錠剤は6錠となります。種類数を数える、1日量を足す、散剤を含めるといった読み違いがそのまま誤答の選択肢になっている点に注意が必要です。内服薬の処方箋は1回量を基本とし1日量を併記する形式が推奨されており、両者の取り違えは重大な医療事故につながります。さらにレボチロキシンとカルシウム製剤の同時服用による吸収低下など、処方の中身にまで目を配る姿勢が、安全な薬物療法を支える基本となります。

解答・解説

正解はcです

処方箋の読み方

処方箋は「Rp(処方)」ごとに、薬剤名・規格(1錠あたりの含量)・1回量・1日量・用法(1日何回、いつ飲むか)・日数がまとめて書かれている。同じRpに含まれる薬は、同じ用法で一緒に服用する。本問ではRp1~3の3つの処方があり、それぞれ「いつ」「何を」「何錠」飲むかを整理すればよい。注意点は、(1)1日量ではなく1回量で数えること、(2)問われているのは「錠剤」の個数であり、散剤(粉薬)は含めないことの2点である。

各処方の整理

Rp1(1日1回 朝食後) ・レボチロキシンナトリウム水和物錠50μg:1回2錠 ・アルファカルシドール錠0.5μg:1回1錠 ・ラベプラゾールナトリウム錠10mg:1回1錠 →朝食後に計4錠 Rp2(1日2回 朝夕食後) ・チザニジン塩酸塩錠1mg:1回1錠(1日2錠) ・イルソグラジンマレイン酸塩錠2mg:1回1錠(1日2錠) →朝食後に計2錠(夕食後にも2錠) Rp3(1日3回 朝昼夕食後) ・沈降炭酸カルシウム末0.5g:1回0.5g →「末」は散剤(粉薬)であり錠剤ではないため数に含めない。

計算

朝食後の錠剤=Rp1の4錠+Rp2の2錠=6錠 よって正解は6である。

選択肢考察

  1. ×a.  4

    Rp1(朝食後のみの処方)の錠剤だけを数えた場合の数(2+1+1=4)である。Rp2は「朝夕食後」の処方であり、朝食後にもチザニジン1錠とイルソグラジン1錠の計2錠を服用するので、これを見落としている。

  2. ×b.  5

    朝食後に飲む錠剤の「種類」を数えた(Rp1の3種類+Rp2の2種類=5)、あるいはレボチロキシンの1回量を1錠と読み誤った場合の数である。レボチロキシンは1回2錠であり、個数としては6錠になる。

  3. ○c.  6

    朝食後に服用するのは、Rp1のレボチロキシン2錠・アルファカルシドール1錠・ラベプラゾール1錠の計4錠と、Rp2のチザニジン1錠・イルソグラジン1錠の計2錠である。Rp3の沈降炭酸カルシウムは散剤(末)なので錠剤の個数には含めない。合計4+2=6錠となる。

  4. ×d.  8

    1日に服用する錠剤の総数である。Rp1の4錠(朝のみ)とRp2の1日量4錠(朝2錠+夕2錠)を合計すると8錠になるが、設問は朝食後の1回分を問うているので誤りである。

  5. ×e.  11

    1日の錠剤総数8錠に、1日3回服用する沈降炭酸カルシウム末の3包(3回分)を加えた、1日に服用する薬の総数に相当する。朝食後に限定していない点、散剤を錠剤として数えている点の2つで誤っている。

処方箋の記載事項

院外処方箋には、患者の氏名・年齢、薬名、分量、用法・用量、発行年月日、使用期間、医師の氏名と医療機関の名称・所在地などを記載する(医師法施行規則に規定)。分量は、内服薬では1回量を基本とし、1日量を併記する記載方法が推奨されている(厚生労働省「内服薬処方せんの記載方法の在り方に関する検討会」報告書、2010年)。1回量と1日量の取り違えは過量投与・過少投与の重大な医療事故につながるため、読み書きの際には常に両者を確認する習慣が必要である。

剤形の表記

・錠:錠剤 ・カプセル:カプセル剤 ・末/散/細粒/顆粒:散剤・顆粒剤(粉薬) ・液/シロップ:液剤

本処方の各薬剤の位置づけ(参考)

・レボチロキシンナトリウム:甲状腺ホルモン(T4)製剤。甲状腺機能低下症の補充療法に用いる。 ・アルファカルシドール:活性型ビタミンD3製剤。骨粗鬆症、副甲状腺機能低下症、慢性腎臓病に伴う低カルシウム血症などに用いる。 ・ラベプラゾールナトリウム:プロトンポンプ阻害薬(PPI)。胃酸分泌を抑える。 ・チザニジン塩酸塩:中枢性筋弛緩薬(α2受容体作動薬)。痙性麻痺や筋緊張に伴う症状に用いる。 ・イルソグラジンマレイン酸塩:胃粘膜防御因子増強薬。 ・沈降炭酸カルシウム:カルシウム補充、また腎不全では高リン血症に対するリン吸着薬として用いる。

薬剤の相互作用について

レボチロキシンは、カルシウム製剤・鉄剤・アルミニウムやマグネシウムを含む制酸薬などと同時に服用すると消化管で吸着され吸収が低下する。実臨床では服用時間をずらすなどの配慮がなされる。

POINT

・処方箋は1回量と1日量を区別して読む(設問が「1回」か「1日」かを確認) ・用法(朝のみ、朝夕、朝昼夕)ごとに服用タイミングを整理する ・「末」「散」「細粒」は粉薬であり錠剤ではない ・本問:朝食後の錠剤=Rp1の4錠+Rp2の2錠=6錠

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。