StudyMed医師国家試験

潮干狩りのあとに現れた水疱―多臓器症状から読み解くSLEの検査所見

第109回医師国家試験 G問題 第59問

国試問題にチャレンジ

第109回 G問題 第59問

24歳の女性。両側手関節の痛みと発熱とを主訴に来院した。1か月前から両側手関節に疼痛と腫脹とを認めていた。2週前に潮干狩りに行き,3日後に発熱とともに日焼けした部分に水疱が生じた。その後改善しないため受診した。口腔に違和感を感じ鏡で見たところ,硬口蓋に地図状の発赤とびらんとを認めた。最近になって尿の異常な泡立ちがみられていた。  予想される検査所見はどれか。3つ選べ。

  1. a.赤沈亢進
  2. b.尿蛋白陽性
  3. c.血小板数増加
  4. d.リンパ球数減少
  5. e.血清補体価(CH50)高値

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は、若い女性に同時に起きている複数の症状をひとつの病気で説明し、そこから検査所見を予想する問題だ。関節、皮膚、口の中、そして尿。この4つの組み合わせに注目してみよう。
医学生医学生
手関節の関節炎だけなら関節リウマチも考えますが、日焼けの部分に水疱ができているのが気になります。
ドクタードクター
いいところに目をつけたね。普通の日焼けで、3日後に水疱が出てなかなか治らないというのは強すぎる反応だ。これは光線過敏症を示唆する。さらに硬口蓋の地図状の発赤とびらんは口腔潰瘍、尿の異常な泡立ちは蛋白尿を疑わせるサインだよ。
医学生医学生
光線過敏、口腔潰瘍、関節炎、腎障害……膠原病の講義で覚えたSLEの分類基準の項目がそのまま並んでいます。
ドクタードクター
その通り。若年女性で皮膚・粘膜・関節・腎という多臓器にまたがる症状をまとめて説明できるのは全身性エリテマトーデスだ。SLEの口腔潰瘍は痛みに乏しく、硬口蓋にできやすいのも特徴だね。では、検査所見を予想するために病態から考えよう。SLEの本質は何だったかな。
医学生医学生
自己抗体が抗原と免疫複合体をつくって、それが組織に沈着して炎症を起こす、III型アレルギーですよね。
ドクタードクター
そう。そこから4つの柱が導ける。炎症反応、臓器障害、自己抗体による血球減少、そして補体の消費だ。まず炎症反応として、赤沈はどうなると思う?
医学生医学生
炎症があるので亢進すると思います。でもSLEはCRPが上がりにくいと聞いた気がして、赤沈も上がらないのかと少し迷いました。
ドクタードクター
そこはよく混同されるポイントだ。SLEでは高γグロブリン血症やフィブリノゲン増加、貧血がそろっていて、どれも赤沈を速める方向に働く。だから赤沈は亢進する。一方でCRPは漿膜炎や感染症の合併がなければ上がりにくい。「赤沈が速いのにCRPが低い」というずれ自体がSLEらしさなんだ。
医学生医学生
なるほど、赤沈とCRPを分けて考えるんですね。尿の泡立ちは、ループス腎炎による蛋白尿でしょうか。
ドクタードクター
その通り。免疫複合体が糸球体に沈着してループス腎炎を起こし、蛋白尿や血尿、赤血球円柱などの細胞性円柱が出る。尿蛋白陽性は予想される所見だ。次に血球はどうなるかな。
医学生医学生
自己抗体で壊されるので、白血球も血小板も減るはずです。血小板が増えるのは違いますね。
ドクタードクター
正解。SLEでは白血球減少、とくにリンパ球減少が高頻度にみられ、旧来の診断基準やSLICC基準でも血液学的異常の項目に入っている。血小板も抗血小板抗体などで減少しやすい。血小板増加は関節リウマチのような持続的な炎症や鉄欠乏性貧血で反応性にみられるもので、SLEの所見とは逆だね。
医学生医学生
内科の臨床実習で関節リウマチの患者さんの採血を見たとき、血小板が多めだったのを思い出しました。同じ関節炎でも血球の動きが逆なんですね。
ドクタードクター
いい対比だ。最後に補体。血清補体価が高値という選択肢をどう考える?
医学生医学生
免疫複合体が古典経路で補体を活性化して使い切ってしまうので、むしろ下がるはずです。
ドクタードクター
その通り。CH50やC3、C4は低値になり、その低下はとくにループス腎炎の活動性と相関するから、治療効果の指標にも使われる。CH50高値は急性期反応としてみられることはあっても、活動性SLEの所見ではない。つまり正解は、赤沈亢進、尿蛋白陽性、リンパ球数減少の3つだ。
医学生医学生
病態を一本の筋で追えば、検査値を丸暗記しなくても予想できるんですね。
ドクタードクター
そういうこと。発展として、自己抗体も整理しておこう。抗核抗体はスクリーニングとして感度が高く、抗dsDNA抗体は疾患活動性や腎炎と相関し、抗Sm抗体は特異性が高い。2019年のEULAR/ACR分類基準では、抗核抗体陽性が入口の必須条件になっている。
医学生医学生
CBTの問題集で、抗Sm抗体は特異的、抗dsDNA抗体は活動性と覚えました。治療ではどんなことに気をつけますか。
ドクタードクター
副腎皮質ステロイドを中心に、ヒドロキシクロロキンや免疫抑制薬、生物学的製剤を組み合わせる。そして今回のように紫外線が増悪の誘因になるから、日焼け対策などの生活指導が欠かせない。外来で補体の低下や抗dsDNA抗体の上昇、新たな蛋白尿をみたら、再燃や腎炎の悪化を疑って早めに評価しよう。

まとめ

若年女性に関節炎、発熱、紫外線曝露後の強い皮膚反応(光線過敏)、硬口蓋の無痛性口腔潰瘍、蛋白尿を思わせる尿の泡立ちがそろえば、全身性エリテマトーデスを考えます。SLEは免疫複合体の沈着と補体活性化による多臓器障害であり、そこから赤沈亢進、ループス腎炎による蛋白尿、自己抗体による白血球・リンパ球・血小板の減少、補体消費によるCH50・C3・C4低値が予想されます。赤沈は亢進してもCRPは上がりにくいこと、血小板は増加ではなく減少すること、補体は高値ではなく低値になることが鑑別のポイントです。抗核抗体、抗dsDNA抗体、抗Sm抗体の意味づけとあわせて、病態から検査値を導く考え方を身につけておくと、SLEの診断や再燃の評価に役立ちます。

解答・解説

正解はa, b, dです

所見の整理

・24歳の若年女性 ・1か月前からの両側手関節の疼痛と腫脹:複数の末梢関節に及ぶ関節炎 ・発熱 ・潮干狩り(強い紫外線曝露)の3日後に、日焼けした部位に水疱が生じた:通常の日焼けを超えた反応であり、光線過敏症を示唆する ・硬口蓋の地図状の発赤とびらん:口腔潰瘍(全身性エリテマトーデスでは痛みに乏しい潰瘍が硬口蓋にできやすい) ・尿の異常な泡立ち:蛋白尿を示唆し、腎障害(ループス腎炎)の存在が疑われる

診断へのプロセス

若年女性に、関節炎・発熱・光線過敏・口腔潰瘍・蛋白尿を疑わせる所見が同時にそろっている。それぞれ単独では関節リウマチ、ウイルス感染症、薬剤性光線過敏症、ベーチェット病、腎炎など多くの疾患が鑑別に挙がるが、皮膚・粘膜・関節・腎という多臓器の症状をまとめて説明できるのは全身性エリテマトーデス(systemic lupus erythematosus:SLE)である。尿の泡立ちは濃縮尿や糖尿でもみられうるので、確定には尿検査が必要だが、本例ではSLEに伴うループス腎炎による蛋白尿と考えるのが自然である。

設問の考え方

SLEは抗核抗体などの自己抗体と抗原が免疫複合体を形成し、それが組織に沈着して補体を活性化することで多臓器に炎症を起こす疾患である。この病態から、①炎症反応(赤沈亢進)、②臓器障害(蛋白尿など)、③自己抗体による血球減少(白血球・リンパ球・血小板の減少、溶血性貧血)、④補体の消費による低補体血症、が予想される検査所見となる。

選択肢考察

  1. ○a.  赤沈亢進

    SLEでは全身性の炎症に加え、多クローン性の高γグロブリン血症、フィブリノゲンの増加、貧血などがみられ、これらはいずれも赤血球沈降速度(赤沈)を速める方向に働く。そのため活動期のSLEでは赤沈が亢進する。一方、SLEではCRPは赤沈ほど上昇しないことが多く(漿膜炎や感染症の合併時は上昇しやすい)、「赤沈亢進の割にCRPが低い」ことがSLEの特徴の一つとされる。

  2. ○b.  尿蛋白陽性

    尿の異常な泡立ちは蛋白尿を示唆する所見である。SLEでは免疫複合体が糸球体に沈着してループス腎炎を高頻度に生じ、蛋白尿、血尿、赤血球円柱などの細胞性円柱がみられる。持続的な蛋白尿(1日0.5 g以上)は分類基準の腎病変の項目にも含まれる。本例では尿の泡立ちから尿蛋白陽性が予想される。

  3. ×c.  血小板数増加

    SLEでは抗血小板抗体などによる免疫学的な破壊で血小板数は減少しやすい(10万/μL未満の血小板減少は分類基準の項目である)。抗リン脂質抗体症候群を合併する例でも軽度の血小板減少がみられることがある。血小板数の増加は、関節リウマチなど持続的な炎症を伴う疾患や鉄欠乏性貧血などで反応性にみられる所見であり、SLEで予想される所見ではない。

  4. ○d.  リンパ球数減少

    SLEでは白血球減少(4,000/μL未満)、特にリンパ球減少が高頻度にみられる。抗リンパ球抗体による破壊やアポトーシスの亢進などが関与すると考えられているが、機序は完全には明らかでない。リンパ球減少は旧来の診断基準・SLICC分類基準で血液学的異常の項目に含まれており、SLEの典型的な検査所見である。

  5. ×e.  血清補体価(CH50)高値

    SLEでは免疫複合体が古典経路を介して補体を活性化し、補体が消費されるため、CH50(血清補体価)やC3・C4は低値となる。低補体血症は疾患活動性、特にループス腎炎の活動性と相関し、治療効果の指標にも用いられる。CH50高値は炎症に伴う急性期反応としてみられることがあるが、活動性SLEの所見ではない。

SLEの概要

20〜40歳代の女性に多い(男女比は約1:9)自己免疫疾患で、抗核抗体をはじめとする多彩な自己抗体が産生され、免疫複合体の沈着によって皮膚、関節、腎、漿膜、血液、神経など全身の臓器が障害される。紫外線曝露、感染、妊娠・出産、薬剤などが発症や増悪の誘因となる。

主な臨床症状

・全身症状:発熱、倦怠感、体重減少 ・皮膚粘膜症状:頬部紅斑(蝶形紅斑)、円板状皮疹、光線過敏症、無痛性の口腔潰瘍(硬口蓋に多い)、非瘢痕性脱毛 ・関節炎:骨破壊を伴わない非びらん性関節炎(関節リウマチとの違い) ・漿膜炎:胸膜炎、心膜炎 ・腎障害(ループス腎炎):蛋白尿、細胞性円柱、ネフローゼ症候群 ・神経精神症状(NPSLE):けいれん、精神症状など

主な検査所見

・血液:白血球減少、リンパ球減少、血小板減少、Coombs試験陽性の自己免疫性溶血性貧血 ・炎症反応:赤沈亢進、CRPは上昇しにくい、高γグロブリン血症 ・免疫:抗核抗体陽性(スクリーニング)、抗二本鎖DNA(dsDNA)抗体(疾患活動性・腎炎と相関)、抗Sm抗体(特異性が高い)、抗リン脂質抗体、低補体血症(CH50・C3・C4低下) ・尿:蛋白尿、血尿、細胞性円柱

分類基準の変遷

1997年のアメリカリウマチ学会(ACR)基準では11項目中4項目以上で分類し、リンパ球減少は1,500/μL未満と定義されていた。2012年のSLICC基準ではリンパ球減少が1,000/μL未満とされ、非瘢痕性脱毛が追加された。2019年のEULAR/ACR分類基準では、抗核抗体陽性(1:80以上)を必須の入口基準とし、臨床・免疫学的項目に重み付けした点数(合計10点以上)で分類する方式となった。

治療の概要

副腎皮質ステロイドを中心に、ヒドロキシクロロキン、免疫抑制薬(ミコフェノール酸モフェチル、シクロホスファミド、タクロリムスなど)、生物学的製剤(ベリムマブ、アニフロルマブ)が用いられる。紫外線を避ける生活指導も重要である。

POINT

・若年女性+関節炎・発熱・光線過敏・口腔潰瘍・蛋白尿 → SLEを考える。 ・SLEで予想される検査所見:赤沈亢進、尿蛋白陽性、白血球・リンパ球・血小板の減少、低補体血症(CH50・C3・C4低下)、抗核抗体・抗dsDNA抗体・抗Sm抗体陽性。 ・SLEは赤沈が亢進してもCRPは上がりにくい。 ・補体は免疫複合体による消費で低下し、腎炎の活動性と相関する。 ・血小板は増加ではなく減少する。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。