StudyMed医師国家試験

「なぜ今?」がわからない発作―パニック障害を見抜くカギは“誘因のなさ”

第109回医師国家試験 F問題 第12問

国試問題にチャレンジ

第109回 F問題 第12問

パニック障害におけるパニック発作の特徴はどれか。

  1. a.予期しない状況で起こる。
  2. b.特定の社会的状況で起こる。
  3. c.客観的に危険な状況で起こる。
  4. d.ストレス刺激に反応して起こる。
  5. e.身近な家族から離れていると起こる。

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は、パニック障害で起こるパニック発作の特徴を問う問題だ。ポイントは、発作の「症状」ではなく「起こり方」に注目すること。パニック発作そのものは、実はいろいろな精神疾患で起こりうるんだ。
医学生医学生
パニック発作というと、動悸や息苦しさ、「死ぬんじゃないか」という恐怖が急に押し寄せるイメージです。それがパニック障害だけの症状ではないんですか。
ドクタードクター
そう。強い恐怖や不快感が突然高まって数分以内にピークに達する、というのがパニック発作の定義で、動悸、発汗、ふるえ、窒息感、胸痛、めまい、現実感消失などを伴う。でも、同じような発作は社交不安症や限局性恐怖症、PTSDなどでも起こるんだ。
医学生医学生
じゃあ、何で区別するんでしょう。症状の数や強さですか。
ドクタードクター
症状の中身ではなく、「きっかけ」があるかどうかだ。他の疾患では、特定の場面や対象、記憶といった引き金がはっきりしている。パニック障害では、くつろいでいるときや睡眠中など、明らかな誘因のない状況で予期しない発作が繰り返し起こる。DSM-5でも「繰り返される予期しないパニック発作」が診断の中核なんだ。
医学生医学生
ということは、予期しない状況で起こる、というのが正解ですね。精神科の講義で「青天の霹靂のように起こる」と習ったのを思い出しました。
ドクタードクター
その通り。では、ほかの選択肢がどの疾患を表しているか整理しよう。特定の社会的状況で起こる、というのは?
医学生医学生
人前で発表するときなどに不安が強くなるのは、社交不安症でしょうか。
ドクタードクター
正解。他者から注目・評価される場面で強い不安が出るのが社交不安症で、パニック発作を伴うこともあるけれど、それは状況から予期される発作だ。ちなみに高所や閉所、動物など特定の対象で起こるなら限局性恐怖症になる。
医学生医学生
客観的に危険な状況で起こる、というのは……火事の現場で動悸がするのは当たり前な気がします。
ドクタードクター
まさにそこ。実際に命の危険がある状況での恐怖は、誰にでも起こる正常な反応だ。パニック障害が病的とされるのは、本当は危険がないのに発作が起こるからなんだよ。
医学生医学生
ストレス刺激に反応して起こる、というのは、パニック障害でもストレスが関係しそうなので迷いました。
ドクタードクター
迷いやすいところだね。確かにストレスは発症や悪化の背景になりうる。でも、明確なストレス刺激、たとえば外傷体験を思い出させる刺激が引き金になって強い不安やフラッシュバックが起こるのは、PTSDや急性ストレス障害の特徴だ。発作が特定の刺激に結びついている点で、予期しない発作とは性質が違う。
医学生医学生
家族から離れると起こる、というのは分離不安症ですね。小児科実習で、母親と離れると泣き止まない子の話を聞きました。
ドクタードクター
そう、愛着対象から離れることに対して発達段階にそぐわない過剰な不安を示すのが分離不安症だ。パニック障害の発作は状況と無関係だから、家族がそばにいても起こりうる。
医学生医学生
誘因なし→パニック障害、社会的場面→社交不安症、特定の対象→限局性恐怖症、外傷の想起→PTSD、分離→分離不安症、と誘因で整理すればいいんですね。
ドクタードクター
完璧な整理だ。もう一つ大事なのは、いつ起こるかわからないことが二次的な問題を生む点。「また発作が起きたらどうしよう」という予期不安と、電車や人混み、エレベーターのように逃げられない・助けを得にくい場所を避ける広場恐怖が出やすい。予期不安や回避行動が1か月以上続くことも診断には必要なんだ。
医学生医学生
救急外来では、動悸や胸痛で来た人を最初からパニック障害と決めつけてはいけないですよね。
ドクタードクター
とても大事な視点だ。狭心症や不整脈、甲状腺機能亢進症、低血糖、褐色細胞腫、気管支喘息、カフェインや覚醒剤などの薬物、アルコールやベンゾジアゼピン系薬の離脱でも似た症状が出るから、身体疾患の除外が先だ。治療はSSRIが第一選択で、認知行動療法も有効。ベンゾジアゼピン系薬を短期間併用することはあるけれど、依存には注意が必要だね。
医学生医学生
発作を「死ぬかもしれない」と破局的に解釈しないように修正していくのが認知行動療法なんですね。
ドクタードクター
その通り。発作は数分から30分程度で自然に治まり、命に関わるものではないと理解してもらうことが、回復への第一歩になるんだ。

まとめ

パニック発作は、動悸・息苦しさ・死の恐怖などが突然出現し数分以内にピークに達する発作で、社交不安症や恐怖症、PTSDなど多くの疾患で起こりえます。パニック障害を特徴づけるのは、明らかな誘因のない状況で予期しない発作が反復することであり、そこから予期不安や広場恐怖が二次的に生じます。誘因が明確な発作は、社会的場面なら社交不安症、特定の対象なら限局性恐怖症、外傷の想起ならPTSD、愛着対象からの分離なら分離不安症と整理でき、客観的な危険への恐怖は正常反応です。診断の前には心疾患や甲状腺機能亢進症、低血糖、薬物関連などの身体疾患を除外し、治療はSSRIと認知行動療法が中心となります。「症状」ではなく「起こり方」で不安症群を整理する視点は、精神科診療の基本として役立ちます。

解答・解説

正解はaです

パニック発作とは、強い恐怖や不快感が突然高まり、数分以内に頂点に達する発作である。動悸、発汗、ふるえ、息切れ・息苦しさ、窒息感、胸痛、嘔気、めまい、現実感消失、「死ぬのではないか」「気が狂うのではないか」という恐怖などの身体症状・精神症状を伴う。パニック発作そのものは、恐怖症、社交不安症、心的外傷後ストレス障害(PTSD)など、他の不安症や精神疾患でも起こりうる症状である。 これらとパニック障害(DSM-5ではパニック症)を分けるのは、発作の起こり方である。他の疾患では、特定の対象・状況・記憶など、発作を引き起こす「きっかけ」がはっきりしている。これに対しパニック障害では、明らかな誘因のない状況、例えばくつろいでいるときや睡眠中にも、予期しない発作が繰り返し起こる。DSM-5の診断基準でも「繰り返される予期しないパニック発作」が中核であり、そのうえで、さらに発作が起こるのではないかという持続的な心配(予期不安)や、発作を避けるための行動の変化が1か月以上続くことが求められる。 したがって本問では、発作が特定の誘因に結びついていないことを表す選択肢を選べばよい。

選択肢考察

  1. ○a.  予期しない状況で起こる。

    パニック障害の発作は、はっきりした原因や状況と関係なく突然起こるのが特徴であり、DSM-5でも「予期しないパニック発作の反復」が診断の中心に置かれている。いつ起こるかわからないため、「また発作が起きたらどうしよう」という予期不安や、発作時に逃げられない・助けが得られない場所(電車、人混み、エレベーターなど)を避ける広場恐怖が二次的に生じやすい。

  2. ×b.  特定の社会的状況で起こる。

    人前での発表や会食など、他者から注目・評価される特定の社会的場面で強い不安が生じるのは社交不安症(社交不安障害、いわゆる対人恐怖)の特徴である。この場合もパニック発作を伴うことはあるが、それは状況によって予期される発作であり、パニック障害の予期しない発作とは区別される。高所や閉所など特定の対象・状況で起こるものは限局性恐怖症である。

  3. ×c.  客観的に危険な状況で起こる。

    火災や事故など客観的に生命の危険がある状況で強い恐怖や動悸が生じるのは、誰にでも起こる正常な恐怖反応である。パニック障害の発作は、実際には危険のない状況で起こる点が病的とされるゆえんである。

  4. ×d.  ストレス刺激に反応して起こる。

    外傷的な出来事を思い出させる刺激(トリガー)に反応して強い不安やフラッシュバックが起こるのは、PTSDや急性ストレス障害でみられる。このように明確なストレス刺激が引き金となる発作は、予期しない発作を特徴とするパニック障害の発作とは性質が異なる。

  5. ×e.  身近な家族から離れていると起こる。

    愛着をもつ人(親や家族など)から離れることに対して発達段階にそぐわない過剰な不安を示すのは分離不安症(分離不安障害)の特徴である。パニック障害の発作は状況と無関係に起こるため、家族が近くにいても生じうる。

パニック発作の症状(DSM-5)

以下の13症状のうち4つ以上が突然出現し、数分以内にピークに達する。 動悸・心拍数増加、発汗、身震い、息切れ感・息苦しさ、窒息感、胸痛・胸部不快感、嘔気・腹部不快感、めまい感・ふらつき、寒気または熱感、異常感覚(しびれ・うずき)、現実感消失・離人感、抑制力を失うことへの恐怖(気が狂う恐怖)、死ぬことへの恐怖。

パニック障害(パニック症)の特徴

・予期しないパニック発作が繰り返し起こり、予期不安や回避行動が1か月以上続く。 ・発作は通常数分~30分程度で自然に治まり、身体的な異常は見つからない。 ・広場恐怖症を合併しやすい(DSM-5では別の診断として併記する)。 ・青年期~成人早期の発症が多く、女性に多い。うつ病の合併もしばしばみられる。

鑑別すべき身体疾患

狭心症・不整脈、甲状腺機能亢進症、低血糖、褐色細胞腫、気管支喘息、薬物(カフェイン、覚醒剤など)の使用やアルコール・ベンゾジアゼピン系薬の離脱などは、パニック発作に似た症状を起こすため除外が必要である。

治療

・薬物療法:選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)が第一選択。即効性を期待してベンゾジアゼピン系抗不安薬を短期間併用することがあるが、依存に注意する。 ・精神療法:認知行動療法(発作に対する破局的な解釈の修正、段階的な曝露など)が有効である。

発作の誘因による整理

・誘因なく突然:パニック障害 ・社会的場面(注目・評価される場面):社交不安症 ・特定の対象や状況(高所、閉所、動物など):限局性恐怖症 ・外傷体験を想起させる刺激:PTSD・急性ストレス障害 ・愛着対象からの分離:分離不安症

POINT

・パニック障害の発作は「予期しない(誘因のない)」発作が反復するのが特徴 ・二次的に予期不安と広場恐怖を生じやすい ・誘因が明らかな発作は他疾患を考える(社会的場面→社交不安症、特定の対象→限局性恐怖症、外傷想起→PTSD、分離→分離不安症) ・治療はSSRIと認知行動療法が中心

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。