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「肝臓を通って胆嚢へ」―PTGBDの穿刺経路は解剖が決める

第109回医師国家試験 E問題 第28問

国試問題にチャレンジ

第109回 E問題 第28問

急性胆嚢炎の診断で超音波ガイド下に経皮経肝胆嚢ドレナージを行うこととなった。腹部超音波像を別に示す。  穿刺経路として最も適切なのはどれか。

第109回 E問題 第28問の問題画像
  1. a.①
  2. b.②
  3. c.③
  4. d.④
  5. e.⑤

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は、急性胆嚢炎に対する経皮経肝胆嚢ドレナージ、いわゆるPTGBDの穿刺経路を超音波像の上で選ぶ問題だ。ポイントは「なぜ肝臓を通すのか」「胆嚢のどこを狙うのか」「周りに何があるのか」の3つ。まず、そもそもPTGBDはどんな患者さんに行う処置か覚えているかな。
医学生医学生
急性胆嚢炎なら、基本は早期の腹腔鏡下胆嚢摘出術ですよね。ドレナージはそれができない人向けでしょうか。
ドクタードクター
その通り。全身状態が悪くて手術リスクが高い人、抗菌薬などの初期治療に反応しない人、臓器障害を伴う重症例などで、まず感染した胆汁を外に逃がして炎症を鎮める。落ち着いてから待機的に胆嚢摘出を検討する、という流れだ。超音波で胆嚢を見ながら皮膚から針を刺し、胆嚢内にカテーテルを留置する。
医学生医学生
消化器内科の臨床実習で見学しました。でも、胆嚢に一番近いところから最短距離で刺せばいいような気がしてしまいます。
ドクタードクター
そこが一番の落とし穴だね。胆嚢は胆嚢床という面で肝臓にぴったり接していて、残りの壁は腹腔に面した遊離壁になっている。遊離壁を直接刺すと、穴の周りを支える組織が何もないから、感染した胆汁が腹腔に漏れて胆汁性腹膜炎を起こしたり、カテーテルが抜けやすくなったりする。
医学生医学生
肝臓を通しておけば、肝実質がカテーテルの周りを包んで栓をしてくれる、ということですか。
ドクタードクター
まさにそう。肝組織がカテーテルを抱え込んで密封し、固定もしてくれる。だから「経肝」という名前がついているんだ。超音波像では体表側から左側にかけて肝臓があって、その下に液体で満たされた低エコーの胆嚢が見えている。では、肝臓を通らずに胆嚢壁へ直接到達している経路はどれだと思う?
医学生医学生
③、④、⑤は肝臓を通らずに胆嚢に届いているように見えます。
ドクタードクター
正解。この3本はいずれも遊離壁への直接穿刺で、胆汁漏出のリスクがある。特に胆嚢底部側から入る経路は、底部の近くに横行結腸や十二指腸が接しているから、腸管を誤って刺すおそれも加わる。最も避けたい経路の一つだ。
医学生医学生
残るのは肝臓を通る2本ですね。どちらも経肝的なら、どちらでもよさそうに思えますが……。
ドクタードクター
ここで2つ目のポイント、「胆嚢のどこを狙うか」が効いてくる。一方の経路は胆嚢の頸部寄り、内腔の狭い辺縁を目標にしている。狭いところを狙うと針が胆嚢を突き抜けたり、カテーテルが内腔に十分収まらなかったりする。しかも頸部の近くには胆嚢管や肝門部の血管・胆管が走っている。
医学生医学生
解剖学の実習で、Calot三角の周りに胆嚢動脈や総胆管が集まっていたのを思い出しました。頸部側は危ないですね。
ドクタードクター
いい連想だね。それに対して②は、胆嚢床の肝実質を貫いて、内腔の広い胆嚢体部に到達している。針先の位置を確保しやすく、肝臓がカテーテルを支え、腸管からも離れている。これが最も適切な穿刺経路だ。
医学生医学生
肝臓を通すこと、体部の広い内腔を狙うこと、腸管や肝門部を避けること、の3条件をすべて満たすのが②なんですね。
ドクタードクター
そういうこと。穿刺の問題は、画像を見る前に「守るべき原則」を頭に置いておくと迷わない。最後に臨床での注意点も押さえておこう。PTGBDの合併症には胆汁漏出や胆汁性腹膜炎、肝実質や胆嚢壁からの出血、カテーテル逸脱、腸管損傷、迷走神経反射のほか、高い肋間から刺すと気胸もありうる。
医学生医学生
出血傾向のある人や腹水が多い人はどうするんでしょうか。
ドクタードクター
そういう場合は経皮的処置のリスクが高くなるから、内視鏡的経乳頭的胆嚢ドレナージや超音波内視鏡下胆嚢ドレナージが選択肢になる。また、カテーテルを置かずに穿刺して吸引だけ行うPTGBAという方法もあって、簡便だけど再穿刺が必要になることがある。患者さんの状態に合わせて方法を選ぶのが大切だね。
医学生医学生
手技を選ぶ段階から合併症を意識しておく、ということですね。
ドクタードクター
その通り。どの経路で、どの方法で、という判断はすべて「安全に、確実に胆汁を出す」ためにある。その目的から逆算して考える習慣をつけておこう。

まとめ

経皮経肝胆嚢ドレナージ(PTGBD)は、手術リスクが高い、あるいは初期治療に反応しない急性胆嚢炎に対して、感染胆汁を体外に排出するために行う処置です。穿刺は肝臓の胆嚢床を経由して行うのが原則で、肝実質がカテーテル周囲を密封・固定するため、胆汁の腹腔内漏出やカテーテル逸脱を防げます。目標は内腔の広い胆嚢体部で、狭い頸部側は突き抜けや肝門部脈管損傷の危険があり、肝を介さない直接穿刺は胆汁性腹膜炎、底部側からの穿刺は横行結腸などの腸管損傷のリスクがあります。出血傾向や大量腹水がある場合には内視鏡的なドレナージも選択肢となります。解剖に基づいて「なぜその経路なのか」を理解しておくことは、インターベンション手技全般の安全性を考える基礎になります。

解答・解説

正解はbです

経皮経肝胆嚢ドレナージ(PTGBD:percutaneous transhepatic gallbladder drainage)の安全な穿刺経路を、超音波像の上で選ぶ問題である。

PTGBDとは

急性胆嚢炎で、全身状態が悪く緊急手術のリスクが高い場合や、抗菌薬などの保存的治療で改善しない場合に、胆嚢内の感染胆汁を体外に排出させる目的で行う処置である。超音波で胆嚢を見ながら皮膚から針を刺し、胆嚢内にカテーテル(ドレナージチューブ)を留置する。

穿刺経路を決める原則

1. 肝臓を経由して胆嚢に入る(経肝的穿刺):胆嚢は胆嚢床(肝床)で肝臓に接しており、この部分の肝実質を貫いて胆嚢に入ると、カテーテル周囲を肝組織が取り囲んで支えるため、穿刺孔から胆汁が腹腔内に漏れにくい。肝を経由せず遊離腹腔側の胆嚢壁を直接刺すと、胆汁漏出による胆汁性腹膜炎や、カテーテルの逸脱を起こしやすい。 2. 内腔の広い胆嚢体部を狙う:内腔の狭い頸部を狙うと、針やカテーテルが胆嚢を突き抜けたり、内腔に十分に留置できなかったりする。また頸部付近には胆嚢管や肝門部の脈管が近い。 3. 周囲臓器を損傷しない:胆嚢底部の周囲には横行結腸や十二指腸が接しており、底部側からの穿刺は腸管損傷の危険がある。

超音波像の読み取り

画像では上方(体表側)から左側にかけて肝臓があり、その下に液体で満たされた低エコーの胆嚢が描出されている。①は肝臓を通るが胆嚢の頸部側の狭い部分・辺縁を指しており、内腔を確実に捉えにくい。②は肝実質(胆嚢床)を通過して胆嚢体部の広い内腔に到達する経路である。③④⑤は肝臓を介さずに胆嚢壁へ直接到達する経路で、⑤は胆嚢底部側にあたる。以上の原則に合うのは②である。

選択肢考察

  1. ×a.  ①

    ①は胆嚢の頸部寄りの狭い部分、内腔の辺縁を目標としており、穿刺針が胆嚢内腔を確実に捉えられない。内腔が狭いため針が胆嚢を突き抜ける危険があり、カテーテルも安定して留置しにくい。頸部付近は胆嚢管や肝門部の血管・胆管に近い点でも不適切である。

  2. ○b.  ②

    ②は肝実質、すなわち胆嚢が肝臓に接している胆嚢床を貫いて、内腔の広い胆嚢体部に到達する経路である。肝組織がカテーテルの周囲を密封するため穿刺孔からの胆汁漏出が起こりにくく、カテーテルも固定されて逸脱しにくい。内腔が広いので針先の位置を確保しやすく、腸管からも離れている。PTGBDの穿刺経路として最も適切である。

  3. ×c.  ③

    ③は肝臓を経由せずに胆嚢の遊離壁(腹腔に面した壁)を直接穿刺する経路である。周囲に肝組織の支えがないため、穿刺孔から感染した胆汁が腹腔内に漏れて胆汁性腹膜炎を起こす危険があり、カテーテルの逸脱も起こりやすい。

  4. ×d.  ④

    ④も③と同様に肝臓を通らず胆嚢壁を直接刺す経路であり、穿刺部からの胆汁漏出による胆汁性腹膜炎やカテーテル逸脱の危険がある。経肝的でない点で不適切である。

  5. ×e.  ⑤

    ⑤は肝臓を経由せず、胆嚢底部側を直接穿刺する経路である。胆汁の腹腔内漏出の危険に加え、胆嚢底部の近くには横行結腸や十二指腸が位置するため、腸管を誤って穿刺・損傷するおそれもある。最も避けるべき経路の一つである。

急性胆嚢炎の治療の流れ(Tokyo Guidelinesの考え方)

・全例で絶食・輸液・抗菌薬などの初期治療を行い、重症度(軽症・中等症・重症)を評価する。 ・軽症〜中等症で手術に耐えられる場合は、早期の腹腔鏡下胆嚢摘出術が基本である。 ・手術リスクが高い場合や保存的治療に反応しない場合、重症で臓器障害を伴う場合などに、胆嚢ドレナージを行い、全身状態が改善した後に待機的な胆嚢摘出術を検討する。

胆嚢ドレナージの方法

・PTGBD:カテーテルを留置して持続的に排液する。確実性が高く、最も標準的な方法。 ・PTGBA(経皮経肝胆嚢吸引穿刺法):穿刺して胆汁を吸引するのみでカテーテルを留置しない。簡便だが再穿刺を要することがある。 ・内視鏡的経乳頭的胆嚢ドレナージ(ETGBD)や超音波内視鏡下胆嚢ドレナージ(EUS-GBD):経皮的処置が難しい場合(腹水、出血傾向など)の選択肢。

PTGBDの主な合併症

胆汁漏出・胆汁性腹膜炎、出血(肝実質や胆嚢壁からの出血)、カテーテル逸脱、気胸(高位の肋間から穿刺した場合)、腸管損傷、迷走神経反射など。出血傾向や大量腹水がある場合は経皮的処置のリスクが高くなる。

POINT

・PTGBDは肝臓(胆嚢床)を経由して胆嚢を穿刺する(経肝的穿刺)。これにより胆汁の腹腔内漏出やカテーテル逸脱を防ぐ。 ・目標は内腔の広い胆嚢体部。頸部は狭く、突き抜けや肝門部脈管損傷の危険がある。 ・肝を介さない直接穿刺は胆汁性腹膜炎、底部側からの穿刺は横行結腸などの腸管損傷の危険がある。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。