捨てて、入れ替える―回路図で見抜く血漿交換のしくみ
第109回医師国家試験 E問題 第26問
国試問題にチャレンジ
治療法の模式図を示す。 この治療法はどれか。

- a.血液透析
- b.腹膜透析
- c.血漿交換
- d.血液濾過
- e.血液吸着
対話形式の解説
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
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医学生
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ドクターまとめ
体外循環による血液浄化療法の回路図は、「通す器材」「捨てるもの」「補充するもの」の3点で判別できます。血漿分離器で血漿を分け、全量を廃棄して新鮮凍結血漿やアルブミン製剤で置換するのが単純血漿交換で、自己抗体や毒性物質などの病因物質を血漿ごと除去します。血液透析は拡散で小分子を除き、血液濾過は対流で除去して電解質液を補充し、血液吸着はカラムで処理した血液・血漿を体内に戻すため、いずれも血漿の廃棄や血液製剤の補充は行いません。腹膜透析はそもそも体外循環を用いない治療です。血栓性血小板減少性紫斑病や劇症肝炎などの適応と、低カルシウム血症やアレルギーなどの合併症まで結びつけて理解しておくと、臨床での治療選択にも役立ちます。
解答・解説
正解はcです
体外循環を用いる血液浄化療法(アフェレシスを含む)の回路図を読み取り、治療法を同定する問題である。回路図では「どの器材(膜・カラム)を通すか」「取り除いたものをどうするか」「何を補充するか」の3点に注目すると判別できる。
模式図の読み取り
・右側から血液を体外へ導き(脱血)、血流ポンプで回路内を送る。凝固を防ぐため抗凝固薬が注入されている。 ・血液は「血漿分離器」を通過する。血漿分離器は孔の大きい膜(膜型血漿分離器)で、血球成分と血漿成分を分ける器材である。 ・分離された血漿は別のポンプで引き出され、そのまま「廃棄液」として捨てられている。分離した血漿を処理する二次的なカラム(吸着器や二次膜)は回路上に存在しない。 ・捨てた血漿の代わりに、左上の「血液製剤」が回路に補充され、血球成分と合流して患者に戻される(返血)。
考え方
血漿を分離して丸ごと廃棄し、同量を血液製剤(新鮮凍結血漿〈FFP〉や等張アルブミン製剤)で置き換える治療は、単純血漿交換(PE)である。血液透析・血液濾過・血液吸着では患者の血漿を丸ごと捨てることはなく、血液製剤で置換する必要もない。腹膜透析は血液を体外に出さない治療であり、そもそもこのような体外循環回路を用いない。
選択肢考察
- ×a. 血液透析
血液透析(HD)は、半透膜でできた血液透析器(ダイアライザ)の膜を介して血液と透析液を接触させ、主に拡散によって尿素・クレアチニン・カリウムなどの小分子物質を除去し、限外濾過で余分な水分を除く治療である。回路には透析液の流入・排出があり、血漿分離器や血液製剤は用いない。血漿蛋白は膜を通過しないため、血漿を廃棄して補充する必要はない。図とは合致しない。
- ×b. 腹膜透析
腹膜透析(PD)は、腹腔内にカテーテルから透析液を注入して一定時間貯留し、患者自身の腹膜を半透膜として利用して溶質と水分を除去する治療である。血液を体外に取り出す脱血・返血回路、血流ポンプ、血漿分離器はいずれも存在しない。図とは全く異なる。
- ○c. 血漿交換
単純血漿交換(PE)では、体外へ導いた血液を血漿分離器で血球成分と血漿成分に分け、病因物質(自己抗体、免疫複合体、蓄積した毒性物質など)を含む血漿を丸ごと廃棄する。失った血漿の代わりに同量の置換液を補充して血球成分とともに返血する。置換液には新鮮凍結血漿(FFP)や等張アルブミン製剤が用いられ、凝固因子の補充が必要な病態(劇症肝炎、血栓性血小板減少性紫斑病〈TTP〉など)ではFFPが選ばれる。図の「血漿分離器」「廃棄液」「血液製剤の補充」という構成はこの治療に完全に一致する。
- ×d. 血液濾過
血液濾過(HF)は、透水性の高い膜を用いた血液濾過器(ヘモフィルタ)で、血漿中の水分を溶質とともに大量に濾過(対流)して除去し、同時に電解質組成を調整した補充液を回路内に補う治療である。中分子量物質の除去に優れる。補充液は血液製剤ではなく電解質液であり、アルブミンなどの血漿蛋白は膜を通過しないため廃棄されない。血漿分離器を用いる点で図とは異なる。
- ×e. 血液吸着
血液吸着は吸着材を充填したカラムに血液または血漿を通し、病因物質を選択的に吸着除去する治療である。全血をそのままカラムに通す直接血液灌流(DHP。薬物中毒や敗血症でのエンドトキシン除去など)では血漿分離器を用いない。血漿分離器で分けた血漿を吸着カラムに通す血漿吸着法(免疫吸着、LDL吸着など)もあるが、この場合は処理後の血漿を患者に戻すため廃棄や血液製剤の補充は不要で、回路上に吸着カラムが描かれるはずである。図とは合致しない。
体外循環による主な血液浄化療法の比較
・血液透析(HD):ダイアライザ/拡散が主/小分子量物質(尿素、Kなど)の除去/補充液なし(透析液を使用) ・血液濾過(HF):ヘモフィルタ/対流(濾過)/中分子量物質も除去/電解質補充液を使用 ・血液濾過透析(HDF):HDとHFの組み合わせ ・単純血漿交換(PE):血漿分離器/血漿を全量廃棄/FFPまたはアルブミン製剤で置換 ・二重濾過血漿交換(DFPP):血漿分離器で分けた血漿を、さらに孔の小さい二次膜(血漿成分分画器)に通し、免疫グロブリンなど大分子量成分を含む分画だけを廃棄する。アルブミンの喪失が少なく、補充量を減らせる。 ・血漿吸着(PA):血漿分離器+吸着カラム。処理した血漿は返却し、置換液は原則不要 ・直接血液灌流(DHP):全血を吸着カラムに直接通す
血漿交換の主な適応例
血栓性血小板減少性紫斑病(TTP。ADAMTS13に対する自己抗体の除去と酵素の補充)、劇症肝炎・急性肝不全(毒性物質除去と凝固因子補充)、Guillain-Barré症候群、重症筋無力症、抗GBM抗体病、家族性高コレステロール血症(LDL除去。主に吸着法)など。
血漿交換の合併症
FFPによるアレルギー反応・感染リスク、クエン酸(FFPの抗凝固剤)による低カルシウム血症、凝固因子や免疫グロブリンの低下(アルブミン置換の場合)、血圧低下など。
POINT
・回路図は「通す器材」「捨てるもの」「補充するもの」で判別する。 ・血漿分離器で血漿を分けて全量廃棄し、血液製剤(FFP・アルブミン)で補充するのは単純血漿交換である。 ・血液透析・血液濾過は血漿蛋白を捨てず、血液製剤も用いない(血液濾過の補充液は電解質液)。 ・血液吸着は吸着カラムを用い、処理後の血液・血漿は体内に戻す。 ・腹膜透析は体外循環を用いない。
