StudyMed医師国家試験

ミッキーマウスを探せ―水平断MRIの「高さ」を読み解き、錐体路の通り道を特定する

第109回医師国家試験 E問題 第14問

国試問題にチャレンジ

第109回 E問題 第14問

頭部単純MRIのT1強調像を別に示す。  みられるのはどれか。

第109回 E問題 第14問の問題画像
  1. a.中心前回
  2. b.内包後脚
  3. c.大脳脚
  4. d.橋底部
  5. e.延髄錐体

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は頭部MRIの水平断を1枚見て、そこに写っている構造を答える問題だ。ポイントは「この断面は脳のどの高さか」を最初に決めること。高ささえ決まれば、写るものと写らないものが自然に分かれるよ。まず画像の真ん中あたりに何が見えるか、意識してみよう。
医学生医学生
中央に小さな丸っぽい構造があって、周りを黒い液体が取り囲んでいますね。脳幹のどこかだと思うんですが、橋か中脳かで迷います。
ドクタードクター
そこが最初の分かれ道だね。T1強調像では脳脊髄液が黒く、白質は灰白質よりやや白っぽく写る。中央の構造を取り囲む黒い部分は迂回槽や脚間槽といった脳槽だ。そして周囲には前頭葉の底面、両側の側頭葉内側部、後方に後頭葉の下部が並んでいる。つまり大脳がぐるりと囲んでいる高さ、小脳テントのすぐ上の断面なんだ。
医学生医学生
テントより上ということは、橋や小脳がメインになる後頭蓋窩の断面ではない、ということですね。
ドクタードクター
その通り。そして中央の構造の形をよく見てほしい。前方の左右に耳のように張り出した部分があって、正中に小さな孔がある。これが中脳の横断面で、よく「ミッキーマウスの顔」に例えられる形だ。
医学生医学生
神経解剖の講義で聞いたことがあります。耳にあたる部分が大脳脚で、真ん中の孔が中脳水道ですよね。
ドクタードクター
よく覚えているね。腹側から順に、大脳脚、そのすぐ背側に黒質、さらに被蓋、正中に中脳水道、いちばん背側に四丘体という並びになる。だから正解は大脳脚だ。大脳脚には内包後脚から下りてきた錐体路のほか、皮質核路や皮質橋路が通っている。
医学生医学生
なるほど。ほかの選択肢を見ると、中心前回、内包後脚、橋底部、延髄錐体……あれ、全部錐体路の通り道ですか。
ドクタードクター
鋭いね。この問題の選択肢は、中心前回から放線冠、内包後脚、大脳脚、橋底部、延髄錐体と、錐体路の経路を頭側から順に並べたものなんだ。だから「どの高さの断面か」が決まれば一発で答えが出る。では中心前回が写らないのはなぜかな。
医学生医学生
中心前回は一次運動野で、中心溝のすぐ前ですよね。脳の上のほう、頭頂寄りの断面で見えるはずなので、中脳の高さでは写らないと思います。
ドクタードクター
正解。水平断では側脳室体部より上の断面で、中心溝と一緒に同定する。内包後脚はどうだろう。
医学生医学生
内包は基底核レベルで、「く」の字形に見えるところですね。後脚は視床とレンズ核に挟まれた部分なので、中脳よりは上の断面になります。
ドクタードクター
その通り。側脳室前角や第3脳室が見える高さだね。逆に下のほうはどうかな。
医学生医学生
橋底部は橋の腹側の膨らみなので、テントより下の後頭蓋窩の断面ですね。延髄錐体はさらに下で、大孔に近い高さ。どちらも今回の断面には入らない、と。
ドクタードクター
完璧だ。橋の断面では背側に第4脳室があって、中小脳脚で後ろの小脳とつながる。延髄の高さになると大脳半球はもう見えず、背側に小脳半球や小脳扁桃が広がる。断面ごとの「顔ぶれ」をセットで覚えておくと強いよ。
医学生医学生
脳神経内科の実習で、指導医の先生がMRIを上から順にスクロールしながら「今どこ?」と聞いてきたのを思い出しました。高さの感覚が大事なんですね。
ドクタードクター
まさにそれが臨床の読影の基本だ。発展として、中脳の構造と疾患を結びつけておこう。大脳脚の背側にある黒質はドパミン作動性ニューロンを含み、Parkinson病で変性する。中脳水道が狭窄すると、第3脳室と第4脳室の交通が断たれて非交通性水頭症になる。また左右の大脳脚の間の脚間窩からは動眼神経が出ている。
医学生医学生
だから中脳の病変では、片麻痺と動眼神経麻痺が組み合わさることがあるんですね。Weber症候群でしたっけ。
ドクタードクター
そう。大脳脚の病変で反対側の片麻痺、動眼神経の障害で同側の眼瞼下垂や散瞳が出る、という交代性片麻痺の代表だ。錐体路の経路と各断面の構造を対応させておくと、病変部位から症状を予測したり、症状から病変部位を推定したりできるようになる。画像を見たら、まず高さを決める習慣をつけよう。

まとめ

頭部MRIの水平断で構造を同定するには、まず断面の高さを決めることが出発点になります。小脳テント直上の断面では、中脳が「ミッキーマウスの顔」のような形で描出され、腹側に張り出す大脳脚、その背側の黒質と被蓋、正中の中脳水道、最背側の四丘体が並び、周囲を迂回槽が取り囲みます。本問の選択肢は中心前回→内包後脚→大脳脚→橋底部→延髄錐体という錐体路の経路そのものであり、中脳レベルと判断できれば大脳脚以外は上下の別の断面に属すると分かります。中脳では黒質とParkinson病、中脳水道狭窄と非交通性水頭症、大脳脚と動眼神経が関わるWeber症候群など、臨床と直結する知識も多く押さえておきたいところです。断面の高さと錐体路の走行を対応させる読み方は、脳卒中などの病変部位診断の基礎となります。

解答・解説

正解はcです

頭部MRIの水平断(軸位断)を見て、どの高さの断面かを判断し、その断面に含まれる構造を選ぶ問題である。

断面の高さの決め方

提示画像は小脳テントのすぐ上の高さの断面で、中央に脳幹のうち中脳が、その周囲に前頭葉の底面(眼窩面)、両側の側頭葉内側部、後方の後頭葉下部が描出されている。中脳は横断面で「ミッキーマウスの顔」に例えられる形をしており、前方(腹側)左右に耳のように張り出した部分が大脳脚、その背側に黒質と被蓋、正中の小さな孔が中脳水道、最背側に四丘体(中脳蓋)が並ぶ。周囲を迂回槽・脚間槽といった脳槽(脳脊髄液腔)が取り囲むことも中脳レベルの目印である。

考え方

水平断の高さは、頭側から順に「大脳皮質の脳回(中心前回など)→側脳室・基底核・視床・内包のレベル→中脳(大脳脚)→橋(橋底部・第4脳室・中小脳脚)→延髄(錐体・オリーブ)」と下がっていく。中脳レベルの断面と判断できれば、これより頭側の構造(中心前回、内包後脚)も尾側の構造(橋底部、延髄錐体)も同じ断面には現れないことがわかる。 なお、選択肢はいずれも錐体路(皮質脊髄路)が通過する部位であり、中心前回→放線冠→内包後脚→大脳脚→橋底部→延髄錐体という錐体路の経路を頭側から順に並べたものになっている。

選択肢考察

  1. ×a.  中心前回

    誤り。中心前回は前頭葉後端、中心溝のすぐ前方にある脳回で、一次運動野にあたる。大脳半球の上外側面に位置し、水平断では側脳室体部より上の頭頂寄りの断面で中心溝とともに同定する。提示されている中脳レベルの断面よりはるかに頭側にあるため、この画像には含まれない。

  2. ×b.  内包後脚

    誤り。内包は側脳室前角・第3脳室が見える基底核レベルの断面で同定され、水平断では「く」の字形を示す。内包後脚は内側の視床と外側のレンズ核(被殻・淡蒼球)に挟まれた部分で、錐体路や感覚路が通る。中脳より頭側の断面にあり、本画像には含まれない。

  3. ○c.  大脳脚

    正しい。本画像は小脳テント直上の中脳レベルの断面で、中脳の腹側左右に張り出す大脳脚が描出されている。大脳脚には内包後脚から続く錐体路(皮質脊髄路)や皮質核路、皮質橋路が下行する。左右の大脳脚の間のくぼみが脚間窩で、ここから動眼神経が出る。大脳脚のすぐ背側には黒質がある。

  4. ×d.  橋底部

    誤り。橋は中脳より尾側(下方)に位置し、テントより下の後頭蓋窩の断面で見える。橋底部(腹側の膨らんだ部分)には錐体路と橋核が含まれ、背側には第4脳室があり、中小脳脚を介して後方の小脳と連続する。本画像は中脳レベルであるため橋底部は含まれない。

  5. ×e.  延髄錐体

    誤り。延髄は橋よりさらに尾側にあり、大孔に近い断面で描出される。この高さでは大脳半球の構造は見えず、延髄の背側に小脳半球(扁桃など)が広がる。延髄錐体は延髄腹側正中の両側にある高まりで錐体路が通り、その下端で大部分の線維が交叉する(錐体交叉)。本画像には含まれない。

中脳の横断面の構造(腹側→背側)

・大脳脚:錐体路(中央付近)、皮質核路、前頭橋路・頭頂側頭後頭橋路が通る。 ・黒質:ドパミン作動性ニューロン(緻密部)を含み、Parkinson病で変性する。MRIでは大脳脚の背側に位置する。 ・被蓋:赤核、内側毛帯、動眼神経核(上丘レベル)、滑車神経核(下丘レベル)、中脳水道周囲灰白質などを含む。 ・中脳水道:第3脳室と第4脳室をつなぐ。狭窄すると非交通性水頭症になる。 ・中脳蓋(四丘体):上丘(視覚反射)と下丘(聴覚路の中継)。

錐体路の経路

中心前回(一次運動野)→放線冠→内包後脚→大脳脚→橋底部→延髄錐体→錐体交叉→脊髄側索(外側皮質脊髄路)。

水平断MRIでの高さの目安

・側脳室体部より上:中心溝・中心前回・中心後回。 ・側脳室前角〜第3脳室:尾状核頭、被殻・淡蒼球、視床、内包(前脚・膝・後脚)。 ・テント直上:中脳(大脳脚・中脳水道・四丘体)、側頭葉内側(海馬・鉤)、迂回槽。 ・後頭蓋窩:橋(橋底部・第4脳室・中小脳脚)、さらに下で延髄(錐体・オリーブ)と小脳扁桃。

T1強調像

脳脊髄液は低信号(黒)、白質は灰白質よりやや高信号であり、解剖構造の把握に適する。

POINT

・中脳の水平断は「ミッキーマウス」型:前方の大脳脚、背側に黒質・被蓋、中脳水道、四丘体。 ・選択肢はすべて錐体路の通過部位。頭側から中心前回→内包後脚→大脳脚→橋底部→延髄錐体。 ・テント直上の断面=中脳レベル。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。