StudyMed医師国家試験

濃度は足し算できない―「量に直して、体積で割る」Na濃度計算の鉄則

第109回医師国家試験 B問題 第62問

国試問題にチャレンジ

第109回 B問題 第62問

Na濃度50 mEq/Lの液500 mLに10%NaCl液20 mLを追加したときのNa濃度を求めよ。  ただし,NaCl 1 gはNa 17 mEqに相当するものとし,追加後の体積は520 mLとする。  また,小数点以下の数値が得られた場合には,小数点以下第1位を四捨五入すること。 解答: ①②③ mEq/L

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は輸液を混ぜたときにNa濃度がいくつになるかを求める計算問題だ。ポイントは2つ。濃度ではなく「Naの量」で考えること、そして医療で使う「%」の意味を正しく理解していることだ。まず、どう解き始める?
医学生医学生
50 mEq/Lの液に高濃度の液を足すので、濃度の平均をとるような感じでしょうか。
ドクタードクター
そこが一番多い落とし穴なんだ。濃度同士は足したり単純に平均したりできない。混ぜる液それぞれに含まれるNaの量をmEqで求めて合計し、最後に混合後の体積で割る。これが鉄則だよ。
医学生医学生
なるほど。まずもとの液ですが、50 mEq/Lが500 mL、つまり0.5 Lなので、50×0.5で25 mEqですね。
ドクタードクター
正解。次は10%NaCl液20 mLだ。この「10%」はどういう意味かな。
医学生医学生
化学の授業だと溶液100 gあたり10 gの重量パーセントでしたが……。
ドクタードクター
医療の輸液では重量/容量パーセント、つまりw/v%で、液100 mLあたりに溶質が10 g溶けているという意味だ。化学の重量パーセントとは定義が違うから混同しないようにね。では20 mLに含まれるNaClは?
医学生医学生
100 mLで10 gなので、20 mLなら2 gです。NaCl 1 gがNa 17 mEqなので、2×17で34 mEqですね。
ドクタードクター
その通り。あとは合計して体積で割るだけだ。
医学生医学生
25+34で59 mEq、体積は520 mLなので0.52 Lで割って、約113.46 mEq/L。四捨五入して113 mEq/Lです。
ドクタードクター
正解だ。体積をリットルに直すのを忘れないことも大切だね。検算の目安も持っておこう。34 mEqものNaを加えたから50 mEq/Lからは大きく上がるけれど、生理食塩水の約154 mEq/Lよりは低い。答えがその範囲に収まっていれば、桁の誤りはないと判断できる。
医学生医学生
そもそも、NaCl 1 gが17 mEqになるのはなぜなんでしょう。生化学で習った気はするんですが。
ドクタードクター
NaClの分子量が約58.5だからだ。1 gは1000 mg÷58.5で約17.1 mmol。Na⁺は1価イオンなので1 mmolが1 mEqになる。だから食塩1 gにNa約17 mEqが含まれる。逆に、Na 17 mEqは食塩約1 gに相当するので、尿中Na排泄量から食塩摂取量を推定するときにも使える換算だよ。
医学生医学生
腎臓内科の実習で、蓄尿のNaから食塩摂取量を計算していたのを思い出しました。
ドクタードクター
まさにそれだ。代表的な輸液のNa濃度も同じ考え方で導ける。生理食塩水は0.9%だから1 Lあたり9 gで、9×17.1で約154 mEq/L。10%NaCl注射液は約1,710 mEq/Lとかなり高濃度で、ふつうは他の輸液に添加して使う。3%高張食塩水は約513 mEq/Lで、重症の症候性低Na血症の治療などに用いられる。
医学生医学生
10%NaClは添加用なんですね。今回の問題も、まさに輸液に足して濃度を調整する場面ということですか。
ドクタードクター
そう。低Na血症の補正などでは、こうした計算で輸液のNa濃度を調整することがある。ただし臨床で特に注意したいのは補正速度だ。血清Na濃度を急速に上げると浸透圧性脱髄症候群を起こすおそれがある。一般には24時間で8〜10 mEq/L以内を目安に、こまめに採血しながら補正する。
医学生医学生
計算が合っていても、使い方を間違えると患者さんに害が出るんですね。CBTの勉強で覚えた数字が、急に重みを持って感じられます。
ドクタードクター
その感覚が大事だよ。濃度計算は国試では一問だけど、病棟では毎日のように必要になる。「量に直して合計し、最後の体積で割る」という手順を、しっかり身につけておこう。

まとめ

2種類の液を混ぜたときの濃度は、濃度同士を足すのではなく、それぞれの溶質量(mEq)を求めて合計し、混合後の体積で割って求めます。本問では、もとの液のNaが50 mEq/L×0.5 L=25 mEq、10%NaCl液20 mLにはw/v%の定義からNaCl 2 g、すなわちNa 34 mEqが含まれ、合計59 mEqを0.52 Lで割って約113 mEq/Lとなります。NaCl 1 g≒Na 17 mEqという換算は分子量58.5から導かれ、生理食塩水が約154 mEq/Lであることの理解や食塩摂取量の推定にも役立ちます。低Na血症の補正では浸透圧性脱髄症候群を避けるため補正速度にも注意が必要であり、正確な濃度計算は安全な輸液管理の土台となります。

解答・解説

正解は113 mEq/Lです

考え方

濃度(mEq/L)は「溶質の量(mEq)÷溶液の体積(L)」で求まる。2種類の液を混ぜる問題では、濃度同士を足したり平均したりせず、それぞれに含まれるNaの量(mEq)をいったん求めて合計し、最後に混合後の体積で割る。

手順1:もとの液に含まれるNa量

50 mEq/Lの液が500 mL(=0.5 L)あるので、 50 mEq/L × 0.5 L = 25 mEq

手順2:10%NaCl液20 mLに含まれるNa量

医療で用いる「10%」は重量/容量パーセント(w/v%)であり、液100 mLあたりに溶質が10 g溶けていることを意味する。したがって20 mL中のNaClは、 20 mL × 10 g/100 mL = 2.0 g 問題文の条件より、NaCl 1 gはNa 17 mEqに相当するので、 2.0 g × 17 mEq/g = 34 mEq

手順3:混合後のNa総量

25 mEq + 34 mEq = 59 mEq

手順4:混合後の濃度

体積は520 mL(=0.52 L)と指定されているので、 59 mEq ÷ 0.52 L ≒ 113.46 mEq/L 小数点以下第1位を四捨五入して、113 mEq/Lとなる。

検算の目安

34 mEqのNaを加えたことで、濃度は50 mEq/Lから大きく上昇するが、なお生理食塩水(約154 mEq/L)よりは低い。得られた113 mEq/Lはこの範囲に収まっており、桁の誤りがないことを確認できる。

NaCl 1 gが約17 mEqである理由

NaClの分子量は約58.5である。1 gのNaClは 1000 mg ÷ 58.5 ≒ 17.1 mmolであり、Na+は1価イオンなので 1 mmol = 1 mEq となる。よって1 gのNaClには約17 mEqのNa(および同量のCl)が含まれる。逆に言えば、Na 17 mEqは食塩約1 gに相当し、食事中の食塩摂取量や尿中Na排泄量の換算にも使われる。

w/v%と重量パーセントの違い

輸液の濃度表示の「%」はw/v%(g/100 mL)である。化学で扱う重量パーセント(溶液100 gあたりの溶質g)とは定義が異なるため、混同しないようにする。

代表的な輸液・製剤のNa濃度

・生理食塩水(0.9%NaCl):0.9 g/100 mL → 1 Lあたり9 g、9 × 17.1 ≒ 154 mEq/L。500 mLバッグには4.5 gのNaClが含まれる。 ・10%NaCl注射液:10 g/100 mL → 約1,710 mEq/L。高濃度であり、補正用に他の輸液へ添加して用いる。 ・3%高張食塩水:約513 mEq/L。重症の症候性低Na血症の治療などに用いられる。

臨床での意義

低Na血症の補正などでは、輸液にNaClを追加して濃度を調整することがある。急速な血清Na濃度の上昇は浸透圧性脱髄症候群(ODS)の原因となるため、補正速度(一般に24時間で8〜10 mEq/L以内が目安)にも注意が必要である。

POINT

・濃度計算は「総量(mEq)を求めて合計 → 最終体積で割る」が基本。 ・輸液の%はw/v%(g/100 mL)。10%NaCl液20 mLにはNaCl 2 gが含まれる。 ・NaCl 1 g ≒ Na 17 mEq(分子量58.5から導かれる)。 ・生理食塩水(0.9%)のNa濃度は約154 mEq/L。 ・本問:25 mEq + 34 mEq = 59 mEq、59 ÷ 0.52 ≒ 113 mEq/L。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。