StudyMed医師国家試験

「4の字」で痛むのはどこか―Patrickテストで股関節痛を見抜く

第108回医師国家試験 I問題 第26問

国試問題にチャレンジ

第108回 I問題 第26問

疼痛誘発手技を別に示す。  診断する病変部位はどれか。

第108回 I問題 第26問の問題画像
  1. a.腰椎
  2. b.股関節
  3. c.膝関節
  4. d.足関節
  5. e.恥骨結合

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は、図の疼痛誘発手技がどの部位の病変を調べるものかを答える問題だ。ポイントは、この肢位でどの関節にどんな方向のストレスがかかっているかを考えること。まず、患者さんの脚がどんな形になっているか説明してみて。
医学生医学生
仰向けで片脚の膝を曲げて、その足首を反対側の膝の上に載せています。脚が数字の「4」のような形ですね。
ドクタードクター
そう。そして検者は、曲げた側の膝をベッドに向かって押し下げながら、反対側の骨盤、上前腸骨棘のあたりを押さえて固定している。この手技の名前は知っているかな。
医学生医学生
OSCEの整形外科の診察で練習した気がします。Patrickテストでしょうか。
ドクタードクター
正解。英語圏では屈曲、外転、外旋の頭文字をとってFABERテストとも呼ばれる。名前のとおり、股関節を屈曲・外転・外旋させた状態で膝を押し下げることで、股関節にストレスをかける手技なんだ。
医学生医学生
足首が膝に載っているので、足関節や膝関節を見ているのかと最初は思いました。
ドクタードクター
形に引っぱられるとそう見えるよね。でも足は膝の上に置かれているだけで、足関節には負荷がかからない。膝も曲げたまま保たれているだけだ。力が集中するのは、脚の付け根である股関節なんだよ。股関節に病変があれば、鼠径部を中心に痛みが誘発されて陽性になる。
医学生医学生
股関節の病変というと、変形性股関節症や大腿骨頭壊死症などですね。
ドクタードクター
そう。股関節炎なども含めて、股関節そのものの病変で陽性になる。では、ほかの選択肢との関係も見ておこう。腰椎の病変を調べたいときはどうする?
医学生医学生
SLRテストです。膝を伸ばしたまま脚を挙げて、坐骨神経を引っぱって下肢痛が出るかを見ます。
ドクタードクター
その通り。SLRテストはL5・S1神経根、腹臥位で膝を曲げて股関節を伸展させる大腿神経伸展テスト、FNSテストはL2〜L4神経根を評価する。Patrickテストはむしろ、腰椎由来の痛みと股関節由来の痛みを区別するのに使うんだ。
医学生医学生
区別が必要なのは、股関節の痛みが腰や脚の痛みと紛らわしいからですか。
ドクタードクター
まさにそこ。股関節は体の深いところにあって、痛みが殿部や大腿前面、さらには膝にまで放散する。だから坐骨神経痛のように見えたり、膝が痛いと訴えたりすることがある。整形外科の外来では「膝が痛い」という高齢者を診たら、股関節も必ず診察しなさいと言われるくらいだ。
医学生医学生
膝関節を調べる手技としては、半月板損傷のMcMurrayテストや、前十字靱帯損傷のLachmanテストがありました。
ドクタードクター
よく覚えているね。後十字靱帯なら後方引き出しテストだ。足関節なら前距腓靱帯損傷に対する前方引き出しテスト、アキレス腱断裂ならふくらはぎをつまんでも足が底屈しないThompsonテスト。部位ごとに代表的な手技をセットで覚えておくと整理しやすい。
医学生医学生
恥骨結合はどうでしょう。骨盤を押さえているので、関係がありそうにも見えます。
ドクタードクター
恥骨結合炎などは、恥骨結合部の圧痛や内転筋の抵抗運動での痛みで評価するのが一般的で、Patrickテストの主な対象ではない。ただ、骨盤にもストレスはかかるので、仙腸関節の病変では殿部や仙腸関節部に痛みが出ることがある。痛む場所が鼠径部なら股関節、殿部なら仙腸関節を考える、と覚えておこう。
医学生医学生
同じ手技でも、どこが痛むかで解釈が変わるんですね。
ドクタードクター
その視点が大切だ。発展として、ほかの股関節の診察所見も押さえておこう。患肢で片脚立ちすると中殿筋の筋力低下で反対側の骨盤が下がるTrendelenburg徴候、健側の股関節を深く曲げると屈曲拘縮のある患側の大腿が浮き上がるThomasテスト、両膝を立てると患側の膝が低いAllis徴候などがある。股関節の内旋制限も、股関節病変を示す重要な所見だ。
医学生医学生
腰椎の病気と股関節の病気が両方ある人もいそうです。
ドクタードクター
実際によくあるよ。hip-spine syndromeと呼ばれていて、どちらが痛みの主因なのかを見極めないと、治療方針を誤ることになる。神経学的所見があれば腰椎、Patrickテスト陽性や可動域制限があれば股関節、と所見を組み合わせて判断しよう。

まとめ

仰臥位で一側の股関節を屈曲・外転・外旋させて足部を反対側の膝に載せる「4の字」肢位をとり、膝を押し下げながら反対側の骨盤を固定する手技はPatrickテスト(FABERテスト)で、鼠径部痛が誘発されれば変形性股関節症や大腿骨頭壊死症などの股関節病変を疑います。殿部・仙腸関節部が痛む場合は仙腸関節病変も考えられます。腰椎神経根の評価にはSLRテスト(L5・S1)やFNSテスト(L2〜L4)、膝ではMcMurrayテストやLachmanテスト、足関節では前方引き出しテストやThompsonテストを用いるなど、部位ごとの代表的な手技を対応づけて覚えることが重要です。股関節痛は殿部・大腿・膝へ放散して腰椎疾患や膝疾患と紛らわしく、両者が合併することもあるため、身体診察で痛みの由来を見極める力は日常診療で欠かせません。

解答・解説

正解はbです

図は、仰臥位の患者の一側の下肢を股関節で屈曲・外転・外旋させ、その足部(外果付近)を反対側の膝の上に載せて「4の字」の肢位をとらせ、検者が屈曲した側の膝を床(ベッド)方向へ押し下げると同時に反対側の骨盤(上前腸骨棘)を固定している手技である。これはPatrick(パトリック)テストであり、英語圏では屈曲 Flexion・外転 ABduction・外旋 External Rotation の頭文字をとってFABERテストとも呼ばれる。 この肢位で股関節に屈曲・外転・外旋のストレスが加わり、股関節に病変があれば鼠径部を中心とした疼痛が誘発される(陽性)。股関節は体の深部にあり、股関節痛は殿部・大腿前面・膝にまで放散するため、腰椎疾患(腰部脊柱管狭窄症や腰椎椎間板ヘルニアによる坐骨神経痛など)との区別が難しいことが多い。このため、股関節に選択的にストレスをかける本手技は、痛みの由来が股関節にあるかどうかを見分けるうえで有用である。 したがって、本手技で診断する病変部位は股関節である。

選択肢考察

  1. ×a.  腰椎

    腰椎疾患、特に神経根症状の評価には、下肢伸展挙上テスト(SLRテスト:仰臥位で膝を伸ばしたまま下肢を挙上し、坐骨神経を伸張させて下肢痛を誘発する。L5・S1神経根)や大腿神経伸展テスト(FNSテスト:腹臥位で膝を屈曲させ股関節を伸展し、大腿神経を伸張する。L2〜L4神経根)が用いられる。Patrickテストは腰椎ではなく股関節にストレスをかける手技であり、むしろ腰椎疾患による痛みとの鑑別に使われる。

  2. ○b.  股関節

    Patrickテストは股関節を屈曲・外転・外旋させた「4の字」肢位で膝を押し下げ、股関節に負荷をかける手技である。変形性股関節症、大腿骨頭壊死症、股関節炎などの股関節病変があると鼠径部痛が誘発され陽性となる。よって本手技で診断する病変部位は股関節である。

  3. ×c.  膝関節

    図では膝は屈曲位に保たれ、膝関節自体には大きなストレスはかからない。膝関節の評価には、半月板損傷に対するMcMurrayテスト、前十字靱帯損傷に対するLachmanテストや前方引き出しテスト、後十字靱帯損傷に対する後方引き出しテストなどが用いられる。なお、股関節疾患の痛みが膝に放散する(関連痛)ことがあり、膝痛を訴える患者でも股関節の診察が必要な場合がある。

  4. ×d.  足関節

    足部は反対側の膝の上に置かれているだけで、足関節に負荷はかからない。足関節の評価には、前距腓靱帯損傷に対する前方引き出しテストや、アキレス腱断裂に対するThompsonテスト(下腿三頭筋をつまんでも足関節が底屈しなければ陽性)などが用いられる。

  5. ×e.  恥骨結合

    恥骨結合炎などでは恥骨結合部の圧痛や内転筋の抵抗運動による痛みで評価するのが一般的であり、Patrickテストの主たる診断対象ではない。なお、Patrickテストでは骨盤にもストレスがかかるため仙腸関節病変でも殿部・仙腸関節部の痛みが誘発されることがあるが、選択肢の中で本手技が診断する部位として最も適切なのは股関節である。

Patrickテスト(FABERテスト)の手順

1. 患者を仰臥位にする。 2. 検査側の股関節と膝関節を屈曲し、股関節を外転・外旋させて、外果を反対側の膝の上(膝蓋骨近位)に置き「4の字」の形をつくる。 3. 検者は反対側の上前腸骨棘を押さえて骨盤を固定し、検査側の膝を床方向へ押し下げる。 4. 鼠径部に痛みが出れば股関節病変を疑う。仙腸関節部(殿部)に痛みが出る場合は仙腸関節病変を考える。

股関節疾患の主な診察所見

・Patrickテスト陽性 ・Trendelenburg徴候:患肢で片脚起立すると、中殿筋の筋力低下のため反対側の骨盤が下がる。 ・Thomasテスト:仰臥位で健側の股関節を深く屈曲させると、患側の股関節屈曲拘縮があれば患側の大腿がベッドから浮き上がる。 ・Allis徴候:両膝を立てると患側の膝の高さが低い(先天性股関節脱臼などで大腿骨の短縮がある場合)。 ・Scarpa三角(鼠径部)の圧痛

腰椎疾患との鑑別

股関節痛は殿部・大腿・膝に放散しやすく、腰部脊柱管狭窄症や腰椎椎間板ヘルニアによる下肢痛と紛らわしい。SLRテストやFNSテスト、下肢の感覚障害・筋力低下・腱反射異常など神経学的所見があれば腰椎由来を、Patrickテスト陽性や股関節可動域制限(特に内旋制限)があれば股関節由来を考える。両者が合併することもある(hip-spine syndrome)。

POINT

・Patrickテスト=股関節の屈曲・外転・外旋(FABER)で「4の字」肢位をとらせ、膝を押し下げる手技。 ・陽性(鼠径部痛)なら股関節病変を疑う。仙腸関節病変でも陽性になりうる。 ・腰椎神経根の評価はSLRテスト(L5・S1)、FNSテスト(L2〜L4)であり、区別して覚える。 ・股関節痛は膝や大腿に放散するため、膝痛や坐骨神経痛様の訴えでも股関節を診察する。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。