StudyMed医師国家試験

「動かない」をどう書くか―尖足とマイナス表記で読み解く関節可動域

第116回医師国家試験 C問題 第14問

国試問題にチャレンジ

第116回 C問題 第14問

尖足を認め,足関節底屈20度の位置から他動的に背屈させることができない。  関節可動域の足関節背屈角度の記載として正しいのはどれか。

  1. a.-40度
  2. b.-20度
  3. c.0度
  4. d.20度
  5. e.40度

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は、関節可動域、いわゆるROMの記載方法を問う問題だ。考えるべきことは2つ。どこを0度とするのか、そして0度まで届かない場合をどう表すのか。このルールを押さえれば迷わず答えられるよ。
医学生医学生
尖足で底屈20度から動かないなら、可動域は「0度」、つまり動く範囲がゼロと書けばいいような気がします。
ドクタードクター
直感的にはそう考えたくなるよね。でもROMの記載は「動く幅」を書くのではなく、「基本肢位を0度として、どの位置まで動くか」を書くルールなんだ。これを中立位0度法という。
医学生医学生
足関節の基本肢位は、足部が下腿に対して直角になった位置でしたか。
ドクタードクター
そう。立位で足の裏が床についた中間位が0度だ。そこから足の甲の側へ動くのが背屈、足の裏の側へ動くのが底屈。成人の参考可動域は背屈が0〜20度、底屈が0〜45度だよ。
医学生医学生
今回の患者さんは、底屈20度の位置から背屈方向にまったく動かせない。ということは、基本肢位にすら戻せないんですね。
ドクタードクター
その通り。背屈方向に動かせる限界が、0度よりもさらに底屈側へ20度の位置にとどまっている。このように基本肢位に届かない場合は、反対方向にどれだけ離れているかをマイナスの符号を付けて表すんだ。だから足関節背屈は-20度と記載する。
医学生医学生
なるほど、0度だと「直角までは背屈できるけど、それ以上はできない」という意味になってしまうわけですね。
ドクタードクター
よく整理できたね。0度は基本肢位までは戻せる状態を指すから、今回とは合わない。では-40度はどういう状態だろう。
医学生医学生
底屈40度の位置から背屈できない、という意味になりますね。角度が倍ずれています。
ドクタードクター
正解。逆にプラスの20度は基本肢位からさらに足背側へ20度動かせる、つまり参考可動域の上限でほぼ正常な状態だ。40度に至っては正常範囲を大きく超えている。尖足で背屈できない今回とはどちらもかけ離れているよ。
医学生医学生
リハビリテーション科の実習で、ゴニオメーターを使って測定したことがあります。基本軸と移動軸を合わせるのが意外と難しかったです。
ドクタードクター
足関節では、基本軸が腓骨への垂直線、移動軸が第5中足骨だ。角度は通常5度刻みで記載する。それから大事なのは、ROMは原則として他動運動で測ること。自動運動で測ったときはその旨を明記する。今回の問題文に「他動的に」とあるのもそのためなんだ。
医学生医学生
マイナス表記は足関節以外でも使うんですか。
ドクタードクター
もちろん。たとえば膝に屈曲拘縮があって、伸ばそうとしても屈曲20度の位置までしか伸びないなら「伸展-20度」と書く。考え方はまったく同じだよ。
医学生医学生
測定のときに膝を曲げるかどうかで、足関節の背屈角度が変わると聞いたことがあります。
ドクタードクター
いいところに気づいたね。腓腹筋は膝と足関節をまたぐ二関節筋だから、膝を曲げると緊張がゆるんで背屈角度が大きくなる。下腿三頭筋の短縮を評価したいときは、膝伸展位と屈曲位の両方で測ると原因の見当がつけやすい。
医学生医学生
そもそも尖足はどういう患者さんに起こりやすいのでしょう。
ドクタードクター
脳性麻痺や脳卒中後の痙縮、先天性内反足のほか、長期臥床も重要な原因だ。寝たきりで布団の重みなどにより足が底屈位に保たれ続けると、拘縮して尖足になる。一度できると歩行や立ち上がりの大きな妨げになるから、ポジショニングや装具、早期からの可動域訓練で予防することが何より大切なんだ。
医学生医学生
病棟で寝たきりの患者さんの足元にクッションが置いてあったのは、尖足予防のためだったんですね。
ドクタードクター
そういうこと。ROMの数値は、リハビリの計画や効果判定、多職種での情報共有に使う共通言語だ。マイナスの意味を正しく理解して、正確に記載・読解できるようにしておこう。

まとめ

関節可動域は各関節の基本肢位を0度とする中立位0度法で表し、足関節では足部が下腿に対して直角となる位置が0度、参考可動域は背屈0〜20度、底屈0〜45度です。拘縮などで基本肢位まで動かない場合は、反対方向への隔たりをマイナスの符号で表すため、尖足で底屈20度の位置から背屈できない状態は「背屈-20度」と記載します。「背屈0度」は基本肢位までは動かせる状態、「背屈20度」はほぼ正常な状態を意味する点を区別しておきましょう。ROMは原則として他動運動で測定し、足関節では膝の屈曲・伸展で二関節筋である腓腹筋の影響が変わることにも注意が必要です。長期臥床による尖足はポジショニングや早期の可動域訓練で予防でき、正確なROM記載はリハビリテーションの計画と多職種連携の基盤となります。

解答・解説

正解はbです

関節可動域(range of motion:ROM)の測定と記載では、すべての関節について「基本肢位」を0度とし、そこからどの方向にどれだけ動くかを角度で表す。足関節の基本肢位は、下腿の長軸に対して足部が直角になった位置(立位で足底が床についた中間位)であり、これを0度とする。足の甲(足背)側へ動く運動が背屈、足の裏(足底)側へ動く運動が底屈である。 関節が拘縮などで基本肢位まで動かず、背屈の限界が0度に届かない場合には、その限界の位置が基本肢位から反対方向(ここでは底屈方向)にどれだけ離れているかを、マイナスの符号を付けて表す。本問の患者は尖足(足関節が底屈位に固定された変形)があり、底屈20度の位置から他動的に背屈させることができない。つまり、背屈方向に動かせる最大の位置は「0度より20度底屈側」であり、これを背屈の可動域として記載すると「背屈-20度」となる。 なお、ROMは原則として他動運動で測定するため、本問のように「他動的に」動かせる範囲で判断する。

選択肢考察

  1. ×a.  -40度

    背屈-40度は、背屈方向の限界が基本肢位から底屈側に40度の位置、すなわち底屈40度の位置から背屈できない状態を表す。本問の患者は底屈20度から背屈できないのであり、角度が合わない。

  2. ○b.  -20度

    底屈20度の位置から背屈方向へ全く動かせないので、背屈の最大位置は基本肢位(0度)から底屈側に20度の位置となる。基本肢位に到達しない側の可動域はマイナスで表すため、足関節背屈は-20度と記載する。

  3. ×c.  0度

    背屈0度は、基本肢位(足部が下腿に対して直角の位置)までは背屈できるが、それ以上は背屈できない状態を表す。本問では基本肢位まで戻すこともできないため誤りである。

  4. ×d.  20度

    背屈20度は、基本肢位からさらに足背側へ20度まで他動的に背屈できる状態を表し、成人の足関節背屈の参考可動域(0~20度)の上限にあたるほぼ正常な値である。尖足があり背屈できない本例とは合わない。

  5. ×e.  40度

    背屈40度は、基本肢位から足背側へ40度まで背屈できることを意味し、参考可動域を大きく上回る。本問の状態とは全く異なる。

関節可動域表示の原則(日本整形外科学会・日本リハビリテーション医学会による)

・各関節の基本肢位を0度として表示する(中立位0度法)。 ・原則として他動運動で測定し、自動運動で測定した場合はその旨を明記する。 ・角度は通常5度刻みで記載する。 ・基本肢位を越えて動かない場合(反対方向に固定されている場合)は、マイナス(-)を付けて表す。例:膝関節に屈曲拘縮があり伸展が屈曲20度の位置までしかできなければ「伸展-20度」と表す。

足関節の測定

・基本軸:腓骨への垂直線 移動軸:第5中足骨 ・参考可動域:背屈 0~20度、底屈 0~45度 ・膝関節を屈曲位で測定すると、腓腹筋(二関節筋)の緊張がとれて背屈角度が大きくなる。下腿三頭筋の短縮の評価には膝伸展位・屈曲位の両方で測定すると有用である。

尖足

足関節が底屈位をとり背屈が制限された状態。脳性麻痺や脳卒中後の痙縮、長期臥床で布団の重みなどにより足関節が底屈位に保たれることによる拘縮、先天性内反足などでみられる。長期臥床患者ではポジショニングや装具、早期からの関節可動域訓練で予防することが重要である。

POINT

・関節可動域は基本肢位を0度として表す ・基本肢位まで動かない場合は、マイナスを付けて表す ・底屈20度から背屈できない=足関節背屈-20度 ・足関節の参考可動域:背屈0~20度、底屈0~45度 ・ROMは原則として他動運動で測定する

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。