StudyMed医師国家試験

3年間変わらない「締めつけ頭痛」―危険信号を除外して見抜く緊張型頭痛

第108回医師国家試験 H問題 第34問(連問)

国試問題にチャレンジ

第108回 H問題 第34問

連問の共通文

 42歳の女性。頭痛を主訴に来院した。 現病歴:3年前から月1,2回の頭痛を自覚していた。頭痛は両側の後頭部を中心とした持続性の鈍痛で,肩こりを伴っている。夕方になると頭痛が悪化するが,生活に支障をきたすほどの痛みではない。家事などで体を動かしている時のほうが多少痛みは和らぐ感じがする。悪心はない。頭痛に大きな変化はないが,昨日知人が脳梗塞で入院したという話を聞き,心配になって受診した。 既往歴:スギ花粉症。 生活歴:事務職。喫煙歴はない。飲酒は機会飲酒。 家族歴:父親が56歳時にくも膜下出血で死亡。母親が高血圧症で治療中。

現症:意識は清明。身長158 cm,体重52 kg。体温36.3℃。脈拍76/分,整。血圧118/72 mmHg。神経学的所見に異常を認めない。  現時点で最も考えられるのはどれか。

  1. a.片頭痛
  2. b.群発頭痛
  3. c.緊張型頭痛
  4. d.三叉神経痛
  5. e.側頭動脈炎

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は慢性の頭痛から病型を絞り込む問題だ。頭痛診療の手順は2段階。まず危険な原因が隠れた二次性頭痛ではないかを確認し、そのうえで一次性頭痛のどれに当たるかを、部位・性状・体動との関係・随伴症状から見極める。まずは1段階目、この頭痛に危ないサインはあるかな。
医学生医学生
お父さんがくも膜下出血で亡くなっているので、そこが少し気になりました。
ドクタードクター
家族歴は大事な情報だね。ただ、今回の頭痛そのものに目を向けてほしい。二次性頭痛を疑う危険信号には、突然発症の激しい頭痛、今まで経験したことのない頭痛、頻度や強さが増していく頭痛、50歳以降の初発、発熱や項部硬直、神経症状などがある。この人はどうだろう。
医学生医学生
3年間同じパターンで変化がなくて、発熱もなく、神経学的所見も正常です。危険信号はどれも当てはまらないので、一次性頭痛と考えてよさそうです。
ドクタードクター
その通り。では2段階目。一次性頭痛の代表である片頭痛との違いが鍵になる。片頭痛の特徴を挙げられるかな。
医学生医学生
神経内科の講義で、片側性、拍動性、動くと悪化する、悪心や光・音過敏を伴う、と習いました。若い女性に多いので、最初は片頭痛かなと思ってしまいました。
ドクタードクター
性別と年齢だけなら迷うのも無理はない。でも中身を照らし合わせると、両側の後頭部で、ズキズキではなく持続性の鈍痛、体を動かすとむしろ和らぎ、悪心もない。片頭痛の発作中は動くと痛みが強まるから、じっと横になっている人が多いんだ。正反対だね。
医学生医学生
両側性で非拍動性、軽度から中等度で、動いても悪化しなくて悪心もない……ということは緊張型頭痛ですね。
ドクタードクター
正解。国際頭痛分類第3版の緊張型頭痛の基準は、両側性、圧迫感または締めつけ感、軽度〜中等度、日常動作で増悪しない、の4項目のうち2項目以上で、悪心・嘔吐がないこと。この人は4項目すべてを満たしている。さらに肩こりの合併、事務職で夕方に悪化する経過も、頭頸部や肩の筋緊張、ストレスとの関連が指摘される緊張型頭痛らしい所見だ。
医学生医学生
デスクワークで一日同じ姿勢だと夕方につらくなる、というのは納得です。群発頭痛はどう違いますか。
ドクタードクター
群発頭痛は20〜40歳代の男性に多く、片側の目の奥がえぐられるような激痛が15〜180分続く。同じ側の流涙や結膜充血、鼻漏、縮瞳・眼瞼下垂などの自律神経症状を伴い、痛みで落ち着きなく動き回るのが特徴だ。夜間の決まった時刻に起こりやすく、群発期と寛解期を繰り返し、飲酒が誘因になる。今回の軽い両側の鈍痛とは全く違うね。
医学生医学生
三叉神経痛は、CBTの勉強で「洗顔や歯みがきで顔に電気が走る」と覚えました。
ドクタードクター
いい覚え方だ。片側の顔面、三叉神経の支配領域に一瞬の電撃痛が走り、トリガーゾーンへの刺激で誘発される。多くは血管による神経根の圧迫が原因で、治療の第一選択はカルバマゼピン。顔面の痛みであって、後頭部の持続痛ではないから外れる。
医学生医学生
側頭動脈炎は高齢者の病気というイメージです。
ドクタードクター
そう、主に50歳以上に発症する巨細胞性動脈炎だ。新たに出たこめかみの頭痛、側頭動脈の怒張や圧痛、食事中に顎が疲れる顎跛行、発熱や赤沈亢進が特徴で、リウマチ性多発筋痛症の合併も多い。放置すると失明しうるので、疑ったら速やかにステロイドを始める。42歳で3年来変わらない頭痛、発熱なしなら合致しないね。
医学生医学生
危険信号で二次性を除外して、次に片頭痛との対比で緊張型頭痛を拾う、という流れで整理できました。
ドクタードクター
完璧だ。治療にも触れておこう。頭痛時はアセトアミノフェンやNSAIDsを使い、ストレッチや姿勢の改善といった生活指導も有効だ。慢性化した例では三環系抗うつ薬のアミトリプチリンが予防に用いられる。
医学生医学生
鎮痛薬をたくさん飲めばいいわけではないんですよね。
ドクタードクター
その通り。鎮痛薬を頻回に使い続けると、薬剤の使用過多による頭痛、いわゆる薬物乱用頭痛を起こすことがある。外来では服薬頻度を必ず確認しよう。それから、緊張型頭痛と診断した患者さんでも、頭痛の性状が変わったり、突然の激痛や神経症状が出たりしたら、改めて二次性頭痛を疑う姿勢を忘れないこと。

まとめ

頭痛の診療では、まず突然発症、増悪傾向、発熱、神経症状などの危険信号から二次性頭痛を除外し、そのうえで一次性頭痛の病型を見極めます。両側性で締めつけ感のある非拍動性の痛み、軽度〜中等度、日常動作で悪化せず悪心を伴わない頭痛は緊張型頭痛の典型で、肩こりやデスクワークでの夕方の悪化もその特徴を裏づけます。片頭痛は片側性・拍動性・体動で増悪・悪心を伴い、群発頭痛は若年男性の片側眼窩部の激痛と自律神経症状、三叉神経痛は顔面の短い電撃痛、側頭動脈炎は高齢者の側頭動脈異常と炎症反応が手がかりです。治療はアセトアミノフェンやNSAIDsと生活指導が中心で、鎮痛薬の使いすぎによる薬物乱用頭痛に注意します。最も頻度の高い頭痛を確実に診断しつつ危険な頭痛を見逃さない姿勢は、どの診療科でも求められる基本的な臨床能力です。

解答・解説

正解はcです

所見の整理

・42歳の女性。3年前から月1〜2回、同じパターンの頭痛を繰り返しており、最近も頭痛の性質に大きな変化はない。 ・部位: 両側の後頭部が中心。 ・性状: 持続性の鈍痛(拍動性ではない)。肩こりを伴う。 ・程度: 生活に支障をきたさない程度(軽度〜中等度)。 ・経過・増悪因子: 夕方に悪化する。家事など体を動かしていると多少和らぐ(日常的な動作で悪化しない)。 ・随伴症状: 悪心はない。 ・現症: バイタルサインに異常なく、血圧も正常(118/72 mmHg)、発熱もない。神経学的所見に異常を認めない。

一次性頭痛か二次性頭痛か

頭痛の診療では、まずくも膜下出血、脳腫瘍、髄膜炎などの頭蓋内疾患による二次性頭痛(原因疾患のある頭痛)を見逃さないことが重要である。二次性頭痛を疑う危険信号(レッドフラッグ)には、突然発症の激しい頭痛、これまでに経験したことのない頭痛、頻度や程度が増悪していく頭痛、50歳以降に初めて起きた頭痛、発熱や項部硬直を伴う頭痛、神経脱落症状を伴う頭痛などがある。本症例は3年間同じ性状の頭痛が変わらず続いており、発熱や神経学的異常もなく、これらの危険信号を満たさない。したがって、一次性頭痛(機能性頭痛)と考えるのが妥当である。

一次性頭痛の鑑別

両側性で、締めつけられるような・圧迫されるような非拍動性の痛み、軽度〜中等度で日常動作により増悪しない、悪心を伴わない、という組み合わせは緊張型頭痛の特徴にそのまま一致する。肩こりの合併や、デスクワーク(事務職)で夕方にかけて悪化する経過も、頭頸部・肩の筋緊張や精神的ストレスとの関連が指摘される緊張型頭痛らしい所見である。一方、片頭痛で典型的な片側性・拍動性・体動での増悪・悪心の随伴はいずれもなく、群発頭痛の眼窩周囲の激痛と自律神経症状、三叉神経痛の顔面の電撃痛、側頭動脈炎の高齢発症・側頭動脈の異常もみられない。以上から、現時点で最も考えられるのは緊張型頭痛である。

選択肢考察

  1. ×a.  片頭痛

    片頭痛は若年〜中年の女性に多い一次性頭痛で、発作は4〜72時間持続する。片側性、拍動性、中等度〜重度、階段昇降などの日常動作で悪化する、の4項目のうち2項目以上を満たし、さらに悪心・嘔吐、または光過敏と音過敏を伴うのが特徴である。発作中は体を動かすと痛みが強まるため、じっと安静にしていることが多い。本症例は両側性で非拍動性の鈍痛であり、体を動かすとむしろ和らぎ、悪心も伴わないため、片頭痛には合致しない。

  2. ×b.  群発頭痛

    群発頭痛は20〜40歳代の男性に多く、片側の眼窩部から側頭部にかけての、えぐられるような非常に激しい痛みが15〜180分続く。同じ側の流涙、結膜充血、鼻閉・鼻漏、眼瞼下垂、縮瞳などの自律神経症状を伴い、痛みのため落ち着きなく動き回ることが多い。発作は夜間から明け方の決まった時刻に起こりやすく、数週〜数か月にわたって連日発作が続く群発期と、発作のない寛解期を繰り返す。飲酒が発作の誘因となる。本症例の両側後頭部の軽い鈍痛は、これらの特徴と全く異なる。

  3. ○c.  緊張型頭痛

    緊張型頭痛は一次性頭痛の中で最も頻度が高い。国際頭痛分類第3版(ICHD-3)では、両側性、圧迫感または締めつけ感(非拍動性)、軽度〜中等度、日常的な動作で増悪しない、の4項目のうち2項目以上を満たし、悪心・嘔吐を伴わず、光過敏・音過敏はあってもどちらか一方のみ、とされる。本症例は両側後頭部の持続性鈍痛で、生活に支障のない程度であり、体を動かすとむしろ和らぎ、悪心もないため、4項目すべてと随伴症状の条件を満たす。肩こりの合併、事務職で夕方に悪化する経過も、頭頸部・肩周囲の筋緊張やストレスが関与するとされる緊張型頭痛によくみられる所見である。神経学的所見に異常がないことも矛盾しない。

  4. ×d.  三叉神経痛

    三叉神経痛は、三叉神経の支配領域(特に第2枝の上顎神経、第3枝の下顎神経の領域)に限局して、片側の顔面に電撃が走るような鋭い激痛が発作的に起こる疾患である。1回の痛みは1秒未満〜最大2分程度と短く、洗顔、歯みがき、会話、咀嚼などで特定の部位(トリガーゾーン)に触れると誘発される。多くは脳幹近くで血管(上小脳動脈など)が三叉神経根を圧迫することが原因で、治療の第一選択はカルバマゼピンである。本症例は顔面ではなく後頭部の持続性の鈍痛であり、該当しない。

  5. ×e.  側頭動脈炎

    側頭動脈炎(巨細胞性動脈炎)は主に50歳以上の高齢者に発症する大型〜中型動脈の血管炎である。新たに出現したこめかみ付近の頭痛、側頭動脈の怒張・圧痛・拍動の低下、食事中に顎が疲れて痛む顎跛行、発熱や体重減少などの全身症状を呈し、赤沈亢進やCRP上昇などの炎症反応がみられる。リウマチ性多発筋痛症をしばしば合併し、放置すると視力障害(失明)を起こすことがあるため、疑った時点で速やかに副腎皮質ステロイドで治療する。本症例は42歳と若く、3年来変化のない頭痛で、側頭動脈の異常や発熱もなく、合致しない。

頭痛の分類

頭痛は、原因となる疾患がない一次性頭痛(片頭痛、緊張型頭痛、群発頭痛を含む三叉神経・自律神経性頭痛など)と、何らかの疾患が原因で生じる二次性頭痛(くも膜下出血、脳腫瘍、髄膜炎、側頭動脈炎、薬剤の使用過多による頭痛など)に大別される。三叉神経痛は、国際頭痛分類では「有痛性脳神経ニューロパチーおよび他の顔面痛」に分類される。

緊張型頭痛のまとめ

・頻度: 一次性頭痛の中で最も多い。 ・症状: 両側性の圧迫感・締めつけ感(「頭を締めつけられる」「重い」と表現される)。後頭部から頸部、あるいは頭全体に及ぶ。持続時間は30分〜7日。肩こりや頸部の筋の圧痛を伴うことが多い。 ・悪化因子: 長時間同じ姿勢をとるデスクワーク、精神的ストレス、睡眠不足など。 ・病型: 発作の頻度により、稀発反復性(平均月1日未満)、頻発反復性(月1〜14日)、慢性(月15日以上が3か月を超えて続く)に分けられる。 ・治療: 頭痛時はアセトアミノフェンや非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)を用いる。ストレッチや体操、姿勢の改善などの生活指導も有効である。慢性化例では三環系抗うつ薬(アミトリプチリン)が予防に用いられる。鎮痛薬を頻回に使いすぎると薬剤の使用過多による頭痛(薬物乱用頭痛)を起こすため注意する。

片頭痛と緊張型頭痛の対比

・部位: 片頭痛は片側性が多い(両側のこともある)/緊張型頭痛は両側性。 ・性状: 片頭痛は拍動性(ズキンズキン)/緊張型頭痛は非拍動性(締めつけ感)。 ・体動: 片頭痛は日常動作で悪化する/緊張型頭痛は悪化しない(むしろ軽減することがある)。 ・随伴症状: 片頭痛は悪心・嘔吐、光過敏・音過敏/緊張型頭痛は悪心を伴わない。 ・前兆: 片頭痛の一部には閃輝暗点などの前兆がある/緊張型頭痛にはない。

POINT

・両側性、締めつけ感(非拍動性)、軽度〜中等度、日常動作で悪化しない、悪心なし、肩こりの合併 → 緊張型頭痛。 ・片頭痛: 片側性・拍動性・体動で悪化・悪心、光過敏と音過敏を伴う。 ・群発頭痛: 若年〜中年男性、片側眼窩部の激痛15〜180分、同側の自律神経症状、夜間の決まった時刻、群発期がある。 ・三叉神経痛: 片側顔面の短時間の電撃痛、トリガーゾーン、カルバマゼピン。 ・側頭動脈炎: 50歳以上、側頭動脈の怒張・圧痛、顎跛行、赤沈亢進、失明の危険。 ・長期間性状の変わらない頭痛で神経学的異常がなければ一次性頭痛を考えるが、危険信号(突然発症、増悪傾向、神経症状、発熱など)の確認を怠らない。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。