StudyMed医師国家試験

1回40 mL×90回÷1.80 m²―心係数2.0が語る急性心筋梗塞のポンプ不全

第108回医師国家試験 D問題 第60問

国試問題にチャレンジ

第108回 D問題 第60問

急性心筋梗塞を発症した患者のデータを示す。  心拍数90/分,血圧98/58 mmHg,呼吸数18/分,SpO2 95%(room air),1回心拍出量40 mL,体表面積1.80 m2。  心係数を求めよ。  ただし,小数点第2位以下の数値が得られた場合には,小数点第2位を四捨五入すること。 解答:①.②l/分/m2

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は急性心筋梗塞の患者データから心係数を計算する問題だ。計算そのものはシンプルだけれど、どの数値を使い、どう単位をそろえるかがポイントになる。そして計算結果が臨床的に何を意味するかまで考えられると一段上の理解になるよ。まず、心係数とは何か説明できるかな。
医学生医学生
心拍出量を体表面積で割ったもの、だったと思います。生理学の講義で出てきましたが、正直うろ覚えです。
ドクタードクター
それで合っているよ。心拍出量は1分間に心臓が送り出す血液量で、体格が大きい人ほど多くなる。そのままでは体格の違う人どうしを比べにくいから、体表面積で割って補正したのが心係数なんだ。では心拍出量はどう求める?
医学生医学生
1回心拍出量に心拍数を掛けます。40 mLに90を掛けて3,600……単位はmL/分ですね。
ドクタードクター
そう。ここで単位をそろえるのが大事なところ。解答の単位はL/分/m²だから、3,600 mL/分は3.6 L/分になる。これを体表面積1.80 m²で割ると?
医学生医学生
3.6÷1.8で2.0 L/分/m²です。四捨五入するまでもなく割り切れました。
ドクタードクター
正解。答えは2.0だね。ところで、問題には血圧や呼吸数、SpO₂も書いてあったけれど、これらは計算に使ったかな。
医学生医学生
使っていません。全部使わなきゃいけないのかと一瞬迷いました。
ドクタードクター
計算問題では、必要な値を選び取る力も試されているんだ。もう一つのコツは、式を忘れても単位から逆算できること。L/分/m²なら「1分あたりの量を面積で割る」とわかるから、1回量×回数÷体表面積という組み立てが自然に出てくる。
医学生医学生
単位から式を組み立てるのは、CBTの計算問題対策でも先輩に勧められました。では、2.0という値は正常なんでしょうか。
ドクタードクター
心係数の基準値はおおむね2.5〜4.0 L/分/m²だから、2.0は明らかに低下している。1回心拍出量40 mLも基準の約60〜100 mLより少ない。心筋梗塞で左室の収縮が落ちて1回に送り出せる量が減り、心拍数を上げることで何とか心拍出量を保とうとしている、と解釈できるね。
医学生医学生
血圧が98/58と低めなのも、それと関係していそうですね。
ドクタードクター
いい着眼点だ。ここでぜひ結びつけてほしいのがForrester分類だ。急性心筋梗塞に伴う心不全の血行動態を、肺動脈楔入圧と心係数の2軸で4群に分ける。境界は肺動脈楔入圧18 mmHg、心係数2.2 L/分/m²だよ。
医学生医学生
循環器内科の実習でSwan-Ganzカテーテルの値を見せてもらいました。心係数2.0だと2.2以下なので、低灌流側ですね。
ドクタードクター
その通り。低灌流がある群、つまりⅢ群かⅣ群に当たる。どちらかを決めるには肺動脈楔入圧が必要で、この問題の情報だけでは決められない。楔入圧が18 mmHg以下なら低灌流だけのⅢ群で、循環血液量不足が主体だから輸液が基本、必要に応じて強心薬を使う。18 mmHgを超えれば肺うっ血も伴うⅣ群で、心原性ショックを含む最重症群だ。
医学生医学生
Ⅳ群だと強心薬や利尿薬、血管拡張薬に加えて、IABPなどの補助循環も考えるんでしたね。
ドクタードクター
そう。Ⅰ群からⅣ群に進むほど死亡率が高くなるから、数値を出して終わりではなく、治療方針につなげることが大切なんだ。ちなみに心拍出量の測り方には、Swan-Ganzカテーテルによる熱希釈法のほか、酸素消費量と動静脈酸素含量較差から求めるFick法、心エコーでの推定などがある。
医学生医学生
関連して、駆出率は1回心拍出量を拡張末期容積で割ったもの、でしたよね。指標がいろいろあって混同しやすいです。
ドクタードクター
よく整理できているね。1回心拍出量、心拍出量、心係数、駆出率をそれぞれの式と基準値でセットにして覚えておくと、計算問題にも臨床にも強くなるよ。

まとめ

心係数は心拍出量(1回心拍出量×心拍数)を体表面積で割った値で、体格差を補正して心臓のポンプ機能を比較するための指標です。本問では40 mLを0.04 Lにそろえ、0.04 L×90/分=3.6 L/分、3.6÷1.80=2.0 L/分/m²となり、血圧やSpO₂などは計算に使いません。基準値はおおむね2.5〜4.0 L/分/m²で、2.2以下はForrester分類の低灌流(Ⅲ群またはⅣ群)に当たり、群の決定には肺動脈楔入圧(境界18 mmHg)が必要です。単位から式を逆算する習慣と、得られた数値を血行動態の評価・治療方針に結びつける視点は、急性心不全の管理を理解するうえで欠かせません。

解答・解説

正解は2.0l/分/m2です

求めるもの

心係数(cardiac index:CI)とは、心拍出量(1分間に心臓が拍出する血液量)を体表面積で割った値である。心拍出量は体格によって大きく変わるため、体表面積で補正することで体格の異なる患者どうしでも比較できるようにした指標である。

使う式

・心拍出量(L/分)=1回心拍出量(L)×心拍数(/分) ・心係数(L/分/m2)=心拍出量(L/分)÷体表面積(m2)

計算過程

1.単位をそろえる:1回心拍出量40 mL=0.04 L 2.心拍出量を求める:0.04 L×90/分=3.6 L/分(mLのまま計算すると40×90=3,600 mL/分) 3.心係数を求める:3.6 L/分÷1.80 m2=2.0 L/分/m2 小数点第2位以下の端数は生じないので、答えは2.0 L/分/m2となる。

与えられた他のデータについて

血圧、呼吸数、SpO2は心係数の計算には用いない。計算に必要な値を選び取ることも問われている。なお、解答の単位(L/分/m2)が示されているので、式を忘れても「1分あたりの量÷面積」という単位の組み立てから計算方法を推測できる。

臨床的な意味

心係数の基準値はおおむね2.5〜4.0 L/分/m2であり、2.0 L/分/m2は低下している。Forrester分類では心係数2.2 L/分/m2を境界として末梢循環不全(低灌流)の有無を判定するため、本例は低心拍出の状態(Forrester Ⅲ群またはⅣ群)に当たる。どちらの群かを決めるには、肺動脈楔入圧(18 mmHgが境界)の情報が必要である。また、1回心拍出量40 mLは基準(約60〜100 mL)より少なく、心拍数90/分で代償的に心拍出量を保とうとしている状態と解釈できる。

心拍出量に関わる指標の整理

・1回心拍出量(SV):1回の収縮で拍出される血液量。基準はおおむね60〜100 mL。拡張末期容積から収縮末期容積を引いた値に等しい。 ・心拍出量(CO)=SV×心拍数。安静時の基準はおおむね4〜8 L/分。 ・心係数(CI)=CO÷体表面積。基準はおおむね2.5〜4.0 L/分/m2。 ・駆出率(EF)=SV÷拡張末期容積×100(%)。左室収縮能の指標で、基準は約55%以上。

Forrester分類

急性心筋梗塞に伴う急性心不全の血行動態を、Swan-Ganzカテーテル(肺動脈カテーテル)で測定した肺動脈楔入圧(PCWP)と心係数で4群に分類する。 ・Ⅰ群:PCWP 18 mmHg以下、CI 2.2 L/分/m2超。肺うっ血も低灌流もない。経過観察・一般的治療。 ・Ⅱ群:PCWP 18 mmHg超、CI 2.2 L/分/m2超。肺うっ血あり。利尿薬、血管拡張薬。 ・Ⅲ群:PCWP 18 mmHg以下、CI 2.2 L/分/m2以下。低灌流で循環血液量が不足している状態。輸液(補液)、必要に応じて強心薬。 ・Ⅳ群:PCWP 18 mmHg超、CI 2.2 L/分/m2以下。肺うっ血と低灌流の両方があり、心原性ショックを含む最重症群。強心薬、血管拡張薬・利尿薬、大動脈内バルーンパンピング(IABP)などの補助循環。 Ⅰ群からⅣ群に進むほど死亡率が高い。

心拍出量の測定法

Swan-Ganzカテーテルによる熱希釈法のほか、Fick法(酸素消費量と動静脈酸素含量較差から算出)、心エコーによる推定などがある。

POINT

・心拍出量(L/分)=1回心拍出量×心拍数、心係数(L/分/m2)=心拍出量÷体表面積。 ・計算時は単位(mL→L)をそろえる。本問は0.04 L×90/分=3.6 L/分、3.6÷1.80=2.0 L/分/m2。 ・心係数2.2 L/分/m2以下は低灌流を示し、Forrester分類のⅢ群またはⅣ群に当たる(群の決定には肺動脈楔入圧18 mmHgが境界)。 ・単位から式を逆算できることも覚えておくとよい。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。