StudyMed医師国家試験

脳は起きて体は眠る―「逆説睡眠」レム睡眠の正体を一晩の流れで読み解く

第108回医師国家試験 B問題 第10問

国試問題にチャレンジ

第108回 B問題 第10問

レム〈REM〉睡眠に関して正しいのはどれか。

  1. a.入眠直後に多い。
  2. b.高齢者では減少する。
  3. c.抗重力筋の緊張が亢進する。
  4. d.脳波で高振幅徐波を認める。
  5. e.緩徐な眼球運動が特徴である。

対話形式の解説

ドクタードクター
今回はレム睡眠の基本的な特徴を問う問題だ。脳波、眼球運動、筋緊張、出現する時間帯、年齢による変化という5つの切り口で整理すると、どの選択肢も迷わず判断できる。まずはレム睡眠と聞いて何を思い浮かべるかな。
医学生医学生
夢を見ている睡眠、というイメージです。生理学の講義で「逆説睡眠」とも呼ぶと習いました。
ドクタードクター
いいね。その「逆説」という言葉が全体を理解するカギなんだ。脳波は覚醒に近いのに、実際には起こしにくい深い眠り。そして脳は比較的活発なのに、体はほとんど動かない。この「脳は起きて体は眠っている」状態を軸に考えよう。まず脳波から。高振幅徐波はレム睡眠の所見だと思う?
医学生医学生
深く眠っているなら、ゆっくりした大きな波が出そうな気がしますが……。
ドクタードクター
そこがよくある誤解だ。高振幅のδ波が主体になるのは、ノンレム睡眠のなかでも最も深いN3、つまり徐波睡眠のほうだよ。レム睡眠の脳波は入眠期のN1に似ていて、低振幅でいろいろな周波数が混ざる。のこぎり波が見られることもある。だから脳波だけ見ると覚醒に近いんだ。
医学生医学生
なるほど、脳波が覚醒っぽいのに眠りは深いから「逆説」なんですね。では眼球運動はどうでしょう。
ドクタードクター
名前そのものがrapid eye movement、急速眼球運動だから、左右の眼球が同時にすばやく動くのが特徴だ。ゆっくり転がるような緩徐な眼球運動は、覚醒から眠りに落ちていくN1の所見。ここは対比で覚えておくと混同しにくい。
医学生医学生
筋緊張は、夢の中で走っているのに実際には動かないので、低下しているはずですよね。
ドクタードクター
その通り。橋からの抑制で脊髄の運動ニューロンが抑えられ、頸部などの抗重力筋の緊張はほぼ消失する。睡眠ポリグラフの筋電図で最も低いレベルになる時期だ。だから抗重力筋の緊張が亢進するという記述は逆だね。
医学生医学生
入眠直後に多いというのも違いますか。寝てすぐ夢を見ることもある気がして。
ドクタードクター
健常者では、入眠するとまずノンレム睡眠がN1からN3へと深まり、最初のレム睡眠が現れるのは約90分後だ。その後は約90分周期でノンレム睡眠とレム睡眠を繰り返し、前半は徐波睡眠が多く、明け方に向かうほどレム睡眠が長くなる。朝方の目覚め際に夢を覚えていることが多いのはそのためだよ。
医学生医学生
ということは、正しいのは高齢者で減少する、ですね。
ドクタードクター
正解。レム睡眠の割合は新生児で総睡眠時間の約50%と最も高く、成長とともに減って成人で約20〜25%、高齢者ではさらに減少する。高齢者では総睡眠時間が短くなり、特に徐波睡眠が大きく減って浅い睡眠が増えるから、中途覚醒や早朝覚醒が起こりやすくなるんだ。
医学生医学生
精神科の実習で、不眠を訴える高齢の方に「若い頃のようには眠れなくて当然」と説明されていたのを思い出しました。
ドクタードクター
加齢による睡眠の変化を知っておくと、患者さんへの説明や安易な睡眠薬の追加を避ける判断にも役立つね。ここからは発展知識だ。レム睡眠の仕組みが崩れると病気になる。入眠直後にレム睡眠が出てしまうのは何だろう?
医学生医学生
ナルコレプシーです。入眠時レム睡眠期が特徴で、情動脱力発作や金縛り、入眠時幻覚もありました。
ドクタードクター
よく覚えているね。レム睡眠の要素が覚醒中や入眠直後に紛れ込む病気と考えると、症状がつながる。逆に、レム睡眠中の筋緊張低下が失われると、夢の内容どおりに叫んだり手足を動かしたりするレム睡眠行動障害になる。これはパーキンソン病やレビー小体型認知症の前駆症状として重要なんだ。
医学生医学生
寝言や寝ぼけた動きが、神経変性疾患のサインになることがあるんですね。夢遊病や夜驚症も同じでしょうか。
ドクタードクター
そこは区別しよう。夜驚症や睡眠時遊行症は徐波睡眠からの部分的な覚醒で起こり、前半の深い眠りの時間帯に多い。悪夢はレム睡眠で、明け方に多い。どの睡眠段階の異常かを考えると、起こる時間帯や症状の違いまで説明できるよ。

まとめ

レム睡眠は、低振幅で混合周波数の覚醒に近い脳波、急速眼球運動、抗重力筋の筋緊張消失を特徴とし、「脳は活動しているのに体は動かない」逆説睡眠です。健常者では入眠後まずノンレム睡眠が深まり、約90分後に最初のレム睡眠が現れ、以後約90分周期で繰り返されて明け方ほど長くなります。レム睡眠の割合は新生児で約50%と最も多く、成人で約20〜25%、高齢者ではさらに減少します。高振幅徐波は徐波睡眠(N3)、緩徐な眼球運動は入眠期(N1)の所見であり、入眠時レム睡眠はナルコレプシー、筋緊張消失の欠如はレム睡眠行動障害に関わります。睡眠段階ごとの特徴を整理しておくことは、睡眠障害の病態理解や高齢者の不眠への対応に直結します。

解答・解説

正解はbです

睡眠は、レム(REM:rapid eye movement、急速眼球運動)睡眠とノンレム睡眠の2種類からなる。本問はレム睡眠の特徴を正しく理解しているかを問う。

レム睡眠の特徴

1) 脳波:覚醒時や入眠期(ノンレム睡眠N1段階)に似た、低振幅でさまざまな周波数が混在する波形を示す。のこぎり波(sawtooth wave)が見られることもある。 2) 眼球運動:左右の眼球が同時にすばやく動く急速眼球運動が群発する。 3) 筋緊張:頸部などの抗重力筋の緊張が著しく低下し、ほぼ消失する(筋電図で最低レベル)。 4) 自律神経:心拍・呼吸・血圧が不規則に変動し、陰茎勃起も起こる。 5) 夢:鮮明で物語性のある夢の多くはこの時期に見る。 6) 出現時期:正常では入眠後まずノンレム睡眠が続き、約90分後に最初のレム睡眠が現れる。以後、約90分周期でノンレム睡眠とレム睡眠が繰り返され、明け方に近づくほどレム睡眠の持続が長くなる。 7) 年齢による変化:新生児では睡眠の約50%をレム睡眠が占めるが、年齢とともに割合が減り、成人では約20〜25%、高齢者ではさらに減少する。 「脳は比較的活動しているのに体は動かない」状態と覚えると、各選択肢の正誤を判断しやすい。

選択肢考察

  1. ×a.  入眠直後に多い。

    誤り。健常者では入眠後にまずノンレム睡眠(N1→N2→N3と深くなる)が続き、最初のレム睡眠は入眠から約90分後に出現する。入眠直後は深いノンレム睡眠(徐波睡眠)が多く、レム睡眠は睡眠の後半、特に明け方に多くなる。なお、入眠から15分以内にレム睡眠が現れる入眠時レム睡眠期(SOREMP:sleep onset REM period)はナルコレプシーに特徴的な異常所見である。

  2. ○b.  高齢者では減少する。

    正しい。レム睡眠の割合は新生児で最も高く(総睡眠時間の約50%)、発達とともに減少して成人では約20〜25%となり、高齢者ではさらに減少する。高齢者では総睡眠時間自体も短くなり、特に深いノンレム睡眠(徐波睡眠)が大きく減って浅い睡眠が増えるため、中途覚醒や早朝覚醒が起こりやすくなる。

  3. ×c.  抗重力筋の緊張が亢進する。

    誤り。レム睡眠中は脳幹(橋)からの抑制によって脊髄の運動ニューロンが抑えられ、頸部などの抗重力筋の緊張が著しく低下する。これにより夢の内容に合わせて体が動くことが防がれている。この筋緊張低下が失われると、夢の内容どおりに叫んだり手足を動かしたりするレム睡眠行動障害となる(パーキンソン病やレビー小体型認知症の前駆症状として重要)。

  4. ×d.  脳波で高振幅徐波を認める。

    誤り。高振幅徐波(周波数2 Hz以下・振幅75 μV以上のδ波)が主体となるのは、深いノンレム睡眠(N3段階、徐波睡眠)である。レム睡眠の脳波は、入眠期(N1段階)に似た低振幅でいろいろな周波数が混じった波形を示し、覚醒時に近い。このように脳波は覚醒に近いのに、実際には起こしにくい深い眠りであることから、レム睡眠は「逆説睡眠」とも呼ばれる。

  5. ×e.  緩徐な眼球運動が特徴である。

    誤り。レム睡眠の名称そのものが示すとおり、特徴は急速眼球運動(rapid eye movement)である。緩徐な眼球運動(slow rolling eye movement)は、覚醒から眠りに入る入眠期(ノンレム睡眠N1段階)にみられる所見である。

睡眠段階の比較(AASMの分類)

・覚醒:閉眼安静時はα波(8〜13 Hz)が主体。 ・N1(入眠期):α波が減少し、低振幅のθ波が混在。緩徐な眼球運動、頭蓋頂鋭波。 ・N2(軽睡眠期):睡眠紡錘波とK複合が出現。 ・N3(深睡眠期・徐波睡眠):高振幅徐波(δ波)が判定区間(1エポック=30秒)の20%以上を占める。成長ホルモン分泌が多い。 ・レム睡眠:低振幅の混合周波数の脳波、急速眼球運動、抗重力筋の筋緊張消失。 ※かつて用いられたRechtschaffen & Kalesの分類では、ノンレム睡眠を第1〜4段階に分け、第3・4段階を徐波睡眠とした。

睡眠の経過

・一晩の睡眠でノンレム睡眠とレム睡眠が約90分周期で4〜5回繰り返される。 ・前半に深いノンレム睡眠(徐波睡眠)が多く、後半(明け方)にレム睡眠が多い。

年齢による変化

・新生児:レム睡眠が約50%。 ・成人:レム睡眠は約20〜25%。 ・高齢者:総睡眠時間の短縮、徐波睡眠の著明な減少、レム睡眠の減少、中途覚醒の増加。

レム睡眠が関わる疾患・現象

・ナルコレプシー:入眠時レム睡眠期、情動脱力発作(カタプレキシー)、睡眠麻痺(金縛り)、入眠時幻覚。レム睡眠の要素が覚醒中や入眠直後に現れる。 ・レム睡眠行動障害:レム睡眠中の筋緊張低下が失われ、夢に合わせた異常行動が起こる。αシヌクレイノパチーの前駆症状として重要。 ・うつ病:レム睡眠潜時の短縮がみられることがある。 ・悪夢はレム睡眠中に起こるのに対し、夜驚症・睡眠時遊行症(夢遊病)は徐波睡眠からの部分的覚醒で起こる。

POINT

・レム睡眠の3大特徴:低振幅の混合周波数の脳波(覚醒・N1に類似)、急速眼球運動、抗重力筋の筋緊張消失。 ・入眠直後はノンレム睡眠。最初のレム睡眠は入眠の約90分後で、以後約90分周期、明け方に多い。 ・レム睡眠の割合は新生児で約50%と最も多く、加齢とともに減少する。 ・高振幅徐波はN3(徐波睡眠)、緩徐な眼球運動はN1(入眠期)の所見。 ・入眠時レム睡眠はナルコレプシー、筋緊張の消失がない状態はレム睡眠行動障害。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。