抗体の名前で疾患を言い当てろ―膠原病・血管炎の自己抗体マップ
第107回医師国家試験 I問題 第38問
国試問題にチャレンジ
疾患と自己抗体の組合せで正しいのはどれか。2つ選べ。
- a.多発性筋炎 ―― 抗ミトコンドリア抗体
- b.関節リウマチ ―― 抗Sm抗体
- c.混合性結合組織病 ―― 抗RNP抗体
- d.全身性エリテマトーデス〈SLE〉 ―― 抗Scl-70抗体
- e.多発血管炎性肉芽腫症〈Wegener肉芽腫症〉〈granulomatosis with polyangiitis〉 ―― 抗好中球細胞質抗体〈ANCA〉
対話形式の解説
ドクター
医学生
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ドクターまとめ
膠原病や血管炎では疾患ごとに特徴的な自己抗体があり、混合性結合組織病では抗U1-RNP抗体、多発血管炎性肉芽腫症ではANCA(主にPR3-ANCA)が診断の柱となります。抗ミトコンドリア抗体は原発性胆汁性胆管炎、抗Sm抗体と抗dsDNA抗体はSLE、抗Scl-70抗体はびまん型の全身性強皮症に特徴的で、関節リウマチではリウマトイド因子と抗CCP抗体、多発性筋炎・皮膚筋炎では抗Jo-1抗体などの抗ARS抗体が代表的です。さらに抗dsDNA抗体とループス腎炎、抗Scl-70抗体と間質性肺疾患、抗MDA5抗体と急速進行性間質性肺炎、抗TIF1-γ抗体と悪性腫瘍のように、抗体は合併症や予後の予測にも役立ちます。抗体名と疾患だけでなく臨床像までセットで覚えることが、試験対策と実臨床の両方で確かな武器になります。
解答・解説
正解はc, eです
膠原病(自己免疫性の結合組織疾患)や血管炎では、疾患ごとに特徴的な自己抗体が出現し、診断・病型分類・合併症の予測に用いられる。自己抗体と疾患の対応は国家試験で繰り返し問われる基本事項であり、確実に覚えておく必要がある。 本問では、各選択肢の抗体が本来どの疾患に特徴的かを考えればよい。抗ミトコンドリア抗体は原発性胆汁性胆管炎、抗Sm抗体は全身性エリテマトーデス(SLE)、抗Scl-70抗体は全身性強皮症に特徴的である。したがって、組合せが正しいのは「混合性結合組織病と抗RNP抗体」と「多発血管炎性肉芽腫症と抗好中球細胞質抗体(ANCA)」である。
選択肢考察
- ×a. 多発性筋炎 ―― 抗ミトコンドリア抗体
抗ミトコンドリア抗体(AMA)は原発性胆汁性胆管炎(PBC、以前の名称は原発性胆汁性肝硬変)の約90%で陽性となり、診断的価値が高い。多発性筋炎・皮膚筋炎に特徴的なのは、抗Jo-1抗体を代表とする抗アミノアシルtRNA合成酵素(ARS)抗体である。抗ARS抗体陽性例は間質性肺炎、関節炎、発熱、機械工の手(手指の角化・亀裂)を伴いやすい。
- ×b. 関節リウマチ ―― 抗Sm抗体
抗Sm抗体はSLEに特異性が非常に高い抗体である(陽性率は2〜3割程度と低いが、陽性ならSLEの可能性が高い)。関節リウマチに特徴的な自己抗体は、リウマトイド因子(RF)と抗CCP抗体(抗環状シトルリン化ペプチド抗体)であり、特に抗CCP抗体は特異度が高く、早期診断や関節破壊の予測に役立つ。
- ○c. 混合性結合組織病 ―― 抗RNP抗体
混合性結合組織病(MCTD)は、SLE・全身性強皮症・多発性筋炎の症状が混在し、抗U1-RNP抗体が高い値で陽性となる疾患である。抗U1-RNP抗体陽性は診断基準の必須項目であり、MCTDを特徴づける抗体である。臨床的にはRaynaud現象や手指・手背の腫れ(ソーセージ様手指)がほぼ必発で、肺動脈性肺高血圧症が予後を左右する重要な合併症である。なお抗U1-RNP抗体はSLEなどでも陽性になることがある。
- ×d. 全身性エリテマトーデス〈SLE〉 ―― 抗Scl-70抗体
抗Scl-70抗体(抗トポイソメラーゼI抗体)は全身性強皮症に特異的な抗体で、皮膚硬化が体幹や上腕・大腿まで及ぶびまん皮膚硬化型に多く、間質性肺疾患の合併と関連する。SLEに特徴的な抗体は抗二本鎖DNA(dsDNA)抗体と抗Sm抗体であり、抗dsDNA抗体は疾患活動性やループス腎炎と相関する。
- ○e. 多発血管炎性肉芽腫症〈Wegener肉芽腫症〉〈granulomatosis with polyangiitis〉 ―― 抗好中球細胞質抗体〈ANCA〉
多発血管炎性肉芽腫症(GPA)は、上気道(鼻・副鼻腔・中耳)、肺、腎臓を主に侵す、壊死性肉芽腫を伴う小型血管炎で、ANCA関連血管炎の一つである。欧米ではPR3-ANCA(間接蛍光抗体法で細胞質がびまん性に染まるためc-ANCAとも呼ばれる)が高率に陽性で、疾患に対する特異性が高い。日本人のGPAではMPO-ANCA陽性例も一定の割合でみられる。
主な疾患と特徴的な自己抗体
・SLE:抗核抗体(スクリーニング、高感度)、抗dsDNA抗体(活動性・腎炎と相関)、抗Sm抗体(特異性が高い)、抗リン脂質抗体(血栓症・不育症)。 ・薬剤誘発性ループス:抗ヒストン抗体。 ・全身性強皮症:抗Scl-70(トポイソメラーゼI)抗体(びまん型、間質性肺疾患)、抗セントロメア抗体(限局型)、抗RNAポリメラーゼIII抗体(急速な皮膚硬化、強皮症腎クリーゼ)。 ・多発性筋炎・皮膚筋炎:抗ARS抗体(抗Jo-1抗体など、間質性肺炎)、抗MDA5抗体(筋症状の乏しい皮膚筋炎、急速進行性間質性肺炎)、抗TIF1-γ抗体(悪性腫瘍の合併)、抗Mi-2抗体(典型的な皮膚筋炎)。 ・混合性結合組織病:抗U1-RNP抗体。 ・Sjögren症候群:抗SS-A抗体、抗SS-B抗体(抗SS-A抗体陽性の母体では新生児ループス・先天性完全房室ブロックに注意)。 ・関節リウマチ:リウマトイド因子、抗CCP抗体。 ・原発性胆汁性胆管炎:抗ミトコンドリア抗体。 ・自己免疫性肝炎:抗核抗体、抗平滑筋抗体。
ANCA関連血管炎
・多発血管炎性肉芽腫症:PR3-ANCA(c-ANCA)が主体。上気道→肺→腎の順に病変が現れる。 ・顕微鏡的多発血管炎:MPO-ANCA(p-ANCA)。急速進行性糸球体腎炎、間質性肺炎・肺胞出血。日本のANCA関連血管炎で最も多い。 ・好酸球性多発血管炎性肉芽腫症(旧名Churg-Strauss症候群):MPO-ANCAが陽性になることがある(陽性率は4〜5割程度)。気管支喘息、好酸球増多、多発単神経炎が特徴。
POINT
・MCTD=抗U1-RNP抗体、GPA=PR3-ANCA(c-ANCA)。 ・抗ミトコンドリア抗体=原発性胆汁性胆管炎、抗Sm抗体・抗dsDNA抗体=SLE、抗Scl-70抗体=全身性強皮症(びまん型)。 ・多発性筋炎・皮膚筋炎=抗ARS抗体(抗Jo-1抗体)、関節リウマチ=抗CCP抗体。
