感度90%でも陽性の4人に3人は健康―有病率が左右する陽性適中率
第107回医師国家試験 H問題 第13問
国試問題にチャレンジ
有病率が10%の集団に感度が90%,特異度が70%のスクリーニングテストを実施した。 陽性適中率〈陽性者のうち真の有病者の割合〉で正しいのはどれか。
- a.10%
- b.25%
- c.33%
- d.70%
- e.90%
対話形式の解説
ドクター
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ドクターまとめ
陽性適中率は「検査陽性者のうち真に病気である人の割合」で、真陽性÷(真陽性+偽陽性)で求めます。有病率10%・感度90%・特異度70%では、1,000人中、真陽性90人に対し偽陽性が270人となり、陽性適中率は25%にとどまります。感度・特異度は検査固有の性能ですが、適中率は有病率に強く依存し、有病率の低い集団では陽性適中率が下がり陰性適中率が上がります。そのため検診などのスクリーニングでは、陽性者に特異度の高い精密検査を組み合わせることが前提となります。有病率・感度・特異度が与えられたら集団の人数を仮定して四分割表を作る習慣は、試験での計算ミスを防ぐだけでなく、検査結果を患者に正しく説明する臨床判断の基礎にもなります。
解答・解説
正解はbです
考え方
陽性適中率(PPV: positive predictive value)は「検査で陽性と出た人のうち、本当に病気を持っている人の割合」である。感度・特異度は検査そのものの性能を表す指標だが、陽性適中率はそれに加えて対象集団の有病率によって大きく変わる。したがって、有病率・感度・特異度の3つから2×2の四分割表を組み立て、そこから計算するのが最も確実な解き方である。
計算過程
計算しやすいように集団を1,000人と仮定する(100人で考えても結果は同じ)。 (1) 有病率10%より ・有病者 = 1,000 × 0.10 = 100人 ・非有病者 = 1,000 − 100 = 900人 (2) 感度90%(有病者のうち検査陽性となる割合)より ・真陽性(TP)= 100 × 0.90 = 90人 ・偽陰性(FN)= 100 − 90 = 10人 (3) 特異度70%(非有病者のうち検査陰性となる割合)より ・真陰性(TN)= 900 × 0.70 = 630人 ・偽陽性(FP)= 900 − 630 = 270人 (4) 四分割表のまとめ ・検査陽性:有病者90人+非有病者270人=計360人 ・検査陰性:有病者10人+非有病者630人=計640人 (5) 陽性適中率 = TP ÷(TP + FP)= 90 ÷(90 + 270)= 90 ÷ 360 = 0.25 → 25%
結果の解釈
感度90%という高い値の検査であっても、陽性者の4人に3人は実際には病気を持たない偽陽性者である。これは、有病率が10%と低いために非有病者の数が有病者の9倍もあり、特異度70%(非有病者の30%が陽性になる)でも偽陽性の絶対数が真陽性を大きく上回るためである。
選択肢考察
- ×a. 10%
10%は本問の有病率そのものである。陽性適中率は、検査陽性者に絞った集団での有病者の割合であり、検査にある程度の判別能力があれば有病率より高くなる。本問では陽性者360人中の有病者は90人で25%となり、10%にはならない。
- ○b. 25%
1,000人の集団で考えると、真陽性90人、偽陽性270人で、検査陽性者は計360人となる。陽性適中率は90 ÷ 360 = 0.25、すなわち25%であり、これが正解である。100人で計算しても真陽性9人、偽陽性27人で9 ÷ 36 = 25%と同じ値になる。
- ×c. 33%
33%は真陽性90人を偽陽性270人で割った値(90 ÷ 270 ≒ 0.33)に相当し、分母に真陽性自身を含めていない誤った計算で得られる。陽性適中率の分母は「検査陽性者全体」(真陽性+偽陽性=360人)であるため、正しくは25%である。
- ×d. 70%
70%は特異度の値である。特異度は「病気でない人が検査で正しく陰性と判定される割合」(TN ÷(TN+FP))であり、陽性者の中での有病者の割合である陽性適中率とは定義が全く異なる。
- ×e. 90%
90%は感度の値である。感度は「病気の人が検査で正しく陽性と判定される割合」(TP ÷(TP+FN))であり、分母が有病者である。陽性適中率は分母が検査陽性者であり、両者を混同しないことが重要である。
2×2表と各指標の定義
有病者・非有病者と検査陽性・陰性で4つのマスをつくる。 ・真陽性 TP(有病者で陽性) ・偽陽性 FP(非有病者で陽性) ・偽陰性 FN(有病者で陰性) ・真陰性 TN(非有病者で陰性) ・感度 = TP ÷(TP+FN):有病者を見逃さない能力 ・特異度 = TN ÷(TN+FP):非有病者を誤って陽性にしない能力 ・陽性適中率 = TP ÷(TP+FP):陽性と出た人が本当に病気である確率 ・陰性適中率 = TN ÷(TN+FN):陰性と出た人が本当に病気でない確率 本問の条件では、陰性適中率 = 630 ÷ 640 ≒ 98.4%となり、陰性であれば病気はほぼ否定できる。
有病率と適中率の関係
感度・特異度は原則として有病率に依存しないが、適中率は有病率の影響を強く受ける。 ・有病率が低い集団(一般住民の検診など)→ 偽陽性の割合が増え、陽性適中率は低下し、陰性適中率は上昇する。 ・有病率が高い集団(症状のある外来患者、ハイリスク群など)→ 陽性適中率は上昇し、陰性適中率は低下する。 例として、本問と同じ検査を有病率50%の集団に行うと、1,000人中TP 450人、FP 150人となり、陽性適中率は450 ÷ 600 = 75%まで上がる。
公式による計算
陽性適中率 =(感度 × 有病率)÷ {(感度 × 有病率)+(1 − 特異度)×(1 − 有病率)} 本問では(0.9 × 0.1)÷ {(0.9 × 0.1)+(0.3 × 0.9)} = 0.09 ÷(0.09+0.27)= 0.25 となる。
スクリーニングでの意味
スクリーニング検査は見逃しを減らすため感度を重視して設定されることが多く、その結果として偽陽性が増えやすい。陽性者には特異度の高い精密検査(確定診断検査)を組み合わせて絞り込むことが前提となる。
POINT
・陽性適中率 = 真陽性 ÷(真陽性+偽陽性)=「陽性者のうち真の有病者の割合」 ・有病率・感度・特異度が与えられたら、集団を100人や1,000人と仮定して四分割表を作ると間違えにくい ・感度・特異度は検査固有の性能、適中率は有病率に依存する ・有病率が低い集団では、感度・特異度がある程度高くても陽性適中率は低くなる ・選択肢には有病率(10%)、特異度(70%)、感度(90%)、TP÷FP(33%)などの紛らわしい数値が並ぶので注意
