StudyMed医師国家試験

その皮疹、どの病気のもの?―膠原病の「徴候入れ替え」を見抜く一対一対応術

第107回医師国家試験 G問題 第18問

国試問題にチャレンジ

第107回 G問題 第18問

自己免疫疾患と徴候の組合せで正しいのはどれか。

  1. a.皮膚筋炎 ―― 環状紅斑
  2. b.リウマチ熱 ―― Raynaud現象
  3. c.全身性強皮症〉 ―― ヘリオトロープ疹
  4. d.全身性エリテマトーデス〈SLE〉 ―― Gottron徴候
  5. e.若年性特発性関節炎〈JIA〉(全身型) ―― 弛張熱

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は、自己免疫疾患とその特徴的な徴候の組合せを問う問題だ。選択肢を見ると、どれも聞き覚えのある疾患名と徴候が並んでいるよね。実はこういう問題の多くは、本来別の疾患の徴候を入れ替えて作られている。だから「この徴候は本当はどの疾患のものか」を一つずつ振り分けていくのがコツなんだ。
医学生医学生
全部どこかで聞いた言葉なので、なんとなく正しく見えてしまいます。まず皮膚筋炎と環状紅斑ですが、皮膚筋炎って紅斑が多い病気なので、ありそうな気もします。
ドクタードクター
そう感じるのは無理もない。でも皮膚筋炎の代表的な皮疹は、上眼瞼が紫紅色にむくむヘリオトロープ疹と、手指の関節の背側に出る角化性の紅斑であるGottron徴候だ。ほかにも前胸部のV徴候、上背部のショール徴候、爪囲紅斑、機械工の手などがある。環状紅斑は中心が退色して辺縁が堤防状に盛り上がる輪っかの紅斑で、これはSjögren症候群、特に抗SS-A抗体陽性例に特徴的なんだ。
医学生医学生
ということは、ヘリオトロープ疹とGottron徴候はどちらも皮膚筋炎のものなので、強皮症とヘリオトロープ疹、SLEとGottron徴候の組合せも入れ替えですね。
ドクタードクター
その通り。一つの疾患の徴候が二つの選択肢にばらまかれているわけだ。強皮症の皮膚所見は、手指の浮腫状腫脹から始まって、指先から近位へ進む皮膚硬化、指尖の潰瘍や陥凹性瘢痕、仮面様顔貌、舌小帯の短縮などが典型だね。
医学生医学生
SLEは蝶形紅斑と円板状皮疹ですよね。でも、SLEでも手指に紅斑が出ることはありませんか?
ドクタードクター
鋭い質問だね。SLEでも手指に紅斑が出ることはあるけれど、関節と関節の間、つまり指節の背側に出やすい。一方、Gottron徴候は中手指節関節や近位指節間関節、肘や膝の伸側という関節の上に出る。この「関節の上か、間か」は皮膚筋炎とSLEを見分ける実践的なポイントになるよ。
医学生医学生
リウマチ熱とRaynaud現象はどうでしょう。リウマチ熱も膠原病っぽい扱いで講義に出てきたので、迷いました。
ドクタードクター
リウマチ熱はA群β溶血性レンサ球菌の感染から2〜3週後に起こる非化膿性の続発症だ。改訂Jones基準の大症状は心炎、多関節炎、Sydenham舞踏病、輪状紅斑、皮下結節の5つ。皮膚所見は輪状紅斑で、Raynaud現象は特徴ではないんだ。
医学生医学生
Raynaud現象は、寒いと指が白、紫、赤と色が変わるものですよね。臨床実習で膠原病内科を回ったとき、強皮症の患者さんが冬場につらいと話していました。
ドクタードクター
まさにそれ。Raynaud現象は全身性強皮症と混合性結合組織病ではほぼ全例にみられて、SLEやSjögren症候群、筋炎でも出ることがある。そうなると残るのが若年性特発性関節炎の全身型と弛張熱の組合せだ。
医学生医学生
これが正解ですね。全身型は熱が出る病型だと習いました。
ドクタードクター
そう。若年性特発性関節炎は16歳未満で発症して6週間以上続く原因不明の関節炎で、全身型は弛張熱、リウマトイド疹、関節炎が3主徴だ。発熱は1日のうちに急に上がってストンと下がる、日内変動の大きい熱型が2週間以上続く。リウマトイド疹は熱が上がるときに出てくるサーモンピンクの小さな斑状疹で、解熱とともに消えるのが特徴だよ。
医学生医学生
弛張熱と間欠熱の違いがいつも曖昧になってしまいます。CBTのときも熱型の問題で悩みました。
ドクタードクター
整理しておこう。稽留熱は日内変動が1℃以内で高熱が続くもの。弛張熱は日内変動が1℃以上あって、最低体温が平熱まで下がらないもの。間欠熱は日内変動が1℃以上で平熱まで下がる時間帯があるもの。波状熱は有熱期と無熱期を不規則に繰り返すものだ。なお、全身型の熱は国際的には1日1回スパイクして平熱まで下がることもある熱型として記載されることが多いけれど、国内の教科書や国試では弛張熱と表現されるのが一般的だね。
医学生医学生
全身型では検査値にも特徴がありますか?
ドクタードクター
白血球や好中球の増多、CRP高値、そして血清フェリチンの著明な高値が目立つ。リウマトイド因子や抗核抗体は通常陰性だ。成人で同じような病像を示すのが成人Still病だね。臨床で特に注意したいのは、重篤な合併症であるマクロファージ活性化症候群で、急に血球が減ったりフェリチンがさらに跳ね上がったりしたら要警戒だ。治療はステロイドのほか、IL-6受容体抗体のトシリズマブなどの生物学的製剤が使われる。
医学生医学生
皮膚筋炎も、合併症まで含めて覚えておくべきでしょうか。
ドクタードクター
ぜひ押さえておこう。抗MDA5抗体陽性例は急速進行性の間質性肺炎、抗TIF1-γ抗体陽性例は悪性腫瘍の合併に注意が必要だ。皮疹は単なる見た目の所見ではなく、背景の抗体や合併症を推測する入り口にもなるんだ。
医学生医学生
環状紅斑はSjögren、輪状紅斑はリウマチ熱、ヘリオトロープ疹とGottron徴候は皮膚筋炎、Raynaudは強皮症やMCTD、と一対一で覚えておけば、入れ替えにすぐ気づけそうです。
ドクタードクター
その通り。似た名前の環状紅斑と輪状紅斑は特に混同しやすいから、疾患とセットで覚えておこう。

まとめ

膠原病・自己免疫疾患には診断の手がかりとなる特徴的な皮疹や熱型があり、本問はそれらを別の疾患と入れ替えた選択肢の中から正しい組合せを見抜く問題です。皮膚筋炎はヘリオトロープ疹・Gottron徴候、SLEは蝶形紅斑・円板状皮疹、Sjögren症候群は環状紅斑、リウマチ熱は輪状紅斑・皮下結節、Raynaud現象は全身性強皮症や混合性結合組織病でほぼ必発と、一対一で整理しておくことが重要です。正しい組合せは若年性特発性関節炎の全身型と弛張熱で、全身型は弛張熱・発熱時に出没するサーモンピンク疹・関節炎を3主徴とし、フェリチン高値やマクロファージ活性化症候群の合併に注意が必要です。熱型の分類も合わせて押さえておくと、発熱を伴う疾患の鑑別に幅広く役立ちます。

解答・解説

正解はeです

膠原病・自己免疫疾患には、それぞれ診断の手がかりとなる特徴的な皮膚所見や熱型がある。本問は「疾患名」と「その疾患に特徴的な徴候」が正しく対応しているものを選ぶ問題である。 選択肢に並ぶ徴候を、本来対応する疾患に振り分けて整理すると次のようになる。 ・環状紅斑 → Sjögren症候群(抗SS-A/Ro抗体陽性例に多い) ・Raynaud現象 → 全身性強皮症、混合性結合組織病(MCTD)、SLEなど ・ヘリオトロープ疹、Gottron徴候 → 皮膚筋炎 ・弛張熱 → 若年性特発性関節炎(全身型)、成人Still病など このように、a〜dはいずれも別の疾患の徴候が組み合わされた「入れ替え」であり、疾患と徴候が正しく対応しているのはeのみである。 この種の問題では、各疾患の代表的な皮疹(皮膚筋炎=ヘリオトロープ疹・Gottron徴候、SLE=蝶形紅斑・円板状皮疹、強皮症=皮膚硬化・手指の浮腫状腫脹、リウマチ熱=輪状紅斑・皮下結節、Sjögren症候群=環状紅斑)を一対一で覚えておくと、組合せの誤りをすばやく見抜ける。

選択肢考察

  1. ×a.  皮膚筋炎 ―― 環状紅斑

    皮膚筋炎の特徴的皮疹は、上眼瞼の浮腫を伴う紫紅色の紅斑(ヘリオトロープ疹)、手指関節背側の角化性紅斑(Gottron徴候)、前胸部のV徴候、上背部のショール徴候、爪囲紅斑、機械工の手などである。環状紅斑(中心が退色し辺縁が堤防状に隆起する輪状の紅斑)はSjögren症候群に特徴的な皮疹であり、抗SS-A抗体陽性例に多い。したがって誤った組合せである。

  2. ×b.  リウマチ熱 ―― Raynaud現象

    リウマチ熱はA群β溶血性レンサ球菌感染の2〜3週後に起こる非化膿性の続発症で、改訂Jonesの診断基準の大症状は心炎、多関節炎、舞踏病(Sydenham舞踏病)、輪状紅斑、皮下結節である。皮膚所見は輪状紅斑(辺縁紅斑)であり、Raynaud現象は特徴ではない。Raynaud現象(寒冷や精神的緊張で手指が白→紫→赤と色調変化する発作性の血管攣縮)は全身性強皮症(ほぼ全例)、混合性結合組織病(ほぼ全例)、SLE、Sjögren症候群、多発性筋炎・皮膚筋炎などでみられる。

  3. ×c.  全身性強皮症〉 ―― ヘリオトロープ疹

    ヘリオトロープ疹は皮膚筋炎に特徴的な上眼瞼の紫紅色浮腫性紅斑である。全身性強皮症の皮膚所見は、手指の浮腫状腫脹(ソーセージ様手指)に始まり、皮膚硬化(手指から近位へ進む)、手指屈曲拘縮、指尖陥凹性瘢痕・潰瘍、仮面様顔貌、舌小帯短縮、毛細血管拡張、皮膚の色素沈着・脱失などである。したがって誤った組合せである。

  4. ×d.  全身性エリテマトーデス〈SLE〉 ―― Gottron徴候

    Gottron徴候は、手指の中手指節関節・近位指節間関節や肘・膝の伸側にみられる、落屑を伴う角化性の紅斑(丘疹)で、皮膚筋炎に特徴的である。SLEの皮膚所見は、鼻根部から両頬にかけての蝶形紅斑、円板状皮疹(ディスコイド疹)、光線過敏症、無痛性の口腔潰瘍、脱毛などである。なお、SLEの手指の紅斑は関節と関節の間(指節の背側)に出やすく、関節上に出るGottron徴候との鑑別点になる。

  5. ○e.  若年性特発性関節炎〈JIA〉(全身型) ―― 弛張熱

    若年性特発性関節炎(JIA:16歳未満で発症し6週間以上持続する原因不明の関節炎。かつての若年性関節リウマチ)の全身型は、①弛張熱、②リウマトイド疹、③関節炎を3主徴とする。発熱は1日のうちに急激に上昇(スパイク)して下降する日内変動の大きい熱型で、2週間以上続く。弛張熱とは日内変動が1℃以上あり、最低体温が平熱まで下がらない熱型をいう。リウマトイド疹は発熱に伴って出没する鮮紅色(サーモンピンク)の小斑状疹で、解熱とともに消退する。したがって正しい組合せである。

膠原病・関連疾患の代表的な皮膚所見

・皮膚筋炎:ヘリオトロープ疹、Gottron徴候(丘疹)、V徴候、ショール徴候、爪囲紅斑、機械工の手(抗ARS抗体症候群)。抗MDA5抗体陽性例では急速進行性間質性肺炎、抗TIF1-γ抗体陽性例では悪性腫瘍の合併に注意。 ・SLE:蝶形紅斑、円板状皮疹、光線過敏症、口腔潰瘍、脱毛、凍瘡様皮疹。 ・全身性強皮症:Raynaud現象、手指の浮腫状腫脹→皮膚硬化、指尖潰瘍、毛細血管拡張、石灰沈着。 ・Sjögren症候群:環状紅斑、高γグロブリン血症性紫斑。 ・リウマチ熱:輪状紅斑、皮下結節。 ・JIA全身型・成人Still病:発熱時に出現するサーモンピンク疹(リウマトイド疹)。 ・結節性紅斑(下腿伸側の有痛性の紅い結節):Behçet病、サルコイドーシス、炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎、Crohn病)、溶連菌感染症、結核など。 ・皮下結節:関節リウマチ(リウマトイド結節)、結節性多発動脈炎、痛風(痛風結節)、リウマチ熱。

熱型の整理

・稽留熱:日内変動1℃以内で高熱が持続(腸チフス、大葉性肺炎など)。 ・弛張熱:日内変動1℃以上で、最低体温が平熱まで下がらない(敗血症、JIA全身型、成人Still病、膿瘍など)。 ・間欠熱:日内変動1℃以上で、平熱まで下がる時間帯がある(マラリア、胆道感染など)。 ・波状熱:有熱期と無熱期を不規則に繰り返す(ブルセラ症、Hodgkinリンパ腫のPel-Ebstein熱など)。

JIA全身型の補足

血液検査では白血球・好中球増多、CRP高値、血清フェリチン高値がみられ、リウマトイド因子や抗核抗体は通常陰性である。重篤な合併症としてマクロファージ活性化症候群(MAS)がある。治療は副腎皮質ステロイドのほか、IL-6受容体抗体(トシリズマブ)などの生物学的製剤が用いられる。

POINT

・皮膚筋炎:ヘリオトロープ疹、Gottron徴候。 ・Sjögren症候群:環状紅斑。リウマチ熱:輪状紅斑(Jones基準の大症状)。 ・Raynaud現象:全身性強皮症、MCTDでほぼ必発。SLE、Sjögren症候群、筋炎でもみられる。 ・SLE:蝶形紅斑、円板状皮疹、光線過敏症。 ・JIA全身型の3主徴:弛張熱、リウマトイド疹(サーモンピンク疹)、関節炎。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。