StudyMed医師国家試験

「陽性なら確定」はどの検査?―感度・特異度・検査前確率をつなぐ診断の論理

第107回医師国家試験 F問題 第11問

国試問題にチャレンジ

第107回 F問題 第11問

検査の診断特性に関して正しいのはどれか。

  1. a.ROC曲線の縦軸は特異度,横軸は感度である。
  2. b.特異度が高い検査は,診断の確定に有用である。
  3. c.カットオフ値を変えて感度を上げると,特異度も上がる。
  4. d.感度は,検査が陽性のときに真に疾患を有する割合を指す。
  5. e.同じ検査であれば,検査前確率にかかわらず検査後確率は一定である。

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は、検査の診断特性に関する問題だ。感度、特異度、適中率、ROC曲線、検査前確率と、似た言葉がたくさん出てくるけれど、どれも「分母が何か」を意識すれば整理できる。一つずつ確認していこう。
医学生医学生
公衆衛生の講義で2×2表を書かされましたが、感度と陽性適中率がいつもごちゃごちゃになります。
ドクタードクター
そこが一番の落とし穴だね。感度は「病気がある人」を分母にして、そのうち検査が陽性になる割合。特異度は「病気がない人」を分母にして、そのうち検査が陰性になる割合だ。一方、陽性適中率は「検査が陽性だった人」を分母にして、そのうち本当に病気がある割合なんだ。
医学生医学生
そうすると、「検査が陽性のときに真に疾患を有する割合」を感度と呼ぶ記述は、陽性適中率の説明になっているから誤りですね。
ドクタードクター
その通り。しかもこの2つは性質も違う。感度と特異度は疾患の有無を分母にとるから、基本的に検査そのものの性能を表し、有病率の影響を受けにくい。でも適中率は検査結果を分母にとるから、有病率によって大きく変わるんだ。
医学生医学生
検診のように有病率が低い集団だと、陽性でも実は病気じゃない人が多くなる、というやつですね。
ドクタードクター
そう。では本題の、特異度が高い検査の意味を考えよう。特異度が高いとは、病気でない人をほぼ確実に陰性と判定できる、つまり偽陽性が少ないということだ。そんな検査で陽性が出たら、どう解釈する?
医学生医学生
偽陽性がほとんどないなら、陽性は本物の可能性が高い……だから診断の確定に使える、ということですか。
ドクタードクター
正解。これが今回の正しい選択肢だ。英語でSpPin、特異度が高い検査が陽性ならrule inと覚える。逆に感度が高い検査は見逃し、つまり偽陰性が少ないから、陰性なら病気を除外できる。これがSnNout、rule outだね。
医学生医学生
CBTの勉強で語呂として覚えましたが、理屈で考えると納得できます。スクリーニングに感度の高い検査を使うのも同じ理由ですね。
ドクタードクター
そう、検診では見逃しを減らしたいから感度重視、陽性者には特異度の高い精密検査で確定する、という二段構えだ。次はカットオフ値の話。カットオフ値を動かして感度を上げると、特異度はどうなるかな。
医学生医学生
両方上がれば理想ですが……病気の人とそうでない人の検査値は重なっているから、そううまくはいかなそうです。
ドクタードクター
いい推論だ。値が高いほど異常とする検査なら、カットオフ値を下げると病気の人をより多く拾えて感度は上がるけれど、病気でない人も陽性に引っかかって偽陽性が増え、特異度は下がる。感度と特異度はトレードオフの関係なんだ。それを図にしたのがROC曲線だよ。
医学生医学生
ROC曲線は、縦軸が特異度、横軸が感度でしたっけ。
ドクタードクター
惜しいけど違う。縦軸が感度、つまり真陽性率で、横軸が1-特異度、つまり偽陽性率だ。曲線が左上の角に近いほど良い検査で、曲線下面積のAUCは役に立たない検査で0.5、理想的な検査で1.0になる。複数の検査の比較や、最適なカットオフ値選びに使うんだ。
医学生医学生
最後の、検査前確率に関係なく検査後確率は一定、という記述はどうでしょう。同じ検査なら結果の重みも同じ気がしてしまいます。
ドクタードクター
そこが臨床推論の核心だね。検査後オッズは検査前オッズに尤度比をかけたものになる。たとえば感度・特異度とも90%の検査は陽性尤度比が9。検査前確率1%で陽性なら検査後確率は約8%にとどまるけれど、検査前確率50%なら90%まで上がる。同じ検査、同じ陽性でも、まったく意味が違うんだ。
医学生医学生
内科の実習で、指導医の先生に「検査を出す前に、どのくらいその病気らしいかを見積もりなさい」と言われた理由がよくわかりました。
ドクタードクター
まさにそれ。病歴と身体所見で検査前確率を見積もり、検査で上げ下げするのが診断の基本だ。注意点として、確率に尤度比を直接かけてはいけない。必ずオッズに変換してから計算すること。陽性尤度比は10以上、陰性尤度比は0.1以下が強力な目安とされるよ。

まとめ

感度は疾患のある人のうち検査が陽性となる割合、特異度は疾患のない人のうち検査が陰性となる割合であり、検査陽性者のうち実際に疾患をもつ割合である陽性適中率とは分母が異なります。特異度の高い検査は偽陽性が少ないため陽性なら診断の確定に有用で(SpPin)、感度の高い検査は偽陰性が少ないため陰性なら除外に有用です(SnNout)。カットオフ値を動かすと感度と特異度はトレードオフとなり、その関係を縦軸に感度、横軸に1-特異度をとって表したのがROC曲線で、AUCが1に近いほど診断能が高くなります。検査後オッズは検査前オッズ×尤度比で求められ、同じ検査結果でも検査前確率によって検査後確率は大きく変わり、適中率も有病率に左右されます。これらの指標を正しく使い分けることは、検診の設計から日々の臨床推論まで、根拠に基づいた診断の土台となります。

解答・解説

正解はbです

検査の診断特性(検査がどの程度正しく病気を見分けられるか)を表す指標は、次の2×2表をもとに定義される。 ・疾患あり・検査陽性:真陽性(a) ・疾患なし・検査陽性:偽陽性(b) ・疾患あり・検査陰性:偽陰性(c) ・疾患なし・検査陰性:真陰性(d) 感度=a/(a+c):疾患をもつ人のうち、検査が陽性になる割合 特異度=d/(b+d):疾患をもたない人のうち、検査が陰性になる割合 陽性適中率(陽性的中率)=a/(a+b):検査陽性の人のうち、実際に疾患をもつ割合 陰性適中率(陰性的中率)=d/(c+d):検査陰性の人のうち、実際に疾患をもたない割合 感度と特異度は「疾患の有無」を分母にとるため、原則として検査そのものの性能を表し、集団の有病率の影響を受けにくい。一方、適中率は「検査結果」を分母にとるため、有病率(検査前確率)によって大きく変わる。 本問を解く鍵は、①感度と特異度の定義を分母に注意して正確に区別すること、②感度と特異度はカットオフ値の設定によってトレードオフの関係にあること、③検査後確率は検査前確率に依存すること、④ROC曲線の軸、の4点である。さらに臨床での使い分けとして、「特異度の高い検査は陽性なら確定診断に、感度の高い検査は陰性なら除外診断に役立つ」ことを理解しておく。

選択肢考察

  1. ×a.  ROC曲線の縦軸は特異度,横軸は感度である。

    ROC曲線(receiver operating characteristic curve:受信者動作特性曲線)は、カットオフ値をさまざまに変えたときの感度と偽陽性率の組をプロットしたもので、縦軸が感度(真陽性率)、横軸が「1-特異度」(偽陽性率)である。したがって本選択肢は軸の記述が誤りである。曲線が左上の角(感度1、偽陽性率0)に近いほど診断能の高い検査であり、曲線下面積(AUC:area under the curve)は、完全に役に立たない検査(対角線)で0.5、理想的な検査で1.0となる。複数の検査の診断能を比べたり、最適なカットオフ値(一般に左上の角に最も近い点など)を選んだりするのに用いられる。

  2. ○b.  特異度が高い検査は,診断の確定に有用である。

    特異度が高い検査とは、疾患をもたない人をほぼ確実に陰性と判定できる検査、つまり偽陽性がきわめて少ない検査である。偽陽性が少なければ、「検査が陽性」という結果が出たときにそれが誤りである可能性は低く、疾患が存在すると判断してよい。したがって、特異度の高い検査で陽性であれば診断の確定(rule in)に有用である。英語では「SpPin(Specificity が高い検査が Positive なら rule in)」と覚えられる。反対に、感度の高い検査は偽陰性が少ないため、陰性であれば疾患を否定(除外、rule out)するのに有用であり、「SnNout(Sensitivity が高い検査が Negative なら rule out)」とよばれる。

  3. ×c.  カットオフ値を変えて感度を上げると,特異度も上がる。

    疾患群と非疾患群の検査値の分布は通常一部が重なっているため、カットオフ値(陽性と陰性を分ける境界値)を動かすと、感度と特異度は一方が上がれば他方が下がるトレードオフの関係になる。例えば値が高いほど異常とする検査で、カットオフ値を下げて感度を上げると、疾患のない人の一部も陽性と判定されるようになり(偽陽性の増加)、特異度は低下する。逆にカットオフ値を上げれば特異度は上がるが、見逃し(偽陰性)が増えて感度は下がる。ROC曲線はまさにこの関係を図示したものである。

  4. ×d.  感度は,検査が陽性のときに真に疾患を有する割合を指す。

    本選択肢の記述は陽性適中率(a/(a+b))の定義であり、感度の定義ではない。感度は「疾患を有する人のうち、検査が陽性となる人の割合」(a/(a+c))であり、分母は疾患をもつ人全体である。感度と陽性適中率は分母が異なり、とくに陽性適中率は有病率の影響を強く受ける(有病率が低い集団では、感度・特異度が高い検査でも陽性適中率は低くなる)点で性質が大きく異なる。

  5. ×e.  同じ検査であれば,検査前確率にかかわらず検査後確率は一定である。

    検査後確率は検査前確率に依存する。両者の関係は尤度比を用いて「検査後オッズ=検査前オッズ×尤度比」と表される(オッズ=確率/(1-確率))。例えば感度90%、特異度90%の検査(陽性尤度比=0.9/0.1=9)で陽性となった場合、検査前確率1%(オッズ約0.0101)では検査後オッズ約0.091、検査後確率は約8%にとどまるが、検査前確率50%(オッズ1)では検査後オッズ9、検査後確率は90%となる。このように同じ検査・同じ結果でも、検査前確率(有病率や、病歴・身体所見から見積もった疾患の可能性)が異なれば検査後確率は大きく異なる。

尤度比

・陽性尤度比=感度/(1-特異度):疾患のある人が陽性になる確率が、疾患のない人が陽性になる確率の何倍か。大きいほど(目安として10以上)陽性結果が診断確定に強く働く。 ・陰性尤度比=(1-感度)/特異度:小さいほど(目安として0.1以下)陰性結果が除外に強く働く。 ・尤度比は感度・特異度から計算されるため、有病率に左右されにくい検査固有の指標である。 ・検査後オッズ=検査前オッズ×尤度比。確率とオッズを取り違えて「検査後確率=検査前確率×尤度比」としないよう注意する。

有病率と適中率

感度・特異度が同じ検査でも、有病率が低い集団(一般住民の検診など)では偽陽性の割合が相対的に増え、陽性適中率は低くなる。逆に有病率が高い集団(症状があって専門外来を受診した患者など)では陽性適中率が高くなる。陰性適中率は有病率が低いほど高くなる。

検査の使い分け

・スクリーニング(検診):見逃しを減らしたいので、感度の高い検査を用いる。陽性者には次に特異度の高い精密検査を行う。 ・確定診断:偽陽性による誤診や不要な治療を避けたいので、特異度の高い検査を用いる。

ROC曲線の読み方

縦軸=感度、横軸=1-特異度。曲線が左上に張り出すほど診断能が高く、AUCは0.5(偶然と同じ)〜1.0(完全)の値をとる。

POINT

・感度=疾患ありの人のうち検査陽性の割合、特異度=疾患なしの人のうち検査陰性の割合。 ・陽性適中率=検査陽性の人のうち疾患ありの割合(感度と混同しない)。 ・特異度の高い検査で陽性→確定診断(SpPin)、感度の高い検査で陰性→除外診断(SnNout)。 ・カットオフ値を動かすと、感度と特異度はトレードオフの関係になる。 ・ROC曲線は縦軸が感度、横軸が1-特異度。AUCが1に近いほど良い検査。 ・検査後確率は検査前確率に依存する(検査後オッズ=検査前オッズ×尤度比)。適中率も有病率で変わる。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。