StudyMed医師国家試験

プール熱と結膜下出血―結膜炎を「原因別」に仕分ける眼科の基本

第107回医師国家試験 E問題 第35問

国試問題にチャレンジ

第107回 E問題 第35問

ウイルスが原因となるのはどれか。2つ選べ。

  1. a.咽頭結膜熱
  2. b.春季カタル
  3. c.封入体結膜炎
  4. d.巨大乳頭結膜炎
  5. e.急性出血性結膜炎

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は、名前の並んだ結膜疾患を原因別に仕分けて、ウイルス性のものを選ぶ問題だ。結膜炎は感染性と非感染性に分かれ、感染性の中にもウイルス、細菌、クラミジアがある。それぞれの病名がどの箱に入るかを整理していこう。
医学生医学生
結膜炎はどれも目が赤くなるので、正直どれも同じに見えてしまいます。
ドクタードクター
症状だけだと区別は難しいよね。だからこそ病原体とセットで覚えるのが大切なんだ。まず、ウイルス性結膜炎で押さえるべきは3つ。流行性角結膜炎、咽頭結膜熱、急性出血性結膜炎だ。
医学生医学生
咽頭結膜熱はプール熱ですよね。小児科の実習で、夏に熱と喉の痛みと目の充血で来た子がいて、アデノウイルスの迅速検査が陽性でした。
ドクタードクター
まさにそれだ。咽頭結膜熱は主にアデノウイルス3型・7型によるもので、発熱、咽頭炎、結膜炎が三主徴。夏にプールの水やタオル、手指を介して広がりやすい。治療は対症療法が中心で、学校保健安全法では第二種感染症として、主要症状が消えてから2日を経過するまで出席停止になる。
医学生医学生
急性出血性結膜炎は、名前の通り出血するんですか。
ドクタードクター
そう、結膜下出血を伴うのが特徴だ。原因はエンテロウイルス70やコクサッキーウイルスA24変異株。潜伏期が約1日と非常に短く、急激に眼痛や異物感、流涙が出る。経過は1週間程度だけど、感染力が強いから第三種感染症に指定されているよ。エンテロウイルス70ではまれにポリオに似た弛緩性麻痺が報告されているのも覚えておきたい。
医学生医学生
封入体結膜炎も感染症ですよね。細胞の中で増えるから、ウイルスなのかと思っていました。
ドクタードクター
そこが今回いちばんの引っかけだね。封入体結膜炎の原因はクラミジア・トラコマティスで、これは細菌なんだ。たしかにクラミジアは細胞内でしか増えない偏性細胞内寄生性で、その点はウイルスに似ている。
医学生医学生
微生物学の講義で、クラミジアとリケッチアは特殊な細菌として習った気がします。ウイルスとの違いは何でしたっけ。
ドクタードクター
クラミジアはDNAとRNAの両方をもち、細胞壁があり、二分裂で増え、抗菌薬が効く。ウイルスは核酸をどちらか一方しかもたず、抗菌薬は効かない。だから封入体結膜炎の治療にはマクロライド系やテトラサイクリン系、ニューキノロン系の抗菌薬を使うんだ。成人例は性行為に関連することが多く、新生児では産道感染で生後1〜2週頃に発症する。
医学生医学生
成人だと尿道炎や子宮頸管炎も一緒に考えないといけないので、点眼だけでなく内服も必要なんですね。
ドクタードクター
その通り。下眼瞼結膜の大型の濾胞も特徴だよ。では残りの春季カタルと巨大乳頭結膜炎はどうだろう。
医学生医学生
どちらも感染症ではなく、アレルギーでしょうか。
ドクタードクター
正解。春季カタルはアレルギー性結膜疾患の重症型で、アトピー素因のある学童期の男児に多い。I型アレルギーを基盤に、好酸球やT細胞による遅発型の炎症が加わって慢性化する。上眼瞼結膜の石垣状乳頭増殖や、輪部の堤防状隆起、角膜のシールド潰瘍が特徴で、強い痒みを伴う。
医学生医学生
巨大乳頭結膜炎はコンタクトレンズの人に起こると聞きました。
ドクタードクター
そう。ソフトコンタクトレンズや義眼、縫合糸などの機械的刺激と、付着した蛋白質への反応で起こる非感染性の結膜疾患だ。上眼瞼結膜に1mm以上の大きな乳頭ができて、痒みやレンズのずれを訴える。治療はレンズの中止や変更、ケアの見直しと抗アレルギー点眼薬だね。
医学生医学生
整理すると、ウイルス性は咽頭結膜熱と急性出血性結膜炎、封入体結膜炎はクラミジアで細菌、春季カタルと巨大乳頭結膜炎はアレルギー性ということですね。
ドクタードクター
完璧だ。臨床では眼脂と結膜所見も手がかりになる。ウイルス性は水様の眼脂と濾胞、耳前リンパ節腫脹。細菌性は膿性の眼脂で、淋菌性は大量の膿性眼脂で角膜穿孔の危険もある。アレルギー性は強い痒みと乳頭増殖で、眼脂に好酸球が見つかる。それから、もう一つのウイルス性である流行性角結膜炎はアデノウイルス8・19・37型などによるもので、感染力が非常に強い。
医学生医学生
眼科の外来で、アデノウイルスの患者さんを診た後は診察器具や手指の消毒を徹底していました。
ドクタードクター
それが院内感染を防ぐ基本だね。流行性角結膜炎は偽膜形成や、治った後の角膜上皮下混濁を残すこともあるから、経過観察も大切だよ。

まとめ

結膜炎は原因によって、ウイルス性、細菌性、クラミジア性、アレルギー性に分けて整理するのが基本です。ウイルス性の代表は、アデノウイルス3・7型による咽頭結膜熱(プール熱)、アデノウイルス8・19・37型などによる流行性角結膜炎、そしてエンテロウイルス70やコクサッキーウイルスA24変異株による結膜下出血が特徴の急性出血性結膜炎です。封入体結膜炎は細胞内寄生性ではあるものの細菌であるクラミジアが原因で、抗菌薬で治療します。春季カタルと巨大乳頭結膜炎は非感染性のアレルギー性結膜疾患で、乳頭増殖と強い痒みが特徴です。病原体と学校保健安全法上の扱いをセットで理解しておくことは、感染拡大の防止や学校・保育現場への適切な指導に役立ちます。

解答・解説

正解はa, eです

結膜炎は原因によって、感染性(ウイルス、細菌、クラミジアなど)と非感染性(アレルギー性など)に大別される。本問は、選択肢に並んだ結膜疾患を原因別に仕分けできるかを問うている。 感染性結膜炎のうちウイルス性のものとして重要なのは次の3つである。 ・流行性角結膜炎〈EKC〉:アデノウイルス(主に8・19・37型、近年は54型なども) ・咽頭結膜熱〈PCF〉:アデノウイルス(主に3・7型) ・急性出血性結膜炎〈AHC〉:エンテロウイルス70、コクサッキーウイルスA24変異株 これに対して、封入体結膜炎は細菌の一種であるクラミジアによる感染症であり、ウイルス性ではない。また、春季カタルと巨大乳頭結膜炎は感染症ではなく、アレルギー性結膜疾患に分類される。 したがって、ウイルスが原因となるのは咽頭結膜熱と急性出血性結膜炎の2つである。クラミジアは細胞の中でしか増殖できない(偏性細胞内寄生性)という点でウイルスと似ているが、DNAとRNAの両方をもち、細胞壁をもち、二分裂で増え、抗菌薬が効く細菌である点で、ウイルスとは明確に区別される。

選択肢考察

  1. ○a.  咽頭結膜熱

    咽頭結膜熱〈PCF〉は、主にアデノウイルス3型・7型などによる感染症で、発熱・咽頭炎・結膜炎を三主徴とする。小児に多く、夏季にプールの水や手指・タオルを介して流行しやすいため「プール熱」とも呼ばれる。結膜炎は濾胞性で、充血や眼脂を伴う。治療は対症療法が中心である。学校保健安全法では第二種感染症に指定され、主要症状が消退した後2日を経過するまで出席停止となる。

  2. ×b.  春季カタル

    春季カタルはアレルギー性結膜疾患の重症型であり、感染症ではない。アトピー素因をもつ学童期の男児に多く、春から夏にかけて増悪しやすい。IgEと肥満細胞が関与するI型アレルギーを基盤に、好酸球やT細胞が関わる遅発型の炎症(IV型アレルギーの関与も指摘される)が加わって慢性化する。上眼瞼結膜の石垣状乳頭増殖、輪部の堤防状隆起(Horner-Trantas斑)、角膜のシールド潰瘍などが特徴で、強い痒みを伴う。治療は抗アレルギー点眼薬に加え、免疫抑制点眼薬(シクロスポリン、タクロリムス)やステロイド点眼薬を用いる。

  3. ×c.  封入体結膜炎

    封入体結膜炎はクラミジア・トラコマティス(主に血清型D〜K)による感染症である。クラミジアは偏性細胞内寄生性の細菌であり、ウイルスではない。成人例は多くが性行為に関連し、尿道炎や子宮頸管炎を伴うことがある。新生児例は母親の産道で感染し、生後1〜2週頃に発症する(新生児封入体結膜炎)。結膜上皮細胞内に封入体を認めることが病名の由来であり、下眼瞼結膜の大型の濾胞形成が特徴である。治療にはマクロライド系・テトラサイクリン系・ニューキノロン系の抗菌薬を用い、成人では点眼と内服を併用する。

  4. ×d.  巨大乳頭結膜炎

    巨大乳頭結膜炎は、コンタクトレンズ(特にソフトコンタクトレンズ)、義眼、手術の縫合糸などによる機械的刺激と、それらに付着した蛋白質などの抗原に対するアレルギー反応によって生じる非感染性の結膜疾患である。涙液中にIgEや肥満細胞の脱顆粒物質がみられ、乳頭組織には好酸球が浸潤していることから、I型アレルギーとIV型アレルギーの両方が関与すると考えられている。上眼瞼結膜に直径1 mm以上の乳頭が形成され、痒み、眼脂、レンズのずれなどを訴える。治療はコンタクトレンズの中止・変更や適切なレンズケアと、抗アレルギー点眼薬である。

  5. ○e.  急性出血性結膜炎

    急性出血性結膜炎〈AHC〉は、エンテロウイルス70やコクサッキーウイルスA24変異株によるウイルス性結膜炎である。潜伏期は約1日と短く、急激に発症し、眼痛・異物感・流涙とともに、特徴的な結膜下出血を伴う。経過は1週間程度と比較的短い。エンテロウイルス70による例では、まれに発症後数日〜数週で急性灰白髄炎(ポリオ)に似た四肢の弛緩性麻痺などの神経合併症が報告されている。感染力が強く、学校保健安全法では第三種感染症として、医師が感染のおそれがないと認めるまで出席停止となる。

ウイルス性結膜炎の比較

・流行性角結膜炎〈EKC〉:アデノウイルス8・19・37型など。潜伏期約1〜2週。耳前リンパ節腫脹、偽膜形成、発症後1〜2週で角膜上皮下混濁(多発性角膜上皮下浸潤)を残すことがある。感染力が非常に強く、院内感染に注意。学校保健安全法の第三種感染症。 ・咽頭結膜熱〈PCF〉:アデノウイルス3・7型など。発熱・咽頭炎・結膜炎。小児、夏季、プール。第二種感染症。 ・急性出血性結膜炎〈AHC〉:エンテロウイルス70、コクサッキーウイルスA24変異株。潜伏期約1日、結膜下出血。第三種感染症。 ・アデノウイルス結膜炎の診断には、結膜擦過物を用いたイムノクロマト法による迅速抗原検出キットが用いられる。

結膜炎の原因別の特徴(眼脂と結膜所見)

・ウイルス性:水様〜漿液性の眼脂、濾胞形成、耳前リンパ節腫脹。 ・細菌性:膿性(〜粘液膿性)の眼脂。原因はインフルエンザ菌、肺炎球菌、黄色ブドウ球菌など。淋菌性は大量の膿性眼脂で、角膜穿孔の危険がある。 ・クラミジア性:大型の濾胞(特に下眼瞼)、粘液膿性眼脂、耳前リンパ節腫脹。 ・アレルギー性:強い痒み、粘稠な眼脂、乳頭増殖。眼脂や結膜擦過物で好酸球を認める。

アレルギー性結膜疾患の分類

・アレルギー性結膜炎(季節性・通年性):増殖性変化なし。 ・アトピー性角結膜炎:アトピー性皮膚炎に合併。 ・春季カタル:増殖性変化(石垣状乳頭、輪部の隆起)を伴う重症型。 ・巨大乳頭結膜炎:コンタクトレンズなどの異物刺激に伴う。

POINT

・ウイルス性結膜炎3つ:流行性角結膜炎(アデノ8・19・37型)、咽頭結膜熱(アデノ3・7型)、急性出血性結膜炎(エンテロウイルス70、コクサッキーA24)。 ・封入体結膜炎の病原体はクラミジア(細菌)であり、ウイルスではない。 ・春季カタル・巨大乳頭結膜炎はアレルギー性(I型が主体、IV型も関与)。 ・学校保健安全法:咽頭結膜熱は第二種、流行性角結膜炎・急性出血性結膜炎は第三種。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。