StudyMed医師国家試験

すべては滑膜から始まる―関節リウマチの「火元」を見極める

第107回医師国家試験 C問題 第14問

国試問題にチャレンジ

第107回 C問題 第14問

関節リウマチの病変が始まる組織はどれか。

  1. a.腱
  2. b.骨
  3. c.滑膜
  4. d.靱帯
  5. e.軟骨

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は、関節リウマチという病気がどの組織から始まるのかを問う問題だ。関節リウマチでは最終的に軟骨も骨も腱も靱帯も傷むけれど、大事なのは「どこが火元で、どこが延焼先か」を区別すること。病態の順番を意識して考えてみよう。
医学生医学生
関節が変形して壊れる病気というイメージが強いので、骨か軟骨かなと最初は思ってしまいました。
ドクタードクター
そう考える人は多いね。でも、変形や骨破壊はあくまで結果なんだ。関節リウマチは自己免疫の異常を背景にした慢性炎症性疾患で、その炎症がまず起こる場所がある。関節の内側を覆っている膜を思い出してごらん。
医学生医学生
関節包の内面にある滑膜ですね。解剖学の講義で、滑液を産生して関節の動きを滑らかにする膜だと習いました。
ドクタードクター
その通り。正解は滑膜だ。関節リウマチの本態は滑膜炎で、滑膜にTリンパ球、Bリンパ球、マクロファージなどの炎症細胞が浸潤し、滑膜細胞が増殖して絨毛状に厚くなる。この増殖した炎症性の滑膜組織をパンヌスと呼ぶんだ。
医学生医学生
パンヌスは病理の講義で聞いた覚えがあります。それが周りを壊していくんでしょうか。
ドクタードクター
そう。パンヌスはTNF-αやIL-6などの炎症性サイトカイン、マトリックスメタロプロテアーゼのようなタンパク分解酵素を出し、さらに破骨細胞を活性化する。その結果、隣接する軟骨や骨が侵食されていく。では、軟骨が壊れるとX線ではどう見えるかな。
医学生医学生
軟骨はX線に写らないので、関節裂隙が狭くなって見える、ということですか。
ドクタードクター
正解。関節裂隙狭小化は軟骨破壊を反映している。ただしこれは滑膜炎に続いて起こる変化で、軟骨そのものが主役になる代表は変形性関節症だ。こちらは軟骨の変性が主体で、炎症が出発点ではない。
医学生医学生
骨のほうは、骨びらんでしたっけ。
ドクタードクター
そう。パンヌスはまず、滑膜が骨に直接接していて軟骨に覆われていない辺縁部、いわゆるベアエリアから骨を削っていく。炎症による傍関節性の骨萎縮もみられる。でもこれも滑膜炎の結果であって、始まりではないんだ。
医学生医学生
腱はどうでしょう。整形外科の実習で、リウマチの患者さんの手指の伸筋腱断裂を見ました。腱自体が侵される病気なのかと思っていました。
ドクタードクター
いい観察だね。腱を包む腱鞘の内側にも滑膜があって、関節リウマチでは腱鞘滑膜炎が起こる。腱はその炎症の波及や、壊れた骨の突起との摩擦で二次的に傷んで切れるんだ。つまり腱断裂も、根っこは滑膜にある。
医学生医学生
靱帯も同じ考え方ですか。
ドクタードクター
そう。滑膜炎が長引くと関節周囲の靱帯が緩んだり破綻したりして、尺側偏位などの変形や関節の不安定性が出る。頸椎では環椎横靱帯が緩んで環軸関節亜脱臼を起こすことがあり、挿管時などに注意が必要だ。靱帯や腱の骨付着部そのものに炎症が起こる付着部炎は、強直性脊椎炎など脊椎関節炎の特徴だから、ここで区別しておこう。
医学生医学生
滑膜炎、パンヌス形成、軟骨破壊、骨びらん、そして腱や靱帯の障害から変形へ、という順番で整理すればいいんですね。
ドクタードクター
完璧だ。この流れが分かると臨床的な意味も見えてくる。関節破壊は発症早期、特に最初の1〜2年で急速に進むことが知られているから、滑膜炎の段階で見つけて抑え込むことが大切なんだ。
医学生医学生
早期診断には抗CCP抗体が有用だとCBTの勉強で覚えました。
ドクタードクター
そうだね。抗CCP抗体は特異度が高く、早期診断や予後予測に役立つ。リウマトイド因子、CRPや赤沈に加えて、MMP-3は滑膜炎の活動性を反映する指標だ。画像では関節超音波やMRIが、X線で変化が出る前の滑膜炎を捉えられる。臨床像としては、手のMCP関節やPIP関節の左右対称な多発関節炎と、長く続く朝のこわばりが典型で、DIP関節は侵されにくい。
医学生医学生
治療はメトトレキサートが第一選択でしたよね。
ドクタードクター
その通り。効果が不十分ならTNF阻害薬やIL-6受容体抗体などの生物学的製剤、あるいはJAK阻害薬を使い、寛解を目標に治療を調整していく。どの薬も、根っこにある滑膜の炎症を鎮めて関節破壊を防ぐことが狙いなんだ。

まとめ

関節リウマチの病変は滑膜から始まり、炎症細胞浸潤と滑膜細胞の増殖によって形成されたパンヌスが、サイトカインやタンパク分解酵素、破骨細胞の活性化を介して軟骨・骨を破壊します。腱や靱帯の障害も滑膜炎の波及による二次的な変化であり、伸筋腱断裂や尺側偏位、環軸関節亜脱臼などの原因となります。軟骨変性が主体の変形性関節症や、付着部炎が主体の脊椎関節炎とは出発点が異なる点も押さえておきましょう。関節破壊は発症早期に急速に進むため、抗CCP抗体や関節超音波などで早期に滑膜炎を捉え、メトトレキサートを中心とした治療で寛解を目指すことが重要です。「火元は滑膜」という病態の理解は、検査所見の意味づけから治療戦略まで一貫して役立ちます。

解答・解説

正解はcです

テーマ

関節リウマチ(RA:rheumatoid arthritis)の病態の出発点を問う問題である。

考え方

関節リウマチは、自己免疫の異常を背景に関節の内面を覆う滑膜に慢性炎症(滑膜炎)が起こる疾患である。滑膜にはTリンパ球・Bリンパ球・マクロファージなどの炎症細胞が浸潤し、滑膜細胞が増殖して絨毛状に肥厚する。この増殖した炎症性の滑膜組織をパンヌス(pannus)と呼ぶ。パンヌスは炎症性サイトカイン(TNF-α、IL-6など)やタンパク分解酵素(マトリックスメタロプロテアーゼ〈MMP〉など)を産生し、また破骨細胞を活性化することで、隣接する軟骨・骨を侵食して関節破壊を引き起こす。さらに炎症は腱・腱鞘や靱帯にも及び、関節の変形や不安定性を生じる。 つまり「滑膜炎が始まりで、軟骨・骨・腱・靱帯の障害はそこから二次的に広がった結果」という順序を押さえれば正解できる。

選択肢考察

  1. ×a.  腱

    腱を包む腱鞘にも滑膜があり、関節リウマチでは腱鞘滑膜炎を起こしうる。しかし障害されるのは腱鞘滑膜であり、腱そのものは滑膜炎の波及や骨突起との摩擦によって二次的に傷み、手指伸筋腱の断裂などに至る。病変の出発点は腱ではない。腱自体の障害としてはアキレス腱断裂などの外傷性のものが代表的である。

  2. ×b.  骨

    関節リウマチが進行すると、パンヌスの浸潤と破骨細胞の活性化により、滑膜が骨に接する辺縁部(ベアエリア)から骨びらんが生じ、関節破壊に至る。また炎症による傍関節性の骨粗鬆症もみられる。しかし骨病変は滑膜炎の結果であって、病変の始まりではない。骨が原発の病変となる疾患には骨粗鬆症や骨肉腫などがある。

  3. ○c.  滑膜

    関節リウマチの本態は滑膜の慢性炎症である。免疫異常を背景に滑膜へ炎症細胞が浸潤し、滑膜細胞が増殖してパンヌスを形成する。パンヌスが産生するサイトカインや蛋白分解酵素、活性化された破骨細胞によって軟骨・骨が破壊され、周囲の腱・靱帯にも障害が及ぶ。したがって病変が始まる組織は滑膜である。

  4. ×d.  靱帯

    関節リウマチでは滑膜炎が長期化すると関節周囲の靱帯が弛緩・破綻し、関節の不安定性や変形(尺側偏位など)、環軸関節亜脱臼(横靱帯の弛緩・断裂による)をきたす。これらは滑膜炎が波及した結果である。靱帯が原発の病変となる疾患としては、後縦靱帯骨化症や、靱帯・腱の骨付着部の炎症を特徴とする強直性脊椎炎などが挙げられる。

  5. ×e.  軟骨

    関節軟骨はパンヌスに覆われ、その酵素やサイトカインにより分解されて菲薄化・消失する。単純X線写真での関節裂隙狭小化はこの軟骨破壊を反映する所見である。しかし軟骨の障害は滑膜炎に続いて起こるものであり、起点ではない。軟骨が主病変となる疾患には変形性関節症(軟骨の変性が主体)、再発性多発軟骨炎、軟骨肉腫などがある。

関節リウマチの概要

・30〜50歳代の女性に多く、男女比はおよそ1:3〜4である。 ・手の関節(中手指節〈MCP〉関節、近位指節間〈PIP〉関節)、手関節、足趾の関節などに、左右対称性の多発関節炎を起こす。遠位指節間(DIP)関節は侵されにくい(変形性関節症やHeberden結節、乾癬性関節炎との鑑別点)。 ・朝のこわばり(1時間以上続くことが多い)が特徴である。

病態の流れ

滑膜炎(炎症細胞浸潤・滑膜細胞増殖)→パンヌス形成→軟骨破壊(関節裂隙狭小化)→骨びらん・骨破壊→関節変形・強直。関節破壊は発症早期、特に最初の1〜2年で急速に進むため、早期診断・早期治療が重要である。

主な検査

・血清:リウマトイド因子(RF)、抗CCP抗体(抗環状シトルリン化ペプチド抗体。特異度が高く、早期診断や予後予測に有用)、CRP・赤沈(炎症の指標)、MMP-3(滑膜炎の活動性を反映)。 ・画像:単純X線(傍関節性骨萎縮、関節裂隙狭小化、骨びらん)、関節超音波・MRI(早期の滑膜炎・骨髄浮腫の検出)。 ・分類基準:2010年ACR/EULAR分類基準(罹患関節の数と分布、血清学、急性期反応物質、罹病期間6週以上の有無を点数化し、6点以上でRAと分類)。

特徴的な変形

尺側偏位、スワンネック変形、ボタン穴変形、外反母趾など。頸椎では環軸関節亜脱臼に注意する。

治療

メトトレキサートが第一選択の抗リウマチ薬(csDMARD)であり、効果不十分なら生物学的製剤(TNF阻害薬、IL-6受容体抗体、T細胞共刺激阻害薬など)やJAK阻害薬を用いる。目標は臨床的寛解(treat to target)である。

POINT

・関節リウマチの病変は滑膜から始まる(滑膜炎が本態)。 ・増殖した炎症性滑膜=パンヌスが軟骨・骨を侵食し、腱・靱帯にも障害が及ぶ。 ・関節破壊は発症早期に急速に進むため、早期診断・早期治療(メトトレキサート中心)が重要。 ・対称性の手指(MCP・PIP)関節炎、朝のこわばり、抗CCP抗体・RF陽性が特徴で、DIP関節は侵されにくい。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。