「何のための検査か」で正誤が見える―Holterから睡眠ポリグラフまで生体機能検査の基本
第107回医師国家試験 B問題 第37問
国試問題にチャレンジ
生体機能検査について正しいのはどれか。2つ選べ。
- a.Holter心電図は安静にして測定する。
- b.レニン分泌刺激試験は立位のままで行う。
- c.排尿障害の患者では残尿量測定が必要である。
- d.ポリソムノグラフィには脳波測定も含まれる。
- e.糖尿病の診断には経口グルコース負荷試験でのCペプチド測定が必要である。
対話形式の解説
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクターまとめ
生体機能検査は「何をとらえる検査か」を理解すると、実施条件や必要性を自然に判断できます。Holter心電図は日常生活の中で一過性の不整脈や症状時の心電図変化をとらえる検査で、安静は求めません。レニン分泌刺激試験は臥位で基準値をとってからフロセミドや立位で刺激し、レニンが抑制されたままかを確認します。排尿障害では残尿量測定が病態把握や抗コリン薬などの治療選択に欠かせず、ポリソムノグラフィは脳波・眼電図・おとがい筋電図で睡眠段階を判定するため脳波測定を含みます。糖尿病の診断は血糖値とHbA1cで行い、Cペプチドは内因性インスリン分泌能の評価に用いるという役割分担も押さえておくと、検査の選択と説明に強くなれます。
解答・解説
正解はc, dです
生体機能検査(生理機能検査)の目的と実施方法についての基本知識を問う問題である。各検査が「何を調べるために」「どのような条件で」行われるかを押さえていれば解ける。 ・Holter心電図:日常生活の中で起こる一時的な心電図変化をとらえる検査である。 ・レニン分泌刺激試験:レニンの分泌を刺激する条件をつくり、レニンが本当に抑えられているかを確かめる検査である。刺激前の基準値は安静臥位で採血する。 ・残尿測定:排尿障害の評価、特に尿を出し切れない状態(尿排出障害)の評価に欠かせない。 ・ポリソムノグラフィ(PSG):睡眠の段階と、睡眠中の呼吸・循環・運動を同時に記録する。睡眠段階を判定するために脳波が必須である。 ・糖尿病の診断:血糖値とHbA1cで行う。Cペプチドは診断には使わず、インスリンを分泌する力の評価に使う。 選択肢の「安静にして」「立位のままで」「必要である」といった条件を示す語が、各検査の本来の目的に合っているかどうかを考えるのがポイントである。
選択肢考察
- ×a. Holter心電図は安静にして測定する。
誤り。Holter心電図は携帯型の記録器を体に着け、日常生活を普段どおり送りながら通常24時間(機種によってはそれ以上)心電図を連続して記録する検査である。安静時の12誘導心電図は十数秒程度の記録なので、たまにしか起こらない不整脈、動悸やめまいなどの症状が出たときの心電図、夜間や早朝に起こる冠攣縮性狭心症のST変化などはとらえにくい。Holter心電図はこれらを検出するために使われる。患者には行動記録(症状が出た時刻や、そのとき何をしていたか)を付けてもらい、心電図の変化と照らし合わせる。安静を保つ必要はなく、むしろ普段どおりの活動をしてもらう。
- ×b. レニン分泌刺激試験は立位のままで行う。
誤り。代表的なレニン分泌刺激試験であるフロセミド立位負荷試験は、早朝の空腹時に安静臥位で刺激前の採血を行う。その後、フロセミド(ループ利尿薬)を静脈注射し、2時間立位を保たせてから再び採血し、血漿レニン活性(または濃度)がどれだけ上がるかを調べる。利尿薬による循環血液量の減少と立位による腎血流の低下はどちらもレニン分泌を刺激する。それでもレニンが低いままであれば、原発性アルドステロン症のようにレニンが自律的に抑えられている状態が疑われる。基準値は臥位で測定するので、「立位のまま」行うわけではない。カプトプリル負荷試験など、安静臥位で行う機能確認検査もある。なお近年のガイドラインでは、原発性アルドステロン症の確認検査としてカプトプリル負荷試験、生理食塩水負荷試験、経口食塩負荷試験が中心とされ、フロセミド立位負荷試験は負担が大きいため使われる機会が減っている。
- ○c. 排尿障害の患者では残尿量測定が必要である。
正しい。排尿障害は、尿をためる段階の障害(蓄尿障害:頻尿、尿意切迫感、尿失禁など)と、尿を出す段階の障害(尿排出障害:尿勢低下、排尿遅延、腹圧排尿、残尿感など)に分けられる。前立腺肥大症や神経因性膀胱などで尿を出し切れないと残尿が増え、尿路感染症・溢流性尿失禁・水腎症や腎機能障害の原因になる。そのため排尿障害の患者では、原因の推定や重症度の判定、治療薬の選択(抗コリン薬などは尿閉を悪化させうる)のために、排尿直後の残尿量を測る必要がある。測定は経腹壁的な超音波検査で膀胱の容積を推定する方法が体への負担が少なく一般的で、導尿によって実際に測ることもある。健常成人の残尿はほぼ0で、目安としておおむね50 mL以上を異常と考えることが多い。
- ○d. ポリソムノグラフィには脳波測定も含まれる。
正しい。ポリソムノグラフィ(終夜睡眠ポリグラフ検査、PSG)は、一晩の睡眠中に複数の生体信号を同時に記録する検査である。睡眠段階(覚醒、ノンレム睡眠の各段階、レム睡眠)は、脳波、眼球運動(眼電図)、おとがい筋の筋電図の3つを組み合わせて判定するので、脳波測定は欠かせない要素である。そのほか、鼻や口の気流、胸部と腹部の呼吸運動、経皮的動脈血酸素飽和度(SpO2)、心電図、下肢の筋電図、いびきの音、体の向きなどを記録する。閉塞性および中枢性の睡眠時無呼吸症候群、ナルコレプシー(反復睡眠潜時検査〈MSLT〉と組み合わせる)、周期性四肢運動障害、レム睡眠行動障害などの診断に用いられる。
- ×e. 糖尿病の診断には経口グルコース負荷試験でのCペプチド測定が必要である。
誤り。糖尿病の診断は血糖値とHbA1cで行い、Cペプチドの測定は不要である。糖尿病型と判定するのは、空腹時血糖値126 mg/dL以上、75 g経口ブドウ糖負荷試験(OGTT)の2時間値200 mg/dL以上、随時血糖値200 mg/dL以上、HbA1c 6.5%以上(NGSP値)のいずれかである。Cペプチドは、インスリンの前駆体であるプロインスリンが分解されるときにインスリンと同じ数だけ作られる。インスリン注射をしている患者でも体内で作られたインスリンの量(内因性インスリン分泌能)を推定できるため、1型か2型かの判断や治療方針の決定に用いられる。
主な生体機能検査のまとめ
・Holter心電図:日常生活を送りながら24時間程度記録する。一時的な不整脈、症状と心電図変化の関係、冠攣縮性狭心症、ペースメーカの作動状況などを評価する。 ・運動負荷心電図:安静時にはみられない虚血性ST変化を、運動の負荷で引き出す。 ・ポリソムノグラフィ:脳波、眼電図、おとがい筋電図(ここまでで睡眠段階を判定)、気流、呼吸運動、SpO2、心電図、下肢筋電図などを記録する。無呼吸低呼吸指数(AHI:睡眠1時間あたりの無呼吸と低呼吸の回数)で睡眠時無呼吸の重症度を評価する。 ・残尿測定:主に超音波で行う。尿流測定(最大尿流率、排尿量など)と組み合わせて、尿排出障害を評価する。
原発性アルドステロン症の検査の流れ
1. スクリーニング:アルドステロン/レニン比(ARR)を測定する。 2. 確認検査:カプトプリル負荷試験、生理食塩水負荷試験、経口食塩負荷試験(フロセミド立位負荷試験)で、アルドステロンが自律的に分泌されていることを確かめる。 3. 局在診断:副腎CTと副腎静脈サンプリングで、病変が片側か両側かを調べる。
糖尿病の診断で使う値
・糖尿病型:空腹時血糖126 mg/dL以上、OGTT 2時間値200 mg/dL以上、随時血糖200 mg/dL以上、HbA1c 6.5%以上 ・血糖値とHbA1cがともに糖尿病型であれば、1回の検査で糖尿病と診断できる。血糖値が糖尿病型で、口渇・多飲・多尿・体重減少などの典型的な症状があるか、確実な糖尿病網膜症がある場合も同様である。 ・Cペプチドは内因性インスリン分泌能の指標であり、診断基準には含まれない。
POINT
・Holter心電図は、安静ではなく日常生活を送りながら記録する。 ・レニン分泌刺激試験は、臥位での基準値をとってから刺激(フロセミドと立位など)を加える。 ・排尿障害の評価では、超音波などで残尿量を測る。 ・ポリソムノグラフィでは、睡眠段階を判定するために脳波、眼電図、おとがい筋電図を記録する。 ・糖尿病の診断は血糖値とHbA1cで行う。Cペプチドはインスリン分泌能の評価に使う。
