眠っている間に何が起きたのか―乳幼児突然死症候群の危険因子と「あおむけ・母乳・禁煙」
第107回医師国家試験 B問題 第21問
国試問題にチャレンジ
乳幼児突然死症候群について正しいのはどれか。
- a.男児よりも女児に多い。
- b.生後9~18か月に好発する。
- c.うつぶせ寝は予防法の一つである。
- d.親の喫煙はリスクファクターである。
- e.剖検で死亡原因が同定できることが多い。
対話形式の解説
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医学生
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ドクターまとめ
乳幼児突然死症候群(SIDS)は、原則1歳未満の児に予測できない突然の死をもたらし、死亡状況調査と解剖を行っても原因が特定できない除外診断の症候群です。生後2〜6か月に好発し、男児・冬季・早産児や低出生体重児にやや多いのが特徴です。3大危険因子はうつぶせ寝、妊娠中の喫煙や受動喫煙を含む周囲の喫煙、人工栄養であり、予防として「あおむけ寝・母乳育児・禁煙」の3点が啓発されています。病態としては脳幹の未熟な乳児が外的ストレス下で覚醒できないというトリプルリスクモデルが有力で、窒息・虐待・感染症・不整脈・代謝異常との鑑別のため解剖が重要です。定義と危険因子を正確に理解することは、保護者への予防指導や、突然死に直面した家族への適切な対応にも直結します。
解答・解説
正解はdです
乳幼児突然死症候群(sudden infant death syndrome: SIDS)の定義・疫学・危険因子を問う問題である。 我が国(厚生労働省のガイドライン)では、SIDSを次のように定義している。「それまでの健康状態や既往歴からは死亡が予測できず、しかも死亡状況の調査と解剖検査を行っても原因が特定できない、原則として1歳未満の児に突然の死をもたらした症候群」である。つまりSIDSは、窒息・感染症・先天異常・虐待などほかの死因をすべて除外して初めて診断される除外診断である。 疫学上の特徴は次のとおりである。 ・好発時期は生後2〜6か月である。 ・やや男児に多い。 ・冬季に多い。 ・早産児や低出生体重児に多い。 確立した危険因子は、うつぶせ寝、周囲の人の喫煙(妊娠中の母親の喫煙や、出生後の受動喫煙)、人工栄養(母乳でないこと)の3つである。これを踏まえ、予防策として「1歳になるまでは寝かせるときはあおむけに寝かせる」「できるだけ母乳で育てる」「たばこをやめる」の3点が啓発されている。 これらの知識で各選択肢の正誤を判断すればよい。
選択肢考察
- ×a. 男児よりも女児に多い。
SIDSは男児にやや多く、全体の約6割を男児が占めるとされる。女児に多いという記述は逆であり、誤りである。
- ×b. 生後9~18か月に好発する。
SIDSは原則として1歳未満の児を対象とする概念で、生後2〜6か月に好発する。生後1か月未満や生後6か月以降では少なくなる。生後9〜18か月は好発時期ではなく、しかも1歳以上の期間を含んでいるので誤りである。
- ×c. うつぶせ寝は予防法の一つである。
うつぶせ寝はSIDSの代表的な危険因子である。あおむけ寝をすすめる「Back to Sleep」などのキャンペーンが各国で行われ、SIDSの発症は大きく減った。うつぶせ寝には、柔らかい寝具による窒息や、自分の吐いた息を再び吸い込むことによる低酸素・高二酸化炭素のリスクもある。予防法ではなく、避けるべき寝かせ方である。
- ○d. 親の喫煙はリスクファクターである。
妊娠中の母親の喫煙や、出生後に同居家族の喫煙で受動喫煙することは、SIDSの確立した危険因子である。両親が喫煙する場合、喫煙しない場合に比べてSIDSの発症率が数倍に高まると報告されている。ニコチンなどが胎児期の脳幹の発達に影響し、覚醒反応や呼吸調節を障害すると考えられている。このため「たばこをやめる」ことが予防策の一つとして挙げられている。
- ×e. 剖検で死亡原因が同定できることが多い。
SIDSは、剖検と死亡状況の調査を行っても死因が特定できないことを診断の条件とする除外診断である。剖検で死因(窒息、感染症、代謝異常、虐待など)が特定できれば、その死はSIDSとは診断されない。したがって「SIDSでは剖検で死因が同定できることが多い」という記述は定義と矛盾する。死因不明の乳児突然死では、正確な診断のために解剖を行うことが推奨されている。
SIDSの概要
・定義: 原則1歳未満で、予測できない突然の死であり、死亡状況調査と解剖によっても原因が特定できないもの(除外診断)。 ・病態仮説: 覚醒反応の未熟性が関わると考えられている。呼吸や循環の調節を担う脳幹の発達が未熟な乳児に、うつぶせ寝や喫煙曝露などの外的なストレスが加わる。すると、低酸素や高二酸化炭素に陥っても目を覚ますことができず、死に至るという考え方である(トリプルリスクモデル: 脆弱な乳児、発達上の危険な時期、外的ストレスの重なり)。 ・疫学: 我が国の発症数は、あおむけ寝などの啓発が進んだ結果、1990年代から大きく減った。現在は年間数十人程度である。それでも乳児の死亡原因の上位に入っている。
危険因子
うつぶせ寝・横向き寝、母親の妊娠中の喫煙・受動喫煙、人工栄養、早産・低出生体重、男児、冬季、柔らかい寝具・かけすぎ・暖めすぎ、ソファーや大人のベッドでの添い寝など。
予防のための3つのポイント(厚生労働省)
・1歳になるまでは、寝かせるときはあおむけに寝かせる。 ・できるだけ母乳で育てる。 ・たばこをやめる(妊婦・周囲の人を含む)。
鑑別すべき病態
窒息事故、虐待(乳幼児揺さぶられ症候群を含む)、重症感染症(敗血症・髄膜炎など)、先天性心疾患・不整脈(QT延長症候群など)、先天代謝異常(脂肪酸代謝異常症など)。これらを除外するために剖検や死亡状況調査が重要となる。
POINT
・SIDSは原則1歳未満に起こり、生後2〜6か月に好発する。男児にやや多く、冬季に多い。 ・剖検や死亡状況調査でも死因が特定できないことが診断の条件である(除外診断)。 ・3大危険因子は、うつぶせ寝、喫煙(妊娠中・受動喫煙)、人工栄養である。 ・予防は、あおむけ寝・母乳育児・禁煙の3点である。
