StudyMed医師国家試験

「食べる細胞」と「見分ける細胞」―貪食能から白血球の役割分担をつかむ

第107回医師国家試験 B問題 第14問

国試問題にチャレンジ

第107回 B問題 第14問

貪食能がないのはどれか。

  1. a.好中球
  2. b.樹状細胞
  3. c.単球
  4. d.マクロファージ
  5. e.リンパ球

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は白血球の中で「貪食」という仕事を担う細胞はどれか、という基本問題だ。着眼点は、細胞がどの系統に属し、どうやって敵と戦うのか。そもそも貪食とはどういう現象か、説明できるかな。
医学生医学生
細菌などを細胞膜で包み込んで取り込んで、分解することですよね。生化学でエンドサイトーシスの一種として習いました。
ドクタードクター
その通り。おおむね0.5μm以上の比較的大きな粒子を膜で包んでファゴソームをつくり、リソソームと融合させてファゴリソソームとし、その中で殺菌・消化する。これを主な仕事とする細胞を食細胞と呼ぶんだ。代表は好中球、単球、マクロファージ、樹状細胞で、いずれも骨髄系の細胞として自然免疫の最前線に立つ。
医学生医学生
ということは、骨髄系かリンパ系かで分ければいいんですね。選択肢の中でリンパ系なのはリンパ球だけです。
ドクタードクター
そう、リンパ球が正解だ。T細胞、B細胞、NK細胞はいずれも、粒子を丸ごと食べて消化する食細胞ではない。ではほかの細胞が確かに貪食するかも確認しよう。まず好中球は?
医学生医学生
臨床実習で感染症の患者さんの膿をグラム染色したとき、好中球が細菌を取り込んでいる像を見ました。
ドクタードクター
いい経験だね。それが貪食像だ。好中球は末梢血白血球の半数以上を占める最も多い食細胞で、C5aやIL-8などの走化性因子に引き寄せられて血管外へ遊走し、抗体や補体でオプソニン化された細菌を取り込む。取り込んだ菌はNADPHオキシダーゼがつくる活性酸素やミエロペルオキシダーゼなどで殺菌される。遊走・貪食・殺菌の三拍子がそろった細胞だ。
医学生医学生
単球とマクロファージは同じ系統ですよね。違いがよくわかっていませんでした。
ドクタードクター
単球は血中を循環している段階、マクロファージは単球が組織に入って分化した段階と考えるといい。どちらも貪食能をもち、組織に入るとリソソームが豊富になって能力がさらに高まる。組織ごとに名前が変わり、肝臓のKupffer細胞、肺の肺胞マクロファージ、脳のミクログリア、骨の破骨細胞などが同じ系統に属するんだ。
医学生医学生
樹状細胞は抗原提示のイメージが強くて、食べる細胞だという印象はありませんでした。
ドクタードクター
そこは引っかかりやすいところだね。樹状細胞は皮膚のLangerhans細胞のように末梢組織で抗原を貪食や飲作用で取り込み、分解してMHC分子にのせ、リンパ節でナイーブT細胞に提示する。つまり「食べてから見せる」細胞で、最も強力な抗原提示細胞として自然免疫と獲得免疫の橋渡しをしている。
医学生医学生
一方でリンパ球は、受容体で抗原を見分けて働く細胞ということですね。
ドクタードクター
そうだ。T細胞はMHC上に提示されたペプチドをT細胞受容体で認識し、ヘルパーT細胞はサイトカインで周囲を活性化、細胞傷害性T細胞はパーフォリンやグランザイムで感染細胞を殺す。NK細胞も同様の分子で標的を傷害するけれど、取り込んで消化するわけではない。
医学生医学生
でもB細胞も抗原提示細胞ですよね。抗原を取り込んでいるなら貪食しているのでは?
ドクタードクター
鋭い疑問だ。B細胞はB細胞受容体、つまり膜型免疫グロブリンに結合した抗原を受容体依存性エンドサイトーシスで取り込み、ヘルパーT細胞に提示する。ただしこれは粒子を丸ごと食べる貪食とは区別される。専門的な抗原提示細胞は樹状細胞、マクロファージ、B細胞の3つだが、このうちB細胞だけは食細胞ではない、と押さえておこう。
医学生医学生
抗原提示細胞=食細胞ではないんですね。CBTでも混同しそうなポイントです。
ドクタードクター
最後に臨床とのつながりも見ておこう。貪食や殺菌の過程が壊れると、感染を繰り返す病気になる。代表が慢性肉芽腫症で、NADPHオキシダーゼの異常により活性酸素がつくれず、黄色ブドウ球菌などのカタラーゼ陽性菌やアスペルギルスの感染を繰り返す。Chédiak-Higashi症候群ではファゴソームとリソソームの融合が障害され、細胞内に巨大顆粒がみられるんだ。
医学生医学生
小児科の講義で、繰り返す細菌・真菌感染をみたら食細胞機能の異常も考えるよう教わりました。
ドクタードクター
その発想が大切だね。好中球は寿命が短く膿の主成分になり急性炎症の主役、マクロファージは寿命が長く慢性炎症や肉芽腫形成に関わる、と役割分担で整理しておくと、病理所見の理解にもつながるよ。

まとめ

貪食とは細菌や死細胞などの粒子を細胞膜で包み込み、ファゴソームをリソソームと融合させて分解する過程で、これを担う食細胞は好中球、単球、マクロファージ、樹状細胞といった骨髄系の細胞です。リンパ球(T細胞・B細胞・NK細胞)は受容体による抗原認識やサイトカイン、パーフォリン・グランザイムなどで働き、貪食能はもちません。B細胞は抗原提示細胞ですが、抗原はB細胞受容体を介したエンドサイトーシスで取り込むため、貪食とは区別されます。食細胞の機能障害は慢性肉芽腫症やChédiak-Higashi症候群のような易感染性疾患につながるため、細胞ごとの役割分担を理解しておくことは、免疫学の基礎だけでなく感染症診療の土台にもなります。

解答・解説

正解はeです

本問は、白血球のうちどの細胞が「貪食(ファゴサイトーシス)」を担うかを問う基本問題である。 貪食とは、細菌・死細胞・異物などの比較的大きな粒子(おおむね0.5μm以上)を細胞膜で包み込んで取り込み、ファゴソーム(食胞)を形成し、それをリソソームと融合させて(ファゴリソソーム)分解する過程をいう。この能力を主な機能としてもつ細胞を「食細胞(貪食細胞、phagocyte)」と呼び、代表は好中球、単球・マクロファージ、樹状細胞である。これらはいずれも骨髄系(ミエロイド系)の細胞で、自然免疫の最前線を担う。 一方、リンパ球(T細胞、B細胞、NK細胞)は抗原を特異的に認識する受容体や細胞傷害分子を用いて働く細胞であり、粒子を丸ごと取り込んで消化する食細胞としての機能はもたない。したがって、骨髄系の食細胞とリンパ系細胞を区別できれば正解にたどり着ける。

選択肢考察

  1. ×a.  好中球

    好中球は末梢血白血球の約半数以上を占める最も数の多い食細胞である。感染巣から放出される走化性因子(細菌由来のペプチドや補体成分C5a、IL-8〈CXCL8〉など)に引き寄せられて血管外へ遊走し、抗体や補体でオプソニン化された細菌を貪食する。取り込んだ微生物は、NADPHオキシダーゼによる活性酸素や、ミエロペルオキシダーゼ、ディフェンシンなどの顆粒内容物で殺菌される。遊走能・貪食能・殺菌能をあわせもつため、貪食能がない細胞には該当しない。

  2. ×b.  樹状細胞

    樹状細胞は、皮膚(ランゲルハンス細胞)や粘膜などの末梢組織で抗原を貪食・飲作用により取り込み、細胞内で分解してペプチド断片とし、MHC分子にのせて提示する細胞である。抗原を取り込んだ樹状細胞はリンパ節へ移動し、ナイーブT細胞に抗原を提示して活性化させる。最も強力な抗原提示細胞であり、自然免疫と獲得免疫の橋渡しを担う。貪食能をもつので該当しない。

  3. ×c.  単球

    単球は末梢血中を循環する大型の白血球で、貪食能をもつ。血管内から組織へ移行するとマクロファージ(あるいは一部は樹状細胞)へ分化し、さらに貪食・殺菌能力が高まる。単球とマクロファージはまとめて単核食細胞系と呼ばれる。貪食能をもつので該当しない。

  4. ×d.  マクロファージ

    マクロファージは単球が組織に移行して分化した細胞で、リソソームを豊富にもち、細菌・老化赤血球・アポトーシス細胞などを盛んに貪食して消化する。組織ごとに固有の名称があり、肝臓のクッパー細胞、肺の肺胞マクロファージ、脳のミクログリア、骨の破骨細胞などがこの系統に属する。貪食した抗原をMHCクラスII分子にのせてヘルパーT細胞に提示する抗原提示細胞としても働き、サイトカイン(TNF-α、IL-1、IL-6など)を産生して炎症を調節する。貪食能をもつので該当しない。

  5. ○e.  リンパ球

    リンパ球(T細胞・B細胞・NK細胞)は食細胞ではなく、貪食能をもたない。T細胞は抗原提示細胞がMHC分子上に提示したペプチドをT細胞受容体で認識して働き、ヘルパーT細胞はサイトカインで他の細胞を活性化し、細胞傷害性T細胞はパーフォリンやグランザイムで感染細胞を殺す。B細胞は抗原を認識すると形質細胞に分化して抗体を産生する。NK細胞もパーフォリン・グランザイムによって標的細胞を傷害するが、取り込んで消化するわけではない。なお、B細胞は B細胞受容体(膜型免疫グロブリン)に結合した抗原を受容体依存性エンドサイトーシスで取り込み、ヘルパーT細胞に提示する抗原提示細胞としての機能をもつが、これは粒子を丸ごと食べて処理する貪食とは区別される。したがって本問の正解である。

食細胞の種類と特徴

・好中球:急性炎症(特に細菌感染)で最初に集まる。寿命は短く(血中では1日未満)、膿の主成分となる。 ・単球:血中を循環し、組織に入るとマクロファージや樹状細胞に分化する。 ・マクロファージ:組織常在性で寿命が長い。貪食・殺菌に加え、抗原提示やサイトカイン産生を行う。慢性炎症・肉芽腫形成に関与する。 ・樹状細胞:抗原の取り込みと提示に特化し、ナイーブT細胞を活性化できる最も強力な抗原提示細胞である。 ・好酸球にも弱い貪食能があるが、主な機能は寄生虫に対する顆粒タンパク(主要塩基性タンパクなど)の放出である。

貪食の過程

①走化(化学物質の濃度勾配に沿った遊走)→②認識・付着(Fc受容体による抗体の認識、補体受容体によるC3bの認識=オプソニン化、Toll様受容体などのパターン認識受容体による病原体成分の認識)→③取り込み(ファゴソーム形成)→④ファゴリソソーム形成→⑤殺菌・消化(活性酸素、リソソーム酵素など)

貪食能障害をきたす疾患の例

・慢性肉芽腫症:NADPHオキシダーゼの異常により活性酸素がつくれず、貪食した細菌・真菌を殺菌できない。カタラーゼ陽性菌(黄色ブドウ球菌など)やアスペルギルスによる感染を繰り返す。 ・Chédiak-Higashi症候群:LYST遺伝子変異によりファゴソームとリソソームの融合が障害され、巨大顆粒がみられる。

抗原提示細胞

専門的な抗原提示細胞(プロフェッショナル抗原提示細胞)は樹状細胞、マクロファージ、B細胞の3つである。このうちB細胞だけは貪食細胞ではない点に注意する。

POINT

・貪食能をもつ細胞(食細胞):好中球、単球、マクロファージ、樹状細胞(いずれも骨髄系) ・リンパ球(T細胞・B細胞・NK細胞)は貪食能をもたない ・単球は組織に移行してマクロファージに分化する ・B細胞は抗原提示細胞だが食細胞ではない(抗原はBCRを介したエンドサイトーシスで取り込む)

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。