好酸球が増えるのはどっち?―「喘息を背景にしたアレルギー」で見抜く肺疾患
第106回医師国家試験 I問題 第31問
国試問題にチャレンジ
末梢血で好酸球増多が特徴的なのはどれか。2つ選べ。
- a.アレルギー性気管支肺アスペルギルス症
- b.びまん性汎細気管支炎
- c.Churg-Strauss症候群
- d.アミロイドーシス
- e.肺胞蛋白症
対話形式の解説
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクターまとめ
末梢血の好酸球増多は、IL-5を介するTh2優位の免疫反応を反映し、アレルギー疾患、寄生虫感染、好酸球性肺炎、血管炎、Addison病、Hodgkinリンパ腫などでみられます。アレルギー性気管支肺アスペルギルス症は喘息患者に生じるアスペルギルスへのⅠ型・Ⅲ型アレルギーで、IgE著増や中枢性気管支拡張、粘液栓を伴います。Churg-Strauss症候群(EGPA)は喘息・好酸球増多・血管炎が順に現れる疾患で、MPO-ANCA陽性は一部にとどまり、多発性単神経炎が多くみられます。一方、びまん性汎細気管支炎は好中球性炎症、アミロイドーシスは線維蛋白の沈着、肺胞蛋白症は抗GM-CSF抗体によるサーファクタント処理障害であり、好酸球増多とは結びつきません。「その病気の炎症の主役は何か」を考える習慣は、血算の解釈から鑑別診断を組み立てる力につながります。
解答・解説
正解はa, cです
末梢血の好酸球増多(一般に好酸球数500/μL以上、1,500/μL以上は高度とされる)をきたす疾患を選ぶ問題である。 好酸球は、IL-5などのサイトカインを産生する2型ヘルパーT細胞(Th2)優位の免疫反応で増加し、寄生虫感染の防御やアレルギー反応に関与する。好酸球増多をきたす原因は次のように整理できる。 ・アレルギー疾患:気管支喘息、アトピー性皮膚炎、アレルギー性鼻炎、薬剤アレルギー(DRESSなど) ・寄生虫感染:特に組織に侵入する蠕虫類(糞線虫、肺吸虫、イヌ回虫など) ・呼吸器疾患:アレルギー性気管支肺アスペルギルス症(ABPA)、好酸球性肺炎(急性・慢性)、Löffler症候群 ・血管炎:好酸球性多発血管炎性肉芽腫症(EGPA、旧称Churg-Strauss症候群) ・皮膚疾患:水疱性類天疱瘡など ・消化器疾患:好酸球性食道炎・胃腸炎 ・内分泌疾患:Addison病(副腎皮質ホルモン欠乏) ・腫瘍:Hodgkinリンパ腫、慢性骨髄性白血病、好酸球増多症候群など 選択肢のうち、この枠組みに入るのは「喘息を背景にしたⅠ型アレルギーが病態の中心」にあるABPAとEGPAである。一方、びまん性汎細気管支炎は好中球性炎症、アミロイドーシスは異常蛋白の沈着、肺胞蛋白症はサーファクタントの処理障害が病態であり、好酸球増多は特徴ではない。
選択肢考察
- ○a. アレルギー性気管支肺アスペルギルス症
アレルギー性気管支肺アスペルギルス症(ABPA)は、気道内に定着した真菌Aspergillus fumigatusに対するⅠ型(IgE介在)およびⅢ型(免疫複合体)アレルギー反応によって生じる。多くは気管支喘息や嚢胞性線維症の患者に発症する。末梢血好酸球増多、血清総IgE高値(1,000 IU/mL以上が目安)、アスペルギルス特異的IgE・沈降抗体陽性、皮膚反応陽性が特徴である。画像では中枢性気管支拡張、粘液栓による移動性浸潤影(手袋の指様陰影)がみられる。治療は全身性ステロイドが中心で、抗真菌薬(イトラコナゾールなど)を併用することもある。
- ×b. びまん性汎細気管支炎
びまん性汎細気管支炎(DPB)は、両肺の呼吸細気管支を中心とした慢性炎症で、東アジア人に多く、HLA-B54との関連が知られる。慢性副鼻腔炎を高率に合併し、湿性咳嗽・多量の膿性痰・労作時呼吸困難を呈する。炎症の主体は好中球とリンパ球であり、好酸球増多は特徴ではない。検査では寒冷凝集素価の持続的上昇、CTで小葉中心性の粒状影がみられ、進行すると緑膿菌感染に移行する。治療はエリスロマイシンなどマクロライド系抗菌薬の少量長期療法で、抗菌作用よりも抗炎症作用(好中球の遊走・活性化の抑制など)によって効果を示す。
- ○c. Churg-Strauss症候群
Churg-Strauss症候群は、現在は好酸球性多発血管炎性肉芽腫症(EGPA)と呼ばれる、主に小血管を侵す血管炎である。典型的には、①気管支喘息やアレルギー性鼻炎が先行し、②著明な末梢血好酸球増多(診断基準の目安は800/μL以上)と組織への好酸球浸潤が起こり、③その後に血管炎による症状(多発性単神経炎、紫斑、消化管潰瘍・出血、心筋炎・心外膜炎など)が出現する、という経過をたどる。検査では好酸球増多に加えIgE高値、血小板増多、赤沈亢進、リウマトイド因子陽性などがみられ、MPO-ANCA(抗好中球細胞質抗体)が陽性となるのは3〜5割程度である。治療は副腎皮質ステロイドが基本で、重症例では免疫抑制薬を併用し、難治例には抗IL-5抗体(メポリズマブ)も用いられる。
- ×d. アミロイドーシス
アミロイドーシスは、アミロイドと呼ばれる不溶性の線維状蛋白が様々な臓器の細胞外に沈着して機能障害を起こす疾患群である。免疫グロブリン軽鎖によるALアミロイドーシス、慢性炎症に続発するAAアミロイドーシス、トランスサイレチンによるATTRアミロイドーシス、透析患者のβ2ミクログロブリンによるものなどがある。診断は生検組織のCongo red染色(偏光顕微鏡でアップルグリーンの複屈折)で行う。病態にアレルギー反応は関与せず、好酸球増多は特徴ではない。
- ×e. 肺胞蛋白症
肺胞蛋白症は、肺胞内にサーファクタント(界面活性物質)由来の蛋白・脂質が異常に貯留する疾患である。大部分は自己免疫性で、抗GM-CSF(顆粒球マクロファージコロニー刺激因子)自己抗体により肺胞マクロファージのサーファクタント処理能が低下して起こる。CTではすりガラス影と小葉間隔壁の肥厚が重なる「crazy-paving pattern」、気管支肺胞洗浄液は白濁した米のとぎ汁様となり、PAS染色陽性物質を認める。血清KL-6、SP-A、SP-D、CEAの上昇がみられるが、好酸球増多は特徴ではない。治療は全肺洗浄やGM-CSF吸入療法である。
好酸球増多をきたす主な肺疾患の比較
・ABPA:喘息患者に発症。IgE著増、アスペルギルス特異的IgE陽性、中枢性気管支拡張、粘液栓。 ・急性好酸球性肺炎:喫煙開始直後などに急性発症する呼吸不全。発症初期は末梢血好酸球が正常のこともあり、気管支肺胞洗浄液(BAL)の好酸球増加が診断に重要。ステロイドが著効する。 ・慢性好酸球性肺炎:中年女性に多く、喘息合併が多い。末梢血好酸球増多を伴い、胸部X線で外側優位の浸潤影(肺水腫のネガ像)。 ・Löffler症候群:寄生虫の肺通過や薬剤による一過性・移動性の浸潤影と好酸球増多。 ・EGPA:喘息・好酸球増多・血管炎の三段階の経過。
ANCA関連血管炎の整理
・顕微鏡的多発血管炎(MPA):MPO-ANCA陽性が多い。肺胞出血・急速進行性糸球体腎炎。 ・多発血管炎性肉芽腫症(GPA、旧Wegener肉芽腫症):PR3-ANCA陽性が多い。上気道・肺・腎の病変。 ・好酸球性多発血管炎性肉芽腫症(EGPA、旧Churg-Strauss症候群):喘息と好酸球増多が先行。ANCA陽性率は3〜5割程度でMPO-ANCAが多い。多発性単神経炎の頻度が高い。
好酸球増多をきたす疾患の語呂的な整理
アレルギー、寄生虫、血管炎(EGPA)、皮膚疾患、Addison病、腫瘍(Hodgkinリンパ腫など)、薬剤、好酸球増多症候群と覚えておくとよい。逆に、ステロイド投与やCushing症候群、急性細菌感染症では好酸球は減少する。
POINT
・末梢血好酸球増多が特徴的:ABPA、EGPA(Churg-Strauss症候群)、好酸球性肺炎、寄生虫症、アレルギー疾患、Addison病、Hodgkinリンパ腫など。 ・ABPA:Ⅰ型+Ⅲ型アレルギー、IgE高値、中枢性気管支拡張、喘息患者に発症。 ・EGPA:喘息→好酸球増多→血管炎(多発性単神経炎など)。MPO-ANCA陽性は3〜5割程度。 ・びまん性汎細気管支炎は好中球性炎症(マクロライド少量長期療法)、肺胞蛋白症は抗GM-CSF抗体、アミロイドーシスは線維蛋白沈着であり、好酸球増多とは無関係。
