左を下に、右膝を前へ―直腸・肛門診察の基本体位Sims位
第106回医師国家試験 H問題 第6問
国試問題にチャレンジ
直腸・肛門診察を行う際の体位で最も適切なのはどれか。
- a.膝胸位
- b.腹臥位
- c.仰臥位
- d.Sims位
- e.jack-knife位
対話形式の解説
ドクター
医学生
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ドクターまとめ
直腸・肛門診察では、肛門部の十分な露出、示指の挿入しやすさ、患者の負担と羞恥心の少なさが求められ、これらを満たす標準体位が左側臥位で右下肢を深く屈曲させるSims位です。膝胸位は観察しやすいものの負担が大きく、骨盤位の胎位矯正で知られます。腹臥位や仰臥位では肛門部が十分に露出されず、jack-knife位は麻酔下の肛門手術用の体位です。直腸指診では括約筋の緊張、腫瘤、前立腺、Douglas窩、便や血液の性状を評価でき、診察時には口呼吸を促して括約筋をゆるめることが大切です。体位を目的と場面で整理して覚えることは、実習や臨床で患者に配慮した適切な診察を行う基本となります。
解答・解説
正解はdです
本問は、直腸指診や肛門の視診を行うときに患者にとってもらう標準的な体位を問う基本問題である。 直腸・肛門の診察では、①肛門部が十分に露出されて観察しやすいこと、②示指を直腸内へ無理なく挿入できること、③患者の身体的負担や羞恥心が少なく、安定して姿勢を保てること、が求められる。これらを満たす体位として外来診察で最も広く用いられるのが、左側臥位で膝を曲げるSims位である。 他の選択肢は、肛門の観察自体は可能でも患者の負担や羞恥心が大きいもの(膝胸位、jack-knife位)、あるいは肛門部の露出が不十分なもの(腹臥位、仰臥位)であり、各体位がどのような場面で使われるかを整理しておくことが大切である。
選択肢考察
- ×a. 膝胸位
膝胸位は、両膝をついて胸部をベッドに付け、殿部を高く突き出すうつ伏せの体位である。肛門部はよく露出されるため直腸・肛門の診察自体は可能で、かつては直腸鏡検査などにも用いられた。しかし患者の羞恥心と身体的負担が大きく、高齢者や重症者では長く保持しにくいため、一般的な診察体位としては適切でない。婦人科・産科領域では、骨盤位(逆子)の胎位矯正を期待して妊婦にとらせる体位としても知られる。
- ×b. 腹臥位
腹臥位は腹部を下にしてうつ伏せに寝た体位で、背部や腰部の診察、背部の処置などで用いる。下肢が伸びたままだと殿部が閉じて肛門部が十分に露出されず、指を挿入する角度もとりにくいため、直腸・肛門診察には向かない。
- ×c. 仰臥位
仰臥位は仰向けに寝た体位で、胸部・腹部の診察の基本体位である。腹部診察では膝を立てて腹壁の緊張をとる。この姿勢では肛門部が殿部とベッドの間に隠れてしまい、直腸・肛門の観察や直腸指診は困難である。なお、両下肢を挙上・開脚する砕石位にすれば直腸診も可能だが、単なる仰臥位では適さない。
- ○d. Sims位
Sims位は左側臥位をとり、下側の左下肢は軽く伸ばし、上側の右下肢の股関節と膝を深く曲げて前に出す体位である。殿部が自然に開いて肛門部がよく見え、直腸指診の際に示指を挿入しやすい。患者は横になっているだけなので負担が少なく、羞恥心も比較的軽い。このため直腸指診や肛門の視診・触診、肛門鏡検査などで標準的に用いられる。診察時には患者にゆっくり口で呼吸してもらい、肛門括約筋の緊張をゆるめると挿入しやすい。
- ×e. jack-knife位
jack-knife位(ジャックナイフ位)は、手術台の上で腹臥位となり、股関節部で台を折り曲げて頭側と下肢側を下げ、殿部が最も高くなる体位である。折りたたみナイフのような形からこの名がある。肛門部の視野が非常によく、痔核や痔瘻など肛門疾患の手術で用いられるが、麻酔下の手術向けの体位であり、外来での直腸・肛門診察には用いない。
診察・処置で用いる主な体位
仰臥位:胸部・腹部の診察の基本。腹部診察では膝を立てる。 腹臥位:背部の診察や処置。 側臥位:腰椎穿刺(膝を抱えて背を丸める)、直腸・肛門診察など。 Sims位:左側臥位で右下肢を曲げる。直腸・肛門診察、浣腸、坐薬の挿入など。 膝胸位:殿部を高く突き出すうつ伏せ。骨盤位の胎位矯正など。 砕石位(截石位):仰臥位で両下肢を挙上・開脚する。内診、経腟操作、膀胱鏡、会陰・肛門の手術など。 jack-knife位:腹臥位で腰部を頂点に折り曲げる。肛門疾患の手術。 Fowler位(半座位):上体を約45度起こす。呼吸困難の緩和など。
直腸指診でわかること
肛門括約筋の緊張、痔核・痔瘻・腫瘤の有無、直腸癌の触知、前立腺の大きさ・硬さ・結節(男性)、Douglas窩の圧痛や腫瘤(女性)、指に付着した血液や便の性状などを評価できる。消化管出血や急性腹症の評価でも重要な診察手技である。
POINT
・直腸・肛門診察の標準体位はSims位(左側臥位で右下肢を屈曲) ・jack-knife位は肛門手術、膝胸位は骨盤位の胎位矯正で知られる ・砕石位は内診や会陰・肛門の手術で用いる ・診察時は口呼吸を促し肛門括約筋をゆるめる
