StudyMed医師国家試験

アクセルとブレーキで読み解く胃酸分泌―ガストリンとヒスタミンが主役の理由

第106回医師国家試験 G問題 第36問

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第106回 G問題 第36問

胃酸分泌を亢進させるのはどれか。2つ選べ。

  1. a.ガストリン
  2. b.セクレチン
  3. c.ソマトスタチン
  4. d.糖依存性インスリン放出ペプチド〈GIP〉
  5. e.ヒスタミン

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は胃酸分泌の調節を問う問題だ。選択肢に並ぶのは消化管ホルモンや傍分泌物質ばかりで、それぞれが「アクセル」か「ブレーキ」かを区別できれば解ける。まずは胃酸を出す細胞から確認しよう。
医学生医学生
胃底腺の壁細胞ですよね。組織学実習で、好酸性の大きな細胞として見ました。
ドクタードクター
そう。壁細胞の管腔側にはプロトンポンプ、つまりH+,K+-ATPaseがあって、H+を胃内腔へ汲み出している。この壁細胞を直接刺激するアクセルは大きく3つある。思い出せるかな。
医学生医学生
アセチルコリンと、ガストリンと……あとはヒスタミンでしょうか。
ドクタードクター
正解。迷走神経から出るアセチルコリンはムスカリンM3受容体に、前庭部のG細胞から出るガストリンはCCK2受容体に、ECL細胞から出るヒスタミンはH2受容体に作用する。この3つが促進系の柱だよ。
医学生医学生
ガストリンは壁細胞に直接効くのが主な作用だと思っていました。
ドクタードクター
そう覚えている人は多いけど、実はガストリンの作用の多くはECL細胞を刺激してヒスタミンを放出させる経路を介している。壁細胞への直接作用もあるが、ヒスタミンを介した増幅が大きいんだ。ガストリンは食物による胃壁の伸展や蛋白分解産物、迷走神経刺激で分泌が高まる。
医学生医学生
だからヒスタミンが最終的な中心のメディエーターと言われるんですね。
ドクタードクター
その通り。ヒスタミンはH2受容体からGs蛋白を介してcAMPを増やし、プロトンポンプを活性化する。ファモチジンのようなH2受容体拮抗薬が酸分泌を抑えるのは、まさにこの経路を断つからだ。では、ブレーキ側を見ていこう。セクレチンはどうかな。
医学生医学生
十二指腸のS細胞から出て、重炭酸に富む膵液を出させるホルモンですよね。酸を中和する役なので、胃酸は増やさないと思います。
ドクタードクター
いいね。酸性の胃内容物が十二指腸に来るとセクレチンが出て、膵液で酸を中和しつつ、ガストリン分泌を抑えて胃酸分泌と胃の運動にブレーキをかける。ソマトスタチンはどうだろう。
医学生医学生
生化学の講義で「なんでも抑えるホルモン」と習いました。
ドクタードクター
まさにそう。胃ではD細胞から出て、ガストリン、ヒスタミン、壁細胞の酸分泌をすべて抑える。胃内が酸性になるとD細胞からの分泌が増える負のフィードバックで、迷走神経はD細胞を抑制してこのブレーキを外すんだ。
医学生医学生
GIPは糖尿病の講義でインクレチンとして出てきたので、インスリン分泌の話かと思っていました。胃酸と関係があるんですか。
ドクタードクター
いいところに気づいたね。GIPは十二指腸から上部空腸のK細胞から出て、血糖が高いときにインスリン分泌を増強するので糖依存性インスリン放出ペプチドと呼ばれる。でも、もともとは胃酸分泌を抑える作用から「胃抑制ペプチド」と名付けられた経緯があるんだ。だからブレーキ側だよ。
医学生医学生
整理すると、アクセルはアセチルコリン、ガストリン、ヒスタミン、ブレーキはソマトスタチン、セクレチン、GIPということですね。
ドクタードクター
その通り。食事の流れで考えると覚えやすい。見る・におう・味わうで迷走神経が働く脳相、胃壁の伸展などでガストリンが出て最も酸分泌が多い胃相、そして食物が十二指腸に入ってセクレチンやGIP、CCKなどが酸分泌を抑える腸相だ。
医学生医学生
十二指腸に酸が届いたら「もう十分」と胃に知らせる仕組みなんですね。
ドクタードクター
うまい表現だ。臨床面では、ガストリン産生腫瘍によるZollinger-Ellison症候群が重要だよ。ガストリン過剰で胃酸が大量に出て、多発性・難治性の消化性潰瘍や下痢を起こす。また、PPIやP-CABはプロトンポンプそのものを抑えるのでH2受容体拮抗薬より強力だけど、酸分泌が抑えられるとフィードバックで血中ガストリンは上昇する。ガストリン値を解釈するときは、内服薬の確認を忘れないようにしよう。

まとめ

胃酸は胃底腺の壁細胞にあるプロトンポンプから分泌され、その主な促進因子は迷走神経のアセチルコリン(M3受容体)、G細胞のガストリン(CCK2受容体)、ECL細胞のヒスタミン(H2受容体)の3つです。ガストリンの作用の多くはECL細胞からのヒスタミン放出を介しており、ヒスタミンは酸分泌の中心的メディエーターといえます。一方、D細胞のソマトスタチン、十二指腸から分泌されるセクレチンやGIPは胃酸分泌を抑制し、過剰な酸分泌を防ぐ負のフィードバックを担っています。この促進系と抑制系の整理は、H2受容体拮抗薬やPPIの作用機序、Zollinger-Ellison症候群、PPI内服中の高ガストリン血症といった臨床的な知識を理解する土台になります。

解答・解説

正解はa, eです

胃酸(塩酸)は胃底腺に存在する壁細胞が分泌する。壁細胞の管腔側膜にはプロトンポンプ(H+,K+-ATPase)があり、細胞内のH+を胃内腔へ汲み出すことで強酸性の胃液が作られる。 壁細胞の酸分泌を直接高める刺激は、大きく次の3つに整理できる。 1. アセチルコリン(ACh):迷走神経(副交感神経)の終末から放出され、壁細胞のムスカリンM3受容体に作用する。 2. ガストリン:胃前庭部(幽門部)のG細胞から血中に分泌されるホルモンで、CCK2受容体(CCK-B受容体、ガストリン受容体とも呼ぶ)に作用する。 3. ヒスタミン:胃底腺にある腸クロム親和性細胞様細胞(ECL細胞)から傍分泌(近くの細胞に局所的に作用する分泌様式)され、壁細胞のH2受容体に作用する。 一方、胃酸分泌を抑える側には、D細胞のソマトスタチン、十二指腸から分泌されるセクレチンやGIP(糖依存性インスリン放出ペプチド)などがあり、酸が出すぎないように負のフィードバックをかけている。 したがって本問は「促進系か抑制系か」を区別できればよく、促進系に属するのはガストリンとヒスタミンである。

選択肢考察

  1. ○a.  ガストリン

    ガストリンは主に胃前庭部のG細胞(一部は十二指腸にも存在)から分泌される消化管ホルモンである。食物による胃壁の伸展、蛋白質の分解産物(ペプチド・アミノ酸)、迷走神経刺激(ガストリン放出ペプチド〈GRP〉を介する)で分泌が高まる。ECL細胞のCCK2受容体を刺激してヒスタミンを放出させる経路が主で、壁細胞にも直接作用し、胃酸分泌を強く促進する。さらにペプシノゲン分泌の促進、胃粘膜の増殖(栄養作用)、下部食道括約筋の収縮なども起こす。胃内pHが低下するとD細胞からのソマトスタチンを介して分泌が抑えられる。したがって胃酸分泌を亢進させる物質に当たる。

  2. ×b.  セクレチン

    セクレチンは十二指腸から上部空腸の粘膜にあるS細胞から分泌される。酸性の胃内容物が十二指腸に流入してpHが下がると分泌が高まる。膵導管細胞に作用して重炭酸イオン(HCO3−)に富む膵液を分泌させ、流入した酸を中和する。同時にG細胞からのガストリン分泌を抑え、胃酸分泌と胃の運動を抑制する。したがって胃酸分泌を抑制する側であり、誤りである。

  3. ×c.  ソマトスタチン

    ソマトスタチンは視床下部、胃・腸管粘膜のD細胞、膵ランゲルハンス島のδ細胞などから分泌される。「多くのホルモン分泌を抑制するホルモン」であり、胃ではG細胞からのガストリン分泌、ECL細胞からのヒスタミン放出、壁細胞の酸分泌をいずれも抑える。胃内が酸性になるとD細胞からの分泌が増えて酸分泌にブレーキをかけ、迷走神経(ACh)はD細胞を抑制することでこのブレーキを外す。膵外分泌、インスリン・グルカゴン分泌、成長ホルモン分泌、腸管運動も抑制する。したがって胃酸分泌を抑制する物質であり、誤りである。

  4. ×d.  糖依存性インスリン放出ペプチド〈GIP〉

    GIPは十二指腸から上部空腸のK細胞から、糖や脂肪の摂取に反応して分泌される。血糖が高いときに限り膵β細胞からのインスリン分泌を増強するため「糖依存性」と呼ばれる。回腸・大腸のL細胞から分泌されるGLP-1(グルカゴン様ペプチド-1)とともにインクレチンと総称される。かつては胃酸分泌を抑制する作用から「胃抑制ペプチド(gastric inhibitory polypeptide)」と命名された経緯があり、胃酸分泌と胃運動を抑える側に働く。したがって誤りである。

  5. ○e.  ヒスタミン

    ヒスタミンは胃底腺のECL細胞から放出され、隣接する壁細胞のH2受容体に結合する。H2受容体はGs蛋白と共役し、細胞内cAMPを増やしてプロトンポンプを活性化させ、胃酸分泌を促進する。ガストリンやAChによる刺激の多くはこのヒスタミンを介して増幅されるため、ヒスタミンは酸分泌の最終的な中心的メディエーターといえる。この作用を遮断するH2受容体拮抗薬(ファモチジンなど)が胃酸分泌抑制薬として消化性潰瘍や胃食道逆流症の治療に使われることからも理解できる。したがって正しい。

胃酸分泌の3相

・脳相:食物を見る・におう・味わう・咀嚼するといった刺激が迷走神経を介して酸分泌を起こす。 ・胃相:食物が胃に入り、胃壁の伸展や蛋白分解産物によってガストリン分泌が高まる。酸分泌量が最も多い相である。 ・腸相:食物が十二指腸に入ると、はじめはわずかに促進されるが、主としてセクレチン、GIP、コレシストキニン(CCK)などにより胃酸分泌は抑制される。

促進系の相互関係

迷走神経終末のAChは壁細胞のM3受容体を直接刺激するほか、GRPを介してG細胞にガストリンを分泌させ、さらにD細胞を抑制してソマトスタチンによるブレーキを外す。ガストリンはECL細胞に作用してヒスタミンを放出させ、ヒスタミンが壁細胞のH2受容体を刺激する。3つの刺激が同時に加わると、単独の和よりも大きな分泌が起こる(相乗作用)。

主な消化管ホルモン

・ガストリン:G細胞(胃前庭部)。胃酸分泌促進、胃粘膜の増殖。 ・セクレチン:S細胞(十二指腸〜上部空腸)。重炭酸に富む膵液分泌、胃酸分泌抑制。 ・CCK:I細胞(十二指腸〜上部空腸)。胆嚢収縮、膵酵素分泌、胃排出抑制。 ・GIP:K細胞(十二指腸〜上部空腸)。糖依存性インスリン分泌促進、胃酸分泌抑制。 ・GLP-1:L細胞(回腸〜大腸)。糖依存性インスリン分泌促進、グルカゴン抑制、胃排出遅延。 ・ソマトスタチン:D細胞(胃・腸・膵島δ細胞)。多くの消化管ホルモン・外分泌の抑制。

臨床との関連

・ガストリン産生腫瘍(ガストリノーマ)ではガストリンが過剰となり、胃酸の大量分泌から多発性・難治性の消化性潰瘍や下痢を来す(Zollinger-Ellison症候群)。 ・プロトンポンプ阻害薬(PPI)やカリウムイオン競合型アシッドブロッカー(P-CAB)はプロトンポンプそのものを抑えるため、H2受容体拮抗薬より強力に酸分泌を抑える。酸分泌が抑えられるとフィードバックで血中ガストリンは上昇する。

POINT

・胃酸分泌の促進因子は、ACh(M3受容体)、ガストリン(CCK2受容体)、ヒスタミン(H2受容体)の3つである。 ・ガストリンの作用の多くはECL細胞からのヒスタミン放出を介する。 ・抑制因子は、ソマトスタチン、セクレチン、GIP、CCKなどである。 ・GIPとGLP-1はインクレチンであり、GIPは胃酸分泌を抑制する。 ・H2受容体拮抗薬・PPIは酸分泌の最終段階を抑える薬である。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。