StudyMed医師国家試験

「重力を抜けば動く」はどの段階?―徒手筋力テストの境界線を読み解く

第106回医師国家試験 F問題 第9問

国試問題にチャレンジ

第106回 F問題 第9問

徒手筋力テストで,重力の影響を除いた肢位であれば全関節可動域を動かすことができる最小の段階はどれか。

  1. a.5〈Normal〉
  2. b.4〈Good〉
  3. c.3〈Fair〉
  4. d.2〈Poor〉
  5. e.1〈Trace〉

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は徒手筋力テスト、いわゆるMMTの段階判定を問う問題だ。0から5までの6段階には、それぞれ明確な判定基準がある。カギは「重力に抗せるか」と「抵抗に抗せるか」という2つの分かれ目、そして設問の「最小の段階」という言葉だよ。まず、MMTがどんな検査か説明できるかな。
医学生医学生
器具を使わずに、検者の手の抵抗と重力を負荷にして筋力を評価する検査ですよね。OSCEの神経診察で練習しました。
ドクタードクター
その通り。では最初の分かれ目。重力に抗して全可動域を動かせるかどうかは、何段階と何段階の境界になる?
医学生医学生
3と2の境界だったと思います。重力に勝てれば3以上、勝てなければ2以下です。
ドクタードクター
正解。3以上は検者の抵抗の強さで分けて、抵抗がなければ全可動域を動かせるのが3〈Fair〉、中等度の抵抗に抗せるのが4〈Good〉、強い抵抗にも抗せるのが5〈Normal〉だ。2以下は、重力を除けば全可動域を動かせるのが2〈Poor〉、関節は動かないけれど筋収縮が見える・触れるのが1〈Trace〉、収縮すらないのが0だよ。
医学生医学生
「重力の影響を除いた肢位」というのは、具体的にどんな姿勢なんでしょうか。
ドクタードクター
いい質問だね。たとえば肘の屈曲を調べるなら、前腕を台の上に置いて水平方向に滑らせるように動かしてもらう。運動の方向を重力と直交させることで、重力の負荷を受けずに動かせるかを見るんだ。
医学生医学生
なるほど。そうすると設問の状態は、重力には勝てないけれど水平面なら最後まで動かせる、ということですね。正直、最初は重力に関係する3が答えかと思いました。
ドクタードクター
そこが引っかかりやすいところだ。3は重力に抗して全可動域を動かせる段階だから、重力除去肢位での条件より一段上の能力が必要になる。設問の状態は、まさに2〈Poor〉の定義そのものなんだ。
医学生医学生
でも、3や4、5の人も重力を除けば当然動かせますよね。
ドクタードクター
そう、だから設問は「最小の段階」と聞いているんだ。条件を満たす段階は2から5まであるけれど、最も低いのは2。4や5は抵抗にも抗せる段階だから、条件は満たしても最小ではないね。
医学生医学生
1〈Trace〉は筋がピクッと収縮するだけで、関節は動かないから条件を満たさない、ということですね。
ドクタードクター
その通り。1は重力を除いても関節運動が起こらないから外れる。これで全段階の位置づけが整理できたね。
医学生医学生
リハビリテーション科の実習で、理学療法士さんが「3あるかどうかが大事」と話していたのを思い出しました。
ドクタードクター
臨床的にも3は重要な境界なんだ。重力に抗して肢を持ち上げられるかどうかは、日常生活動作が自力でできるかの目安になる。たとえば脳卒中後の片麻痺や末梢神経障害の経過を追うとき、3に届くかどうかでリハビリの目標設定も変わってくるよ。
医学生医学生
MMTは検者によって結果がぶれることはないんですか。
ドクタードクター
鋭い指摘だね。MMTは検者の主観が入る順序尺度で、特に4と5の区別は検者の力量に左右されやすい。定量的に評価したいときは握力計やハンドヘルドダイナモメーターを使う。また、痛みや関節拘縮がある場合、意識障害や指示理解が難しい場合には正確に判定できないことも覚えておこう。Danielsの方法では、必要に応じて「+」「−」を付けて細かく表現することもあるんだ。

まとめ

徒手筋力テスト(MMT)は0〜5の6段階で筋力を評価し、「重力に抗して全可動域を動かせるか」が3と2の境界になります。3以上は検者の抵抗の強さ(なし・中等度・強い)で3・4・5を、2以下は重力を除いた肢位で全可動域を動かせるか(2)、筋収縮のみか(1)、収縮もないか(0)で区別します。重力除去肢位(水平面での運動など)で全可動域を動かせる最小の段階は2〈Poor〉であり、「最小」という問い方に注意して定義に立ち返ることが大切です。臨床では3が日常生活動作の目安となる重要な境界である一方、MMTは主観の入る順序尺度で、痛みや拘縮、理解不良があると判定が難しくなります。各段階の定義を正確に押さえることは、神経診察やリハビリテーションでの評価・経過観察の基本となります。

解答・解説

正解はdです

徒手筋力テスト(manual muscle testing:MMT)は、器具を使わずに検者の手と重力を負荷として筋力を評価する方法で、0〜5の6段階で判定する。判定の分かれ目は大きく2つある。 1つ目は「重力に抗して全可動域を動かせるか」で、これができれば3以上、できなければ2以下となる。2つ目は、3以上の場合は「検者の抵抗にどこまで耐えられるか」(3:抵抗なし、4:中等度の抵抗、5:強い抵抗)、2以下の場合は「重力を除いた肢位で全可動域を動かせるか(2)、関節運動はないが筋収縮を触知・視認できるか(1)、収縮もないか(0)」である。 本問の「重力の影響を除いた肢位(例えば肘屈曲なら前腕を台の上で水平方向に滑らせる姿勢)であれば全可動域を動かせる」は、重力に抗することはできないが関節運動は完全に可能な状態を指し、これは2〈Poor〉の定義そのものである。「最小の段階」と問われているので、この条件を満たす段階のうち最も低い2が答えとなる(3以上も当然この条件を満たすが、最小ではない)。

選択肢考察

  1. ×a.  5〈Normal〉

    5は重力に抗して全可動域を動かし、さらに検者が加える強い(最大の)抵抗にも抗して肢位を保持できる段階で、正常筋力に相当する。重力除去肢位で動かせるのは当然だが、「最小の段階」ではない。

  2. ×b.  4〈Good〉

    4は重力に抗して全可動域を動かせ、中等度(ある程度)の抵抗にも抗することができるが、強い抵抗には負けてしまう段階である。条件を満たすが最小ではない。

  3. ×c.  3〈Fair〉

    3は重力に抗して全可動域を動かせるが、検者の抵抗が加わると保持できない段階である。重力に抗せるかどうかが3と2の境界であり、3は重力除去肢位の条件よりも一段上の能力を要する。したがって最小ではない。

  4. ○d.  2〈Poor〉

    2は重力に抗して動かすことはできないが、重力の影響を取り除いた肢位(水平面での運動など)であれば全可動域を動かせる段階と定義される。設問の条件を満たす段階のうち最も低いのが2であり、これが正解である。

  5. ×e.  1〈Trace〉

    1は関節運動は起こらないが、筋の収縮を視診または触診で確認できる段階である。重力を除いても関節を動かすことはできないため、設問の条件を満たさない。

MMTの6段階

5〈Normal〉:重力および強い抵抗に抗して全可動域を動かせる(正常) 4〈Good〉:重力および中等度の抵抗に抗して全可動域を動かせる 3〈Fair〉:重力に抗して全可動域を動かせるが、抵抗には抗せない 2〈Poor〉:重力を除いた肢位なら全可動域を動かせる 1〈Trace〉:関節運動はないが筋収縮を認める 0〈Zero〉:筋収縮も認めない

補足

・Daniels(ダニエルズ)の方法が代表的で、必要に応じて「+」「−」を付けてさらに細かく表すこともある。 ・3は日常生活動作で肢を持ち上げられるかどうかの目安となり、臨床上の重要な境界である。 ・MMTは検者の主観が入る順序尺度であり、特に4と5の区別は検者の力量に左右されやすい。定量評価が必要な場合は握力計やハンドヘルドダイナモメーターなどを用いる。 ・痛み、関節拘縮(可動域制限)、意識障害や理解不良がある場合は正確な判定が難しい。

POINT

・MMTは0〜5の6段階。 ・重力に抗して全可動域を動かせるかどうかが3と2の境界。 ・2〈Poor〉=重力を除けば全可動域を動かせる。 ・1〈Trace〉=筋収縮のみで関節運動なし。0=収縮なし。 ・3以上は抵抗の強さ(なし・中等度・強い)で3・4・5を区別する。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。