StudyMed医師国家試験

「説明しました」では終わらない―インフォームドコンセントの本当の意味

第106回医師国家試験 F問題 第14問

国試問題にチャレンジ

第106回 F問題 第14問

インフォームドコンセントについて正しいのはどれか。

  1. a.3歳児から取得できる。
  2. b.医師による病状説明を指す。
  3. c.一度同意すると撤回できない。
  4. d.セカンドオピニオンと同義である。
  5. e.目的は患者の人権を尊重することである。

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は、医療の土台ともいえるインフォームドコンセントの問題だ。言葉はよく知っていても、その中身や目的を正確に説明できるかが問われている。まずは、インフォームドコンセントを日本語にするとどうなるか考えてみよう。
医学生医学生
「説明と同意」と習いました。医療倫理の講義で最初に出てきた言葉です。
ドクタードクター
そう訳されることが多いね。ただ、より正確には「十分な説明を受け、理解したうえでの同意」だ。医師が病状や検査・治療について情報を提供し、患者がそれを理解して、自分の意思で同意する、あるいは拒否したり選んだりする。この一連の過程全体を指すんだ。
医学生医学生
ということは、医師が病状を説明しただけではインフォームドコンセントにならないんですね。
ドクタードクター
その通り。病状説明は前半の「情報提供」にすぎない。患者が理解し、自ら決めるところまで含めて初めて成立する。説明の中身も病状だけでなく、治療の目的や方法、期待される効果、危険性や副作用、ほかの選択肢、治療しない場合の見通しまで含まれる。
医学生医学生
臨床実習で外科を回ったとき、手術前の説明に同席しました。合併症の確率や、手術以外の選択肢まで丁寧に話していて、時間がかかるものだなと思いました。
ドクタードクター
いい経験をしたね。あれこそが本来の姿だ。では、なぜそこまで手間をかけるのか。目的は何だと思う?
医学生医学生
患者さんに納得してもらうため……でしょうか。トラブルを防ぐ意味もありそうです。
ドクタードクター
結果的に信頼関係が築かれ、トラブルの予防にもつながるけれど、根本にあるのは患者の自己決定権、つまり自律の尊重だ。自分の身体に何をされるかは本人が決めるべきだ、という人権の考え方なんだ。かつての医療では、医師が患者のためと考えて方針を一方的に決めるパターナリズムが主流だった。そこからの転換がインフォームドコンセントなんだよ。だから「目的は患者の人権を尊重すること」が正解になる。
医学生医学生
なるほど。では年齢の話ですが、3歳の子どもから同意をとることはできないですよね。
ドクタードクター
できない。インフォームドコンセントの前提には、説明を理解し判断できる能力、つまり同意能力が必要だ。3歳児が治療の利益と危険を比べて判断するのは無理だから、親権者などの保護者が代わりに同意する。これを代諾という。ただし子どもにも理解度に応じて説明し、本人の納得を得る努力をする。これをインフォームドアセントと呼ぶんだ。
医学生医学生
小児科実習で、採血の前に先生が子どもに絵を見せながら説明していたのは、アセントのためだったんですね。
ドクタードクター
まさにそうだね。次に、同意の撤回はどうだろう。一度サインしたら取り消せないと思う?
医学生医学生
手術直前にやめたいと言われたら病院は困りそうですが……撤回はできるはずです。
ドクタードクター
正しい。同意はいつでも撤回できるし、撤回したことで不利益を受けてはならない。撤回の自由があってこそ、自己決定権が本当に守られる。臨床研究でも、参加者はいつでも同意を撤回できることを説明文書に明記しなければならないんだ。
医学生医学生
セカンドオピニオンとインフォームドコンセントは、同じ意味ではないですよね。
ドクタードクター
別の概念だ。セカンドオピニオンは、診断や治療方針について主治医以外の医師に意見を求めること。患者が納得して選ぶための手段の一つで、インフォームドコンセントを支える仕組みではあるけれど、同義ではない。患者が希望したら、主治医は診療情報提供書や検査結果を用意して協力するのが望ましい。
医学生医学生
整理すると、説明だけでなく理解と自発的な同意まで含み、同意能力が前提で、いつでも撤回できる。目的は患者の人権の尊重、ということですね。
ドクタードクター
完璧だ。最後に発展知識を押さえておこう。この考え方の出発点は、第二次世界大戦中の非倫理的な人体実験への反省から生まれたニュルンベルク綱領で、そこから臨床研究の倫理原則であるヘルシンキ宣言、患者の権利に関するリスボン宣言へと発展した。日本でも医療法に、医療の担い手は適切な説明を行い理解を得るよう努めなければならないと定められている。
医学生医学生
逆に、同意をとれない場面もありますよね。救急外来で意識のない患者さんが運ばれてきたときとか。
ドクタードクター
いい指摘だ。生命に関わる緊急事態で本人の意思が確認できず、家族にも連絡がつかない場合などは、同意なしで救命処置を行うことが許容される。それから、説明を受け理解したうえで治療を拒否することも、尊重すべき自己決定だということを忘れないでほしい。医師として「勧めた治療を断られた」ときこそ、インフォームドコンセントの本質が試されるんだ。

まとめ

インフォームドコンセントは「十分な説明を受け、理解したうえでの同意」であり、医師の説明だけでなく、患者の理解と自発的な同意・選択・拒否までを含む過程です。その目的は患者の自己決定権(自律)、すなわち人権の尊重であり、医師が一方的に方針を決めるパターナリズムからの転換として確立しました。成立には同意能力が前提で、乳幼児などでは代諾者から同意を得つつ、本人にも理解に応じた説明を行ってインフォームドアセントを得るよう努めます。同意はいつでも撤回でき、撤回による不利益があってはならず、主治医以外の意見を聞くセカンドオピニオンとは別の概念です。ニュルンベルク綱領からヘルシンキ宣言、リスボン宣言へと続く歴史を踏まえて理解しておくことは、日々の診療で患者と向き合う姿勢の基礎になります。

解答・解説

正解はeです

インフォームドコンセント(informed consent、IC)は「説明を受け、理解したうえでの同意」と訳される。医師が病状・検査・治療について十分な情報を提供し、患者がそれを理解したうえで、自らの意思で医療行為に同意する(あるいは拒否したり、複数の選択肢から選んだりする)一連の過程を指す。

ICの目的

ICの根底にある考え方は、患者の自己決定権(自律)の尊重である。かつての医療では、医師が患者にとって最善と考える方針を決め、患者はそれに従うというパターナリズム(父権主義)が一般的であった。これに対し、自分の身体に何をされるかは本人が決めるべきであるという人権思想が広まり、ICが医療の基本原則として確立された。したがって「目的は患者の人権を尊重することである」が正しい。

ICを構成する要素

ICが有効に成立するためには、①患者に同意能力(説明を理解し、判断する能力)があること、②必要な情報が十分に開示されること、③患者がその情報を理解すること、④強制されず自発的に決定すること、⑤同意(または拒否・選択)の意思を示すこと、が必要である。

考え方

選択肢を検討する際は、ICは「説明」だけでなく「理解に基づく同意」まで含む概念であること、同意能力が必要であること、同意はいつでも撤回できること、セカンドオピニオンとは別の概念であること、を押さえればよい。

選択肢考察

  1. ×a.  3歳児から取得できる。

    誤り。ICが成立するには、患者が説明内容を理解し、自ら判断できる能力(同意能力)が必要である。3歳児が病状や治療の利益・危険を理解して判断することはできないため、3歳児本人からICを得ることはできない。小児では、親権者などの保護者(代諾者)から同意を得る。ただし、子どもにも理解の程度に応じて説明を行い、本人の納得(インフォームドアセント)を得るよう努めることが求められている。

  2. ×b.  医師による病状説明を指す。

    誤り。医師による病状説明はICの前半部分(情報の提供)にすぎない。ICは、その説明を患者が理解し、自らの意思で同意あるいは選択するところまでを含む概念である。説明の対象も病状だけでなく、検査や治療の目的・方法・予想される効果・危険性や副作用・他の選択肢・治療を行わない場合の見通しなどに及ぶ。

  3. ×c.  一度同意すると撤回できない。

    誤り。患者は、いったん同意した後でも、医療の過程のどの時点でも同意を撤回できる。撤回しても患者が不利益を受けないことが保障されていなければならない。撤回の自由が保障されていることで、自己決定権が実質的に守られる。臨床研究においても、参加者はいつでも同意を撤回できることを説明文書に明記することが求められている。

  4. ×d.  セカンドオピニオンと同義である。

    誤り。セカンドオピニオンとは、診断や治療方針について、主治医以外の医師に意見を求めることである。患者が納得して治療法を選ぶための手段の一つであり、ICを支える仕組みとはいえるが、ICそのものとは別の概念である。セカンドオピニオンを求める際には、主治医が診療情報提供書や検査結果を提供して協力することが望ましい。

  5. ○e.  目的は患者の人権を尊重することである。

    正しい。ICの目的は、患者が自分の受ける医療について十分な情報に基づいて自ら決定できるようにし、その自己決定権(自律)を尊重することである。これは患者の人権の尊重にほかならない。医療者が一方的に方針を決めるパターナリズムからの転換として位置づけられ、世界医師会のリスボン宣言(患者の権利に関する宣言)でも、患者の自己決定の権利や情報を得る権利が示されている。

ICの歴史的背景

ICの概念は、第二次世界大戦中の非倫理的な人体実験への反省から生まれたニュルンベルク綱領(1947年)で被験者の自発的同意の必要性が示されたことに始まり、世界医師会のヘルシンキ宣言(1964年、臨床研究の倫理原則)、リスボン宣言(1981年、患者の権利)へと発展した。我が国でも医療法に、医療の担い手は医療を提供するに当たって適切な説明を行い、医療を受ける者の理解を得るよう努めなければならないと規定されている。

同意能力がない場合

乳幼児や、意識障害・重度の認知症などで判断能力が十分でない患者では、家族などの代諾者から同意を得る。小児では、理解度に応じた説明を行って本人の了解(インフォームドアセント)を得るよう努める。

ICが省略されうる場面

生命に関わる緊急事態で本人の意思を確認できず、代諾者にも連絡がつかない場合などには、ICを得ずに必要な救命処置を行うことが許容される。

関連する用語

・インフォームドチョイス: 複数の選択肢について説明を受けたうえで、患者自身が選択すること。 ・インフォームドリフューザル(インフォームドディセント): 説明を受け理解したうえで医療行為を拒否すること。これも尊重されるべき自己決定である。 ・セカンドオピニオン: 主治医以外の医師の意見を求めること。 ・パターナリズム: 医師が患者のためと考えて一方的に方針を決める考え方。

POINT

・ICは「説明」と「理解に基づく同意(または選択・拒否)」の両方から成る。 ・目的は患者の自己決定権(自律)=人権の尊重であり、パターナリズムからの転換である。 ・同意能力が前提。乳幼児や判断能力を欠く患者では代諾者から同意を得る(小児にはアセントを得る努力をする)。 ・同意はいつでも撤回でき、撤回による不利益があってはならない。 ・セカンドオピニオンは主治医以外の医師の意見を聞くことで、ICとは別の概念。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。