胸・お腹・右腕で何パーセント?―「9の法則」で熱傷の広さをすばやく見積もる
第106回医師国家試験 C問題 第17問
国試問題にチャレンジ
36歳の男性。自宅で誤って熱湯を浴びたため搬入された。意識は清明。身長178 cm,体重82 kg。体温36.8℃。脈拍88/分,整。血圧126/70 mmHg。呼吸数24/分。胸部,腹部および右上肢全体に紅斑とびらんとを認める。 この患者の受傷面積の割合として正しいのはどれか。 ただし,「9の法則」で計算するものとする。
- a.9%
- b.18%
- c.27%
- d.36%
- e.45%
対話形式の解説
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクターまとめ
成人の熱傷面積は「9の法則」で見積もり、頭頸部9%、片側上肢9%、体幹前面18%(胸部9%+腹部9%)、体幹後面18%、片側下肢18%、陰部1%と配分します。紅斑のみのI度熱傷は面積に含めず、びらんや水疱を伴うII度以上を数えるため、胸部・腹部・右上肢のII度熱傷では9%×3=27%となります。小児では頭部の比率が大きいため5の法則やLund and Browderの法則を用い、小範囲の熱傷には手掌法が便利です。成人でII度15〜20%を超えると熱傷ショックのリスクがあり、Baxterの公式で初期輸液量を見積もったうえで尿量を指標に調整します。正確な面積評価は重症度判定と輸液計画の土台であり、救急外来で即座に使える基本技能です。
解答・解説
正解はcです
所見の整理
・36歳の男性、熱湯による熱傷(高温液体による熱傷はscald burnと呼ばれる) ・意識清明、バイタルサインは脈拍88/分、血圧126/70 mmHgとショックには至っていない。呼吸数は24/分とやや多い。 ・受傷部位:胸部、腹部、右上肢全体 ・所見:紅斑とびらん
熱傷深度の読み取り
紅斑のみで水疱やびらんを伴わないものはI度熱傷(表皮のみの損傷)で、数日で瘢痕を残さず治るため、通常は熱傷面積の計算に含めない。一方、びらんは水疱が破れて真皮が露出した状態であり、II度熱傷(真皮までの損傷)を示す。本例では記載された3部位にびらんを認め、II度熱傷の範囲として面積を算出する。
9の法則による計算
成人の体表面積を9%またはその倍数の区画に分けて見積もる方法である。 ・胸部(体幹前面の上半分):9% ・腹部(体幹前面の下半分):9% ・右上肢全体:9% 合計 9% + 9% + 9% = 27% したがって受傷面積は27%となる。
臨床的な意味
成人でII度以上の熱傷が15〜20%を超えると、血管透過性の亢進により大量の血漿成分が血管外へ漏出し、熱傷ショックを起こしうる。本例の27%はこれを上回るため、初期輸液(乳酸リンゲル液など細胞外液)による循環管理が必要となる規模である。
選択肢考察
- ×a. 9%
9%は上肢1本、あるいは胸部または腹部の一区画のみに相当する値である。本例では胸部、腹部、右上肢の3区画が受傷しているため過小評価である。
- ×b. 18%
18%は2区画分(例えば体幹前面全体=胸部+腹部)に相当する。右上肢の9%を加算していないため誤りである。
- ○c. 27%
9の法則では胸部9%、腹部9%、一側上肢9%である。胸部・腹部・右上肢全体の3区画を合計すると27%となり、本例の受傷面積として正しい。
- ×d. 36%
36%は4区画分であり、例えば体幹前面18%に背部の18%を加えた値などに相当する。本例では背部の受傷は記載されておらず、過大評価である。
- ×e. 45%
45%は5区画分に相当する値であり、本例の受傷範囲(3区画)より明らかに大きい。
9の法則(成人)
・頭頸部:9% ・一側上肢:9%(両上肢で18%) ・体幹前面:18%(胸部9%+腹部9%) ・体幹後面:18%(背部上半9%+腰臀部9%) ・一側下肢:18%(両下肢で36%) ・陰部:1% 合計100%となる。
その他の面積算定法
・5の法則:小児・幼児に用いる。小児は体に比べ頭部の割合が大きいため、成人の9の法則では誤差が大きくなる。 ・Lund and Browderの法則:年齢ごとに頭部・大腿・下腿の比率を補正した図表を用いる方法で、最も正確とされる。 ・手掌法:患者本人の手掌(指を含む)を約1%として数える。小範囲や散在する熱傷の見積もりに便利である。
熱傷深度
・I度(表皮熱傷):紅斑、疼痛。数日で瘢痕なく治癒。面積計算には含めない。 ・浅達性II度(SDB):水疱形成、水疱底は赤色、強い疼痛。1〜2週程度で治癒し、瘢痕は残りにくい。 ・深達性II度(DDB):水疱底は白色調、痛覚は鈍い。治癒に3〜4週かかり、肥厚性瘢痕を残しやすい。 ・III度(全層熱傷):皮膚全層の壊死。白色〜黒色の羊皮紙様で痛覚は消失。原則として植皮が必要。
重症度評価と初期輸液
・熱傷指数(Burn Index)=III度熱傷面積(%)+1/2×II度熱傷面積(%)。10〜15以上で重症とされる。 ・Artzの基準では、成人でII度30%以上またはIII度10%以上は重症熱傷として熱傷専門施設での治療の対象、II度15〜30%は中等症として一般病院での入院治療の対象とされる。本例のII度27%は中等症に当たる。 ・初期輸液量の目安としてBaxter(Parkland)の公式:乳酸リンゲル液 4 mL×体重(kg)×熱傷面積(%)を最初の24時間で投与し、その半量を受傷後最初の8時間で投与する。近年は尿量(成人0.5 mL/kg/時程度)を指標に輸液量を調整することが重視される。
POINT
・9の法則(成人):頭頸部9、上肢各9、体幹前面18、体幹後面18、下肢各18、陰部1(%)。 ・胸部と腹部はそれぞれ9%。 ・I度熱傷(紅斑のみ)は面積に含めず、II度以上を計算する。 ・小児は5の法則やLund and Browderの法則を用いる。
