その数値、本当にけいれんを起こす?―新生児の検査値を「程度」で読む
第105回医師国家試験 I問題 第27問
国試問題にチャレンジ
新生児がけいれんを起こすと考えられる状態はどれか。
- a.血糖 50 mg/dL
- b.血清総ビリルビン 12.0 mg/dL
- c.血清Na 132 mEq/L
- d.血清K 3.2 mEq/L
- e.血清Ca 6.2 mg/dL
対話形式の解説
ドクター
医学生
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ドクターまとめ
新生児けいれんの原因として最も多いのは低酸素性虚血性脳症ですが、代謝性では低血糖と低カルシウム血症が重要で、いずれも速やかに補正できるため最初に確認すべき項目です。新生児低カルシウム血症は総Caが成熟児で8 mg/dL未満、早産児で7 mg/dL未満が目安で、6.2 mg/dLは神経筋の興奮性亢進からけいれんをきたしうる値です。一方、血糖50 mg/dL、生理的黄疸の範囲のビリルビン12 mg/dL、軽度の低Na・低Kでは通常けいれんは起こりません。低Ca血症には早産児・糖尿病母体児・仮死に多い早発型と、高リン人工乳や副甲状腺機能低下症による遅発型があり、低Mg血症やアルブミン値も併せて評価します。新生児けいれんは微細発作として現れやすいため、検査値の「程度」を正しく読み、補正可能な原因を素早く見極める姿勢が臨床で求められます。
解答・解説
正解はeです
問われていること
新生児けいれんの原因となる代謝・電解質異常について、提示された検査値が「けいれんを起こすほどの異常か」を判断できるかを問う問題である。各項目の新生児における基準値と、症状が出る目安の値を押さえておく必要がある。
新生児けいれんの原因
新生児けいれんの原因として最も多いのは低酸素性虚血性脳症であり、ほかに頭蓋内出血、脳梗塞、髄膜炎・脳炎などの中枢神経感染症、脳の形成異常などの器質的疾患がある。代謝性の原因としては低血糖、低カルシウム血症、低マグネシウム血症、低(高)ナトリウム血症、先天代謝異常症、ビタミンB6依存症、核黄疸(ビリルビン脳症)などが挙げられる。このうち低血糖と低カルシウム血症は頻度が高く、治療によって速やかに改善できるため、けいれんをみたら真っ先に確認すべき項目である。
選択肢の見方
血糖50 mg/dL、総ビリルビン12.0 mg/dL、Na 132 mEq/L、K 3.2 mEq/Lはいずれも正常範囲か軽度の異常にとどまり、けいれんの原因としては不十分である。これに対し、血清Ca 6.2 mg/dLは新生児の低カルシウム血症の基準(成熟児で8 mg/dL未満、早産児・低出生体重児で7 mg/dL未満)を明らかに下回っており、神経筋の興奮性が高まってけいれんをきたしうる。
選択肢考察
- ×a. 血糖 50 mg/dL
けいれんを起こす値ではない。新生児は出生後に母体からのブドウ糖供給が途絶えるため、生後数時間は血糖が生理的に低下するが、50 mg/dLは治療介入の目安とされる値(一般に45〜50 mg/dL未満)の境界付近であり、けいれんのような症状を伴う低血糖ではない。症候性低血糖は多くの場合、血糖がおおむね40 mg/dL未満(特に30 mg/dL未満)で生じる。低血糖の危険が高いのは、糖尿病母体児、早産児、SGA(在胎週数に比して小さい)児、仮死児などである。
- ×b. 血清総ビリルビン 12.0 mg/dL
けいれんを起こす値ではない。新生児は赤血球の寿命が短く肝臓でのグルクロン酸抱合能も未熟なため、生後2〜3日頃から生理的黄疸がみられ、成熟児では生後4〜5日頃に12 mg/dL前後まで上昇しうる。日齢や在胎週数・出生体重によっては光線療法の適応になることがあるが、この値でビリルビン脳症(核黄疸)を起こしてけいれんに至ることは通常ない。核黄疸は、非抱合型ビリルビンが血液脳関門を越えて大脳基底核などに沈着して生じ、成熟児では一般に20 mg/dLを大きく超える高値が問題となる。
- ×c. 血清Na 132 mEq/L
けいれんを起こす値ではない。基準値(おおむね135〜145 mEq/L)をわずかに下回る軽度の低ナトリウム血症であり、通常は無症状である。低ナトリウム血症は脳浮腫を介してけいれんの原因となりうるが、それはおおむね120〜125 mEq/L未満の高度な低下や、急速に進行した場合である。
- ×d. 血清K 3.2 mEq/L
けいれんを起こす状態ではない。軽度の低カリウム血症である。カリウムの異常は主に筋肉や心臓の興奮性に影響し、低カリウム血症では筋力低下、腸管の麻痺(イレウス)、不整脈などが問題となるが、けいれんの原因になることはまれである。
- ○e. 血清Ca 6.2 mg/dL
けいれんを起こしうる。新生児の低カルシウム血症は、血清総Caが成熟児で8 mg/dL(4 mEq/L)未満、早産児・低出生体重児で7 mg/dL(3.5 mEq/L)未満で診断され、6.2 mg/dLはいずれの基準も下回る。細胞外Ca濃度が下がると神経や筋の細胞膜が脱分極しやすくなって興奮性が高まり、振戦、易刺激性、テタニー、けいれんなどを生じる。低カルシウム血症は新生児けいれんの代表的な代謝性原因の一つであり、グルコン酸カルシウムの緩徐な静注で治療する(静注時は徐脈・不整脈に注意し、心電図モニター下で行う)。
新生児低カルシウム血症の分類
・早発型(生後72時間以内):早産児、糖尿病母体児、新生児仮死などでみられる。胎盤からのCa供給が出生により途絶えるのに対し、副甲状腺の反応が未熟であることが主因である。 ・遅発型(生後5〜10日頃):リン含量の多い人工乳(牛乳由来)による高リン血症、副甲状腺機能低下症(22q11.2欠失症候群〈DiGeorge症候群〉など)、母体の副甲状腺機能亢進症による児の副甲状腺抑制、ビタミンD欠乏などが原因となる。 なお、血清総Caの約半分はアルブミンと結合しており、生理作用をもつのはイオン化Caである。低アルブミン血症では総Caが見かけ上低くなるため、可能であればイオン化Caで評価する。低マグネシウム血症はPTH(副甲状腺ホルモン)の分泌・作用を障害して低カルシウム血症を合併・難治化させるため、あわせて確認する。
新生児けいれんの特徴
新生児は脳が未熟なため、成人のような全身性強直間代発作は少なく、眼球偏位、口をもぐもぐさせる動き、自転車こぎ様の四肢運動、無呼吸発作などの微細発作(subtle seizure)として現れることが多い。けいれんを疑ったら、まず血糖・Ca・Mg・Na・血液ガスを測定し、補正可能な原因を速やかに除外する。
POINT
・新生児けいれんの原因で最多は低酸素性虚血性脳症。代謝性では低血糖・低カルシウム血症が重要 ・新生児低カルシウム血症:総Ca 成熟児8 mg/dL未満、早産児7 mg/dL未満 ・早発型(早産児・糖尿病母体児・仮死)と遅発型(高リン人工乳・副甲状腺機能低下症) ・軽度の低Na・低K、生理的範囲の黄疸、血糖50 mg/dLではけいれんは起こりにくい
