カルテの書き漏れに気づいたら―「いつ書いたか」を守る追記のルール
第105回医師国家試験 H問題 第27問
国試問題にチャレンジ
気管支内視鏡検査を予約した患者が検査のために来院した。前回の外来診察時に検査の必要性について説明し患者から承諾を得ていた。その際の診療録を読み直したところ,その説明内容の記載の一部に不十分な箇所があるのに気が付いた。 対応として適切なのはどれか。 ただし,この医療機関では紙の診療録を使用している。
- a.前回の外来受診日の記載内容の一部を修正液で消した後に書き直す。
- b.前回の外来受診日の日付の箇所に追加して記載する。
- c.検査日の日付の箇所に記載する。
- d.付箋に記載し診療録に添付する。
- e.診療録の追加記載はしない。
対話形式の解説
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクターまとめ
診療録は医師法第24条で記載が義務づけられた公的記録であり、医療の継続性だけでなく法的証拠としての役割も担うため、記載の時系列と真正性を守ることが最も重要です。過去の記載に不足を見つけた場合は、過去の日付の欄に書き足すのではなく、気づいた日の欄に「追記」と明示して補足内容を書き、署名します。修正液や塗りつぶしは改ざんとみなされ、誤記の訂正は二重線で元の記載を残して日付・署名を添えるのが原則で、付箋は正式な記録になりません。電子カルテでは真正性・見読性・保存性の3原則が求められます。インフォームド・コンセントを適切に記録する姿勢は、患者さんとの信頼関係を支え、自分自身を守ることにもつながります。
解答・解説
正解はcです
問われていること
紙の診療録で、過去の記載に不十分な点を見つけたとき、どう追記すべきかを問う問題である。
状況の整理
・前回の外来で、気管支内視鏡検査の必要性を説明し、患者の承諾を得ている(説明と同意の行為そのものは済んでいる)。 ・検査当日に診療録を読み返すと、その説明内容の記載に一部不十分な箇所があった。 ・つまり、過去の記録を補う必要があるが、それをどこに、どのような形で書くかが問題になる。
考え方
診療録は医師法第24条で記載が義務づけられた公的な記録である。医療の継続性に役立つだけでなく、医療紛争などでは法的な証拠にもなる。そのため、次の原則を守る。 ①いつ、誰が記載したのかが明確であること。 ②一度書いた内容を、判読できないように消したり、後から書いた内容を過去に書いたように見せたりしないこと(改ざんの防止)。 ③記載の不備は、気付いた時点で、その日付の欄に「追記」であることを明示して補うこと。 したがって本例では、不備に気付いた検査日の欄に記載する。「○月○日の外来で行った検査説明の記載に不足があったため追記する」と明記したうえで、補足する説明内容を書き、記載者の署名をする。これが適切な対応である。
選択肢考察
- ×a. 前回の外来受診日の記載内容の一部を修正液で消した後に書き直す。
修正液や塗りつぶしで元の記載を読めなくすると、何がどう変更されたか追跡できなくなり、診療録の改ざんとみなされる。紙の診療録で誤記を訂正するときは、元の文字が読めるように二重線を引き、訂正した日付と訂正者の署名(押印)を添える。本例は誤記の訂正ではなく記載の不足を補う場面であり、過去の記載を消す理由はそもそもない。
- ×b. 前回の外来受診日の日付の箇所に追加して記載する。
過去の日付の欄に後から書き込むと、その内容が当日に記載されたものと区別できなくなる。第三者からは、事後に都合よく書き加えた(改ざんした)と疑われかねない。記録の時系列の正確さを保つため、追記は過去の欄ではなく、追記を行う日の欄に書く。
- ○c. 検査日の日付の箇所に記載する。
記載の不備に気付いた当日(検査日)の欄に、前回の説明記載に不足があったことと、その補足内容を「追記」として書き、署名する。こうすれば、いつ誰が何を補ったかが明確になる。元の記載もそのまま残るので、記録の真正性(改ざんされていないこと)と時系列が保たれる。検査前に説明内容を改めて確認し、必要に応じて説明し直すこともできる。
- ×d. 付箋に記載し診療録に添付する。
付箋は一時的なメモ用で、はがれやすく、紛失や差し替えも簡単にできる。記載日や記載者も明確にならず、診療録の一部として長期保存する記録の形式に適さない。診療録の内容は、所定の記載欄に直接書くべきである。
- ×e. 診療録の追加記載はしない。
検査の目的・方法・危険性などの説明内容は、インフォームド・コンセントが適切に行われたことを示す重要な記録である。不備を知りながら放置すると、合併症が起きた場合などに説明義務を果たしたことを示せない。医師法第24条の記載義務の観点からも、不備に気付いた時点で追記すべきである。
診療録に関する法的規定
・医師法第24条:医師は診療をしたときは、遅滞なく診療に関する事項を診療録に記載しなければならない。診療録は5年間保存しなければならない(病院・診療所の診療録は管理者が、それ以外は医師本人が保存する)。 ・医師法施行規則第23条:診療録の記載事項は、①患者の住所・氏名・性別・年齢、②病名と主要症状、③治療方法(処方・処置)、④診療の年月日である。
紙の診療録の記載・訂正の原則
・インクやボールペンなど、消えない筆記具で記載する(鉛筆は不可)。 ・誤記の訂正は二重線で行い、元の記載が読めるように残す。訂正日と訂正者の署名を添える。修正液・塗りつぶし・切り貼りは不可である。 ・追記は、追記する日の欄に「追記」と明記して書き、日付と署名を付ける。過去の日付の欄に書き加えない。 ・記載欄に余白を残さない。空欄に後から書き込めないようにするためである。
電子カルテの3原則
厚生労働省のガイドラインで、電子保存の要件として次の3つが求められている。 ・真正性:誰がいつ記載・修正したか明確で、改ざんや虚偽の入力が防がれていること。修正履歴が残る。 ・見読性:必要なときに、肉眼で読める状態にすぐ表示・印刷できること。 ・保存性:法定期間中、復元可能な状態で保存されていること。
説明と同意の記録
検査・治療の説明では、目的、方法、予想される効果、危険性・合併症、代替手段、実施しない場合の予後などを説明する。その内容と患者の理解・同意を診療録に記録する。説明文書や同意書を用いた場合は、写しを患者に渡し、原本を保管する。内容に追加・修正があれば、改めて説明し同意を得る。
POINT
・診療録は法的な証拠にもなる公的記録である(医師法第24条、保存期間5年)。 ・訂正は二重線で行い、元の記載を読めるように残し、日付・署名を添える。修正液・塗りつぶしは禁止である。 ・記載不足の補足は、気付いた日の欄に「追記」と明示して記載し、署名する。過去の日付の欄には書き込まない。 ・付箋は正式な記録にならない。 ・電子カルテの3原則は真正性・見読性・保存性である。
