StudyMed医師国家試験

その症状は「どの心の働き」の異常か―精神症状を機能ごとに仕分ける力

第105回医師国家試験 G問題 第14問

国試問題にチャレンジ

第105回 G問題 第14問

障害と精神症状の組合せで正しいのはどれか。

  1. a.感情の障害 ―― 観念奔逸
  2. b.記憶の障害 ―― 転換
  3. c.思考の障害 ―― 連合弛緩
  4. d.知覚の障害 ―― 妄想
  5. e.見当識の障害 ―― 無為自閉

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は、精神症状を「どの精神機能の障害か」で正しく分類できるかを問う問題だ。精神科では患者さんの状態を、意識、見当識、知覚、思考、自我意識、記憶、知能、感情、意欲・行動といった機能に分けて記述する。それぞれの症状の定義を正確に言えれば、どこに属するかは自然に決まるよ。
医学生医学生
組合せ問題なので、一つずつ症状の定義から確認すればいいんですね。でも観念奔逸は躁状態の症状なので、感情の障害でもいい気がしてしまいます。
ドクタードクター
まさにそこが最初の落とし穴だね。たしかに観念奔逸は躁病でみられ、躁病の中心は気分の高揚、つまり感情の障害だ。でも観念奔逸という症状そのものは、考えが次々と湧き、連想や周囲の刺激で話題がどんどん脇へそれていく状態で、考えの流れ方の異常なんだ。だから思考過程、いわゆる思路の障害に分類される。
医学生医学生
病気の分類と症状の分類を混同しちゃいけない、ということですね。
ドクタードクター
その通り。ここで思考の障害を3つに整理しておこう。考えの流れ・つながり方の異常である思考過程の障害、考えの中身の異常である思考内容の障害、そして考えが自分のものだという感覚が揺らぐ思考の体験様式の障害だ。最後のものは自我意識の障害として扱うこともある。
医学生医学生
思考過程の障害には、観念奔逸のほかに思考制止や迂遠、保続がありましたよね。精神医学の講義で、うつ病は思考制止、てんかんや認知症では迂遠と習いました。
ドクタードクター
よく整理できているね。そして今回の正解、連合弛緩も思考過程の障害だ。考えと考えの論理的なつながりが緩んで、話の筋道がまとまらず、聞き手には何を言いたいのか分かりにくくなる。さらに高度になって文や単語のつながりまで崩れると滅裂思考、単語の羅列になると言葉のサラダと呼ぶ。
医学生医学生
観念奔逸も話がそれていきますが、連合弛緩とはどう区別するんですか。
ドクタードクター
いい質問だ。観念奔逸は最終的な目標にはたどり着けないけれど、話題と話題のつながりは第三者にも追える。連合弛緩ではそのつながり自体が見えにくくなる。連合弛緩は統合失調症に特徴的で、Bleulerは連合弛緩、感情鈍麻、両価性、自閉を基本症状、いわゆる4つのAに挙げたんだ。
医学生医学生
妄想は統合失調症の代表的な症状なので、幻聴と並べて知覚の障害だと思っていました。
ドクタードクター
そこも間違えやすいところだね。妄想は根拠のない誤った内容を強く確信し、反証を示されても訂正できない考えで、思考内容の障害だ。知覚の障害にあたるのは、対象のないものを知覚する幻覚や、実在する対象を誤って知覚する錯覚。妄想知覚という用語もあるけれど、異常の本質は知覚ではなく、その知覚に特別な意味づけを確信する点、つまり思考の側にあるんだ。
医学生医学生
転換は、記憶の障害というより防衛機制の一つだった気がします。
ドクタードクター
正解。転換は、処理しきれない心理的葛藤が運動麻痺や失声、けいれん様発作などの身体症状に置き換えられて表れることを指す精神分析の概念だ。記憶とは関係がない。心因性に記憶を失う解離性健忘は解離症群に属し、転換とは別の概念だから区別しておこう。
医学生医学生
無為自閉は、臨床実習で精神科病棟にいた慢性期の統合失調症の患者さんを思い出します。見当識は保たれていて、日付も場所も答えられました。
ドクタードクター
いい観察だね。無為は自発的に何かをしようとする意欲が失われた状態、自閉は外界との交流を避けて内面に閉じこもる状態で、意欲・行動の障害に分類され、陰性症状の代表だ。見当識障害は時間・場所・人物の認識が失われることで、せん妄などの意識障害や認知症、Korsakoff症候群でみられる。
医学生医学生
整理すると、観念奔逸と連合弛緩は思考過程、妄想は思考内容、幻覚は知覚、無為自閉は意欲、転換は防衛機制ですね。
ドクタードクター
完璧だ。発展として、自我意識の障害も押さえておこう。させられ体験、思考吹入、思考奪取、思考伝播などで、Schneiderの一級症状にも多く含まれる。臨床では、精神症状をこうして機能ごとに正確な用語で記述することが、診断の手がかりになるだけでなく、多職種で患者さんの状態を共有する共通言語にもなるんだ。
医学生医学生
OSCEの医療面接でも、症状を聞き取ったらどの機能の異常かを意識して記録するようにします。
ドクタードクター
それが一番の近道だよ。病名から症状を連想するのではなく、症状の定義から機能を決める習慣をつけておこう。

まとめ

精神症状は、意識、見当識、知覚、思考、自我意識、記憶、知能、感情、意欲・行動といった精神機能ごとに分類して記述します。連合弛緩は考えのつながりが緩む思考過程の障害で、高度になると滅裂思考や言葉のサラダとなり、Bleulerの4つのAに含まれる統合失調症の特徴的症状です。観念奔逸は躁状態でみられますが症状自体は思考過程の障害であり、妄想は思考内容の障害、幻覚・錯覚が知覚の障害、無為自閉は意欲の障害、転換は心理的葛藤を身体症状に置き換える防衛機制です。病名ではなく症状の定義から所属する機能を決める習慣は、正確な精神症状の評価と多職種での情報共有の基盤になります。

解答・解説

正解はcです

精神症状を「どの精神機能の障害か」で分類できるかを問う問題である。精神医学では、患者の精神状態を評価する際に、精神機能を意識、見当識、知覚、思考、自我意識、記憶、知能、感情(気分)、意欲・行動などに分けて、それぞれにどのような異常があるかを記述する。各症状の定義を正確に知っていれば、どの機能に属するかは自然に決まる。 特に思考の障害は、さらに次の3つに分けて整理すると理解しやすい。 ・思考過程(思路)の障害: 考えの流れ・つながり方の異常。観念奔逸、思考制止、連合弛緩、滅裂思考、迂遠、保続など。 ・思考内容の障害: 考えの中身の異常。妄想、強迫観念、支配観念など。 ・思考の体験様式の障害: 考えが自分のものであるという感覚の異常。思考吹入、思考奪取、思考伝播など(自我意識の障害として扱うこともある)。 この枠組みに当てはめると、連合弛緩は思考過程の障害であり、「思考の障害―連合弛緩」が正しい組合せとなる。他の選択肢では、症状と障害の対応がずれている。

選択肢考察

  1. ×a.  感情の障害 ―― 観念奔逸

    観念奔逸は、考えが次々と湧き出し、話題が連想や周囲の刺激によってどんどん脇へそれていく状態で、思考過程(思路)の障害に分類される。最終的な目標にたどり着けないが、個々の話題のつながりは第三者にも追うことができる点で、連合弛緩・滅裂思考とは区別される。躁状態の代表的な症状であり、躁病の気分高揚(感情の障害)に伴ってみられるが、症状そのものは思考の障害である。

  2. ×b.  記憶の障害 ―― 転換

    転換は、処理しきれない心理的葛藤や不安が、身体の症状(運動麻痺、失立失歩、失声、感覚脱失、けいれん様発作など)に置き換えられて表れることを指す精神分析の概念で、防衛機制の一つである。記憶の障害とは関係がない。このような症状を主とする病態は、かつて転換ヒステリー・転換性障害と呼ばれ、DSM-5以降では変換症(機能性神経学的症状症)と呼ばれる。なお、心因性に記憶が失われる解離性健忘は解離症群に属し、転換とは別の概念である。

  3. ○c.  思考の障害 ―― 連合弛緩

    連合弛緩は、考えと考えの間の論理的なつながり(連合)が緩み、話の筋道がまとまらず、聞き手には何を言いたいのか分かりにくくなる状態である。思考過程(思路)の障害に属し、これがさらに高度になって文章や単語のつながりまで崩れたものが滅裂思考(支離滅裂)、単語の羅列となったものが言葉のサラダと呼ばれる。E. Bleulerは連合弛緩を統合失調症の基本症状(4つのA: 連合弛緩、感情鈍麻、両価性、自閉)の一つに挙げており、統合失調症に特徴的な症状である。

  4. ×d.  知覚の障害 ―― 妄想

    妄想は、根拠のない誤った内容を強く確信し、反証を示されても訂正できない考えであり、思考内容の障害に分類される。被害妄想、関係妄想、誇大妄想、微小妄想(罪業・貧困・心気妄想)などがある。知覚の障害に分類されるのは、対象のないものを知覚する幻覚(幻聴、幻視など)や、実在する対象を誤って知覚する錯覚である。妄想知覚(実際の知覚に対して、特別な意味づけを確信する)という用語はあるが、これも異常の本質は知覚そのものではなく意味づけ、つまり思考の側にある。

  5. ×e.  見当識の障害 ―― 無為自閉

    無為は自発的に何かをしようとする意欲が失われた状態、自閉は外界や他者との交流を避けて自分の内面世界に閉じこもる状態であり、無為自閉は意欲(意志・行動)の障害に分類される。統合失調症の陰性症状として慢性期に目立つ。見当識の障害とは、時間・場所・人物についての認識が失われることで、意識障害(せん妄など)や認知症、Korsakoff症候群などでみられる。

精神機能と主な症状の対応

・意識: 意識混濁、せん妄、もうろう状態 ・見当識: 時間・場所・人物の失見当 ・知覚: 幻覚(幻聴、幻視、体感幻覚など)、錯覚 ・思考過程: 観念奔逸(躁病)、思考制止(うつ病)、連合弛緩・滅裂思考(統合失調症)、迂遠(てんかん、認知症など)、保続 ・思考内容: 妄想(被害・関係・誇大・微小妄想など)、強迫観念、支配観念 ・自我意識: 作為体験(させられ体験)、思考吹入、思考奪取、思考伝播、離人症 ・記憶: 健忘(前向性・逆向性)、作話、記銘力障害 ・知能: 知的能力障害(知的障害)、認知症 ・感情(気分): 抑うつ気分、爽快気分、感情鈍麻、感情失禁、両価性 ・意欲・行動: 無為、自閉、昏迷、精神運動興奮、意欲低下

Bleulerの基本症状(4つのA)

統合失調症の命名者であるBleulerは、連合弛緩(Association)、感情鈍麻(Affect)、両価性(Ambivalence)、自閉(Autism)を基本症状とし、幻覚・妄想は副次症状とした。

Schneiderの一級症状

考想化声、対話性幻聴、行為に口出しする幻聴、身体への影響体験、思考奪取・思考吹入などの思考への影響体験、考想伝播、作為体験(させられ体験)、妄想知覚。統合失調症の診断に重視されてきた。

主な防衛機制

抑圧、否認、投影、反動形成、合理化、置き換え、昇華、退行、転換、解離、知性化、同一化など。

POINT

・連合弛緩=思考過程(思路)の障害。高度になると滅裂思考・言葉のサラダ。統合失調症に特徴的。 ・観念奔逸も思考過程の障害(躁状態)。感情の障害ではない。 ・妄想は思考内容の障害。知覚の障害は幻覚・錯覚。 ・無為自閉は意欲の障害(統合失調症の陰性症状)。 ・転換は防衛機制の一つで、心理的葛藤を身体症状に置き換えること。記憶とは無関係。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。