「人」の法律か「場所」の法律か―医師法と医療法をすっきり仕分ける
第105回医師国家試験 E問題 第2問
国試問題にチャレンジ
医療法に規定されているのはどれか。
- a.保健指導
- b.診療録の記載
- c.処方せんの交付
- d.異状死体の届出
- e.診療所開設の届出
対話形式の解説
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクターまとめ
医師法は医師という「人」の資格と義務を、医療法は医療を提供する「場所と体制」を定める法律です。保健指導、診療録の記載と5年間保存、処方せんの交付、異状死体の24時間以内の警察署への届出は、いずれも医師個人の義務として医師法に規定されています。一方、臨床研修修了医師が診療所を開設した際の開設後10日以内の届出は医療法の規定であり、病院の開設は事前の許可制です。医療法には病院・診療所の定義、医療計画、医療安全、医療法人なども含まれます。「人か施設・体制か」という軸で整理しておけば、医事法規の問題を効率よく解けるだけでなく、臨床で自分が負う法的責任の理解にもつながります。
解答・解説
正解はeです
問われていること
医療に関する代表的な2つの法律、医師法と医療法の役割分担を問う問題である。
2つの法律の違い
・医師法:「医師という人」についての法律。医師免許、国家試験、臨床研修、そして診療にあたって医師個人が負う義務(応招義務、無診察治療の禁止、異状死体の届出、処方せんの交付、保健指導、診療録の記載・保存など)を定めている。 ・医療法:「医療を提供する場所と体制」についての法律。病院・診療所・助産所の定義、開設の許可・届出、人員・構造設備の基準、医療計画、医療安全、医療法人などを定めている。 選択肢a〜dはいずれも診療を行う医師個人の義務であり、医師法に規定されている。一方、診療所を開設したときの届出は医療施設に関する手続きであり、医療法に規定されている。このように「人(医師)に関するものか、施設・体制に関するものか」で区別すると判断しやすい。
選択肢考察
- ×a. 保健指導
医師法の規定である(第23条)。医師は診療をしたとき、本人またはその保護者に対して、療養の方法など保健の向上に必要な事項を指導する義務を負う。診療する医師個人に課された義務であり、医療法の規定ではない。
- ×b. 診療録の記載
医師法の規定である(第24条)。医師は診療をしたとき、遅滞なく診療に関する事項を診療録(カルテ)に記載しなければならない。診療録は5年間の保存が義務づけられ、病院・診療所で行った診療の記録はその管理者が、それ以外の記録は医師本人が保存する。なお、病院の診療に関する諸記録(処方せん、エックス線写真など)の2年間保存は医療法施行規則で定められており、区別して覚えるとよい。
- ×c. 処方せんの交付
医師法の規定である(第22条)。医師は、治療上薬剤を調剤して投与する必要があると認めた場合、患者または看護している者に処方せんを交付しなければならない。ただし、患者側が交付を必要としない旨を申し出た場合、暗示的効果を期待する場合、診断・治療を困難にするおそれがある場合など、いくつかの例外が定められている。
- ×d. 異状死体の届出
医師法の規定である(第21条)。医師は、死体または妊娠4か月以上の死産児を検案して異状があると認めたとき、24時間以内に所轄の警察署へ届け出なければならない。届出先が保健所ではなく警察署であることもよく問われる。
- ○e. 診療所開設の届出
医療法の規定である(第8条)。臨床研修を修了した医師・歯科医師が自ら診療所を開設したとき、または助産師が助産所を開設したときは、開設後10日以内に所在地の都道府県知事(保健所を設置する市・特別区では市長・区長)に届け出る。一方、病院の開設と、臨床研修修了医師以外の者(医療法人など)による診療所の開設には、事前に都道府県知事などの許可が必要である(第7条)。このように、医療施設の開設に関する手続きは医療法で定められている。
医師法に定める主な医師の義務
・第19条:応招義務(正当な理由がなければ診療を拒んではならない)、診断書などの交付義務 ・第20条:無診察での治療・診断書や処方せんの交付の禁止、診察せずに出生証明書・死産証書を交付することの禁止、検案せずに検案書を交付することの禁止(診療中の患者が最終診察後24時間以内に死亡した場合の死亡診断書には例外がある) ・第21条:異状死体などの届出(24時間以内、所轄警察署へ) ・第22条:処方せんの交付義務 ・第23条:保健指導を行う義務 ・第24条:診療録の記載と5年間の保存
医療法の主な内容
・病院(20床以上)、診療所(無床または19床以下)、助産所の定義 ・開設の許可・届出、人員配置や構造設備の基準 ・医療計画(都道府県が策定する。二次医療圏・三次医療圏、基準病床数、5疾病・6事業と在宅医療など) ・医療安全の確保(医療事故調査制度など) ・特定機能病院、地域医療支援病院、臨床研究中核病院の承認 ・医療法人に関する規定 ・インフォームド・コンセントの努力義務(医療の担い手は、適切な説明を行い、医療を受ける者の理解を得るよう努める)
POINT
・医師法は医師個人の資格と義務、医療法は医療施設と提供体制を定める。 ・保健指導、診療録の記載、処方せんの交付、異状死体の届出はいずれも医師法。 ・臨床研修修了医師が診療所を開設したら、開設後10日以内に都道府県知事へ届け出る(医療法)。病院の開設は許可制。
