StudyMed医師国家試験

寝たきり・ステロイド過剰・酸を出せない腎―尿路結石を生む「カルシウムの流れ」を読む

第105回医師国家試験 D問題 第18問

国試問題にチャレンジ

第105回 D問題 第18問

尿路結石症の危険因子はどれか。3つ選べ。

  1. a.糖尿病
  2. b.長期臥床
  3. c.悪性腎硬化症
  4. d.Cushing症候群
  5. e.尿細管性アシドーシス

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は、尿路結石の危険因子を選ぶ問題だ。丸暗記で挑むと迷いやすいけれど、「結石はどうやってできるのか」という原理から考えると、選択肢を一つずつ論理的に判定できる。まずは結石のでき方から確認しよう。
医学生医学生
尿の中の成分が濃くなりすぎて結晶になる、という理解で合っていますか。
ドクタードクター
その通り。尿に溶けているカルシウムやシュウ酸、リン酸、尿酸などが溶けきれない状態、つまり過飽和になって結晶が析出し、成長・凝集して石になる。そして日本の尿路結石の大部分はカルシウムを含む結石なんだ。
医学生医学生
泌尿器科の講義で、シュウ酸カルシウム結石が一番多いと習いました。だとすると、尿中のカルシウムが増える病態を探せばいいんですね。
ドクタードクター
いい着眼点だね。整理すると、結石ができやすくなる条件は4つある。結石成分の尿中排泄が増えること、結石を抑えるクエン酸やマグネシウムが減ること、尿が濃縮・停滞すること、そして尿のpHが偏ることだ。この物差しで選択肢を当てていこう。まず長期臥床はどうかな。
医学生医学生
寝たきりだと尿が流れにくくなるから、停滞が原因でしょうか。
ドクタードクター
それも一因だけど、もっと大きいのは骨の変化なんだ。骨は荷重や運動の刺激で骨形成が保たれている。寝たきりで荷重がかからなくなると骨吸収が亢進し、骨からカルシウムとリンが血中へ溶け出す。その結果、高カルシウム尿症になる。そこに尿の停滞、飲水量の低下、尿路感染が加わるから、長期臥床は典型的な危険因子なんだ。
医学生医学生
整形外科の実習で、長期入院の患者さんの廃用性骨萎縮の話を聞きましたが、結石にもつながるとは思いませんでした。次のCushing症候群も骨がポイントですか。
ドクタードクター
まさにそう。過剰なコルチゾールは骨芽細胞を抑えて骨形成を低下させ、相対的に骨吸収が優位になる。だから骨粗鬆症を起こすし、骨からのカルシウム動員も増える。さらに腎尿細管でのカルシウム再吸収も減るので、尿中カルシウム排泄が増えるんだ。ステロイドを長期内服している患者さんでも同じことが起こりうる。
医学生医学生
尿細管性アシドーシスは、腎臓の病気だから結石と関係がありそうなのは分かるんですが、機序がはっきりしません。
ドクタードクター
ここは3つの機序を押さえよう。1つ目は、アシドーシスを緩衝するために骨からカルシウムが溶け出し、尿細管でのカルシウム再吸収も落ちて高カルシウム尿症になること。2つ目は、アシドーシスでは近位尿細管でクエン酸の再吸収が亢進して、結石を抑えるクエン酸が尿中で減ること。3つ目は、特に遠位型では尿を酸性化できず尿pHが高いままなので、リン酸カルシウムが析出しやすいことだ。
医学生医学生
クエン酸はカルシウムと結合して溶かしておく役割でしたね。それが減るうえにカルシウムが増えて、アルカリ尿まで重なる、三重苦ですね。
ドクタードクター
うまい表現だね。だから遠位型では結石だけでなく、腎実質にカルシウムが沈着する腎石灰化症も起こる。では残りの2つ、悪性腎硬化症は?
医学生医学生
腎機能は悪くなりますが、尿中のカルシウムが増えるわけではなさそうです。
ドクタードクター
その通り。悪性腎硬化症は悪性高血圧によって腎の細動脈にフィブリノイド壊死やonion-skin lesionが起こり、急速に腎機能が低下する病態だ。腎不全の原因にはなるけれど、結石成分を増やしたり尿を停滞させたりはしない。
医学生医学生
糖尿病は少し迷いました。CBTの勉強で、メタボと尿酸結石の関係を見た記憶があって。
ドクタードクター
鋭いね。実は近年、肥満やインスリン抵抗性、糖尿病では尿のpHが低くなりやすく、尿酸結石との関連が指摘されている。ただ、高カルシウム尿症や低クエン酸尿症を直接起こすわけではなく、古典的な危険因子としては扱われていない。この問題では長期臥床、Cushing症候群、尿細管性アシドーシスに比べて関係が間接的だから、正解には含まれないと考えよう。
医学生医学生
「尿中カルシウムを増やすか、クエン酸を減らすか」で判定すればよかったんですね。
ドクタードクター
そういうこと。最後に臨床での発展知識をまとめよう。高カルシウム尿症の原因としては、原発性副甲状腺機能亢進症、ビタミンD過剰、サルコイドーシスも重要だ。高尿酸尿症なら痛風や腫瘍崩壊、高シュウ酸尿症ならCrohn病や小腸切除後も覚えておきたい。尿路感染でウレアーゼ産生菌、特にProteus属が関わるとリン酸マグネシウムアンモニウム結石ができる。
医学生医学生
再発予防では、カルシウムを控えるように指導するんでしょうか。
ドクタードクター
そこは誤解しやすいポイントだ。カルシウムは腸管内でシュウ酸と結合してその吸収を抑えるから、極端に制限するとかえってシュウ酸の吸収が増えることがある。基本は十分な飲水で1日尿量2L以上を目指し、塩分や動物性蛋白質の摂りすぎを控えること。低クエン酸尿症にはクエン酸製剤を使う。寝たきりの患者さんやステロイド内服中の患者さんを診るときは、結石のリスクも頭の片隅に置いておこう。

まとめ

尿路結石は尿中成分の過飽和によって生じ、日本では大部分がカルシウム含有結石であるため、高カルシウム尿症や低クエン酸尿症を起こす病態が重要な危険因子となります。長期臥床は廃用性の骨吸収亢進と尿の停滞により、Cushing症候群はコルチゾール過剰による骨吸収優位と尿細管でのカルシウム再吸収低下により、高カルシウム尿症をきたします。遠位型尿細管性アシドーシスは、高カルシウム尿症・低クエン酸尿症・アルカリ尿が重なり、結石や腎石灰化症を起こしやすくなります。一方、悪性腎硬化症は結石成分を増やさず、糖尿病は尿酸結石との関連が指摘されるものの古典的な危険因子ではありません。結石形成の4条件(成分の増加、抑制物質の減少、尿の濃縮・停滞、pHの偏り)から考える習慣は、危険因子の判定だけでなく再発予防の指導にも役立ちます。

解答・解説

正解はb, d, eです

尿路結石は、尿中に溶けている成分(カルシウム、シュウ酸、リン酸、尿酸、シスチンなど)が溶けきれなくなって(過飽和)結晶として析出し、それが成長・凝集することで形成される。日本の尿路結石の約80〜90%はカルシウム含有結石(シュウ酸カルシウム、リン酸カルシウム)である。 結石ができやすくなる条件は、次の4つに整理すると考えやすい。 1. 結石成分の尿中排泄が増える:高カルシウム尿症、高シュウ酸尿症、高尿酸尿症、シスチン尿症など 2. 結石形成を抑える物質が減る:尿中クエン酸(カルシウムと結合して溶かしておく)やマグネシウムの低下 3. 尿が濃くなる・停滞する:脱水、尿量減少、尿路の通過障害、尿路感染(ウレアーゼ産生菌によるリン酸マグネシウムアンモニウム結石) 4. 尿のpHが偏る:酸性尿では尿酸結石・シスチン結石、アルカリ尿ではリン酸カルシウム結石やリン酸マグネシウムアンモニウム結石ができやすい 本問では、各選択肢の病態が上記のどれかにつながるか、特に高カルシウム尿症や低クエン酸尿症を起こすかを考えればよい。長期臥床とCushing症候群は骨からのカルシウム動員により高カルシウム尿症を起こし、尿細管性アシドーシスは高カルシウム尿症・低クエン酸尿症・アルカリ尿を起こすため、いずれも危険因子である。

選択肢考察

  1. ×a.  糖尿病

    糖尿病は、高カルシウム尿症や低クエン酸尿症を直接起こす病態ではなく、尿路結石の古典的な危険因子としては扱われない。なお近年は、肥満・インスリン抵抗性・糖尿病などのメタボリックシンドロームでは尿のpHが低くなりやすく、尿酸結石との関連が指摘されている。しかし本問で問われている典型的な危険因子(長期臥床、Cushing症候群、尿細管性アシドーシス)と比べると関係は間接的であり、正解には含まれない。

  2. ○b.  長期臥床

    骨は体重負荷や運動による刺激で骨形成が維持されている。長期臥床で骨に荷重がかからなくなると骨吸収が亢進し(廃用性骨萎縮)、骨からカルシウムとリンが血中へ動員される。その結果、尿中へのカルシウム・リン排泄が増加(高カルシウム尿症)し、結石成分が過飽和となりやすい。さらに臥床では尿が腎盂や腎杯に停滞しやすく、尿路感染や飲水量の減少も加わりやすいため、尿路結石の危険因子となる。

  3. ×c.  悪性腎硬化症

    悪性腎硬化症は、悪性高血圧(拡張期血圧が著しく高く、眼底出血・乳頭浮腫などを伴う)によって腎の細動脈にフィブリノイド壊死や内膜の著明な肥厚(onion-skin lesion)が起こり、急速に腎機能が低下する病態である。腎不全の原因にはなるが、尿中の結石成分を増やしたり尿の停滞を起こしたりするものではなく、尿路結石の危険因子ではない。

  4. ○d.  Cushing症候群

    Cushing症候群ではコルチゾールが過剰となる。コルチゾール(糖質コルチコイド)は骨芽細胞の働きを抑えて骨形成を低下させ、骨吸収を相対的に亢進させるため、骨粗鬆症を起こすとともに骨から血中へのカルシウム動員を増やす。また腸管からのカルシウム吸収を抑制し、腎尿細管でのカルシウム再吸収も減少させる。これらの結果、尿中カルシウム排泄が増加(高カルシウム尿症)し、カルシウム結石ができやすくなる。

  5. ○e.  尿細管性アシドーシス

    尿細管性アシドーシス(renal tubular acidosis:RTA)は、尿細管での酸(H⁺)の排泄や重炭酸イオンの再吸収が障害され、代謝性アシドーシスをきたす病態である。特に遠位型(1型)RTAで尿路結石が多い。機序は次のとおりである。1. アシドーシスを緩衝するため骨からカルシウムが溶け出し、さらに尿細管でのカルシウム再吸収も低下して高カルシウム尿症となる。2. アシドーシスでは近位尿細管でのクエン酸再吸収が亢進し、結石形成を抑えるクエン酸の尿中排泄が低下する。3. 遠位型では尿を十分に酸性化できず尿のpHが高く保たれるため、リン酸カルシウムが析出しやすい。これらにより結石や腎石灰化症(腎実質へのカルシウム沈着)を起こす。

尿路結石の主な危険因子

・高カルシウム尿症:原発性副甲状腺機能亢進症、長期臥床、Cushing症候群・ステロイド長期投与、ビタミンD過剰、サルコイドーシス、特発性高カルシウム尿症、遠位型尿細管性アシドーシス ・高尿酸尿症:痛風、高尿酸血症、プリン体の過剰摂取、腫瘍崩壊(化学療法) ・高シュウ酸尿症:シュウ酸を多く含む食品(ほうれん草、紅茶など)の過剰摂取、Crohn病・小腸切除後(腸管性高シュウ酸尿症)、原発性高シュウ酸尿症 ・低クエン酸尿症:尿細管性アシドーシス、慢性下痢、低カリウム血症 ・その他:脱水・尿量減少、尿路通過障害(水腎症、前立腺肥大症など)、尿路感染(ウレアーゼ産生菌、特にProteus属)、シスチン尿症、動物性蛋白質や塩分の過剰摂取、肥満

尿細管性アシドーシスの病型

・1型(遠位型):H⁺分泌障害。尿を酸性化できず尿pHは5.5以上となる。高カルシウム尿症、低クエン酸尿症から尿路結石・腎石灰化症が多い。低カリウム血症を伴う。 ・2型(近位型):重炭酸イオンの再吸収障害。Fanconi症候群に伴うことが多い。結石は1型ほど多くない。 ・4型:アルドステロンの作用不足による。高カリウム血症を伴う。

再発予防

十分な飲水(1日尿量2L以上を目標)、塩分・動物性蛋白質の過剰摂取を控える、カルシウムは極端に制限しない(腸管でシュウ酸と結合して吸収を抑えるため)、低クエン酸尿症にはクエン酸製剤を用いる、などが基本である。

POINT

・尿路結石の多くはカルシウム結石であり、高カルシウム尿症をきたす病態が重要な危険因子である。 ・長期臥床とCushing症候群は骨吸収亢進などにより高カルシウム尿症を起こす。 ・遠位型尿細管性アシドーシスは高カルシウム尿症・低クエン酸尿症・アルカリ尿により結石を作りやすい。 ・そのほか原発性副甲状腺機能亢進症、痛風、脱水、尿路感染、尿路通過障害も危険因子である。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。