4つの回旋、どこでつまずいた?―顔位と後方後頭位で整理する分娩機転
第105回医師国家試験 B問題 第29問
国試問題にチャレンジ
胎位と回旋異常の組合せで正しいのはどれか。2つ選べ。
- a.顔位 ―― 第1回旋
- b.骨盤位 ―― 第2回旋
- c.後方後頭位 ―― 第2回旋
- d.低在横定位 ―― 第3回旋
- e.反屈位 ―― 第4回旋
対話形式の解説
ドクター
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ドクターまとめ
頭位の分娩機転は、第1回旋(屈曲)、第2回旋(内回旋)、第3回旋(伸展)、第4回旋(外回旋)の4段階で進みます。回旋異常はどの段階でつまずいたかで整理でき、屈曲の失敗である反屈位(前頭位・額位・顔位)は第1回旋の異常、内回旋が逆方向の後方後頭位と内回旋が起こらない低在横定位は第2回旋の異常です。骨盤位は胎位の異常であって回旋の段階とは対応しないため、胎位・胎勢・胎向・回旋という用語の区別が正誤判断の鍵になります。臨床では内診で矢状縫合と泉門の位置から回旋を評価し、額位は通常経腟分娩困難、顔位は頤前方位なら経腟分娩が可能なことがあるなど、異常の種類が分娩方針に直結します。分娩機転を「動き」としてイメージして理解しておくことは、国試対策だけでなく分娩介助の現場での判断の土台になります。
解答・解説
正解はa, cです
分娩時の胎児の回旋(分娩機転)と、その異常によって生じる状態の対応を問う問題である。
正常な回旋
頭位(頭が下)の胎児は、狭く曲がった産道を通るために次の4段階の回旋を行う。 ・第1回旋(屈曲):骨盤入口部で、児が顎を胸に引きつけるように頭を前屈させる。これにより後頭部(小泉門)が先進し、最も小さい周囲(小斜径周囲)で産道を通過できるようになる。 ・第2回旋(内回旋):骨盤内を下降しながら、横向き(矢状縫合が骨盤の横径方向)だった児頭が回旋し、後頭部が母体の前方(恥骨側)を向く。矢状縫合は骨盤出口部の前後径に一致する。 ・第3回旋(伸展、反屈):後頭部の下部が恥骨弓の下に達すると、そこを支点に頭を反らしながら前頭、顔、顎の順に娩出される。 ・第4回旋(外回旋):児頭の娩出後、肩が骨盤内で回旋するのに伴い、児頭は母体の大腿の方向へ向きを変える。
用語の整理
・胎位:子宮の縦軸と胎児の縦軸の関係(縦位・横位・斜位)と、どちらが下にあるか(頭位・骨盤位)。 ・胎勢:胎児の姿勢(屈位か反屈位か)。 ・胎向:児背(または特定の部位)が母体の左右・前後どちらを向いているか。 ・回旋:分娩中の児頭・児体の動き。 回旋異常は、どの段階の回旋がうまくいかなかったかで整理する。第1回旋が不十分・逆方向になると反屈位(前頭位、額位、顔位)、第2回旋が逆方向になると後方後頭位、第2回旋が起こらないまま児頭が下降すると低在横定位となる。骨盤位は胎位の異常であり、回旋の段階とは対応しない。したがって正しい組合せは顔位―第1回旋と後方後頭位―第2回旋である。
選択肢考察
- ○a. 顔位 ―― 第1回旋
顔位は、児頭が胸から離れて最大限に反り返り、顔面が先進し、顎(頤、おとがい)が先進部の指標となる状態である。本来は第1回旋で頭部が屈曲すべきところ、逆に伸展(反屈)してしまうことで生じるため、第1回旋の異常である。胎勢の異常(反屈位)の中で最も反屈の程度が強い。頤が母体前方を向く頤前方位では経腟分娩が可能な場合があるが、頤後方位では通常の経腟分娩は困難で帝王切開の対象となる。
- ×b. 骨盤位 ―― 第2回旋
骨盤位は、胎児の骨盤端(殿部や足)が下にある縦位で、胎位の異常である。回旋の異常ではないため、第2回旋と対応させるのは誤りである。骨盤位は妊娠中期までは多いが自然に頭位へ転じることが多く、満期での頻度は約3〜5%とされる。単殿位、複殿位、膝位、足位などに分けられ、臍帯脱出や後続児頭の娩出困難のリスクがあるため、現在は帝王切開が選択されることが多い。
- ○c. 後方後頭位 ―― 第2回旋
後方後頭位は、第1回旋(屈曲)は正常に行われ後頭部が先進しているが、第2回旋(内回旋)で後頭部が母体の前方ではなく後方(仙骨側)へ回ってしまった状態である。したがって第2回旋の異常であり、正しい組合せである。児頭の屈曲が不十分になりやすく、正常より大きな周囲で産道を通過するため、分娩第2期が遷延しやすく、会陰の裂傷も起こりやすい。多くは自然に経腟分娩に至るが、吸引分娩や鉗子分娩が必要になることもある。
- ×d. 低在横定位 ―― 第3回旋
低在横定位は、第2回旋(内回旋)が起こらず、矢状縫合が骨盤の横径に一致したまま児頭が骨盤底近くまで下降し、そこで進行が止まった状態である。第2回旋の異常であり、第3回旋と対応させるのは誤りである。扁平骨盤などの骨盤の形の問題や、微弱陣痛、児頭の屈曲不良などが原因となる。回旋を補助する鉗子分娩や吸引分娩、あるいは帝王切開が考慮される。
- ×e. 反屈位 ―― 第4回旋
反屈位は、児頭が胸に引きつけられず反り返った胎勢の異常で、反り返りの程度が軽い順に前頭位、額位、顔位に分けられる(頭頂位を含める分類もある)。いずれも第1回旋(屈曲)がうまくいかないことで生じるため、第1回旋の異常であり、第4回旋と対応させるのは誤りである。先進する周囲が大きくなるため遷延分娩や微弱陣痛をきたしやすく、特に額位は先進する径が最大(大斜径、約13.5cm)となるため、通常は経腟分娩が困難である。
回旋異常の整理
・第1回旋の異常:反屈位(前頭位、額位、顔位)。 ・第2回旋の異常:後方後頭位(回旋が逆方向)、低在横定位(回旋が起こらない)。 ・高在縦定位:矢状縫合が骨盤入口部の前後径に一致したまま児頭が骨盤入口部で進まない状態。児頭が入口部に進入する時点での異常とされる。
児頭の径
正常な第1回旋が起きると、最も小さい小斜径(後頭下部から大泉門中央まで、約9.5cm)で産道を通過する。反屈が加わるほど通過する径が大きくなり、額位では大斜径(頤から後頭の最遠点まで、約13.5cm)となる。顔位では反り返りが完成して通過する径はやや小さくなるため、頤前方位であれば経腟分娩が可能なことがある。
回旋異常を起こしやすい要因
狭骨盤や扁平骨盤などの骨盤の異常、児頭骨盤不均衡、微弱陣痛、巨大児、胎児の頸部腫瘤、多産婦で腹壁が弛緩している場合などが挙げられる。
内診所見
回旋の状態は、内診で矢状縫合の向きと大泉門・小泉門の位置を確認して判断する。正常の第2回旋後は矢状縫合が縦(前後方向)で、小泉門が母体前方に触れる。後方後頭位では小泉門が後方、大泉門が前方に触れる。低在横定位では矢状縫合が横方向に触れる。
POINT
・第1回旋=屈曲、第2回旋=内回旋、第3回旋=伸展(反屈)、第4回旋=外回旋。 ・反屈位(前頭位、額位、顔位)は第1回旋の異常。 ・後方後頭位と低在横定位は第2回旋の異常。 ・骨盤位は胎位の異常であり、回旋異常ではない。 ・額位は通常経腟分娩困難、顔位は頤前方位なら経腟分娩の可能性がある。
