StudyMed医師国家試験

2つで1組、粘膜を守る盾―分泌型IgAと免疫グロブリンの「かたち」

第105回医師国家試験 B問題 第21問

国試問題にチャレンジ

第105回 B問題 第21問

免疫グロブリンで2量体を形成するのはどれか。

  1. a.IgA
  2. b.IgD
  3. c.IgE
  4. d.IgG
  5. e.IgM

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は免疫グロブリンの分子構造、特に「いくつの基本単位が集まって存在するか」を問う問題だ。5つのクラスそれぞれの形と役割をセットで整理できているかがポイントになるよ。まず基本単位から確認しよう。免疫グロブリン1分子はどんな形をしているかな。
医学生医学生
重鎖2本と軽鎖2本がジスルフィド結合でつながったY字型ですよね。基礎医学の免疫学の講義で、FabとFcに分けて習いました。
ドクタードクター
その通り。先端のFab領域が抗原と結合し、根元のFc領域がFc受容体や補体と結合する。そして重鎖の種類、α、δ、ε、γ、μによってIgA、IgD、IgE、IgG、IgMの5クラスに分かれる。では、このY字が何個集まるかという話だけど、どう覚えている?
医学生医学生
IgMが一番大きい多量体だったと思うので、2量体もIgMかなと一瞬迷いました。
ドクタードクター
IgMは多量体なのは正しいけれど、2つではなく5つなんだ。血中のIgMはJ鎖という結合鎖を介して5つの単量体がつながった5量体で、分子量はおよそ90万と免疫グロブリンの中で最大。抗原結合部位が10か所あるから、1か所ごとの親和性は低くても全体としての結合力、つまりアビディティが強い。
医学生医学生
ということは、2量体をつくるのはIgAですね。
ドクタードクター
正解。IgAは血清中では主に単量体だけど、粘膜に分泌される分泌型IgAは、2つの単量体がJ鎖で連結された2量体なんだ。粘膜下の形質細胞がつくった2量体IgAは、上皮細胞の基底側にある多量体免疫グロブリン受容体、pIgRに結合して細胞の中を運ばれ、管腔側で受容体の一部が切り離されて「分泌成分」としてくっついたまま放出される。
医学生医学生
分泌成分にはどんな意味があるんですか。
ドクタードクター
消化管の中は蛋白分解酵素だらけだよね。分泌成分はIgAをその分解から守る鎧の役目を果たしているんだ。だから分泌型IgAは唾液、涙液、鼻汁、気道や消化管の分泌液、そして母乳、特に初乳に多く含まれて、病原体や毒素が粘膜に付着・侵入するのを防ぐ。粘膜免疫の主役だね。
医学生医学生
残りのIgG、IgD、IgEはすべて単量体ということでいいですか。
ドクタードクター
そう。IgGは血清中の免疫グロブリンの約7割以上を占める最多のクラスで、オプソニン化、補体の古典経路の活性化、毒素やウイルスの中和を担い、二次応答で主に産生される。胎盤を通過できる唯一のクラスである点も頻出だ。IgDは血清中にはごく微量で、主にナイーブB細胞の表面にIgMとともに発現してB細胞受容体として働く。
医学生医学生
IgEは臨床実習のアレルギー外来で、特異的IgE検査の結果をよく見ました。
ドクタードクター
IgEは血清中の濃度が最も低いけれど、マスト細胞や好塩基球の高親和性IgE受容体、FcεRIにFc部分で結合している。アレルゲンが結合して隣り合う受容体が架橋されると、ヒスタミンやロイコトリエンなどが放出される。これがⅠ型アレルギーの機序で、寄生虫防御にも関わるんだ。
医学生医学生
整理すると、単量体がIgG・IgD・IgE、2量体が分泌型IgA、5量体がIgMで、J鎖を持つのは多量体のIgAとIgMということですね。
ドクタードクター
完璧だね。役割も一緒に、一次応答はIgM、二次応答はIgG、粘膜免疫はIgA、Ⅰ型アレルギーはIgEと覚えておくとCBTでも国試でも強い。最後に臨床とのつながりを話しておこう。IgMは胎盤を通過しないから、臍帯血や新生児の血中で特異的IgMが高ければ、胎内感染を示唆する所見になる。
医学生医学生
母体由来ではなく、赤ちゃん自身がつくったものだと判断できるからですね。
ドクタードクター
その通り。IgAに関しては、選択的IgA欠損症が原発性免疫不全症の中で比較的頻度が高い。多くは無症状だけど、反復する気道・消化管感染を起こすことがあるし、抗IgA抗体をもつ人ではIgAを含む血液製剤の輸血でアナフィラキシーを起こしうる。輸血前の情報として大事だよ。
医学生医学生
腎臓内科ではIgA腎症も学びました。上気道感染のあとに肉眼的血尿が出るのが印象的でした。
ドクタードクター
よく結びつけたね。糖鎖異常を伴うIgA1を含む免疫複合体がメサンギウム領域に沈着する腎炎で、粘膜感染をきっかけに悪化しやすいのはIgAが粘膜免疫を担うことと無関係ではない。また、IgMが腫瘍性に増える原発性マクログロブリン血症では、巨大な5量体が増えて血液粘稠度が上がり、過粘稠度症候群を起こしやすい。分子の「かたち」が病態にも直結しているんだ。

まとめ

免疫グロブリンは重鎖2本と軽鎖2本からなるY字型の単量体を基本単位とし、IgG・IgD・IgEは単量体として存在します。IgMはJ鎖を介した5量体で分子量が最大、一次応答で最初に産生され補体活性化能が強いのが特徴です。分泌型IgAはJ鎖で連結された2量体で、pIgRを介して粘膜上皮を通過し、分泌成分に守られて唾液・腸液・母乳中で粘膜免疫を担います。胎盤通過はIgGのみ、Ⅰ型アレルギーはIgEなど、各クラスの構造と機能を対応させて覚えることが、胎内感染の評価、選択的IgA欠損症での輸血時の注意、IgA腎症やマクログロブリン血症の病態理解につながります。

解答・解説

正解はaです

免疫グロブリン(immunoglobulin:Ig、抗体)の分子構造、特に何個の基本単位が集まって存在するかを問う問題である。 免疫グロブリンの基本単位は、2本の重鎖(H鎖)と2本の軽鎖(L鎖)がジスルフィド結合でつながったY字型の分子(単量体)である。抗原と結合する先端部分をFab領域、細胞表面の受容体(Fc受容体)や補体と結合する根元部分をFc領域という。重鎖の種類(α、δ、ε、γ、μ)によってIgA、IgD、IgE、IgG、IgMの5つのクラスに分けられる。 IgG、IgD、IgEは単量体として存在する。これに対し、IgMとIgAは、形質細胞が産生するJ鎖(joining chain、結合鎖)というポリペプチドを介して複数の単量体が結合した多量体を形成できる。分泌型IgMは5量体、分泌型IgAは2量体が基本である。したがって「2量体を形成する」のはIgAである。

選択肢考察

  1. ○a.  IgA

    IgAは、血清中では主に単量体として存在するが、粘膜面に分泌されるIgA(分泌型IgA)は2つの単量体がJ鎖で連結された2量体である。粘膜下の形質細胞が産生した2量体IgAは、上皮細胞の基底側にある多量体免疫グロブリン受容体(pIgR)に結合して細胞内を輸送され、管腔側で受容体の一部が切断されて分泌成分(secretory component)として付いたまま放出される。分泌成分は消化酵素による分解からIgAを守る役割をもつ。分泌型IgAは唾液、涙液、鼻汁、気道・消化管の分泌液、母乳(特に初乳)に多く含まれ、病原体や毒素が粘膜に付着・侵入するのを防ぐ粘膜免疫の主役である。

  2. ×b.  IgD

    IgDは単量体である。血清中の濃度はごく低く、主に成熟したナイーブB細胞の表面にIgMとともに発現し、B細胞抗原受容体として抗原刺激を受け取り、B細胞の活性化・抗体産生の誘導に関わると考えられている。

  3. ×c.  IgE

    IgEは単量体である。血清中の濃度は5つのクラスの中で最も低いが、Fc領域を介してマスト細胞(肥満細胞)や好塩基球の表面にある高親和性IgE受容体(FcεRI)に結合している。抗原(アレルゲン)が結合して隣り合う受容体どうしが架橋されると細胞が活性化し、ヒスタミンなどの顆粒内容物やロイコトリエンなどが放出される。これがⅠ型(即時型)アレルギーの機序である。寄生虫(蠕虫)感染の防御にも関与する。

  4. ×d.  IgG

    IgGは単量体である。血清中の免疫グロブリンの約70〜75%を占める最も多いクラスで、液性免疫の中心を担う。オプソニン化(貪食の促進)、補体の古典経路の活性化、毒素やウイルスの中和などの作用をもち、感染後の二次応答で主に産生される。また、胎盤を通過できる唯一の免疫グロブリンであり、新生児の受動免疫に重要である。IgG1〜IgG4の4つのサブクラスがある。

  5. ×e.  IgM

    IgMは血中ではJ鎖を介して5つの単量体が結合した5量体として存在し、分子量は約90万と免疫グロブリンの中で最大である。したがって2量体ではない。抗原結合部位が10か所あるため、親和性は低くても結合力(アビディティ)が強く、補体の古典経路を最も強力に活性化する。感染初期(一次応答)に最初に産生される抗体で、特異的IgM抗体の上昇は初感染・急性感染の指標となる。なお、B細胞表面には単量体として発現している。IgMを産生する細胞が腫瘍性に増殖する原発性マクログロブリン血症では、分子量の大きいIgM型M蛋白が増えるため、血液粘稠度が上がる過粘稠度症候群を起こしやすい。

免疫グロブリン各クラスの特徴

・IgG:単量体。血清中で最多。胎盤通過性あり。二次応答の主役。補体活性化・オプソニン化。 ・IgA:血清中は主に単量体、分泌型は2量体(J鎖と分泌成分をもつ)。粘膜免疫の主役。母乳中に多く、新生児の消化管を守る。 ・IgM:分泌型は5量体(J鎖をもつ)。分子量最大。一次応答で最初に産生。補体活性化能が最も強い。胎盤を通過しないため、臍帯血や新生児血中の特異的IgM高値は胎内感染を示唆する。 ・IgD:単量体。主にB細胞表面に存在。血清中は微量。 ・IgE:単量体。血清中は最少。マスト細胞・好塩基球のFcεRIに結合し、Ⅰ型アレルギーと寄生虫防御に関与。

J鎖

J鎖は形質細胞が産生する小さなポリペプチドで、IgMやIgAの多量体形成に関わる。J鎖をもつ多量体だけがpIgRに結合して粘膜上皮を通過できるため、IgMも少量ながら粘膜に分泌される。

関連する臨床事項

・選択的IgA欠損症:原発性免疫不全症の中で比較的頻度が高く、多くは無症状だが、反復性の気道・消化管感染を起こすことがある。抗IgA抗体をもつ例では、IgAを含む血液製剤の輸血でアナフィラキシーを起こしうる。 ・IgA腎症:糖鎖異常を伴うIgA(主にIgA1)を含む免疫複合体がメサンギウム領域に沈着する糸球体腎炎で、上気道感染後に肉眼的血尿をきたすことがある。

POINT

・単量体:IgG、IgD、IgE ・2量体:分泌型IgA(J鎖と分泌成分をもつ) ・5量体:IgM(J鎖をもつ、分子量最大) ・胎盤を通過するのはIgGのみ。 ・一次応答はIgM、二次応答はIgG、粘膜免疫はIgA、Ⅰ型アレルギーはIgE。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。