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卵膜が破れたら何が変わる?―破水の時期・pH・陣痛・感染を一気に整理

第105回医師国家試験 B問題 第12問

国試問題にチャレンジ

第105回 B問題 第12問

破水について正しいのはどれか。

  1. a.児頭娩出後に起こる。
  2. b.腟内のpHが低下する。
  3. c.微弱陣痛の原因になる。
  4. d.感染のリスクが増大する。
  5. e.前期破水は分娩第1期に起こる。

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は破水についての正誤問題だ。破水そのものはシンプルな現象だけど、起こる時期と呼び名、腟内環境の変化、陣痛への影響、感染リスクと、押さえるべき切り口がいくつもある。まず、破水とは何が起きている状態か説明できるかな。
医学生医学生
胎児と羊水を包んでいる卵膜が破れて、羊水が腟から流れ出ることですよね。
ドクタードクター
その通り。卵膜は羊膜と絨毛膜からなる膜だ。では最初の切り口、時期から。生理的には破水はいつ起こるだろう。
医学生医学生
産婦人科の講義で、子宮口が全開大するころと習いました。適時破水でしたっけ。
ドクタードクター
正解。分娩第1期の終わりから第2期のはじめあたりだね。だから「児頭娩出後に起こる」というのは誤り。破水は児の娩出より前に起こる現象で、全開大してもなかなか破水しないものは遅滞破水とよび、必要に応じて人工破膜を行う。卵膜をかぶったまま生まれてくる被膜児はまれだ。
医学生医学生
前期破水と早期破水がいつも混乱します。「前期」っていうと分娩第1期のことのような気がしてしまって。
ドクタードクター
まさにそこを突いた選択肢があるね。前期破水は陣痛が始まる前、つまり分娩開始前の破水。陣痛開始後で子宮口全開大前、すなわち分娩第1期中に起こるものは早期破水だ。だから「前期破水は分娩第1期に起こる」は誤り。分娩第1期は陣痛開始から全開大まで、という定義とセットで覚えるといい。
医学生医学生
「前期」は分娩が始まる前、「早期」は分娩中だけど早め、と覚えればよさそうです。
ドクタードクター
いい整理だね。次は腟内環境。健常な腟内のpHはどうなっている?
医学生医学生
Döderlein桿菌が乳酸をつくるので酸性ですよね。微生物学の講義で自浄作用として習いました。
ドクタードクター
その通り、pH 3.5〜4.5程度の酸性だ。一方、羊水は弱アルカリ性。これが腟に流れ込むと、腟内のpHはどうなる?
医学生医学生
上がるはずですね。だから「pHが低下する」は逆ということですか。
ドクタードクター
そう。腟内pHは上昇する。この性質を利用して、BTB試験紙などで腟内容が青変すれば破水を疑う補助診断になる。ただし血液や精液、細菌性腟症でもアルカリ性になって偽陽性が出ることがあるから、羊水中のIGFBP-1やAFPを検出する検査を組み合わせることもある。
医学生医学生
陣痛についてはどうでしょう。羊水が抜けてクッションがなくなると、陣痛が弱くなるようなイメージもあるのですが。
ドクタードクター
そこは誤解しやすいところだね。実際は逆で、破水すると児頭が子宮頸部を直接圧迫するようになり、局所でのプロスタグランジン産生も促されることなどから、陣痛は通常増強して分娩が進みやすくなる。だから分娩促進の目的で人工破膜を行うことがあるんだ。前期破水のあとに陣痛がなかなか来なくて誘発することはあるけれど、それは破水が陣痛を弱めたわけではない。よって「微弱陣痛の原因になる」も誤り。
医学生医学生
そうすると、正しいのは感染のリスクが増大する、ですね。卵膜がバリアとして働いていたのがなくなるから、ということでしょうか。
ドクタードクター
その通り。卵膜は腟内の細菌から子宮内の胎児と羊水を隔てる障壁だ。それが破れると腟内の細菌が子宮内へ上行しやすくなり、絨毛膜羊膜炎や新生児敗血症などのリスクが高まる。しかも破水から分娩までの時間が長いほどリスクは大きくなる。
医学生医学生
臨床実習で産科を回ったとき、破水した妊婦さんの内診を先生が最小限にしていたのは、そのためだったんですね。
ドクタードクター
よく観察していたね。頻回の内診は感染の機会を増やすから避けるんだ。破水後は母体の発熱や頻脈、子宮の圧痛、羊水の悪臭、胎児頻脈、白血球数やCRPの上昇といった感染徴候に注意して、状況に応じて抗菌薬の投与や分娩時期を判断する。もう一つ、破水で注意したい合併症が臍帯脱出だ。児頭が骨盤に固定していないときや骨盤位では起こりやすく、緊急対応が必要になる。
医学生医学生
妊娠37週未満の前期破水は特に注意が必要と聞きました。
ドクタードクター
そう、preterm PROMは早産と感染に深く関わる。さらに妊娠のかなり早い時期に起こって羊水が少ない状態が長く続くと、胎児の肺低形成や四肢の拘縮が問題になることもある。週数や感染徴候をみながら、妊娠を継続するか分娩にするかを慎重に判断するのが産科管理の要点だ。

まとめ

破水は卵膜(羊膜・絨毛膜)が破れて羊水が流出する現象で、生理的には子宮口全開大のころに起こり(適時破水)、児の娩出より前に生じます。陣痛開始前の破水を前期破水、陣痛開始後で全開大前(分娩第1期中)の破水を早期破水とよび、名称と時期の対応は頻出です。弱アルカリ性の羊水が流入すると酸性の腟内pHは上昇し、BTB試験の青変が補助診断になります。また破水後は児頭による頸部圧迫などで陣痛は増強しやすい一方、卵膜という障壁が失われることで上行性感染(絨毛膜羊膜炎など)のリスクが高まり、破水から分娩までの時間が長いほど危険が増します。破水の定義と生理を正しく理解しておくことは、感染徴候の観察や臍帯脱出への備え、早産期前期破水の管理といった実際の産科診療に直結します。

解答・解説

正解はdです

破水とは、胎児と羊水を包む卵膜(羊膜・絨毛膜)が破れ、羊水が腟から流出することである。本問は、破水が起こる時期とその呼び名、破水によって生じる変化(腟内環境、陣痛、感染)を正しく理解しているかを問う。 押さえるべき点は次の三つである。 1. 時期による分類:生理的には、子宮口が全開大するころに破水する(適時破水)。これより早く、陣痛が始まる前に起こるものを前期破水、陣痛開始後で全開大前に起こるものを早期破水とよぶ。全開大後もなお破水しないものは遅滞破水である。いずれにせよ破水は児の娩出より前に起こる現象である。 2. 腟内環境の変化:健常な腟内は乳酸桿菌(Döderlein桿菌)がつくる乳酸によって酸性(pH 3.5〜4.5程度)に保たれている。これに弱アルカリ性の羊水が流れ込むと、腟内pHは上昇する。これが破水診断の根拠の一つとなる。 3. 破水後に起こること:卵膜という物理的な障壁が失われるため、腟内の細菌が子宮内へ上行しやすくなり、絨毛膜羊膜炎などの感染リスクが高まる。また、児頭が子宮頸部を直接圧迫するようになるなどの理由で陣痛は増強し、分娩は進みやすくなる。 これらを踏まえると、正しい記述は「感染のリスクが増大する」である。

選択肢考察

  1. ×a.  児頭娩出後に起こる。

    誤りである。破水は児の娩出より前に起こる。生理的な破水(適時破水)は子宮口全開大のころ、すなわち分娩第1期の終わりから第2期のはじめに起こる。全開大後もなかなか破水しないものは遅滞破水とよばれ、必要に応じて人工破膜を行う。卵膜が破れないまま児が娩出されることはまれで、卵膜をかぶって生まれた児を被膜児という。

  2. ×b.  腟内のpHが低下する。

    誤りである。腟内は乳酸桿菌が産生する乳酸によって酸性(pH 3.5〜4.5程度)に保たれている。羊水は弱アルカリ性(pH 7.0〜7.5程度)であり、破水して羊水が腟内に流れ込むと腟内pHは上昇(アルカリ化)する。この性質を利用して、BTB(ブロモチモールブルー)試験紙などのpH指示薬で腟内容を調べ、青色への変色(アルカリ性)を破水の補助診断とする。ただし血液・精液・細菌性腟症でもアルカリ化し偽陽性となることがあるため、必要に応じてIGFBP-1(インスリン様成長因子結合蛋白1型)やAFP(αフェトプロテイン)など羊水に含まれる成分を検出する検査を組み合わせる。

  3. ×c.  微弱陣痛の原因になる。

    誤りである。破水すると、羊水が減ることで児頭が子宮頸部や子宮下部を直接圧迫するようになり、また局所でのプロスタグランジン産生が促されることなどから、陣痛は通常増強し分娩の進行が早まる。このため、分娩の進行を促す目的で人工的に卵膜を破る人工破膜が行われることがある。なお、前期破水の後に陣痛がなかなか始まらない場合は陣痛誘発を考慮するが、これは破水が陣痛を弱めたわけではない。

  4. ○d.  感染のリスクが増大する。

    正しい。卵膜は子宮内の胎児・羊水を腟内の細菌から隔てる障壁として働いている。破水によってこの障壁が失われると、腟内の細菌が子宮内へ上行しやすくなり(上行性感染)、絨毛膜羊膜炎や、胎児・新生児の感染症(新生児敗血症など)のリスクが高まる。そのリスクは破水から分娩までの時間が長いほど大きい。このため破水後は母体の発熱・頻脈、子宮の圧痛、胎児頻脈、白血球数・CRPの上昇などの感染徴候に注意し、状況に応じて抗菌薬の投与や分娩時期の判断を行う。破水後の頻回な内診も感染の機会を増やすため避ける。

  5. ×e.  前期破水は分娩第1期に起こる。

    誤りである。前期破水は陣痛が始まる前、つまり分娩開始前に起こる破水と定義される。分娩第1期は陣痛開始から子宮口全開大までを指すので、この時期(全開大前)に起こる破水は早期破水とよばれる。前期破水のうち妊娠37週未満に起こるものは前期破水の中でも特に早産や感染と関係が深く、管理上重要である。

破水の時期による分類

・前期破水:陣痛(分娩)開始前の破水。英語ではPROM(premature rupture of the membranes)。妊娠37週未満のものをpreterm PROM(PPROM)とよぶ。 ・早期破水:陣痛開始後、子宮口全開大前の破水(分娩第1期中)。 ・適時破水:子宮口全開大のころの破水(生理的)。 ・遅滞破水:全開大後も破水しないもの。

分娩の時期区分

・分娩第1期:陣痛開始〜子宮口全開大 ・分娩第2期:子宮口全開大〜児娩出 ・分娩第3期:児娩出〜胎盤娩出

破水の診断

・問診:水様の帯下の流出感 ・腟鏡診:後腟円蓋の羊水貯留、子宮口からの羊水流出の確認 ・腟内容のpH検査(BTB法、ニトラジン法など):アルカリ性を示す ・羊水成分の検出:IGFBP-1、AFPなど ・羊水の顕微鏡所見:乾燥させるとシダ状の結晶がみられる(シダ状結晶) ・超音波検査:羊水量の減少

破水に伴う主な合併症

・絨毛膜羊膜炎などの上行性感染(母体の発熱、頻脈、子宮圧痛、悪臭のある羊水、胎児頻脈など) ・臍帯脱出(特に児頭が骨盤に固定していない場合や骨盤位) ・早産(PPROMの場合) ・長期の羊水減少による胎児の肺低形成や四肢の拘縮(妊娠早期のPPROM)

POINT

・破水は児の娩出前に起こり、生理的には子宮口全開大のころ(適時破水)である。 ・前期破水=陣痛開始前の破水、早期破水=陣痛開始後〜全開大前の破水。 ・羊水は弱アルカリ性で、破水すると腟内pHは上昇する(BTB試験で青変)。 ・破水後は陣痛が増強し分娩が進みやすい(人工破膜による分娩促進)。 ・卵膜という障壁が失われるため、上行性感染(絨毛膜羊膜炎)のリスクが高まる。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。