りんご病と手足口病―「どこに症状が出るか」でウイルスを見分ける
第104回医師国家試験 I問題 第26問
国試問題にチャレンジ
発疹がみられる小児のウイルス感染症の病原体はどれか。2つ選べ。
- a.RSウイルス
- b.パルボウイルス
- c.エンテロウイルス
- d.ムンプスウイルス
- e.インフルエンザウイルス
対話形式の解説
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医学生
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医学生まとめ
小児の発疹性ウイルス感染症には、麻疹、風疹、水痘、突発性発疹(HHV-6/7)に加え、伝染性紅斑(パルボウイルスB19)と手足口病(コクサッキーウイルスA16やエンテロウイルス71などのエンテロウイルス)があります。一方、RSウイルスとインフルエンザウイルスは気道感染症、ムンプスウイルスは耳下腺炎が主体で、発疹は典型的ではありません。パルボウイルスB19は赤芽球系前駆細胞に感染するため、溶血性貧血患者の無形成発作や妊婦感染による胎児水腫の原因となり、エンテロウイルス71は中枢神経合併症に注意が必要です。ウイルスごとの「主な障害臓器」と「注意すべき合併症」をセットで整理しておくと、鑑別にも患者・家族への説明にも役立ちます。
解答・解説
正解はb, cです
小児のウイルス感染症には、皮膚の発疹(発疹症)を主徴とするものが多い。代表的なものとして、麻疹(麻疹ウイルス)、風疹(風疹ウイルス)、水痘(水痘・帯状疱疹ウイルス)、突発性発疹(ヒトヘルペスウイルス6型・7型)、伝染性紅斑(パルボウイルスB19)、手足口病(コクサッキーウイルスA群やエンテロウイルス71などのエンテロウイルス)が挙げられる。 本問は、選択肢のウイルスが「発疹を主症状とする小児の感染症」を起こすかどうかを判断させる問題である。各ウイルスの代表的な疾患と主な障害臓器を思い出すとよい。RSウイルスとインフルエンザウイルスは気道感染症、ムンプスウイルスは唾液腺(耳下腺)の腫脹が主体であり、発疹は典型的な症状ではない。一方、パルボウイルスB19は伝染性紅斑、エンテロウイルスは手足口病など、発疹を特徴とする疾患の原因となる。
選択肢考察
- ×a. RSウイルス
RSウイルス(respiratory syncytial virus)は、乳幼児の細気管支炎・肺炎の最も重要な原因ウイルスである。2歳までにほぼすべての小児が初感染を受け、特に生後6か月未満の乳児、早産児、先天性心疾患や慢性肺疾患をもつ児では重症化しやすい。症状は鼻汁・咳嗽に続く喘鳴、多呼吸、陥没呼吸などの気道症状が中心で、発疹を主徴とする疾患ではない。ハイリスク児にはモノクローナル抗体(パリビズマブなど)による予防が行われる。
- ○b. パルボウイルス
ヒトに病気を起こす代表的なパルボウイルスはパルボウイルスB19(ヒトパルボウイルスB19)で、小児の伝染性紅斑(りんご病)の原因である。感染後、発熱や感冒様症状が軽くみられた後、両頬に平手で打ったような紅斑(蝶形ではなく境界明瞭な頬の紅斑)が現れ、続いて四肢伸側にレース状・網目状の紅斑が広がる。発疹が出る頃にはウイルスの排出はほぼ終わっており、感染力はほとんどない。本ウイルスは骨髄の赤芽球系前駆細胞に感染してその増殖を一時的に止めるため、遺伝性球状赤血球症などの溶血性貧血患者では急激な貧血(無形成発作)を、免疫不全者では持続感染による慢性の赤芽球癆を起こす。妊婦が感染すると胎児の高度貧血から胎児水腫・流産・死産をきたしうる。成人では発疹よりも関節痛・関節炎が目立つことが多い。
- ○c. エンテロウイルス
エンテロウイルス属にはポリオウイルス、コクサッキーウイルスA群・B群、エコーウイルス、エンテロウイルス71などが含まれ、夏季に小児の間で流行する。発疹を伴う代表的疾患が手足口病で、コクサッキーウイルスA16やエンテロウイルス71が主な原因である(近年はコクサッキーウイルスA6による、より広範囲で大きな水疱を形成する非典型例も多い)。手掌・足底・口腔粘膜などに小水疱を生じる。エンテロウイルス71感染では無菌性髄膜炎や脳炎などの中枢神経合併症に注意が必要である。そのほか、ヘルパンギーナ(軟口蓋の小水疱・潰瘍)や、エコーウイルスなどによる非特異的な発疹性熱性疾患も起こす。
- ×d. ムンプスウイルス
ムンプスウイルスは流行性耳下腺炎(おたふくかぜ)の原因ウイルスである。発熱と片側または両側の耳下腺の有痛性腫脹(顎下腺が腫れることもある)が主症状で、発疹は典型的ではない。合併症として無菌性髄膜炎、難聴(多くは片側性の高度感音難聴で回復しにくい)、思春期以降の男性での精巣炎、女性での卵巣炎、膵炎などが重要である。
- ×e. インフルエンザウイルス
インフルエンザウイルスは冬季に流行する急性気道感染症の原因で、急な高熱、悪寒、頭痛、筋肉痛・関節痛、全身倦怠感などの全身症状と咳・咽頭痛・鼻汁などの気道症状を示す。発疹は通常みられない。小児ではインフルエンザ脳症、熱性けいれん、肺炎、中耳炎、筋炎などの合併症が問題となる。また、小児へのアスピリン投与はReye症候群との関連があるため避ける。
小児の主な発疹性ウイルス感染症
・麻疹:麻疹ウイルス。カタル期にKoplik斑、発熱が二峰性となり、癒合傾向のある斑丘疹が出現、色素沈着を残して治る。 ・風疹:風疹ウイルス。発熱と同時に小さな淡い紅斑、耳介後部・後頸部リンパ節腫脹。妊娠初期の感染で先天性風疹症候群。 ・水痘:水痘・帯状疱疹ウイルス。紅斑→丘疹→水疱→痂皮の各段階の発疹が混在し、頭皮・口腔内にもみられる。 ・突発性発疹:ヒトヘルペスウイルス6型・7型。乳児に3〜4日の高熱、解熱とともに体幹中心の発疹。 ・伝染性紅斑:パルボウイルスB19。頬の紅斑と四肢のレース状紅斑。 ・手足口病:コクサッキーウイルスA16、エンテロウイルス71など。手掌・足底・口腔の小水疱。 ・ヘルパンギーナ:コクサッキーウイルスA群が主。軟口蓋・口蓋垂付近の小水疱(粘膜疹)と高熱。 ・伝染性単核球症:EBウイルス。アンピシリンなどのアミノペニシリン投与で高頻度に発疹が出る。
パルボウイルスB19感染で注意すべき状況
・溶血性貧血(遺伝性球状赤血球症など)患者:無形成発作(aplastic crisis) ・免疫不全者:持続感染による赤芽球癆 ・妊婦:胎児貧血・胎児水腫 ・成人:多関節痛・関節炎
POINT
・発疹を主徴とする小児ウイルス感染症:麻疹、風疹、水痘、突発性発疹(HHV-6/7)、伝染性紅斑(パルボウイルスB19)、手足口病(エンテロウイルス)。 ・パルボウイルスB19は赤芽球系前駆細胞に感染し、無形成発作・胎児水腫の原因にもなる。 ・手足口病はコクサッキーウイルスA16とエンテロウイルス71が主因で、後者は中枢神経合併症に注意。 ・RSウイルスは細気管支炎、ムンプスウイルスは耳下腺炎、インフルエンザウイルスは気道感染が主体で、発疹は典型的でない。
