「カタル」「乳頭」「腫」にだまされるな―ウイルス性結膜炎3兄弟を見抜く
第104回医師国家試験 I問題 第18問
国試問題にチャレンジ
ウイルスが原因となるのはどれか。2つ選べ。
- a.霰粒腫
- b.春季カタル
- c.咽頭結膜熱
- d.巨大乳頭結膜炎
- e.急性出血性結膜炎
対話形式の解説
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医学生
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医学生まとめ
結膜疾患は原因によって、感染性、アレルギー性、非感染性の炎症・肉芽腫に分けて整理すると理解しやすくなります。ウイルス性の代表は、流行性角結膜炎(アデノウイルス8・19・37型など)、咽頭結膜熱(アデノウイルス3型など、発熱・咽頭炎・結膜炎の三主徴)、急性出血性結膜炎(エンテロウイルス70型やコクサッキーウイルスA24変異株、潜伏期約1日、結膜下出血)の3つです。春季カタルと巨大乳頭結膜炎は増殖性変化を伴うアレルギー性結膜疾患で、霰粒腫はマイボーム腺の閉塞による無痛性の肉芽腫であり、細菌感染による麦粒腫とは区別します。ウイルス性結膜炎は接触感染で集団発生しやすいため、学校保健安全法上の扱いや、流水での手洗い・器具消毒といった感染対策まで含めて押さえておくことが、臨床で役立つ知識になります。
解答・解説
正解はc, eです
眼瞼・結膜の疾患を、原因の面から「感染性(ウイルス・細菌など)」「アレルギー性」「非感染性の炎症・肉芽腫」に分類できるかを問う問題である。 結膜炎の中でウイルス性として必ず覚えておくべきものは、流行性角結膜炎(EKC)、咽頭結膜熱(PCF)、急性出血性結膜炎(AHC)の3つである。いずれも感染力が強く、学校や医療機関での集団感染が問題となるため、学校保健安全法の第三種・第二種感染症や感染症法の届出対象に含まれている。 一方、春季カタルと巨大乳頭結膜炎はアレルギー性結膜疾患に属し、霰粒腫はマイボーム腺の閉塞に伴う非感染性の肉芽腫である。病名に含まれる「カタル」「乳頭」「腫」といった言葉にまどわされず、それぞれの病態を思い出すことが大切である。 したがって、ウイルスが原因となるのは咽頭結膜熱(アデノウイルス)と急性出血性結膜炎(エンテロウイルス70型、コクサッキーウイルスA24変異株)の2つである。
選択肢考察
- ×a. 霰粒腫
霰粒腫は、瞼板内にある皮脂腺であるマイボーム腺の出口が詰まり、うっ滞した脂質に対して生じる慢性の肉芽腫性炎症である。痛みや発赤を伴わない硬い無痛性の結節として触れるのが典型で、感染によるものではない。細菌感染を合併すると急性霰粒腫として発赤・疼痛を示すことがあるが、ウイルスが原因となる疾患ではない。なお、眼瞼の腺に細菌(主に黄色ブドウ球菌)が感染して起こる急性化膿性炎症は麦粒腫であり、区別が必要である。高齢者で再発を繰り返す場合は脂腺癌との鑑別を要する。
- ×b. 春季カタル
春季カタルは、アレルギー性結膜疾患のうち結膜に増殖性変化を伴う重症型である。学童期の男児に多く、アトピー性皮膚炎を合併することが多い。Ⅰ型アレルギー(IgE、肥満細胞が関与)を主体に、好酸球やTh2細胞による遅発型の炎症も加わる。上眼瞼結膜の石垣状乳頭増殖や、角膜輪部の隆起(Trantas斑)、角膜のシールド潰瘍が特徴で、強いかゆみを伴う。ウイルス感染ではない。治療は抗アレルギー点眼薬に加え、免疫抑制点眼薬(シクロスポリン、タクロリムス)やステロイド点眼薬が用いられる。
- ○c. 咽頭結膜熱
咽頭結膜熱はアデノウイルス(主に3型、ほかに4型・7型など)による感染症で、発熱・咽頭炎・結膜炎を三主徴とする。小児に多く、夏季にプールを介して流行することがあるため「プール熱」とも呼ばれる。結膜は濾胞形成を伴う急性濾胞性結膜炎の像を呈する。診断には咽頭ぬぐい液や結膜擦過物のアデノウイルス迅速抗原検査が用いられる。特異的な抗ウイルス薬はなく対症療法となる。学校保健安全法の第二種感染症に指定され、主要症状が消えた後2日を経過するまで出席停止とされる。
- ×d. 巨大乳頭結膜炎
巨大乳頭結膜炎は、上眼瞼結膜に直径1mm以上の大きな乳頭が形成される結膜炎の総称である。主な原因はコンタクトレンズ(特にソフトコンタクトレンズ)の装用で、レンズに付着した蛋白の汚れに対するアレルギー反応と、レンズによる機械的刺激が関与する。義眼や手術縫合糸の露出でも生じる。アレルギー性結膜疾患の一型であり、ウイルスが原因ではない。治療はコンタクトレンズの中止・変更、レンズケアの改善、抗アレルギー点眼薬などである。
- ○e. 急性出血性結膜炎
急性出血性結膜炎は、エンテロウイルス70型またはコクサッキーウイルスA24変異株によって起こる急性濾胞性結膜炎である。潜伏期が約1日と短く、突然の眼痛・異物感、眼脂、流涙とともに、球結膜下出血を特徴とする。経過は比較的短く、1週間程度で軽快することが多い。エンテロウイルス70型による場合、まれに回復後に下肢の弛緩性麻痺など神経症状を起こすことが知られている。学校保健安全法の第三種感染症(医師が感染のおそれがないと認めるまで出席停止)、感染症法の5類感染症(眼科定点把握)である。
代表的なウイルス性結膜炎の比較
・流行性角結膜炎(EKC):アデノウイルス8・19・37型など(近年は53・54・56型なども)。潜伏期は約1週間。耳前リンパ節腫脹、偽膜形成、発症後1〜2週で角膜上皮下混濁(多発性角膜上皮下浸潤)を残すことがある。発熱などの全身症状は乏しい。学校保健安全法第三種。 ・咽頭結膜熱(PCF):アデノウイルス3型など。発熱・咽頭炎・結膜炎。小児に多く、プールで流行。学校保健安全法第二種。 ・急性出血性結膜炎(AHC):エンテロウイルス70型、コクサッキーウイルスA24変異株。潜伏期は約1日。結膜下出血が特徴。学校保健安全法第三種。 ・いずれも手指や器具を介した接触感染で広がりやすく、手洗いの徹底、タオルの共用禁止、診察器具の消毒が重要である。アデノウイルスはエンベロープをもたず、アルコールに比較的抵抗性であるため、流水・石けんでの手洗いや次亜塩素酸ナトリウムによる消毒が勧められる。
アレルギー性結膜疾患の分類
アレルギー性結膜炎(季節性・通年性)、アトピー性角結膜炎、春季カタル、巨大乳頭結膜炎。このうち結膜に増殖性変化を伴うものが春季カタルと巨大乳頭結膜炎である。
眼瞼の腫瘤:麦粒腫と霰粒腫
・麦粒腫:眼瞼の腺(外麦粒腫はZeis腺・Moll腺、内麦粒腫はマイボーム腺)の急性細菌感染。発赤・疼痛あり。 ・霰粒腫:マイボーム腺の閉塞による慢性肉芽腫性炎症。無痛性の結節。
POINT
・ウイルス性結膜炎の3つ:流行性角結膜炎(アデノウイルス8・19・37型など)、咽頭結膜熱(アデノウイルス3型など)、急性出血性結膜炎(エンテロウイルス70型、コクサッキーウイルスA24変異株)。 ・急性出血性結膜炎は潜伏期約1日、結膜下出血が特徴。 ・咽頭結膜熱は発熱・咽頭炎・結膜炎の三主徴、プール熱。 ・春季カタル・巨大乳頭結膜炎はアレルギー性、霰粒腫はマイボーム腺閉塞による非感染性の肉芽腫。
