StudyMed医師国家試験

子どもの関節炎は「大人のリウマチ」に似ているか―多関節型JIAの検査所見を読み解く

第104回医師国家試験 I問題 第15問

国試問題にチャレンジ

第104回 I問題 第15問

 多関節型の若年性特発性関節炎で認められる検査所見はどれか。2つ選べ。

  1. a.補体低下
  2. b.血小板減少
  3. c.フェリチン高値
  4. d.リウマトイド因子〈RF〉陽性
  5. e.matrix metalloproteinase-3〈MMP3〉高値

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は、若年性特発性関節炎のうち多関節型で見られる検査所見を選ぶ問題だ。カギは「多関節型は成人の関節リウマチに近い病型」という視点と、「炎症で各検査値がどちらに動くか」という基本の2つ。まず若年性特発性関節炎がどんな病気か、整理できているかな。
医学生医学生
16歳未満で発症して、6週間以上続く原因不明の慢性関節炎の総称でしたよね。小児科の講義で、病型がいくつかあると習いました。
ドクタードクター
その通り。大きく分けると、弛張熱やサーモンピンク疹、肝脾腫などの全身症状が前面に出る全身型と、関節症状が主体の関節型がある。関節型は、発症6か月以内に侵された関節が4つ以下なら少関節型、5つ以上なら多関節型だ。
医学生医学生
多関節型は手指の小関節に対称性に出ると聞くと、まさに関節リウマチのイメージです。
ドクタードクター
まさにそこが解法の軸になる。多関節型はリウマトイド因子、RFの陽性・陰性で分けられていて、RF陽性型は年長の女児に多く、対称性の小関節炎を起こし、骨びらんが進みやすい。成人の関節リウマチとほぼ同じ病態と考えられているんだ。抗CCP抗体が陽性になることも多い。だからRF陽性は多関節型で見られる所見として正解だ。
医学生医学生
もう一つのMMP-3も、関節リウマチの外来でよく測っていました。膠原病内科を回ったとき、指導医の先生が経過表で追っていたのを覚えています。
ドクタードクター
MMP-3は炎症を起こした滑膜の細胞がつくる蛋白分解酵素で、軟骨の基質を壊して関節破壊に関わる。血清値は滑膜炎の程度をよく反映するので、関節リウマチでは活動性や関節破壊の予測の指標になる。それに近い病態の多関節型JIAでも、関節炎の活動性に応じて上がる。これも正解だ。
医学生医学生
ではフェリチン高値はどうでしょう。炎症で上がるなら、多関節型でも出そうに思えます。
ドクタードクター
いいところに気づいたね。フェリチンも急性期反応物質だから炎症で多少は上がりうる。ただ、診断の手がかりになるほどの著明高値は、全身型JIAや成人Still病、そしてそれらに合併するマクロファージ活性化症候群の特徴なんだ。活性化したマクロファージから放出されるのが主な理由とされている。多関節型を特徴づける所見ではない。
医学生医学生
全身型と関節型を区別できているかを見る選択肢なんですね。補体低下はどう考えればいいですか。
ドクタードクター
補体のC3やC4は肝臓でつくられ、急性期反応物質としての性質をもつから、関節炎の活動期にはむしろ上昇する。補体が下がるのは免疫複合体で補体が「消費」される病気、たとえばSLEや急性糸球体腎炎、膜性増殖性糸球体腎炎、クリオグロブリン血症などだ。
医学生医学生
腎臓内科の講義で、低補体を見たらSLEや糸球体腎炎を考えると習いました。血小板減少も同じ発想ですか。
ドクタードクター
そうだね。慢性炎症ではIL-6などのサイトカインがトロンボポエチン産生を促すので、血小板は反応性に増えるのが普通だ。JIAの活動期にも血小板増多がよく見られる。逆に全身型JIAの経過中に血小板が急に減ってきたら、マクロファージ活性化症候群への移行を疑う危険なサインになる。
医学生医学生
炎症なら補体も血小板も増える、減ったら別の病態を考える、という整理ですね。
ドクタードクター
その理解で大丈夫。マクロファージ活性化症候群では、血小板や白血球の減少、フィブリノゲン低下、フェリチンの急上昇、AST・LDHの上昇、そしてフィブリノゲン消費による赤沈の低下が見られる。炎症が続いているのに赤沈が下がってきたら要注意、というのは臨床でとても大事な視点だ。
医学生医学生
少関節型にも注意点はありますか。
ドクタードクター
少関節型は幼児期の女児に多く、膝や足関節などの大関節に出やすい。抗核抗体陽性例では自覚症状に乏しい慢性虹彩毛様体炎を合併しやすいので、関節が落ち着いていても定期的な眼科診察が欠かせない。あと、MMP-3は関節に特異的ではなく、SLEや腎機能障害、ステロイド投与でも上がりうるし、小児は基準値が成人より低いので年齢を踏まえて解釈することも覚えておこう。

まとめ

若年性特発性関節炎は16歳未満で発症し6週間以上続く慢性関節炎で、全身症状が主体の全身型と、関節症状が主体の少関節型・多関節型などに分けられます。多関節型は発症6か月以内に5関節以上が侵される病型で成人の関節リウマチに近く、RF陽性例が存在し、滑膜炎の活動性を反映してMMP-3が上昇します。一方、フェリチン著明高値は全身型JIAやマクロファージ活性化症候群の特徴で、炎症時には補体や血小板はむしろ増加し、補体低下はSLEなど免疫複合体病、血小板減少はマクロファージ活性化症候群を疑う手がかりになります。少関節型では抗核抗体陽性例の虹彩毛様体炎にも注意が必要です。病型ごとの病態と「炎症で検査値がどちらに動くか」を結びつけて理解することが、小児リウマチ性疾患の診断と合併症の早期発見につながります。

解答・解説

正解はd, eです

※この問題は、厚生労働省の発表により採点対象から除外されています。

若年性特発性関節炎(juvenile idiopathic arthritis:JIA)は、16歳未満で発症し、6週間以上続く原因不明の慢性関節炎の総称である。臨床的には大きく、発熱・皮疹・肝脾腫などの全身症状が前面に出る全身型(全身性関節炎)と、関節症状が主体の関節型(多関節型・少関節型など)に分けて考えると理解しやすい。 本問はそのうち多関節型の検査所見を問うている。多関節型は発症6か月以内に5関節以上が侵される病型で、手指の小関節を含む対称性の関節炎をきたすなど、病態は成人の関節リウマチ(rheumatoid arthritis:RA)に近い。したがって「RAで見られる検査所見が多関節型JIAでも見られる」と考えるのが解法の軸になる。具体的には、RAの自己抗体であるリウマトイド因子(RF)が陽性となる例があること、滑膜炎の活動性を反映するMMP-3(マトリックスメタロプロテアーゼ-3)が上昇することが挙げられる。 一方、補体・血小板・フェリチンについては、全身性の炎症がどのように検査値へ反映されるかを考える。慢性炎症では補体や血小板はむしろ増える方向に動き、フェリチンの著明高値は全身型JIAやマクロファージ活性化症候群を示唆する所見であって、多関節型の特徴ではない。 なお、本問は採点対象から除外された。病型ごとの細かな検査所見の違いを問う内容であり、卒業時の到達目標としては難度が高すぎると判断されたためと考えられる。

選択肢考察

  1. ×a.  補体低下

    補体成分(C3、C4など)は肝臓で産生される急性期反応物質としての性質をもち、関節炎の活動期にはむしろ上昇する。補体が低下するのは、免疫複合体によって補体が消費される疾患、例えば全身性エリテマトーデス(SLE)、急性糸球体腎炎、膜性増殖性糸球体腎炎、クリオグロブリン血症などである。多関節型JIAの特徴ではない。

  2. ×b.  血小板減少

    慢性炎症ではIL-6などの炎症性サイトカインがトロンボポエチン産生を促すため、血小板は反応性に増加するのが一般的である。JIAの活動期にも血小板増多がみられる。なお全身型JIAで経過中に血小板が急に減少してきた場合は、重篤な合併症であるマクロファージ活性化症候群(MAS)への移行を疑う重要なサインとなるが、これは多関節型の所見ではない。

  3. ×c.  フェリチン高値

    血清フェリチンの著明な上昇は、全身型JIA、成人Still病、およびこれらに合併するマクロファージ活性化症候群(血球貪食症候群の一型)で特徴的にみられる所見である。活性化したマクロファージからの放出が主因とされ、疾患活動性の指標にも用いられる。フェリチン自体も急性期反応物質であり炎症で多少上がり得るが、多関節型JIAを特徴づける所見とはいえない。全身型と関節型の違いを区別できているかが問われる選択肢である。

  4. ○d.  リウマトイド因子〈RF〉陽性

    多関節型JIAは、国際分類(ILAR分類)でRF陽性多関節炎とRF陰性多関節炎に分けられており、RFが陽性となる例が存在する。RF陽性の多関節型は、年長の女児に多く、対称性の小関節炎を呈し、骨びらん(骨破壊)が進行しやすく予後不良であるなど、成人のRAとほぼ同じ病態と考えられている。抗CCP抗体(抗環状シトルリン化ペプチド抗体)が陽性となることも多い。これに対し全身型JIAや少関節型ではRFは原則として陰性である。

  5. ○e.  matrix metalloproteinase-3〈MMP3〉高値

    MMP-3は、炎症を起こした関節の滑膜細胞から産生される蛋白分解酵素で、軟骨基質を分解して関節破壊に関与する。血清MMP-3は滑膜炎の程度をよく反映し、RAでは関節破壊の予測や疾患活動性の指標として使われる。RAに近い病態をもつ多関節型JIAでも、関節炎の活動性に応じて上昇する。なおMMP-3は関節特異的ではなく、SLE、リウマチ性多発筋痛症、腎機能障害、副腎皮質ステロイド投与などでも上昇し得る点に注意する。また小児では健常値が成人より低く、年齢に応じた解釈が必要である。

JIAの病型分類(ILAR分類)

・全身型(全身性関節炎):弛張熱(1日のうちに高熱と平熱を行き来する発熱)、発熱時に出没するサーモンピンク疹、肝脾腫、リンパ節腫脹、漿膜炎を伴う。白血球・好中球増多、CRP高値、血小板増多、フェリチン著明高値を示し、RFや抗核抗体は陰性。IL-6やIL-1が病態の中心で、トシリズマブ(抗IL-6受容体抗体)などが用いられる。日本では最も頻度の高い病型である。 ・少関節型:発症6か月以内の罹患関節が4関節以下。膝・足関節など下肢の大関節に多い。幼児期の女児に多く、抗核抗体陽性例では自覚症状に乏しい慢性虹彩毛様体炎(ぶどう膜炎)を合併しやすいため、定期的な眼科診察が必要である。 ・多関節型(RF陰性・RF陽性):発症6か月以内に5関節以上が罹患。RF陽性型は成人RAに相当し、関節破壊が進行しやすい。 ・その他:乾癬性関節炎、付着部炎関連関節炎(HLA-B27との関連があり、年長男児に多い)、分類不能関節炎。

炎症と検査値の動き

・慢性炎症では、CRP、赤沈、補体、フィブリノゲン、フェリチン、血小板などが上昇する方向に動く。 ・補体低下は「消費」を意味し、免疫複合体病(SLE、糸球体腎炎など)を考える。 ・全身型JIAで血小板・白血球の減少、フィブリノゲン低下、フェリチンの急上昇、AST/LDH上昇、赤沈の低下(フィブリノゲン消費による)がみられたら、マクロファージ活性化症候群を疑う。

関節リウマチ関連マーカー

・RF:IgGのFc部分に対する自己抗体。RA以外の膠原病、慢性感染症、健常高齢者でも陽性になり得る。 ・抗CCP抗体:RAに対する特異度が高く、骨破壊の予測因子でもある。 ・MMP-3:滑膜炎の活動性と関節破壊の予測に有用。

POINT

・多関節型JIAは成人のRAに近い病型であり、RF陽性例が存在し、滑膜炎を反映してMMP-3が上昇する。 ・フェリチン著明高値は全身型JIA(および成人Still病、マクロファージ活性化症候群)の特徴。 ・炎症では補体・血小板はむしろ増加する。補体低下はSLEなど免疫複合体病、血小板減少はMASを疑う。 ・少関節型は抗核抗体陽性例で虹彩毛様体炎を合併しやすい。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。