紫・褐色・脱色・赤―4枚の写真で見抜くGram染色の手順
第104回医師国家試験 H問題 第15問
国試問題にチャレンジ
染色の手順(①~④)を別に示す。 この染色はどれか。

- a.Gram染色
- b.H-E染色
- c.May-Giemsa染色
- d.Papanicolaou染色
- e.Ziehl-Neelsen染色
対話形式の解説
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医学生
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医学生まとめ
Gram染色は、クリスタルバイオレット(紫)による前染色、ルゴール液による媒染、アルコールによる脱色、サフラニン(赤)による後染色という4段階で行われ、「紫→褐色→脱色→赤」の色の流れで見分けられます。厚いペプチドグリカン層をもつグラム陽性菌は紫に残り、薄い層と外膜をもつグラム陰性菌は脱色されて赤く染まり、脱色の加減が判定の正確さを左右します。同じく脱色工程をもつZiehl-Neelsen染色は赤→脱色→青と色の順が逆で、抗酸菌が赤く染まります。H-E染色は組織、May-Giemsa染色は血液塗抹、Papanicolaou染色は細胞診と、用途とセットで整理しておくと混乱しません。Gram染色は迅速に原因菌を推定して初期抗菌薬を選ぶための基本技術であり、染まりにくい病原体も含めてその限界を理解しておくことが臨床で役立ちます。
解答・解説
正解はaです
本問は、スライドガラス上の標本に染色液を順にのせていく4枚の写真から、どの染色法かを見分ける問題である。写真の色の変化は次のとおりである。 ①スライド全体が濃い紫色(青紫色)の液で覆われている。 ②褐色〜橙色の液が一面にのっている。 ③淡い紫色に色が抜けてきている。 ④赤色の液で覆われている。 これは「紫色の色素で染める → 褐色のヨウ素液(ルゴール液)で色素を固定する → アルコールで脱色する → 赤色の色素で後染色する」という流れに一致する。すなわち、①クリスタルバイオレット(クリスタル紫)液による前染色、②ルゴール液(ヨウ素・ヨウ化カリウム液)による媒染、③アルコールによる脱色、④サフラニン液による後染色(対比染色)であり、Gram染色の典型的な手順である。 他の染色法との区別は、使う色素の色と「脱色」の工程で考えるとよい。紫→褐色→脱色→赤の順をとるのはGram染色だけであり、同じく脱色工程をもつZiehl-Neelsen染色は赤(石炭酸フクシン)→脱色(塩酸アルコール)→青(メチレンブルー)の順となる。
選択肢考察
- ○a. Gram染色
Gram染色は、①クリスタルバイオレット液(紫)で染色 → ②ルゴール液(褐色)で媒染し、色素とヨウ素の複合体を作る → ③アルコールで脱色 → ④サフラニン液(赤)で後染色、という手順をとる(施設によってはサフラニンの代わりにパイフェルの希釈フクシン液を用いる変法もある)。写真①〜④の色の順(濃紫→褐色→淡紫→赤)はこの手順と一致する。細胞壁の厚いペプチドグリカン層をもつグラム陽性菌は脱色されずに濃い紫色に、ペプチドグリカン層が薄く外膜をもつグラム陰性菌は脱色されてサフラニンで赤色に染まる。
- ×b. H-E染色
H-E(ヘマトキシリン・エオジン)染色は、病理組織標本の最も基本的な染色法である。ヘマトキシリン(青紫色)で核を染め、水洗(色出し)したのちエオジン(桃色〜赤色)で細胞質や膠原線維を染め、アルコールで脱水しキシレンで透徹して封入する。ルゴール液(褐色)による媒染の工程はなく、写真②の褐色の液が説明できないため該当しない。
- ×c. May-Giemsa染色
May-Giemsa染色は、血液塗抹標本や骨髄標本の観察に用いられるRomanowsky系の染色である。May-Grünwald液(メチレンブルーとエオジンを含む)で固定・染色し、リン酸緩衝液で処理したのち、Giemsa液で重ねて染色し水洗する。核は青紫色、細胞質は好塩基性なら青色、好酸性顆粒は橙赤色に染まる。ルゴール液による媒染やアルコールによる脱色の工程はないため該当しない。
- ×d. Papanicolaou染色
Papanicolaou染色は、子宮頸部や喀痰などの細胞診に用いる染色法である。標本を95%エタノールで湿固定したのち、ヘマトキシリンで核を染め、OG-6(オレンジGを含む)とEA液(エオジンY、ライトグリーン、ビスマルクブラウンを含む)で細胞質を染め分け、脱水・透徹して封入する。角化した細胞質は橙色、表層の扁平上皮細胞は桃色、中層〜深層の細胞は青緑色に染まる。工程が多く、写真のような4段階の紫→褐色→脱色→赤の流れにはならない。
- ×e. Ziehl-Neelsen染色
Ziehl-Neelsen染色は、結核菌などの抗酸菌を検出する抗酸染色である。石炭酸フクシン液(赤色)をのせて加温しながら染色 → 水洗 → 塩酸アルコールで脱色 → メチレンブルー液(青色)で後染色、という手順をとる。細胞壁にミコール酸を多く含む抗酸菌は酸・アルコールでも脱色されずに赤色に、それ以外の菌や細胞は青色に染まる。最初が赤、最後が青であり、写真(最初が紫、最後が赤)とは色の順が逆であるため該当しない。
Gram染色の原理
クリスタルバイオレットとヨウ素は細胞内で大きな複合体を作る。グラム陽性菌は厚いペプチドグリカン層をもち、アルコールで脱水されると細胞壁の網目が縮んで複合体が閉じ込められるため、紫色が残る。グラム陰性菌はペプチドグリカン層が薄く、外膜の脂質がアルコールで溶かされるため複合体が流出し、脱色されたのちサフラニンで赤く染まる。脱色が過剰だと陽性菌が陰性に、不足だと陰性菌が陽性に見える誤りが起こるため、脱色の工程が最も重要である。
Gram染色の臨床的意義
喀痰、尿、髄液、血液培養陽性ボトルなどの検体を迅速に染色・鏡検し、菌の染色性(陽性・陰性)と形態(球菌・桿菌、配列)から原因菌を推定できる。培養結果が出る前の初期抗菌薬(経験的治療)の選択に役立つ。 例:グラム陽性双球菌 → 肺炎球菌、グラム陽性ブドウ状球菌 → ブドウ球菌、グラム陰性双球菌 → 淋菌・髄膜炎菌、グラム陰性桿菌 → 大腸菌・クレブシエラ・緑膿菌など。 なお、マイコプラズマ(細胞壁を欠く)、クラミジア・リケッチア(細胞内寄生)、抗酸菌(ミコール酸により染まりにくい)、スピロヘータ(細すぎて見えにくい)などはGram染色での観察に向かない。
主な染色法の用途
・Gram染色:一般細菌の分類 ・Ziehl-Neelsen染色:抗酸菌(結核菌、非結核性抗酸菌) ・H-E染色:病理組織の基本染色 ・May-Giemsa染色:血液・骨髄塗抹 ・Papanicolaou染色:細胞診
POINT
・Gram染色の手順:クリスタルバイオレット(紫)→ルゴール液(媒染)→アルコール(脱色)→サフラニン(赤)。 ・グラム陽性菌は濃紫色、グラム陰性菌は赤色に染まる。 ・Ziehl-Neelsen染色は石炭酸フクシン(赤)→塩酸アルコール(脱色)→メチレンブルー(青)で、抗酸菌が赤く染まる。 ・染色法は「使う色素の色の順」と「脱色工程の有無」で見分ける。
