StudyMed医師国家試験

その陽性は本物か?―血液培養はコンタミとの戦い

第120回医師国家試験 E問題 第6問

国試問題にチャレンジ

第120回 E問題 第6問

血液培養検体の採取方法で正しいのはどれか。

  1. a.皮膚の消毒薬が乾かないうちに採血を行う。
  2. b.採血時には滅菌手袋を使用する。
  3. c.同部位から複数回採取する。
  4. d.鼠径部からの採取が推奨される。
  5. e.好気性ボトル,嫌気性ボトルの順に血液を注入する。

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は血液培養の正しい採取方法の問題だ。血液培養で一番の敵は、採血時に皮膚常在菌が混入するコンタミネーション。各手順が「汚染を防ぐ」「感度を上げる」「結果を正しく解釈する」のどれにつながるかを意識して考えてみよう。
医学生医学生
感染症の講義で、コアグラーゼ陰性ブドウ球菌が1セットだけ陽性ならコンタミを疑う、と習いました。
ドクタードクター
よく覚えているね。ほかにCutibacterium属、Corynebacterium属、Bacillus属なども代表的な汚染菌だ。汚染を真の起因菌と誤認すると、不要な抗菌薬投与や入院期間の延長につながる。では、汚染を防ぐ手順から考えよう。
医学生医学生
消毒は、アルコール綿で拭いたらすぐ刺してしまっていいのでしょうか。採血実習ではわりとすぐ刺していた気がします。
ドクタードクター
血液培養ではそこが落とし穴なんだ。消毒薬は塗って乾燥するまで時間を置くことで十分な殺菌効果を発揮する。ポビドンヨードなら約2分、アルコール含有クロルヘキシジンなら約30秒以上待って、完全に乾いてから穿刺する。乾く前に刺すと常在菌をそのまま持ち込んでしまう。消毒後に指で血管を触り直すのもNGだ。
医学生医学生
では、滅菌手袋をつけるのが正しい手順ですね。
ドクタードクター
正解。消毒した穿刺部位や針、ボトルの注入口を清潔に保ち、検者の手指からの菌の混入を防ぐために滅菌手袋を使う。実際に汚染率を下げることが示されていて、標準手順として推奨されている。もちろん装着前の手指衛生も必須だ。
医学生医学生
同じ部位から複数回採るのは、同じ血管なら効率がいい気もしますが……。
ドクタードクター
そこは原則と逆なんだ。好気性ボトルと嫌気性ボトルで1セット、それを異なる部位から2セット以上採る。別々の部位なら、2セットとも同じ菌が出れば真の菌血症、常在菌が1セットだけなら汚染の可能性が高いと判断できる。同じ部位だと、その部位の汚染が両方に及んで区別できなくなってしまう。
医学生医学生
2セット採るのは感度のためだけじゃなくて、解釈のためでもあるんですね。
ドクタードクター
その通り。採血量が増えて感度も上がるから一石二鳥だ。次に採取部位。鼠径部はどうだろう。
医学生医学生
救急外来の実習で、ショックの患者さんに鼠径から採っているのを見たことがあります。
ドクタードクター
上肢で採れない場合にはやむを得ず使うこともある。でも鼠径部は陰部や肛門に近く、腸内細菌や皮膚常在菌が多いので汚染リスクが高いし、大腿動脈の誤穿刺のおそれもある。第一選択は肘窩などの上肢の末梢静脈だ。留置中のカテーテルからの採取も、カテーテル関連血流感染症の評価目的以外では汚染が多く推奨されない。
医学生医学生
ボトルへの注入順は、好気性が先でしたっけ。
ドクタードクター
シリンジで採血した場合は嫌気性ボトルが先。シリンジ内の空気は分注の後半に押し出されやすいので、空気が入ると嫌気性菌が育ちにくい嫌気性ボトルを先に入れるんだ。ただし翼状針と採血ホルダーで直接ボトルに採る方法では、チューブ内の空気が最初のボトルに入るから好気性ボトルが先になる。手技によって順序が変わることを理解しておこう。
医学生医学生
空気がどこに入るかで決まると考えれば、丸暗記しなくて済みそうです。
ドクタードクター
いい整理だね。最後に臨床での注意点。採取は可能な限り抗菌薬投与前に行うけれど、敗血症性ショックでは採取のために抗菌薬を遅らせてはいけない。発熱のピークを待つ必要もなく、疑った時点で採る。1セットは成人で約20 mL、各ボトル約10 mLが目安だ。
医学生医学生
採った後のボトルは冷蔵庫で保管するんですか。
ドクタードクター
冷蔵はしない。菌の発育を妨げてしまうから、すぐに提出できなければ室温で保管する。感染性心内膜炎を疑うときは時間をずらして3セット以上採る。それから、黄色ブドウ球菌や大腸菌、カンジダなどは1セットだけの陽性でも原則起因菌として扱うこと。常在菌でも人工弁やカテーテルがある患者では起因菌になり得るから、臨床像と合わせて判断しよう。

まとめ

血液培養では皮膚常在菌によるコンタミネーションを防ぐことが最も重要で、手指衛生のうえ滅菌手袋を着用し、皮膚の消毒薬が完全に乾いてから穿刺します。好気性・嫌気性ボトルを1セットとして異なる部位から2セット以上採取することで、検出感度が上がり、真の菌血症と汚染を見分けられるようになります。採取部位は上肢の末梢静脈が第一選択で、汚染リスクの高い鼠径部は優先度が低く、シリンジ法では嫌気性ボトルから先に注入します(翼状針・ホルダー法では好気性ボトルが先)。可能な限り抗菌薬投与前に採取し、検体は冷蔵せず室温で速やかに提出します。正しい採取手技は抗菌薬の適正使用に直結するため、臨床実習の段階から確実に身につけておきたい基本手技です。

解答・解説

正解はbです

血液培養は、菌血症・敗血症・感染性心内膜炎などを診断し、原因微生物と薬剤感受性を明らかにするための検査である。結果は抗菌薬の選択に直結するため、採取手技の質が診断精度を大きく左右する。 血液培養で最も問題となるのは「コンタミネーション(汚染)」、すなわち採取時に皮膚常在菌(コアグラーゼ陰性ブドウ球菌、Cutibacterium〈旧Propionibacterium〉属、Corynebacterium属、Bacillus属など)が混入して陽性となることである。汚染菌を真の起因菌と誤認すると、不要な抗菌薬投与や入院期間の延長につながる。 そのため採取手順は、次の三つの目的に沿って組み立てられている。 1. 汚染を防ぐ:手指衛生、皮膚の十分な消毒と乾燥、滅菌手袋の使用、ボトル栓の消毒、清潔な穿刺部位の選択。 2. 検出感度を上げる:十分な血液量、複数セットの採取、抗菌薬投与前の採取。 3. 結果を正しく解釈できるようにする:別々の部位から2セット以上採取し、同じ菌が複数セットから検出されるかで真の菌血症か汚染かを判断する。 各選択肢がこれらの原則に合致するかを考えればよい。

選択肢考察

  1. ×a.  皮膚の消毒薬が乾かないうちに採血を行う。

    誤り。消毒薬は塗布してから一定時間が経過し、乾燥することで十分な殺菌効果を発揮する。ポビドンヨードでは約2分、アルコール含有クロルヘキシジンでは約30秒以上待ち、完全に乾いてから穿刺する。乾く前に穿刺すると消毒が不十分なまま皮膚常在菌を血管内やボトル内に持ち込み、コンタミネーションの原因となる。また、消毒後に穿刺部位を指で触れて血管を再確認することも避ける。

  2. ○b.  採血時には滅菌手袋を使用する。

    血液培養の採取では、消毒した穿刺部位や針・ボトル注入口を清潔に保ち、検者の手指からの菌の混入を防ぐために滅菌手袋を着用する。滅菌手袋の使用により汚染率が低下することが示されており、標準的な採取手順として推奨されている。手袋装着前の手指衛生も必須である。

  3. ×c.  同部位から複数回採取する。

    誤り。血液培養は好気性ボトルと嫌気性ボトルの組を1セットとし、異なる部位(例えば左右の上肢の静脈)から2セット以上採取するのが原則である。別部位から採取することで、2セットとも同じ菌が検出されれば真の菌血症、皮膚常在菌が1セットのみから検出されれば汚染の可能性が高い、と判断できる。同じ部位から採取すると、その部位の汚染が両セットに及んで両方陽性となり、汚染と真の菌血症を区別できなくなる。また、複数セットにすることで採血量が増え、検出感度も上がる。

  4. ×d.  鼠径部からの採取が推奨される。

    誤り。鼠径部は陰部・肛門に近く、腸内細菌や皮膚常在菌が多い不潔な部位であり、汚染のリスクが高いため優先度は低い。また大腿動脈を誤穿刺するおそれもある。第一選択は上肢(肘窩など)の末梢静脈であり、鼠径部(大腿静脈)は上肢から採取できない場合に限って用いる。なお、留置中の血管内カテーテルからの採取も、カテーテル関連血流感染症を評価する目的以外では汚染が多く推奨されない。

  5. ×e.  好気性ボトル,嫌気性ボトルの順に血液を注入する。

    注射器(シリンジ)で採血した場合は、嫌気性ボトルから先に注入するのが原則であり、本選択肢は誤りである。シリンジ内に混入した空気は分注の後半に押し出されやすいため、空気が入ると嫌気性菌の発育が妨げられる嫌気性ボトルを先にし、好気性ボトルを後にする。なお、翼状針と採血ホルダーを用いて直接ボトルに採取する方法では、チューブ内の空気が最初のボトルに入るため、好気性ボトルを先にする。手技によって順序が異なることを理解しておく。

血液培養の採取手順(成人・シリンジ法の例)

1. 手指衛生を行う。 2. ボトルのキャップを外し、ゴム栓表面をアルコール綿で消毒する(キャップの下も無菌ではない)。 3. 駆血帯を巻いて穿刺部位を決め、穿刺部位の皮膚を消毒する(アルコール含有クロルヘキシジンやポビドンヨード)。消毒薬が乾くまで待つ。 4. 滅菌手袋を装着し、消毒部位に触れずに穿刺する。 5. 1セットあたり成人で約20 mL(各ボトルに約10 mLずつ)を採取する。採血量が少ないと検出感度が低下し、多すぎても規定量を超えると偽陽性や発育不良の原因になり得る。 6. シリンジ法では嫌気性ボトル→好気性ボトルの順に注入する。針の交換は針刺し事故のリスクがあり汚染防止効果も乏しいため、現在は必須とされない。 7. 別の部位からもう1セット採取する(計2セット以上)。 8. 速やかに検査室へ提出する。すぐに提出できない場合は室温で保管し、冷蔵はしない(菌の発育を妨げるため)。

採取のタイミングと本数

・可能な限り抗菌薬投与前に採取する。ただし敗血症性ショックなどでは採取のために抗菌薬投与を遅らせてはならない。 ・発熱のピークを待つ必要はなく、疑った時点で採取する。 ・感染性心内膜炎を疑う場合は、時間をずらして3セット以上採取することが推奨される。

汚染か真の菌血症かの判断

・黄色ブドウ球菌、大腸菌などの腸内細菌目細菌、肺炎球菌、緑膿菌、カンジダ属は1セットのみの陽性でも原則として起因菌とみなす。 ・コアグラーゼ陰性ブドウ球菌、Corynebacterium属、Bacillus属、Cutibacterium属などは、1セットのみ陽性なら汚染の可能性が高い。ただし人工弁や血管内カテーテルなど人工物がある患者では起因菌となり得るため、臨床像と合わせて判断する。

POINT

・血液培養は好気性・嫌気性ボトルを1セットとし、異なる部位から2セット以上採取する。 ・皮膚消毒後は消毒薬が乾燥するまで待ち、滅菌手袋を着用して採取する。 ・採取部位は上肢の末梢静脈が第一選択で、鼠径部は汚染リスクが高く優先度が低い。 ・シリンジ法では嫌気性ボトルから先に注入する(翼状針・ホルダー法では好気性ボトルが先)。 ・可能な限り抗菌薬投与前に採取し、検体は冷蔵しない。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。