StudyMed医師国家試験

「誰が」「どの法律で」健診を行う?―医療保険者の義務は特定健康診査

第104回医師国家試験 G問題 第32問

国試問題にチャレンジ

第104回 G問題 第32問

医療保険者に実施が義務付けられているのはどれか。

  1. a.がん検診
  2. b.生活機能評価
  3. c.特定健康診査
  4. d.肝炎ウイルス検診
  5. e.結核の定期健康診断

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は、さまざまな健診・検診について、実施主体と根拠法を整理できているかを問う問題だ。どれも「健康を守るための検査」なので似て見えるけれど、誰が実施する責任を負っているかはそれぞれ違う。まず、医療保険者とはどんな組織か説明できるかな。
医学生医学生
健康保険組合や協会けんぽ、市町村国保のように、保険料を集めて医療費を給付する運営主体ですね。
ドクタードクター
その通り。共済組合も含まれる。では、その医療保険者に実施が義務付けられている健診は何だと思う?
医学生医学生
職場の健診で毎年がん検診も受けている人が多いので、がん検診かなと最初は思いました。
ドクタードクター
そこが引っかかりやすいところだね。職場で任意にがん検診が行われることはあっても、法的な実施義務ではない。正解は特定健康診査だ。2008年に旧老人保健法が改正・改称されて「高齢者の医療の確保に関する法律」となり、医療保険者は40〜74歳の加入者に、メタボリックシンドロームに着目した特定健康診査と、その結果に基づく特定保健指導を行うことが義務付けられたんだ。
医学生医学生
なぜ市町村ではなく保険者に義務を負わせたんですか。
ドクタードクター
いい質問だね。生活習慣病を予防できれば、将来の医療費の伸びを抑えられる。医療費を払う当事者である保険者に予防の責任も持たせれば、本気で取り組む動機になる、という狙いなんだ。だから保険者は実施計画を立て、実施率などの目標を設定して取り組んでいる。
医学生医学生
公衆衛生の講義で、腹囲が男性85cm以上、女性90cm以上と習いました。それが入口になるんですよね。
ドクタードクター
そう。腹囲またはBMI 25以上で内臓脂肪蓄積の可能性ありとし、血圧・脂質・血糖の追加リスクや喫煙歴の数に応じて「情報提供」「動機付け支援」「積極的支援」に階層化する。なお、すでに服薬中の人は特定保健指導の対象から外れる点も押さえておこう。では、ほかの選択肢だ。がん検診と肝炎ウイルス検診の実施主体は?
医学生医学生
制度改正のときに市町村の事業として残ったものでしょうか。
ドクタードクター
正解。改正前は老人保健法に基づいて市町村が基本健康診査などを行っていたけれど、改正後、市町村が住民向けに行う検診は健康増進法に基づく健康増進事業として整理された。がん検診も肝炎ウイルス検診も、市町村が健康増進法に基づいて実施するものだ。肝炎ウイルス検査は保健所などでも無料で受けられるが、いずれにしても保険者の義務ではない。
医学生医学生
生活機能評価は聞き慣れないです。介護保険の関係でしょうか。
ドクタードクター
その推測は当たっている。生活機能評価は、介護保険法の地域支援事業として、要介護状態になるおそれの高い65歳以上の高齢者を把握するために市町村が行っていた評価だ。実施主体は介護保険の保険者である市町村で、医療保険者ではない。なお、この評価は2010年度に廃止され、その後は基本チェックリストを用いた把握に移っているよ。
医学生医学生
結核の定期健康診断は感染症法でしたよね。CBTの勉強で、実施義務者が所属で変わると覚えた気がします。
ドクタードクター
よく覚えているね。学校・病院・社会福祉施設などの従事者には事業者、学校の学生には学校長、刑事施設の収容者や社会福祉施設の入所者には施設長、それ以外の65歳以上の住民などには市町村長が実施する。医療保険者はどこにも入っていない。
医学生医学生
結局、選択肢ごとに「誰が・どの法律で」を思い出せば解けるんですね。
ドクタードクター
その通り。発展として、ほかの健診も整理しておこう。75歳以上の後期高齢者の健診は後期高齢者医療広域連合が高齢者医療確保法に基づいて行うが、こちらは努力義務。職場の雇入れ時・定期の一般健康診断は事業者が労働安全衛生法で、学校健診は学校保健安全法、1歳6か月児・3歳児健診は市町村が母子保健法で行う。
医学生医学生
臨床実習の健診センター見学で、特定健診の結果説明に保健師さんが同席していました。あれが特定保健指導の入口なんですね。
ドクタードクター
そうだね。臨床医としても、健診で拾われたリスクを持つ人がきちんと保健指導や受診につながるよう意識することが大切だ。健診は受けて終わりではなく、その後の行動変容や治療につなげて初めて意味を持つんだよ。

まとめ

特定健康診査と特定保健指導は、2008年施行の高齢者医療確保法に基づき、医療保険者が40〜74歳の加入者に実施することを義務付けられたもので、メタボリックシンドロームに着目して生活習慣病を予防し医療費の伸びを抑えることを狙いとしています。がん検診や肝炎ウイルス検診は市町村が健康増進法に基づいて行い、生活機能評価は介護保険の地域支援事業として市町村が行っていたもの(現在は基本チェックリストに移行)、結核の定期健康診断は感染症法に基づき事業者・学校長・施設長・市町村長が実施します。このほか、一般健康診断は事業者(労働安全衛生法)、学校健診は学校保健安全法、乳幼児健診は市町村(母子保健法)と、健診ごとに実施主体と根拠法をセットで整理しておくと混同を防げます。この整理は試験対策にとどまらず、健診結果を保健指導や受診につなげる臨床医の役割を理解する基礎にもなります。

解答・解説

正解はcです

本問は、各種健診・検診の「実施主体」と「根拠法」を整理できているかを問うている。 医療保険者とは、健康保険組合、全国健康保険協会(協会けんぽ)、共済組合、市町村国民健康保険などのように、保険料を集めて加入者の医療費を給付する運営主体のことである。 2008年(平成20年)4月、「高齢者の医療の確保に関する法律」(高齢者医療確保法、旧老人保健法を改正・改称したもの)の施行により、医療保険者は40〜74歳の加入者(被保険者・被扶養者)に対して、メタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)に着目した特定健康診査と、その結果に基づく特定保健指導を実施することが義務付けられた。背景には、生活習慣病の予防によって将来の医療費の伸びを抑えるという狙いがあり、医療費を負担する保険者自身に予防の責任をもたせたのである。 それ以前は、老人保健法に基づき市町村が住民に基本健康診査を行っていた。制度改正後、市町村が行う住民向けの検診(がん検診、肝炎ウイルス検診など)は健康増進法に基づく事業として整理された。 したがって、各選択肢については「誰が」「どの法律に基づいて」実施するかを思い出せば正解に到達できる。

選択肢考察

  1. ×a.  がん検診

    がん検診(胃がん、肺がん、大腸がん、子宮頸がん、乳がん)は、健康増進法に基づく健康増進事業として市町村が実施する。医療保険者に義務付けられたものではない。なお、職場で任意にがん検診が行われることはあるが、法的な実施義務ではない。

  2. ×b.  生活機能評価

    生活機能評価は、介護保険法の地域支援事業(介護予防事業)の一環として、要介護状態になるおそれの高い65歳以上の高齢者(当時の「特定高齢者」)を把握するために市町村が行っていた評価である。実施主体は市町村(介護保険の保険者)であり、医療保険者ではない。なお、生活機能評価は2010年度に廃止され、その後は基本チェックリストを用いた把握に移行している。

  3. ○c.  特定健康診査

    特定健康診査(特定健診)は、高齢者医療確保法に基づき、医療保険者に実施が義務付けられている健診である。対象は40〜74歳の加入者で、腹囲・BMI(体格指数)・血圧・脂質(中性脂肪、HDLコレステロール、LDLコレステロール)・血糖(空腹時血糖またはHbA1c)・肝機能・尿検査などを調べ、内臓脂肪の蓄積とリスク因子の数に応じて「動機付け支援」「積極的支援」の特定保健指導につなげる。医療保険者は特定健康診査等実施計画を定め、実施率などの目標を立てて取り組む。

  4. ×d.  肝炎ウイルス検診

    肝炎ウイルス検診(B型・C型肝炎ウイルスの検査)は、健康増進法に基づく健康増進事業として市町村が実施する。ほかに保健所などでも無料検査が行われているが、いずれも医療保険者の義務ではない。

  5. ×e.  結核の定期健康診断

    結核の定期健康診断は感染症法に基づいて行われ、実施義務者は対象者の所属によって異なる。学校・病院・社会福祉施設などの従事者には事業者が、学校の学生には学校長が、刑事施設の収容者や社会福祉施設の入所者には施設長が、それ以外の一般住民(65歳以上の者など)には市町村長が実施する。医療保険者は実施義務者に含まれない。

主な健診・検診と実施主体・根拠法

・特定健康診査・特定保健指導:医療保険者(40〜74歳)、高齢者医療確保法 ・後期高齢者の健康診査:後期高齢者医療広域連合(75歳以上)、高齢者医療確保法(努力義務) ・がん検診、肝炎ウイルス検診、歯周疾患検診、骨粗鬆症検診など:市町村、健康増進法 ・一般健康診断(雇入れ時・定期):事業者、労働安全衛生法 ・学校健診(児童生徒・職員):学校設置者・学校、学校保健安全法 ・乳幼児健診(1歳6か月児・3歳児):市町村、母子保健法 ・結核の定期健康診断:事業者・学校長・施設長・市町村長、感染症法

特定保健指導の階層化の概要

腹囲(男性85cm以上、女性90cm以上)またはBMI 25以上で内臓脂肪蓄積の可能性ありとし、血圧・脂質・血糖の追加リスク(および喫煙歴)の数に応じて「情報提供」「動機付け支援」「積極的支援」に分ける。なお、服薬中の者は特定保健指導の対象から除かれる。

POINT

・特定健康診査・特定保健指導は医療保険者に実施義務がある(高齢者医療確保法、40〜74歳、2008年開始)。 ・がん検診・肝炎ウイルス検診は市町村(健康増進法)。 ・結核の定期健診は事業者・学校長・施設長・市町村長(感染症法)。 ・生活機能評価は介護保険の地域支援事業で市町村が行っていたもの(現在は基本チェックリストへ移行)。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。