StudyMed医師国家試験

「展退100%」は全開大ではない―子宮頸管が短くなる仕組みを内診の指先で理解する

第104回医師国家試験 G問題 第29問

国試問題にチャレンジ

第104回 G問題 第29問

展退について正しいのはどれか。

  1. a.外子宮口から進行する。
  2. b.破水すると進行しにくい。
  3. c.経腟超音波検査で診断する。
  4. d.100%なら子宮口は全開大している。
  5. e.子宮頸管の短縮度として表現される。

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は分娩進行の評価で必ず出てくる「展退」の定義を問う問題だ。展退と開大を混同しないこと、そしてどこから・何で評価するかがポイントになる。まず、展退という言葉をどうイメージしているかな。
医学生医学生
子宮口が開いていく過程の一部、という漠然としたイメージしかありません。
ドクタードクター
そこがよくある混同だね。展退は英語でeffacement、子宮頸管が短く薄くなっていく変化のことなんだ。非妊時の子宮頸管は長さ3〜4cmほどの「管」だけど、分娩が近づくとこの管の長さがだんだん失われていく。一方、開大は子宮口の「直径」が広がること。長さと幅、別の軸の話なんだ。
医学生医学生
なるほど、展退は長さ、開大は直径なんですね。では、その短縮度合いをどう表すんですか。
ドクタードクター
元の頸管の長さに対してどれだけ短くなったかを百分率で表す。短縮がなければ0%、半分になれば50%、管としての長さが完全に消えれば100%。だから「子宮頸管の短縮度として表現される」というのが正しい記述になる。
医学生医学生
では、短くなるのはどちら側からですか。外子宮口の方が腟に近いので、そちらから縮むのかと思っていました。
ドクタードクター
そこは逆なんだ。子宮収縮によって頸管の上端、つまり内子宮口の側が上へ引き上げられ、子宮下部に取り込まれていく。頸管は上から下へ漏斗状に短くなり、外子宮口は最後まで残る。展退が完了すると、外子宮口の縁だけが薄い輪のように触れるようになるんだ。
医学生医学生
セーターのタートルネックを上から引っ張って、首の部分がなくなっていくようなイメージですか。
ドクタードクター
いいたとえだね。そのイメージなら「内子宮口から」を忘れない。次に評価方法。展退度は何で診るか知っているかな。
医学生医学生
産婦人科の講義で経腟超音波の頸管長の画像を見たので、超音波かなと思いました。
ドクタードクター
惜しいけれど、分娩時の展退度は内診で評価するのが基本なんだ。指で残っている頸管の長さを触れて判断する。経腟超音波で測る子宮頸管長は、主に妊娠中期に早産のリスクを評価するための指標だよ。頸管長の短縮は展退と関連する所見ではあるけれど、目的と場面が違うと整理しておこう。
医学生医学生
破水した場合はどうなりますか。羊水が抜けてクッションがなくなると進みにくい気もします。
ドクタードクター
実際はむしろ進みやすくなる。胎胞の代わりに児頭が直接頸部を圧迫するようになり、子宮収縮も強まりやすいからね。人工破膜が分娩促進に使われるのも、この作用を利用しているんだ。
医学生医学生
最後に、展退100%なら全開大と言ってよいかですが、長さと直径は別なので違う、ということですね。
ドクタードクター
その通り。特に初産婦ではまず展退が完了し、そのあとで開大が進むから、展退100%でも子宮口は数cmしか開いていないことが多い。経産婦では展退と開大がほぼ同時に進む。この違いも押さえておこう。
医学生医学生
臨床実習で分娩室に入ったとき、助産師さんが「何cm、何%、ステーション何」と記録していたのを思い出しました。それぞれ別の指標なんですね。
ドクタードクター
まさにそれがビショップスコアの構成要素だ。子宮口開大度、展退度、児頭の位置(station)、頸管の硬さ、子宮口の位置の5項目を点数化して頸管の成熟度を評価する。展退度は0〜30%で0点、40〜50%で1点、60〜70%で2点、80%以上で3点。合計点が高いほど頸管が熟化していて、分娩誘発がうまくいく見込みが高いと判断するんだ。
医学生医学生
誘発するかどうかを決めるときの判断材料にもなるんですね。
ドクタードクター
そう。内診は数字の主観性もあるから、経時的に同じ指標で記録し、変化を追うことが大切だよ。分娩が止まっているのか、進んでいるのかを判断する土台になるからね。

まとめ

展退とは子宮頸管が短縮し薄くなる変化で、元の頸管長に対する短縮の割合を%で表し、頸管が消失すれば100%となります。展退は内子宮口の側から進み、外子宮口は最後まで残ります。分娩時の展退度は内診で評価し、経腟超音波で測る子宮頸管長は主に妊娠中期の早産リスク評価に用いられます。展退は長さ、開大は直径という別の指標であり、初産婦では展退が先行するため展退100%でも全開大とは限らず、破水後は児頭の直接圧迫で展退・開大はむしろ進みやすくなります。これらはビショップスコアの構成要素でもあり、分娩進行や誘発の判断を正しく行うための基本となる知識です。

解答・解説

正解はeです

展退(effacement)とは、子宮頸管が短縮し、薄く引き伸ばされていく変化をいう。非妊時から妊娠中期の子宮頸管は長さ3〜4cm程度の管状の構造であるが、分娩が近づくと子宮体部の収縮によって頸管が上方へ引き上げられ、内子宮口の側から徐々に子宮下部に取り込まれて短くなっていく。最終的に頸管の管としての長さがなくなり、外子宮口の縁だけが薄く残った状態が展退100%(頸管の消失)である。 展退の程度は、元の頸管の長さに対してどれだけ短縮したかを百分率(%)で表し、内診で評価する。分娩の進行を評価する指標としては、展退のほかに子宮口の開大度、児頭の下降度(station)、頸管の硬さ、子宮口の位置があり、これらを点数化したものがビショップスコア(Bishop score)である。展退と開大は互いに関連するものの別の指標であり、区別して理解することが本問を解く鍵となる。特に初産婦ではまず展退が進み、その後に開大が進むのに対し、経産婦では展退と開大がほぼ同時に進行するという違いを押さえておくとよい。

選択肢考察

  1. ×a.  外子宮口から進行する。

    誤り。展退は内子宮口の側から始まる。陣痛などの子宮収縮によって頸管の上端(内子宮口)が引き上げられて子宮下部に取り込まれ、頸管は上から下へ漏斗状に短くなっていく。外子宮口は最後まで残り、展退が完了した段階では頸管の長さが消失して外子宮口の縁だけが薄い輪として触れるようになる。

  2. ×b.  破水すると進行しにくい。

    誤り。破水後は、それまで間に入っていた胎胞(卵膜と前羊水)に代わって児頭が直接子宮頸部に圧力を加えるようになり、また子宮収縮も強まりやすいため、展退や子宮口の開大はむしろ進行しやすくなる。人工破膜が分娩促進の手段として用いられるのも、この作用を利用したものである。

  3. ×c.  経腟超音波検査で診断する。

    誤り。展退度は内診(腟内に指を入れて頸管を直接触れる診察)で、残っている頸管の長さを触知して評価する。経腟超音波検査で測定するのは子宮頸管長であり、主に妊娠中期に早産のリスクを評価する目的で用いられる(例えば妊娠24週前後で頸管長25mm未満は早産リスクが高いとされる)。頸管長の短縮は展退と関連する所見ではあるが、分娩時の展退度の評価は内診で行うのが基本である。

  4. ×d.  100%なら子宮口は全開大している。

    誤り。展退100%は頸管の長さが消失した状態を意味するだけであり、子宮口が全開大(約10cm)していることを意味しない。特に初産婦では、展退が先に完了し、その後に子宮口の開大が進むため、展退100%でも子宮口の開大度は数cmにとどまることが多い。展退度と開大度は別々に評価・記録すべき指標である。

  5. ○e.  子宮頸管の短縮度として表現される。

    正しい。展退は子宮頸管の短縮を意味し、その程度は元の頸管の長さに対する短縮の割合(%)として表す。短縮がみられなければ0%、元の長さの半分になれば50%、頸管が完全に消失すれば100%である。ビショップスコアでは展退度を0〜30%で0点、40〜50%で1点、60〜70%で2点、80%以上で3点と点数化する。

展退と開大の進み方

・頸管の展退は妊娠後期(おおむね妊娠28週頃以降)から少しずつ始まり、妊娠末期から分娩第1期にかけて進行して、最終的に頸管は消失する。 ・初産婦:展退が先行し、展退が完了してから子宮口の開大が進む。 ・経産婦:展退と開大が並行して進む。

ビショップスコア(頸管成熟度の評価)

5項目をそれぞれ点数化し、合計13点満点で評価する。 ・子宮口開大度:0cm 0点、1〜2cm 1点、3〜4cm 2点、5〜6cm 3点 ・展退度:0〜30% 0点、40〜50% 1点、60〜70% 2点、80%以上 3点 ・児頭の位置(station):−3 0点、−2 1点、−1〜0 2点、+1以上 3点 ・頸管の硬さ:硬 0点、中 1点、軟 2点 ・子宮口の位置:後方 0点、中央 1点、前方 2点 合計点が高いほど頸管が成熟していると判断し、わが国ではおおむね9点以上で頸管成熟とされる。分娩誘発の成功の見込みを判断する際などに用いる。

子宮頸管長の測定(経腟超音波)

経腟超音波では内子宮口から外子宮口までの長さ(子宮頸管長)を客観的に測定できる。妊娠中期の頸管長短縮は切迫早産や早産のリスク因子として重要であり、内診による展退度評価とは目的が異なる。

分娩第1期の定義

分娩第1期は陣痛開始(規則的な陣痛が10分以内の間隔となった時点)から子宮口全開大までをいう。この間に展退と開大が進行する。

POINT

・展退とは子宮頸管の短縮のことであり、短縮の程度を%で表す(100%=頸管消失)。 ・展退は内子宮口の側から進行する。 ・展退度は内診で評価する。経腟超音波で測るのは子宮頸管長(早産リスクの評価)。 ・展退100%は子宮口全開大を意味しない。初産婦は展退が先、経産婦は展退と開大が同時に進む。 ・破水すると児頭の直接の圧迫により展退・開大は進みやすい。 ・ビショップスコアの展退度:0〜30% 0点、40〜50% 1点、60〜70% 2点、80%以上 3点。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。