StudyMed医師国家試験

ピラミッドではなく円卓で―チーム医療の「誤り」を見抜く

第104回医師国家試験 F問題 第10問

国試問題にチャレンジ

第104回 F問題 第10問

チーム医療で誤っているのはどれか。

  1. a.診療情報の共有
  2. b.患者中心の医療の実践
  3. c.異なる職種間の連携と協力
  4. d.患者,家族の心理面のサポート
  5. e.医師を頂点とした指示体制の確立

対話形式の解説

ドクタードクター
今回はチーム医療の基本理念を問う問題だ。「誤っているのはどれか」という形式なので、チーム医療の考え方にそぐわないものを一つ探すことになる。まずはチーム医療とは何か、自分の言葉で説明できるかな。
医学生医学生
医師や看護師、薬剤師などいろいろな職種が協力して患者さんを診ること、でしょうか。
ドクタードクター
大枠はそれでいい。もう少し正確に言うと、多様な専門職が目的と情報を共有し、それぞれの専門性を発揮しながら業務を分担し、互いに補い合って患者に最適な医療を提供することだ。医療職だけでなく、医療ソーシャルワーカーやケアマネジャーなど福祉・介護の職種が加わることもある。
医学生医学生
医療概論の講義で、患者さんや家族もチームの一員だと習いました。
ドクタードクター
その通り。そこが大事なポイントだ。では選択肢を見ていこう。まず診療情報の共有はどうだろう。
医学生医学生
臨床実習で病棟カンファレンスに出たとき、看護師さんの観察記録やリハビリの進み具合を全員で確認していました。共有しないと方針がばらばらになりそうです。
ドクタードクター
そう。情報共有はチーム医療の前提条件だ。病状、治療方針、生活背景、患者・家族の希望が共有されていなければ、指示の食い違いや抜け落ちが起き、医療安全上の問題にもなる。電子カルテ、申し送り、カンファレンスなどがその手段だね。次に患者中心の医療の実践は?
医学生医学生
チームの目的そのものですよね。治療の主体は患者さんで、価値観や意向を尊重しながら方針を決める、共同意思決定の考え方だと思います。
ドクタードクター
よく理解しているね。異なる職種間の連携と協力も、チーム医療の中核そのものだ。一つの職種だけでは得られない質の医療を、多職種が補い合うことで実現する。では患者・家族の心理面のサポートはどうかな。
医学生医学生
身体の治療が中心なので、心理面までチームの役割に入るのか少し迷いました。
ドクタードクター
迷うのはわかる。でも、患者は病気そのものに加えて不安や生活上の困難を抱えているし、家族も介護負担や精神的な苦痛を抱えている。心理・社会面まで含めた全人的な支援もチームの大切な役割だ。看護師や公認心理師、MSW、緩和ケアチームなどが関わる場面だね。
医学生医学生
となると、残るのは医師を頂点とした指示体制の確立ですね。でも実際には医師が指示を出す場面は多いように思います。
ドクタードクター
鋭い疑問だ。確かに、看護師による診療の補助のように、法律上医師の指示を要する医行為はある。しかしそれは、チーム全体を医師を頂点としたピラミッド型の指揮命令系統で動かすという意味ではない。固定的な上下関係があると、他の職種が専門性に基づいた意見を出しにくくなり、チーム医療の理念に反してしまう。だからこれが誤り、つまり正解だ。
医学生医学生
リーダーは要らない、ということですか。
ドクタードクター
いや、リーダーは必要だよ。リーダーは進捗を把握し業務遂行に責任を持つ。ただし方針はカンファレンスでメンバーが意見を出し合い、合意に基づいて決める。しかもリーダーが常に医師である必要はなく、課題によっては看護師や他職種が担うこともある。
医学生医学生
ピラミッドではなく円卓のイメージですね。実習で見た栄養サポートチームは、管理栄養士さんが中心になって話を進めていました。
ドクタードクター
良い例だね。病院には栄養サポートチーム(NST)のほか、感染制御チーム(ICT)、緩和ケアチーム、呼吸サポートチーム、褥瘡対策チームなど、職種横断の専門チームがたくさんあり、診療報酬上の加算対象になっているものも多い。運営は、問題点の抽出、計画立案、各職種による実行と報告、評価と新たな問題の抽出、というサイクルを繰り返すのが基本だ。
医学生医学生
最近よく聞くタスク・シフトも関係がありますか。
ドクタードクター
大いにある。医師の働き方改革を背景に、医師の業務の一部を他職種へ移したり共同で担ったりする取り組みが進んでいて、各職種の専門性を生かすチーム医療はますます重要になっている。研修医になったら、他職種からの指摘を「指示を受けた側の意見」ではなく「専門家の意見」として受け止める姿勢を大切にしてほしい。

まとめ

チーム医療とは、医師・看護師・薬剤師・リハビリ職・MSWなど多様な専門職が、患者・家族もチームの一員として迎えながら、目的と情報を共有し、対等な立場で連携・協力して患者中心の医療を提供する考え方です。診療情報の共有、患者中心の医療、職種間の連携・協力、患者・家族の心理面のサポートはいずれもその構成要素であり、医師を頂点とした固定的な指示体制は他職種の専門性の発揮を妨げるため理念に反します。チームにはリーダーが必要ですが、意思決定はカンファレンスでの合意によって行われ、リーダーが常に医師である必要はありません。NST・ICT・緩和ケアチームなどの専門チームやタスク・シフト/シェアの推進も含め、多職種協働の姿勢は臨床現場で働くすべての医師に求められる基本的な素養です。

解答・解説

正解はeです

チーム医療の基本理念を問う問題である。「誤っているのはどれか」という形式なので、チーム医療の考え方にそぐわないものを選ぶ。

チーム医療とは

チーム医療とは、医師、看護師、薬剤師、管理栄養士、理学療法士・作業療法士・言語聴覚士、臨床検査技師、診療放射線技師、臨床工学技士、医療ソーシャルワーカー(MSW)、ケアマネジャーなど多様な専門職が、それぞれの専門性を発揮しつつ目的と情報を共有し、業務を分担しながら互いに連携・補完し合って、患者の状況に最も適した医療を提供することである。医療職に限らず福祉・介護の職種が加わることもあり、患者本人や家族もチームの一員として意思決定に参加する。

正解を導く考え方

チーム医療の成立に必要なのは、(1)患者中心という共通の目的、(2)情報の共有、(3)各職種の対等な立場での連携・協力、(4)身体面だけでなく心理・社会面を含めた全人的な支援である。方針はカンファレンスなどでメンバーが意見を出し合い、合意に基づいて決定される。医師を頂点とする上意下達の固定的な指示体制は、他職種が専門性を発揮して意見を述べることを妨げ、チーム医療の理念と相容れない。したがって誤っているのは「医師を頂点とした指示体制の確立」である。

選択肢考察

  1. ×a.  診療情報の共有

    チーム医療で適切な記述である。各職種が患者の病状、治療方針、生活背景、患者・家族の希望などを共有していなければ、方針の食い違いや重複・抜け落ちが生じ、医療安全上も問題となる。カンファレンス、診療録(電子カルテ)、申し送りなどを通じた情報共有は、チーム医療の前提条件である。

  2. ×b.  患者中心の医療の実践

    チーム医療で適切な記述である。チーム医療の目的は、患者の価値観や意向を尊重しながら、科学的根拠に基づいた最適な医療を提供することにある。治療の主体はあくまで患者であり、患者・家族もチームの一員として方針決定に参加する(共同意思決定、shared decision making)。

  3. ×c.  異なる職種間の連携と協力

    チーム医療で適切な記述であり、その中核をなす要素である。チームは患者の必要に応じて医療職・福祉職など多職種で構成され、各自が分担した業務を専門性に基づいて遂行しつつ、互いに連携・協力し補い合うことで、単一職種では得られない質の高い医療を提供する。

  4. ×d.  患者,家族の心理面のサポート

    チーム医療で適切な記述である。患者は病気による不安や生活上の困難を抱えており、家族も介護負担や精神的苦痛を抱える。身体的な治療だけでなく、心理的・社会的側面を含めた全人的な支援もチームの役割であり、看護師、臨床心理士(公認心理師)、MSW、緩和ケアチームなどが関わる。

  5. ○e.  医師を頂点とした指示体制の確立

    誤っている記述であり、これが正解となる。チームにはリーダーが必要で、リーダーは進行状況を把握し業務遂行に責任を持つが、方針の意思決定はカンファレンスなどでのメンバーの合意によって行われるべきである。医師が常にリーダーである必要はなく、課題に応じて看護師や他職種がリーダーを担うこともある。なお、法律上医師の指示を要する医行為(看護師による診療の補助など)は存在するが、それはチーム全体を医師中心のピラミッド型の指揮命令系統で運営することを意味しない。医師を頂点とする固定的な上下関係は、他職種が専門性に基づいて意見を出しにくくし、チーム医療の理念に反する。

チーム医療の構成員の例

医師、歯科医師、看護師・保健師・助産師、薬剤師、管理栄養士、理学療法士(PT)、作業療法士(OT)、言語聴覚士(ST)、臨床検査技師、診療放射線技師、臨床工学技士、公認心理師、医療ソーシャルワーカー(MSW)、介護福祉士、ケアマネジャー(介護支援専門員)、歯科衛生士など。患者本人と家族もチームの一員である。

チームの運営

チームの連携はカンファレンスを通じて行われ、次のような系統的なプロセスを繰り返す。 ・リーダーの選出と役割分担 ・患者の問題点の抽出 ・問題解決のための計画立案 ・各職種による業務の遂行と経過報告 ・結果の評価と新たな問題の抽出 リーダーは問題解決の進捗を把握し、業務遂行の最終責任を負うが、意思決定は合意に基づいて行う。

病院内の代表的な専門チーム

栄養サポートチーム(NST)、感染制御チーム(ICT)、緩和ケアチーム、呼吸サポートチーム(RST)、褥瘡対策チーム、認知症ケアチーム、医療安全管理チームなど。これらは診療報酬上の加算対象となっているものも多い。

タスク・シフト/シェア

医師の働き方改革などを背景に、医師の業務の一部を他職種へ移管・共同化する取り組み(タスク・シフト/シェア)が進められており、各職種の専門性を生かしたチーム医療の推進がいっそう重視されている。

POINT

・チーム医療は、多職種が目的と情報を共有し、対等な立場で連携・協力して患者中心の医療を行うものである。 ・患者・家族もチームの一員であり、心理・社会面を含めた全人的支援が求められる。 ・リーダーは必要だが、意思決定はカンファレンスでの合意による。医師が常にリーダーである必要はない。 ・医師を頂点とした上意下達の指示体制は、チーム医療の理念にそぐわない。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。