StudyMed医師国家試験

子宮口7cm、SP+3―内診所見を「読む」力で分娩の現在地をつかむ

第104回医師国家試験 E問題 第42問

国試問題にチャレンジ

第104回 E問題 第42問

28歳の初産婦。妊娠39週4日。陣痛発来のため入院した。入院時の外診では第1頭位だった。内診で,子宮口7 cm開大,展退度80%,児頭の下降度はSP+3 cm,子宮頸部は軟,子宮口の位置は前方である。緊満した胎胞を認め,卵膜を介して矢状縫合を1時から7時方向に触知する。子宮口の中央部に小泉門を触れるが,大泉門は触れない。  正しいのはどれか。

  1. a.破水している。
  2. b.反屈位である。
  3. c.後方後頭位である。
  4. d.分娩第2期である。
  5. e.児頭は陥入している。

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は分娩中の内診所見から、いま分娩がどの段階にあって、赤ちゃんがどんな姿勢・向きで下りてきているのかを判断する問題だ。ポイントは、所見を一つずつ「分娩期」「破水の有無」「下降度」「胎勢と回旋」に翻訳していくこと。まずは分娩期から考えてみよう。
医学生医学生
子宮口がまだ7cmなので、全開大の10cmには届いていません。分娩第1期ですね。
ドクタードクター
その通り。分娩第1期は分娩開始から子宮口全開大まで、第2期は全開大から胎児娩出まで、第3期は胎盤娩出までだ。7cmは第1期の中でも開大が急速に進む活動期にあたる。だから分娩第2期という選択肢は誤りになる。
医学生医学生
産婦人科の臨床実習で分娩に立ち会ったとき、助産師さんが「まだ7センチだから、もう少し」と産婦さんを励ましていたのを思い出しました。
ドクタードクター
現場の感覚そのものだね。次は破水。緊満した胎胞を触れる、という所見はどう解釈する?
医学生医学生
胎胞が張っているということは、卵膜がまだ破れずに羊水を包んでいる……つまり未破水ですか。
ドクタードクター
正解。破水していれば胎胞は触れず、児頭を直接触れて羊水の流出もみられる。今回は矢状縫合も「卵膜を介して」触れていて、卵膜が保たれていることを裏づけている。子宮口全開大前後で破水する適時破水が基本だから、7cmで未破水なのは何も異常ではないよ。
医学生医学生
次は胎勢ですね。小泉門が中央にあって大泉門を触れないのは、あごを引いた屈位でしょうか。
ドクタードクター
その理解で合っている。小泉門が先進するのが屈位の後頭位で、正常な姿勢だ。反屈位では児頭がそり返るので、程度が強まるにつれて大泉門、額、顔が先進してくる。大泉門や眼窩、鼻を触れるのが反屈位の手がかりだから、今回は反屈位ではない。
医学生医学生
でも、後頭位が「前方」か「後方」かはどう見分けるんですか。CBTのときもここは曖昧なままでした。
ドクタードクター
多くの人がつまずくところだね。内診では恥骨側を12時、仙骨側を6時とする。外診で第1頭位、つまり児の背中は母体の左側にある。矢状縫合が1時から7時方向というのは、骨盤の第1斜径に一致する斜めの線だ。第1頭位でこの位置にあるなら、後頭部は母体の左前方を向いて正常に回旋している途中と判断できる。つまり第1前方後頭位だ。
医学生医学生
後方後頭位だったら、矢状縫合はどうなりますか。
ドクタードクター
第1頭位で後頭部が仙骨側へ回ってしまう異常回旋なので、矢状縫合はおおむね第2斜径、11時から5時方向に来る。後方後頭位は分娩が遷延しやすく、回旋異常として注意が必要だ。今回はそうではない。
医学生医学生
残るのが児頭の陥入ですね。SP+3cmというのは坐骨棘より3cm下ということなので、かなり下りてきている印象です。
ドクタードクター
そう。SPは坐骨棘を結ぶ線で、上をマイナス、下をプラスで表す。嵌入(陥入)とは児頭の最大周径が骨盤入口面を通過した状態で、先進部がSP±0前後に達していればそう判断する。SP+3cmなら嵌入は十分に完了していて、児頭は骨盤腔内を下降中だ。だからこれが正解になる。
医学生医学生
「固定」との違いも整理しておきたいです。
ドクタードクター
固定は児頭の最大周径が骨盤入口面に達したけれどまだ通過していない状態で、SP−2〜−1cm程度に相当する。その上で骨盤入口の上を動いているのが浮動だ。初産婦は分娩開始前に固定していることが多く、経産婦は分娩開始後に固定することが多い、という違いも押さえておこう。
医学生医学生
整理すると、分娩第1期・未破水・屈位の前方後頭位で、児頭は嵌入している。順調な正常分娩なんですね。
ドクタードクター
その通り。発展として、今回の内診所見は子宮口開大度、展退度、児頭の下降度、頸部の硬さ、子宮口の位置と、Bishopスコアの5項目そのものになっている。計算すると13点満点で、頸管の熟化は完了しているといえる。さらに分娩が進めば、陣痛発作時にだけ児頭が見える排臨、間欠時にも見えたままになる発露へと進む。内診は一回で終わりではなく、経時的に変化を追うことで分娩停止や回旋異常に早く気づけるのが大切なんだ。
医学生医学生
数字を覚えるだけでなく、その所見が分娩のどの場面を示しているかをイメージしながら読むことが大事ですね。

まとめ

分娩中の内診所見は、子宮口開大度から分娩期を、胎胞の有無から破水の有無を、ステーションから児頭の下降度を、泉門と矢状縫合の位置から胎勢と回旋を読み取ります。子宮口7cmは分娩第1期(活動期)、緊満した胎胞は未破水、小泉門の先進は屈位の後頭位を示し、第1頭位で矢状縫合が第1斜径(1時〜7時方向)にあれば正常回旋中の前方後頭位です。児頭の最大周径が骨盤入口面を通過した状態が嵌入で、SP±0前後以降で判断するため、SP+3cmなら嵌入は完了しています。固定(SP−2〜−1cm程度)や浮動との区別、後方後頭位や反屈位などの異常との見分け方、Bishopスコアとの対応もあわせて押さえておくと、分娩経過を立体的に理解でき、異常の早期発見にもつながります。

解答・解説

正解はeです

正期産(妊娠39週4日)の初産婦が陣痛発来で入院した場面である。内診所見を一つずつ読み解き、分娩の時期(分娩期)、破水の有無、児頭がどこまで下がったか(下降度)、児頭の向き(胎勢・回旋)を判断する問題である。

所見の整理

1. 子宮口7 cm開大: 全開大(10 cm)に至っていない → 分娩第1期(活動期)。 2. 児頭の下降度 SP+3 cm: SPは坐骨棘(spina ischiadica)を結ぶ線のことで、児頭の最も下の部分(先進部)がこの線より3 cm下にある。先進部がSP±0に達していれば、児頭の最大周径は骨盤入口を越えていると判断できる → 児頭は嵌入(陥入)している。 3. 緊満した胎胞を触れる: 卵膜が破れずに羊水を包んで張っている → 未破水。 4. 卵膜を介して矢状縫合を1時〜7時方向に触知: 内診では12時方向が母体の前方(恥骨側)、6時方向が後方(仙骨側)である。1時〜7時を結ぶ線は母体の左前方と右後方を結ぶ斜めの線で、骨盤の第1斜径に一致する。 5. 子宮口の中央に小泉門を触れ、大泉門は触れない: 児頭が十分にあごを引いた姿勢(屈位)で、後頭部が先進している → 後頭位。 6. 外診で第1頭位: 児の背中が母体の左側にある。

回旋の判断

第1頭位で児の背中が左側にあり、後頭部(小泉門)が先進し、矢状縫合が第1斜径上にあることから、児の後頭部は母体の左前方を向いていると考えられる。これは正常な第2回旋が進行中の状態であり、第1前方後頭位(左前方後頭位)である。 以上から、分娩第1期・未破水・屈位の前方後頭位で、児頭は嵌入しているという、順調な正常分娩の経過と判断できる。

選択肢考察

  1. ×a.  破水している。

    誤り。内診で緊満した胎胞を触れ、矢状縫合も卵膜越しに触知していることから、卵膜は保たれており破水していない。破水していれば胎胞は触れず、児頭を直接触知し、腟内に羊水の流出を認める。子宮口全開大の前後に起こる破水が適時破水であり、本例のように子宮口7 cmの時点で未破水であることは異常ではない。

  2. ×b.  反屈位である。

    誤り。子宮口の中央に小泉門を触れ、大泉門を触れないことから、児はあごを胸に引きつけた屈位をとり、後頭部が先進している(後頭位)。反屈位では児頭が後ろにそり返るため、先進部が前方へ移り、そり返りの程度が増すにつれて大泉門(前頭位)、額(額位)、顔面(顔位)が先進するようになる。反屈位では大泉門や眼窩、鼻などを触知することが手がかりとなる。

  3. ×c.  後方後頭位である。

    誤り。小泉門が先進しているので後頭位ではあるが、前方か後方かは回旋の向きで判断する。外診で第1頭位(児背が母体左側)であり、矢状縫合が1時〜7時方向、すなわち第1斜径上にあることから、後頭部は母体の左前方へ回旋しつつあると判断され、前方後頭位(第1前方後頭位)である。後方後頭位は、後頭部が母体の後方(仙骨側)へ回旋した異常回旋で、第1頭位であれば矢状縫合は第2斜径(11時〜5時方向)に位置し、分娩が遷延しやすい。

  4. ×d.  分娩第2期である。

    誤り。分娩第2期は子宮口全開大(10 cm)から胎児娩出までをいう。本例は子宮口7 cm開大であり、まだ分娩第1期(分娩開始から子宮口全開大まで)である。第1期のなかでも子宮口開大が急速に進む活動期にあたる。

  5. ○e.  児頭は陥入している。

    正しい。児頭の嵌入(陥入、engagement)とは、児頭の最大周径が骨盤入口面を通過した状態をいう。先進部と坐骨棘間線との距離でおおよそ判定し、SP±0前後に達していれば嵌入していると考える。本例はSP+3 cmと坐骨棘より3 cm下まで下降しており、嵌入は十分に完了していて、児頭は骨盤腔内を下降しつつある。なお児頭の最大周径が骨盤入口に達しているがまだ通過していない状態を「固定」といい、下降度はおおむねSP−2〜−1 cm程度に相当する。

分娩の3つの時期

・分娩第1期(開口期): 分娩開始(陣痛が10分以内の間隔、または1時間に6回以上となった時点)から子宮口全開大まで。潜伏期と活動期に分けられる。 ・分娩第2期(娩出期): 子宮口全開大から胎児娩出まで。 ・分娩第3期(後産期): 胎児娩出から胎盤娩出まで。

児頭の下降度(ステーション)

・坐骨棘を結ぶ線をSP±0とし、そこより上をマイナス、下をプラスとしてcm単位で表す。 ・浮動: 児頭が骨盤入口の上で動く状態(SP−3より上)。 ・固定: 児頭の最大周径が骨盤入口面に達した状態(SP−2〜−1程度)。初産婦では分娩開始前に固定していることが多く、経産婦では分娩開始後に固定することが多い。 ・嵌入(陥入): 児頭の最大周径が骨盤入口面を通過した状態(SP±0前後以降)。 ・排臨: 陣痛発作時に児頭が陰裂間に見え、間欠時には後退して見えなくなる状態。 ・発露: 陣痛間欠時にも児頭が陰裂間に見えたまま後退しなくなった状態。

胎勢と先進部

・屈位(後頭位): 小泉門が先進する。正常。 ・反屈位: そり返りの程度により前頭位(大泉門が先進)→ 額位 → 顔位の順に強くなる。

正常な胎児の回旋(第1〜第4回旋)

・第1回旋: 児頭が屈曲し、小泉門が先進する。 ・第2回旋: 児頭が骨盤内を下降しつつ、後頭部が母体の前方(恥骨側)へ回る内回旋。矢状縫合は骨盤入口では横径〜斜径、出口部では縦径に一致する。 ・第3回旋: 児頭が恥骨下で伸展(反屈)して娩出される。 ・第4回旋: 娩出された児頭が母体の大腿側へ向きを変える外回旋。肩の娩出に対応する。

骨盤の斜径

・第1斜径: 右仙腸関節から左腸恥隆起へ結ぶ径。内診の時計表示ではおおむね1時〜7時方向。 ・第2斜径: 左仙腸関節から右腸恥隆起へ結ぶ径。おおむね11時〜5時方向。 第1頭位(児背が母体左側)で正常に回旋すると、後頭部は左前方へ向かい、矢状縫合は第1斜径を経て縦径に一致していく。

Bishopスコアとの関係

内診所見(子宮口開大度、展退度、児頭の下降度、頸部の硬さ、子宮口の位置)はBishopスコアの5項目そのものである。本例は開大7 cm(3点)、展退80%(3点)、SP+3 cm(3点)、軟(2点)、前方(2点)で13点満点となり、頸管の熟化は完了している。

POINT

・分娩第1期は子宮口全開大(10 cm)まで、第2期は全開大から胎児娩出まで。 ・胎胞を触れる → 未破水。 ・小泉門が先進し大泉門を触れない → 屈位(後頭位)。 ・第1頭位で矢状縫合が第1斜径(1時〜7時方向)上 → 後頭部は左前方を向く前方後頭位(正常回旋)。 ・SP±0前後以降は児頭の最大周径が骨盤入口を越えており嵌入。固定はSP−2〜−1程度。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。