開いているのは前か後ろか―乳児の頭蓋で読み解く大泉門と小泉門
第104回医師国家試験 E問題 第26問
国試問題にチャレンジ
乳児における頭蓋の図(①~⑤)を別に示す。 縫合線で正しいのはどれか。

- a.①
- b.②
- c.③
- d.④
- e.⑤
対話形式の解説
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ドクターまとめ
乳児の頭蓋では、冠状縫合と矢状縫合の交点にある菱形の大泉門と、矢状縫合とラムダ縫合の交点にある三角形の小泉門を区別することが基本です。小泉門は生後1〜3か月ごろまでに閉じ、大泉門は1歳半ごろまで開いているため、1歳未満の乳児の正常像は「大泉門は開存、小泉門は閉鎖」となります。大泉門の早期閉鎖は狭頭症や小頭症、閉鎖遅延は先天性甲状腺機能低下症・くる病・水頭症などを示唆し、膨隆は頭蓋内圧亢進、陥凹は脱水のサインです。泉門の位置・大きさ・閉鎖時期を正しく理解することは、乳児健診での発達評価や、発熱・脱水を伴う乳児の診察に直結する重要な知識です。
解答・解説
正解はbです
図の読み取り
5つの図はいずれも乳児の頭蓋を上方(頭頂側)から見たもので、図の上が前(顔側)、下が後(後頭側)である。前後に走る矢状縫合、前方で左右に走る冠状縫合、後方で逆V字に走るラムダ縫合(人字縫合)が描かれ、骨で覆われていない膜様の部分(泉門)が灰色で示されている。 ・①:前方(冠状縫合と矢状縫合の交点)に小さな泉門、後方(矢状縫合とラムダ縫合の交点)に大きな泉門がある。 ・②:前方に大きな菱形の泉門が開いており、後方の泉門は閉じている。 ・③:前後とも泉門がなく、すべて閉鎖している。 ・④:前方の泉門は閉じ、後方の泉門だけが開いている。 ・⑤:矢状縫合に沿って前後に細長い泉門様の開大部がある。
考え方
前方の冠状縫合・矢状縫合の交点にあるのが大泉門、後方のラムダ縫合・矢状縫合の交点にあるのが小泉門である。大泉門は菱形で大きく(出生時おおよそ2〜3cm前後)、生後しばらくはむしろ拡大し、1歳半ごろ(おおむね1歳〜2歳)に閉鎖する。これに対して小泉門は三角形で小さく、出生時には指先程度か、すでにほぼ閉じていることも多く、生後1〜3か月ごろまでに閉鎖する。 したがって「乳児」(生後1歳未満)で通常みられる所見は、大泉門は開いていて小泉門は閉じている(あるいはごく小さい)状態であり、これに合致するのは②である。 「乳児」は生後28日未満の新生児期を含め、1歳未満の児をいう(1歳〜就学前が幼児)。この年齢区分と、2つの泉門の大きさ・閉鎖時期の違いを組み合わせれば解ける問題である。
選択肢考察
- ×a. ①
小泉門が大泉門より大きく描かれている。正常では大泉門のほうが明らかに大きく、小泉門が大泉門を上回ることはない。また小泉門は生後早期に閉鎖するため、乳児期に大きく開いたままであることも通常はみられない。大泉門と小泉門の大小関係が逆転しており誤りである。
- ○b. ②
大泉門が大きく開き、小泉門は閉鎖している。小泉門は生後1〜3か月ごろまでに閉鎖し、大泉門は1歳半ごろまで開いているので、乳児期(特に生後数か月以降)の正常な頭蓋として最も適切である。
- ×c. ③
大泉門・小泉門ともに閉鎖している。大泉門は1歳半ごろ(遅くとも2歳ごろ)まで開いているのが普通であり、1歳未満の乳児で大泉門が閉鎖していれば早期閉鎖として異常である。大泉門の早期閉鎖では狭頭症(頭蓋縫合早期癒合症)や小頭症を考える。
- ×d. ④
大泉門が閉じ、小泉門が開いている。閉鎖の順序が正常(小泉門が先、大泉門が後)と逆であり、乳児の正常所見ではない。なお、小泉門が生後数か月を過ぎても開いている場合(閉鎖遅延)や大泉門の閉鎖遅延は、先天性甲状腺機能低下症(クレチン症)を疑う契機となる。
- ×e. ⑤
矢状縫合に沿って前後に細長い開大部があり、大泉門と小泉門が区別できない。正常の乳児ではこのような形態はみられない。矢状縫合早期癒合症に対して縫合部を切除する術後(縫合切除術後)などの特殊な状況であれば生じうるが、通常の乳児の頭蓋ではない。
頭蓋の縫合と泉門
・冠状縫合:前頭骨と左右の頭頂骨の間。 ・矢状縫合:左右の頭頂骨の間(正中)。 ・ラムダ縫合(人字縫合):頭頂骨と後頭骨の間。 ・前頭縫合(前頭骨の正中縫合、メトピック縫合):左右の前頭骨の間。縫合の中で最も早く、乳児期(生後数か月〜1歳前後)に癒合する。 ・大泉門:冠状縫合・矢状縫合・前頭縫合の交点。菱形。1歳半ごろ(おおむね1〜2歳)に閉鎖。 ・小泉門:矢状縫合とラムダ縫合の交点。三角形。生後1〜3か月ごろまでに閉鎖。
泉門の臨床的意義
・大泉門の膨隆:頭蓋内圧亢進(髄膜炎、水頭症、頭蓋内出血など)。 ・大泉門の陥凹:脱水。 ・大泉門の閉鎖遅延・過大:先天性甲状腺機能低下症、くる病、水頭症、骨形成不全症、Down症候群、鎖骨頭蓋異形成症など。 ・大泉門の早期閉鎖:頭蓋縫合早期癒合症(狭頭症)、小頭症。
頭蓋縫合早期癒合症
特定の縫合が早期に癒合すると、その縫合に垂直な方向の発育が妨げられ、平行な方向に代償的に伸びる。矢状縫合早期癒合症では前後に長い舟状頭、冠状縫合両側の早期癒合では短頭、前頭縫合早期癒合症では前額部が尖る三角頭蓋となる。
年齢区分
新生児:生後28日未満、乳児:1歳未満、幼児:1歳〜就学前。
POINT
・大泉門は前方(冠状縫合と矢状縫合の交点)、小泉門は後方(矢状縫合とラムダ縫合の交点)。 ・大きさは大泉門>小泉門。 ・閉鎖時期:小泉門は生後1〜3か月ごろ、大泉門は1歳半ごろ。 ・乳児の正常像は「大泉門は開存、小泉門は閉鎖」。 ・大泉門の閉鎖遅延は甲状腺機能低下症・くる病・水頭症など、早期閉鎖は狭頭症・小頭症を考える。
