詰める・抜く・止める―呼吸器疾患で押さえるIVRの正しい組合せ
第104回医師国家試験 E問題 第14問
国試問題にチャレンジ
インターベンショナルラジオロジー〈IVR〉についての組合せで正しいのはどれか。3つ選べ。
- a.喀血 ―― 気管支動脈塞栓術
- b.膿胸 ―― 超音波ガイド下ドレナージ
- c.肺膿瘍 ―― 抗菌薬動注療法
- d.肺血栓塞栓症 ―― 下大静脈フィルター留置
- e.びまん性肺病変 ―― CTガイド下針生検
対話形式の解説
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクターまとめ
IVR(画像下治療)は、画像で体内を見ながらカテーテルや穿刺針で行う低侵襲手技の総称で、塞栓術や動注療法、フィルター留置などの血管系と、ドレナージや生検などの非血管系に分けられます。喀血の出血源の多くは体循環系の気管支動脈であるため気管支動脈塞栓術が有効で、前脊髄動脈の誤塞栓による脊髄梗塞に注意します。膿胸には画像ガイド下ドレナージ、肺血栓塞栓症には抗凝固療法が使えない・無効な場合などに下大静脈フィルターが用いられます。一方、肺膿瘍は抗菌薬の全身投与が基本で動注療法は行わず、びまん性肺病変の組織診断には経気管支肺生検や外科的肺生検が選ばれ、CTガイド下針生検は限局性病変向けです。病態と手技の目的が一致しているかを考えることが、IVRの適応を理解する鍵になります。
解答・解説
正解はa, b, dです
インターベンショナルラジオロジー(interventional radiology:IVR)とは、X線透視、血管造影、CT、超音波などの画像で体内を見ながら、カテーテルや穿刺針を用いて行う低侵襲の治療手技の総称である。日本語では「画像下治療」とも呼ばれる。大きく分けて、血管の中にカテーテルを進めて行う血管系IVR(塞栓術、血管形成術、動注療法、フィルター留置など)と、皮膚から直接針を刺して行う非血管系IVR(ドレナージ、生検、ラジオ波焼灼療法など)がある。 本問では呼吸器疾患を題材に、「その疾患に対して実際に行われる、適切なIVR手技の組合せか」を判断する。考え方のポイントは次の2点である。 ・その手技が、その疾患の病態に照らして理にかなっているか(例えば出血源の血管を詰める、膿を外に出す、血栓が肺へ流れるのを防ぐ)。 ・その疾患の標準的な治療・診断として実際に選択されるか(より適切な別の方法がないか)。 喀血に対する気管支動脈塞栓術、膿胸に対する画像ガイド下ドレナージ、肺血栓塞栓症に対する下大静脈フィルター留置は、いずれも臨床で確立した組合せである。一方、肺膿瘍の抗菌薬は全身投与が基本であり動注療法は行わない。また、びまん性肺病変の組織診断にはCTガイド下針生検は用いられず、経気管支肺生検や外科的肺生検が選ばれる。したがって正解はa、b、dである。
選択肢考察
- ○a. 喀血 ―― 気管支動脈塞栓術
喀血の出血源の多くは、肺動脈ではなく体循環系で圧の高い気管支動脈である。気管支拡張症、肺結核後遺症、非結核性抗酸菌症、肺アスペルギルス症などでは、慢性炎症により気管支動脈が拡張・増生し、破綻して喀血を起こす。大量喀血や繰り返す喀血に対し、血管造影で責任血管を同定し、ゼラチンスポンジや金属コイルなどの塞栓物質で詰める気管支動脈塞栓術(bronchial artery embolization:BAE)が行われる。代表的な血管系IVRである。なお、気管支動脈から脊髄を栄養する前脊髄動脈が分岐していることがあり、誤って塞栓すると脊髄梗塞を生じうる点が重要な合併症である。
- ○b. 膿胸 ―― 超音波ガイド下ドレナージ
膿胸は胸腔内に膿が貯留した状態であり、治療の基本は適切な抗菌薬投与と胸腔ドレナージによる排膿である。超音波やCTで貯留部位を確認しながら穿刺・カテーテル留置を行うことで、安全かつ確実にドレナージでき、被ばくもない。これは画像ガイド下に行う非血管系IVRの一つである。隔壁(フィブリン)で多房化している場合は線維素溶解療法や胸腔鏡下手術が追加されることもある。
- ×c. 肺膿瘍 ―― 抗菌薬動注療法
肺膿瘍の治療は、抗菌薬の全身投与(点滴静注で開始し、改善後は内服に切り替えて長期間継続)が基本である。膿は気管支を通じた体位ドレナージや喀出で排出されることが多く、難治例では経皮的ドレナージや外科的切除が検討される。抗菌薬を動脈に直接注入する動注療法は肺膿瘍に対する確立した治療ではなく、この組合せは誤りである。なお、IVRとしての動注療法は、主に悪性腫瘍(肝細胞癌など)に対する抗癌薬の注入として行われる。
- ○d. 肺血栓塞栓症 ―― 下大静脈フィルター留置
肺血栓塞栓症の塞栓子の大部分は、下肢や骨盤内の深部静脈血栓症(deep vein thrombosis:DVT)に由来する。下大静脈フィルターは、頸静脈や大腿静脈からカテーテルで下大静脈(通常は腎静脈より下)に傘状のフィルターを留置し、下肢から流れてくる血栓を捕捉して肺への再塞栓を予防する血管系IVRである。治療の基本はあくまで抗凝固療法であり、フィルターは抗凝固療法が禁忌(出血リスクが高いなど)の場合や、十分な抗凝固療法下でも再発する場合などに適応が限られる。最近は、必要な期間が過ぎたら抜去できる回収可能型が多く用いられる。
- ×e. びまん性肺病変 ―― CTガイド下針生検
CTガイド下針生検(経皮的肺生検)は、画像下で穿刺針を進めて組織を採取する手技であり、主に肺末梢の限局性の結節・腫瘤(肺癌の疑いなど)の診断に用いられる。びまん性肺病変(間質性肺炎、サルコイドーシスなど)は病変が両肺に広がっており、組織診断には気管支鏡を用いた経気管支肺生検(TBLB)やクライオ生検、胸腔鏡下(外科的)肺生検が選択される。細い針で得られるわずかな組織ではびまん性病変の評価は困難で、気胸などの合併症のリスクにも見合わないため、この組合せは不適切である。また、針生検は治療ではなく診断のための検査手技である。
IVRの分類と主な手技
血管系IVR ・塞栓術: 喀血に対する気管支動脈塞栓術、肝細胞癌に対する肝動脈化学塞栓療法(TACE)、外傷性出血・消化管出血に対する動脈塞栓術、脳動脈瘤のコイル塞栓術など ・血管形成術・ステント留置: 冠動脈、腎動脈、下肢動脈の狭窄など ・動注療法: 悪性腫瘍に対する抗癌薬の動脈内注入 ・下大静脈フィルター留置: 肺血栓塞栓症の予防 ・経頸静脈的肝内門脈大循環短絡術(TIPS)など 非血管系IVR ・経皮的ドレナージ: 膿胸、肝膿瘍、閉塞性黄疸に対する経皮経肝胆道ドレナージ(PTBD)など ・画像ガイド下生検: 肺・肝などの限局性病変 ・ラジオ波焼灼療法(RFA): 肝細胞癌など ・経皮的椎体形成術など
IVRの特徴
外科手術に比べて侵襲が小さく、局所麻酔で行えることが多いため、高齢者や全身状態の悪い患者にも適用しやすい。一方で、X線被ばく、造影剤による副作用(アレルギー、腎障害)、穿刺部の出血、目的外の血管の塞栓などの合併症に注意が必要である。
喀血の出血源
肺には肺動脈(低圧系、ガス交換)と気管支動脈(体循環の高圧系、気管支・肺組織の栄養)の二重の血流がある。喀血の約9割は気管支動脈由来とされ、これが気管支動脈塞栓術が有効な理由である。
POINT
・IVR=画像ガイド下にカテーテルや針を用いて行う低侵襲治療。 ・喀血 → 気管支動脈塞栓術(出血源の多くは気管支動脈。合併症として脊髄梗塞に注意)。 ・膿胸 → 画像ガイド下ドレナージ。 ・肺血栓塞栓症 → 下大静脈フィルター(抗凝固療法が使えない・無効な場合)。 ・肺膿瘍は抗菌薬の全身投与、びまん性肺病変の組織診断はTBLBや外科的肺生検であり、動注・CTガイド下針生検は用いない。
