StudyMed医師国家試験

絨毛膜が1つなら双子は「同じ卵」―胎児付属物の基本を総ざらい

第104回医師国家試験 E問題 第16問

国試問題にチャレンジ

第104回 E問題 第16問

胎児付属物について正しいのはどれか。

  1. a.羊水は弱酸性である。
  2. b.臍帯動脈は1本である。
  3. c.癒着胎盤は初妊婦に多い。
  4. d.1絨毛膜2羊膜双胎は1卵性双胎である。
  5. e.胎盤絨毛細胞性合胞体細胞は胎児血と接する。

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は胎児付属物の基本知識を横断的に問う問題だ。胎児付属物とは、胎児とともに形成され、分娩時に一緒に娩出される胎盤、臍帯、卵膜、羊水の4つのこと。羊水の性質、臍帯の血管、胎盤の異常、胎盤の組織構造、そして双胎の膜性と、どれも産科の土台になる内容だよ。
医学生医学生
選択肢がばらばらの分野なので、1つずつ確実に判断していく必要がありそうですね。
ドクタードクター
そうだね。まず羊水のpHから。羊水は弱酸性か、弱アルカリ性か、どちらだと思う?
医学生医学生
腟の中が酸性だと習ったので、羊水も酸性寄りかと思ってしまいました。
ドクタードクター
そこが引っかけなんだ。腟内は乳酸桿菌の働きでpH4〜5程度の酸性に保たれているけれど、羊水はpH7.0〜7.5程度の弱アルカリ性。この差を利用して、腟内の液をBTB試験紙で調べ、青くアルカリ性に変われば破水を疑うんだ。ただ血液や精液、尿でも陽性になりうるから、偽陽性には注意が必要だよ。
医学生医学生
産婦人科の実習で、破水疑いの妊婦さんにBTB試験紙を使っているのを見ました。あれは羊水がアルカリ性だからなんですね。
ドクタードクター
その通り。次は臍帯の血管だ。動脈は何本ある?
医学生医学生
発生学で、動脈2本と静脈1本の計3本と習いました。だから1本というのは誤りですね。
ドクタードクター
正解。臍帯動脈は胎児の内腸骨動脈から分かれて、二酸化炭素や老廃物を含む血液を胎盤へ運び、臍帯静脈は酸素化された血液を胎児へ戻す。動脈が1本しかない単一臍帯動脈は異常で、心奇形や腎尿路奇形、胎児発育不全との関連があるから、見つかったら胎児の精査を行うんだ。
医学生医学生
癒着胎盤は、初めての妊娠のほうが子宮が慣れていなくて起こりやすい、ということはないですか。
ドクタードクター
直感的にはそう思えるかもしれないね。でも癒着胎盤は、脱落膜の形成が不十分な部位で絨毛が子宮筋層に直接付着・侵入する状態で、子宮内膜が傷ついていることが背景にある。だから危険因子は帝王切開や筋腫核出術などの子宮手術の既往、前置胎盤、子宮内容除去術の既往、多産、高年妊娠などで、初妊婦ではなく経産婦に多い。分娩後に胎盤が剥がれず大量出血をきたし、子宮摘出を要することもある重要な病態だよ。
医学生医学生
内膜の傷がポイントなんですね。では、1絨毛膜2羊膜双胎が1卵性というのはどうでしょう。
ドクタードクター
これが正解の選択肢だ。絨毛膜は受精卵から生じる胚側の組織だよね。2つの受精卵からできる2卵性双胎なら、それぞれが自分の絨毛膜を持つから必ず2絨毛膜2羊膜になる。つまり絨毛膜が1つしかない双胎は、1つの受精卵が分割してできた1卵性に限られるんだ。
医学生医学生
逆に、2絨毛膜2羊膜だからといって2卵性とは限らない、ということですか。
ドクタードクター
鋭いね。1卵性の膜性は分割の時期で決まる。受精後おおむね3日以内の早い分割なら2絨毛膜2羊膜、4〜8日ころなら1絨毛膜2羊膜、8日以降なら1絨毛膜1羊膜、さらに遅れると結合体になる。1絨毛膜2羊膜は1卵性双胎の中で最も多い型だよ。
医学生医学生
分割が遅いほど共有する膜が増えていく、と覚えればよさそうです。最後の合胞体栄養膜細胞は、胎児血と接するというのが誤りでしょうか。
ドクタードクター
そう。絨毛の表面は外側の合胞体栄養膜細胞と内側の細胞性栄養膜細胞の2層で覆われていて、合胞体栄養膜細胞は絨毛間腔を満たす母体血に直接接している。胎児血は絨毛内部の毛細血管を流れていて、母体血とは胎盤関門で隔てられ、正常では混ざらないんだ。
医学生医学生
組織学の実習で胎盤の標本を見たとき、絨毛の周りに母体の赤血球が広がっていたのを思い出しました。
ドクタードクター
いい観察だね。臨床的な話もしておこう。1絨毛膜双胎は胎盤を共有するから、胎盤内の血管吻合を通じて双胎間輸血症候群を起こしうるし、1絨毛膜1羊膜双胎では臍帯相互巻絡による胎児死亡のリスクが高い。だから膜性診断は妊娠初期、おおむね14週ころまでの超音波で行うのが最も正確で、2絨毛膜ではλサイン、1絨毛膜2羊膜ではTサインがみられる。
医学生医学生
膜性によってリスクが大きく違うから、早く確定することが周産期管理につながるんですね。
ドクタードクター
その通り。卵性という遺伝的な話と、膜性という管理上の話を区別して、膜性からリスクを読む視点を持っておこう。

まとめ

胎児付属物は胎盤、臍帯、卵膜、羊水の4つで、羊水は弱アルカリ性のためBTB試験紙で破水の診断に利用され、臍帯には動脈2本と静脈1本があり単一臍帯動脈は胎児奇形の合併に注意が必要です。癒着胎盤は脱落膜の形成不全を背景に起こり、帝王切開既往や前置胎盤、多産が危険因子となるため経産婦に多くみられます。合胞体栄養膜細胞は絨毛間腔の母体血に接し、胎児血とは胎盤関門で隔てられています。絨毛膜は胚由来の組織なので、1絨毛膜双胎は必ず1卵性であり、双胎間輸血症候群などのリスクを踏まえて妊娠初期に超音波で膜性を確定することが重要です。各付属物の構造と由来を理解しておくことは、破水診断から多胎妊娠の管理まで産科診療の基礎になります。

解答・解説

正解はdです

胎児付属物とは、妊娠中に胎児とともに形成され、分娩時に胎児とともに娩出される構造物の総称であり、胎盤、臍帯、卵膜、羊水の4つを指す。本問はそれぞれの基本的な性質(羊水のpH、臍帯血管の構成、胎盤の異常とその危険因子、胎盤の組織構造)と、膜性による双胎の分類を横断的に問うている。 判断の要点は以下である。 ・羊水は弱アルカリ性であり、この性質は破水の診断に利用される。 ・臍帯には動脈2本と静脈1本の計3本の血管がある。 ・癒着胎盤は子宮内膜(脱落膜)の欠損が原因で起こり、帝王切開などの子宮手術の既往や前置胎盤、多産が危険因子となるため、初妊婦ではなく経産婦に多い。 ・絨毛膜は受精卵(胚)側の組織なので、絨毛膜が1つしかない(1絨毛膜性)双胎は、1つの受精卵が分割してできた1卵性双胎に限られる。 ・胎盤では母体血と胎児血は直接混ざらず、合胞体栄養膜細胞は絨毛間腔を流れる母体血に接している。 したがって正しいのはdである。

選択肢考察

  1. ×a.  羊水は弱酸性である。

    羊水のpHは約7.0~7.5(妊娠末期でおおむね7.1~7.3前後)で、弱アルカリ性である。一方、腟内は乳酸桿菌(デーデルライン桿菌)の働きでpH 4~5程度の酸性に保たれている。この差を利用し、腟内の液体をBTB(ブロモチモールブルー)試験紙などで調べ、アルカリ性(青色)に変化すれば羊水の流出、すなわち破水を疑う。ただし血液や精液、尿なども陽性になりうるため偽陽性に注意する。

  2. ×b.  臍帯動脈は1本である。

    正常の臍帯には臍帯動脈2本と臍帯静脈1本の計3本の血管がある。臍帯動脈は胎児の内腸骨動脈から分かれ、二酸化炭素や老廃物を含む静脈血を胎盤へ運ぶ。臍帯静脈は胎盤で酸素化された動脈血を胎児へ運ぶ。臍帯動脈が1本しかない状態は単一臍帯動脈(single umbilical artery:SUA)と呼ばれる異常で、胎児の心奇形・腎尿路奇形などの合併や胎児発育不全との関連があるため、見つかった場合は胎児の精査を行う。

  3. ×c.  癒着胎盤は初妊婦に多い。

    癒着胎盤は、脱落膜(子宮内膜が妊娠で変化した層)の形成が不十分な部位で、絨毛が子宮筋層に直接付着・侵入し、分娩後に胎盤が剥がれなくなる状態である。子宮内膜が傷ついている、あるいは欠損している状況で起こりやすく、危険因子は帝王切開や子宮筋腫核出術などの子宮手術の既往、前置胎盤(特に帝王切開既往を伴う場合)、人工妊娠中絶・子宮内容除去術の既往、子宮内膜炎、多産、高年妊娠などである。したがって初妊婦ではなく経産婦(経妊婦)に多い。胎盤剥離が困難なため大量出血をきたしやすく、子宮摘出を要することもある。

  4. ○d.  1絨毛膜2羊膜双胎は1卵性双胎である。

    絨毛膜は受精卵から生じる胚側の組織であり、2つの受精卵からなる2卵性双胎では必ず絨毛膜が2つ(2絨毛膜2羊膜)になる。したがって絨毛膜が1つの1絨毛膜双胎(1絨毛膜2羊膜双胎、1絨毛膜1羊膜双胎)は、すべて1つの受精卵が分割した1卵性双胎である。1卵性双胎の膜性は受精卵が分割した時期で決まり、受精後おおむね3日以内の分割で2絨毛膜2羊膜、4~8日ころで1絨毛膜2羊膜、8日以降で1絨毛膜1羊膜、さらに遅れると結合体となる。1絨毛膜2羊膜は1卵性双胎の中で最も多い型である。

  5. ×e.  胎盤絨毛細胞性合胞体細胞は胎児血と接する。

    胎盤の絨毛の表面は栄養膜(トロホブラスト)で覆われ、外側の合胞体栄養膜細胞(シンシチオトロホブラスト)と内側の細胞性栄養膜細胞(サイトトロホブラスト)の2層からなる(細胞性栄養膜細胞は妊娠後期には目立たなくなる)。合胞体栄養膜細胞は絨毛間腔を満たす母体血に直接接しており、胎児血とは接しない。胎児血は絨毛内部の胎児毛細血管の中を流れ、母体血との間は合胞体栄養膜細胞、細胞性栄養膜細胞、絨毛間質、胎児毛細血管内皮からなる胎盤関門(血液胎盤関門)で隔てられている。母体血と胎児血は正常では混ざり合わない。

胎児付属物

・胎盤: 母体と胎児の間のガス交換・物質交換を担うほか、hCG(ヒト絨毛性ゴナドトロピン)、hPL(ヒト胎盤性ラクトゲン)、エストロゲン、プロゲステロンなどのホルモンを産生し妊娠を維持する。母体側は脱落膜(基底脱落膜)、胎児側は絨毛膜有毛部(絨毛)から形成される。 ・臍帯: 動脈2本・静脈1本がワルトン膠様質に包まれている。正期産で長さ約50~60cm。 ・卵膜: 胎児側から羊膜、絨毛膜、脱落膜の3層。羊膜と絨毛膜は胎児由来、脱落膜は母体由来である。 ・羊水: 妊娠初期は羊膜や母体からの浸出液が主体だが、妊娠中期以降は主に胎児尿で産生され、胎児の嚥下や肺胞液の出入りで吸収・循環する。量は妊娠30週前後が最大(約700~800mL)で、その後やや減少する。弱アルカリ性。

双胎の膜性診断

・2絨毛膜2羊膜(DD)双胎: 2卵性はすべてこの型。1卵性でも早期分割ならこの型になる。胎盤は2つ(癒合して1つに見えることもある)。 ・1絨毛膜2羊膜(MD)双胎: 1卵性のみ。胎盤を共有し、胎盤内の血管吻合により双胎間輸血症候群(TTTS)を起こしうる。 ・1絨毛膜1羊膜(MM)双胎: 1卵性のみ。臍帯相互巻絡による胎児死亡のリスクが高い。 膜性の診断は妊娠初期(14週ころまで)の超音波検査で行うのが最も正確であり、DD双胎では隔膜の付着部にλ(ラムダ)サイン、MD双胎ではTサインがみられる。1絨毛膜双胎はリスクが高いため、膜性を早期に確定することが周産期管理上重要である。

胎盤の血液循環

子宮らせん動脈から絨毛間腔に母体血が噴出し、絨毛表面の合胞体栄養膜細胞に接して物質交換が行われた後、子宮静脈へ戻る。胎児血は臍帯動脈から絨毛内の毛細血管に入り、交換後に臍帯静脈から胎児へ戻る。

POINT

・羊水は弱アルカリ性(pH 7.0~7.5)→ BTB試験紙で破水を診断。 ・臍帯は動脈2本・静脈1本。単一臍帯動脈は胎児奇形の合併に注意。 ・癒着胎盤は経産婦、帝王切開既往、前置胎盤で多い。 ・1絨毛膜双胎は必ず1卵性。2絨毛膜双胎は1卵性・2卵性のどちらもありうる。 ・合胞体栄養膜細胞は母体血(絨毛間腔)に接し、胎児血とは胎盤関門で隔てられる。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。