StudyMed医師国家試験

両手で挟んで初めてわかる―双合診の手技と「鶏卵大」の物差し

第104回医師国家試験 C問題 第8問

国試問題にチャレンジ

第104回 C問題 第8問

婦人科診察時の双合診で正しいのはどれか。

  1. a.腟鏡診の前に行う。
  2. b.膀胱を充満して行う。
  3. c.正常な卵巣は鵞卵大に触れる。
  4. d.正常な子宮は手拳大に触れる。
  5. e.内診指と腹壁上の外診手とで触診する。

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は、婦人科診察の基本である双合診について、手技そのものと正常所見を問う問題だ。診察の順番、準備、正常な大きさの目安、そして双合診の定義。この4つを整理すれば迷わない。まず、双合診とはどんな診察か説明できるかな。
医学生医学生
内診のことですよね。腟に指を入れて子宮を触る診察、という理解です。
ドクタードクター
半分正解だね。「双合」という名前の通り、腟内に入れた指だけでなく、もう一方の手を腹壁の上に置いて、両手で子宮や卵巣・卵管を挟み込むように触れるのがポイントなんだ。内診指で子宮腟部を持ち上げ、外診手で下腹部を押し下げる。挟むことで、片手ではわからない大きさや形、硬さ、可動性、圧痛がわかる。
医学生医学生
だから「内診指と腹壁上の外診手とで触診する」が正解なんですね。定義そのものだったとは。
ドクタードクター
そう、これが正解。では他の選択肢も確認しよう。まず診察の順番。双合診と腟鏡診はどちらが先だと思う?
医学生医学生
指で触って異常の見当をつけてから腟鏡で見たほうが効率がいい気がします。
ドクタードクター
そう考える人は多いけれど、実際は逆なんだ。先に指を入れると、潤滑剤や指の接触で子宮頸部細胞診の検体が不適切になったり、子宮腟部から接触出血が起きて観察の邪魔になったりする。だから外陰部の視診、腟鏡診と細胞診、そのあとで双合診、という順番が基本だ。
医学生医学生
OSCEの練習で、まず観察してから触れる、と習ったのと同じ発想ですね。
ドクタードクター
いい結びつけ方だね。次は膀胱。双合診の前には排尿してもらう。膀胱が張っていると下腹部が緊張して子宮や付属器が触れにくく、膀胱そのものを腫瘤と間違えるおそれもあるし、患者さんもつらい。
医学生医学生
でも、膀胱を充満させる検査もありませんでしたっけ。
ドクタードクター
それは経腹超音波検査だね。膀胱を音響窓、つまり超音波の通り道として使い、子宮や卵巣を描出しやすくする。経腟超音波検査や双合診では逆に膀胱を空にする。ここを混同させるのが出題の狙いだ。
医学生医学生
正常な大きさの選択肢も迷いました。子宮は手拳大と言われると、なんとなくそうかなと思ってしまって。
ドクタードクター
大きさの表現は臨床で頻繁に使うから、物差しとして覚えておこう。小さい順に、母指頭大、鶏卵大、鵞卵大、手拳大、小児頭大、成人頭大。成熟女性の正常子宮は鶏卵大で、長さ7〜8cmほど。手拳大なら子宮筋腫や子宮腺筋症、あるいは妊娠による腫大を考える所見だ。
医学生医学生
卵巣はもっと小さいんですよね。
ドクタードクター
正常卵巣は母指頭大程度で柔らかく、双合診では触れないか、触れてもわずかに感じる程度。閉経後は萎縮してさらに触れにくい。鵞卵大に触れたら、卵巣嚢腫や卵巣腫瘍など腫大を疑うべき所見になる。
医学生医学生
正常は子宮が鶏卵大、卵巣は母指頭大で触れにくい。それより大きく触れたら異常、ということですね。
ドクタードクター
その通り。発展として、双合診で何を評価するかも押さえておこう。子宮の位置は前傾前屈が多いけれど、後傾後屈も正常変異としてありうる。妊娠では子宮が軟らかくなり、子宮内膜症や癒着では可動性が落ちる。子宮腟部を動かすと痛む移動痛は、骨盤内炎症性疾患や異所性妊娠などで陽性になる。
医学生医学生
産婦人科の臨床実習では経腟超音波ばかり見ていた印象ですが、双合診はまだ必要なんでしょうか。
ドクタードクター
大事な質問だね。経腟超音波は形態の評価にとても有用だけれど、圧痛や移動痛、硬さ、可動性は手で触れないとわからない。両方を組み合わせて総合的に判断するのが基本だ。また、性交経験のない女性など腟からの診察が難しい場合は直腸診を行うし、示指を腟、中指を直腸に入れる直腸腟診はダグラス窩の子宮内膜症結節や子宮頸癌の進展の評価に役立つ。

まとめ

双合診は、腟内に挿入した内診指と腹壁上に置いた外診手で子宮や付属器を挟み込み、大きさ・形・硬さ・位置・可動性・圧痛を評価する婦人科の基本診察法です。外陰部の視診と腟鏡診(細胞診)を先に行い、検体汚染や接触出血を避けてから双合診に移り、診察前には排尿させて膀胱を空にします(膀胱充満が必要なのは経腹超音波検査です)。成熟女性の正常子宮は鶏卵大、正常卵巣は母指頭大で通常は触れにくく、手拳大の子宮や鵞卵大の卵巣は筋腫・妊娠や卵巣腫瘍などの腫大を示唆します。移動痛や可動性のように画像では得にくい情報もあるため、超音波検査と組み合わせて総合的に判断することが大切です。手技の意味と大きさの物差しを理解しておくことは、婦人科診療の所見を正しく記載し解釈する土台になります。

解答・解説

正解はeです

本問は、婦人科の基本的な診察法である双合診(内診)の手技と正常所見を問う問題である。

双合診とは

双合診は、腟内に挿入した指(通常は示指と中指の2本、または示指1本)と、腹壁上に置いたもう一方の手とで、子宮や付属器(卵巣・卵管)を挟み込むように触れて診察する方法である。内側と外側の両方から臓器を挟むことで、単独の手では分からない大きさ・形・硬さ・可動性・圧痛の有無などを評価できる。

婦人科診察の標準的な流れ

問診 → 排尿(膀胱を空にする)→ 砕石位(内診台上で仰向けになり、股関節と膝を曲げて開脚した体位)→ 外陰部の視診 → 腟鏡診(必要に応じて子宮頸部細胞診・帯下の採取)→ 双合診(必要に応じて直腸診・直腸腟診)→ 経腟超音波検査、という順序が基本である。

考え方

・順序:腟鏡診を先に行うのは、先に指を入れると潤滑剤や指の接触により細胞診の検体が汚染されたり、子宮腟部から出血したりして、観察や検査が不正確になるためである。 ・膀胱:膀胱に尿が貯まっていると、子宮・付属器が触れにくく、患者の不快感も強くなる。 ・正常所見:成熟女性の正常子宮は鶏卵大(長さ約7〜8cm)で、表面平滑、弾性硬、可動性良好、圧痛なしとして触れる。正常な卵巣は母指頭大程度と小さく、通常は触知しにくい。 これらを踏まえると、手技そのものを正しく述べているのは「内診指と腹壁上の外診手とで触診する」である。

選択肢考察

  1. ×a.  腟鏡診の前に行う。

    双合診は外陰部の視診と腟鏡診のあとに行う。腟鏡診では腟壁や子宮腟部を直接観察し、子宮頸部細胞診や帯下の採取を行う。先に双合診を行うと、潤滑剤や指の接触によって細胞診の検体が不適切になったり、子宮腟部からの接触出血が起きて病変の観察が妨げられたりするため、順序が逆である。

  2. ×b.  膀胱を充満して行う。

    双合診は診察前に排尿させ、膀胱を空にしてから行う。膀胱が充満していると、下腹部の緊張が強くなって子宮・付属器が触れにくくなり、膀胱を腫瘤と誤認するおそれもあり、患者の苦痛も増す。なお、膀胱を充満させるのは経腹超音波検査で、膀胱を音響窓(超音波の通り道)として子宮・卵巣を描出しやすくするためである。経腟超音波検査は膀胱を空にして行う。

  3. ×c.  正常な卵巣は鵞卵大に触れる。

    成熟女性の正常な卵巣は母指頭大(約3×2×1cm程度)と小さく、柔らかいため、双合診では触れないか、触れても小さくわずかに感じる程度である。閉経後は萎縮してさらに触れにくくなる。鵞卵大(ガチョウの卵ほどの大きさ)に触れる場合は、卵巣嚢腫・卵巣腫瘍などの腫大を疑う所見である。

  4. ×d.  正常な子宮は手拳大に触れる。

    成熟女性の正常子宮は鶏卵大(長さ約7〜8cm、幅約4〜5cm、厚さ約3cm程度)に触れる。手拳大はそれより明らかに大きく、子宮筋腫や子宮腺筋症、妊娠(妊娠週数が進むにつれて鶏卵大から鵞卵大、手拳大へと大きくなる)などによる子宮の腫大を示唆する所見である。

  5. ○e.  内診指と腹壁上の外診手とで触診する。

    これが双合診の定義そのものである。腟内に挿入した内診指で子宮腟部を持ち上げ、腹壁上に置いた外診手で下腹部を押し下げて、両手の間に子宮や付属器を挟んで触れる。これにより、子宮の大きさ・形・硬さ・位置(前傾前屈か後屈か)・可動性、付属器腫瘤の有無、圧痛や子宮頸部の移動痛(骨盤内炎症性疾患などで陽性)を評価できる。

双合診で評価する主な項目

・子宮:大きさ(正常は鶏卵大)、形(表面の凹凸は筋腫を示唆)、硬さ(妊娠では軟化)、位置(前傾前屈が多いが、後傾後屈も正常変異としてありうる)、可動性(子宮内膜症や癒着で低下)、圧痛。 ・付属器:腫瘤の有無・大きさ・硬さ・可動性、圧痛(付属器炎、異所性妊娠など)。 ・子宮頸部の移動痛:子宮腟部を動かすと痛む所見で、骨盤内炎症性疾患や異所性妊娠などで陽性となる。

関連する診察法

・直腸診:性交経験のない女性など腟からの内診が困難な場合に、肛門から指を入れて行う。 ・直腸腟診:示指を腟に、中指を直腸に入れて行い、ダグラス窩(直腸子宮窩)や子宮仙骨靱帯、直腸腟中隔の病変(子宮内膜症の結節、子宮頸癌の進展など)の評価に有用である。

大きさの表現(臨床でよく使う目安)

小さい順に、母指頭大(正常卵巣程度)<鶏卵大(正常子宮程度)<鵞卵大<手拳大<小児頭大<成人頭大。子宮筋腫や卵巣腫瘍の大きさの記載に用いられる。

超音波検査との関係

経腟超音波検査は子宮・付属器の形態異常の検索に非常に有用で広く用いられているが、圧痛・移動痛・硬さ・可動性といった情報は双合診でしか得られない。画像検査のみに頼らず、双合診と組み合わせて総合的に判断することが重要である。

POINT

・双合診=腟内の内診指と腹壁上の外診手で子宮・付属器を挟んで触れる診察法。 ・順序は視診 → 腟鏡診(細胞診)→ 双合診。膀胱は空にして行う。 ・正常子宮は鶏卵大、正常卵巣は母指頭大で通常は触知しにくい。 ・膀胱充満が必要なのは経腹超音波検査であり、双合診ではない。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。