両手で挟んで初めてわかる―双合診の手技と「鶏卵大」の物差し
第104回医師国家試験 C問題 第8問
国試問題にチャレンジ
婦人科診察時の双合診で正しいのはどれか。
- a.腟鏡診の前に行う。
- b.膀胱を充満して行う。
- c.正常な卵巣は鵞卵大に触れる。
- d.正常な子宮は手拳大に触れる。
- e.内診指と腹壁上の外診手とで触診する。
対話形式の解説
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医学生
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ドクターまとめ
双合診は、腟内に挿入した内診指と腹壁上に置いた外診手で子宮や付属器を挟み込み、大きさ・形・硬さ・位置・可動性・圧痛を評価する婦人科の基本診察法です。外陰部の視診と腟鏡診(細胞診)を先に行い、検体汚染や接触出血を避けてから双合診に移り、診察前には排尿させて膀胱を空にします(膀胱充満が必要なのは経腹超音波検査です)。成熟女性の正常子宮は鶏卵大、正常卵巣は母指頭大で通常は触れにくく、手拳大の子宮や鵞卵大の卵巣は筋腫・妊娠や卵巣腫瘍などの腫大を示唆します。移動痛や可動性のように画像では得にくい情報もあるため、超音波検査と組み合わせて総合的に判断することが大切です。手技の意味と大きさの物差しを理解しておくことは、婦人科診療の所見を正しく記載し解釈する土台になります。
解答・解説
正解はeです
本問は、婦人科の基本的な診察法である双合診(内診)の手技と正常所見を問う問題である。
双合診とは
双合診は、腟内に挿入した指(通常は示指と中指の2本、または示指1本)と、腹壁上に置いたもう一方の手とで、子宮や付属器(卵巣・卵管)を挟み込むように触れて診察する方法である。内側と外側の両方から臓器を挟むことで、単独の手では分からない大きさ・形・硬さ・可動性・圧痛の有無などを評価できる。
婦人科診察の標準的な流れ
問診 → 排尿(膀胱を空にする)→ 砕石位(内診台上で仰向けになり、股関節と膝を曲げて開脚した体位)→ 外陰部の視診 → 腟鏡診(必要に応じて子宮頸部細胞診・帯下の採取)→ 双合診(必要に応じて直腸診・直腸腟診)→ 経腟超音波検査、という順序が基本である。
考え方
・順序:腟鏡診を先に行うのは、先に指を入れると潤滑剤や指の接触により細胞診の検体が汚染されたり、子宮腟部から出血したりして、観察や検査が不正確になるためである。 ・膀胱:膀胱に尿が貯まっていると、子宮・付属器が触れにくく、患者の不快感も強くなる。 ・正常所見:成熟女性の正常子宮は鶏卵大(長さ約7〜8cm)で、表面平滑、弾性硬、可動性良好、圧痛なしとして触れる。正常な卵巣は母指頭大程度と小さく、通常は触知しにくい。 これらを踏まえると、手技そのものを正しく述べているのは「内診指と腹壁上の外診手とで触診する」である。
選択肢考察
- ×a. 腟鏡診の前に行う。
双合診は外陰部の視診と腟鏡診のあとに行う。腟鏡診では腟壁や子宮腟部を直接観察し、子宮頸部細胞診や帯下の採取を行う。先に双合診を行うと、潤滑剤や指の接触によって細胞診の検体が不適切になったり、子宮腟部からの接触出血が起きて病変の観察が妨げられたりするため、順序が逆である。
- ×b. 膀胱を充満して行う。
双合診は診察前に排尿させ、膀胱を空にしてから行う。膀胱が充満していると、下腹部の緊張が強くなって子宮・付属器が触れにくくなり、膀胱を腫瘤と誤認するおそれもあり、患者の苦痛も増す。なお、膀胱を充満させるのは経腹超音波検査で、膀胱を音響窓(超音波の通り道)として子宮・卵巣を描出しやすくするためである。経腟超音波検査は膀胱を空にして行う。
- ×c. 正常な卵巣は鵞卵大に触れる。
成熟女性の正常な卵巣は母指頭大(約3×2×1cm程度)と小さく、柔らかいため、双合診では触れないか、触れても小さくわずかに感じる程度である。閉経後は萎縮してさらに触れにくくなる。鵞卵大(ガチョウの卵ほどの大きさ)に触れる場合は、卵巣嚢腫・卵巣腫瘍などの腫大を疑う所見である。
- ×d. 正常な子宮は手拳大に触れる。
成熟女性の正常子宮は鶏卵大(長さ約7〜8cm、幅約4〜5cm、厚さ約3cm程度)に触れる。手拳大はそれより明らかに大きく、子宮筋腫や子宮腺筋症、妊娠(妊娠週数が進むにつれて鶏卵大から鵞卵大、手拳大へと大きくなる)などによる子宮の腫大を示唆する所見である。
- ○e. 内診指と腹壁上の外診手とで触診する。
これが双合診の定義そのものである。腟内に挿入した内診指で子宮腟部を持ち上げ、腹壁上に置いた外診手で下腹部を押し下げて、両手の間に子宮や付属器を挟んで触れる。これにより、子宮の大きさ・形・硬さ・位置(前傾前屈か後屈か)・可動性、付属器腫瘤の有無、圧痛や子宮頸部の移動痛(骨盤内炎症性疾患などで陽性)を評価できる。
双合診で評価する主な項目
・子宮:大きさ(正常は鶏卵大)、形(表面の凹凸は筋腫を示唆)、硬さ(妊娠では軟化)、位置(前傾前屈が多いが、後傾後屈も正常変異としてありうる)、可動性(子宮内膜症や癒着で低下)、圧痛。 ・付属器:腫瘤の有無・大きさ・硬さ・可動性、圧痛(付属器炎、異所性妊娠など)。 ・子宮頸部の移動痛:子宮腟部を動かすと痛む所見で、骨盤内炎症性疾患や異所性妊娠などで陽性となる。
関連する診察法
・直腸診:性交経験のない女性など腟からの内診が困難な場合に、肛門から指を入れて行う。 ・直腸腟診:示指を腟に、中指を直腸に入れて行い、ダグラス窩(直腸子宮窩)や子宮仙骨靱帯、直腸腟中隔の病変(子宮内膜症の結節、子宮頸癌の進展など)の評価に有用である。
大きさの表現(臨床でよく使う目安)
小さい順に、母指頭大(正常卵巣程度)<鶏卵大(正常子宮程度)<鵞卵大<手拳大<小児頭大<成人頭大。子宮筋腫や卵巣腫瘍の大きさの記載に用いられる。
超音波検査との関係
経腟超音波検査は子宮・付属器の形態異常の検索に非常に有用で広く用いられているが、圧痛・移動痛・硬さ・可動性といった情報は双合診でしか得られない。画像検査のみに頼らず、双合診と組み合わせて総合的に判断することが重要である。
POINT
・双合診=腟内の内診指と腹壁上の外診手で子宮・付属器を挟んで触れる診察法。 ・順序は視診 → 腟鏡診(細胞診)→ 双合診。膀胱は空にして行う。 ・正常子宮は鶏卵大、正常卵巣は母指頭大で通常は触知しにくい。 ・膀胱充満が必要なのは経腹超音波検査であり、双合診ではない。
