StudyMed医師国家試験

「点」か「面」か―紫斑の形が教えてくれる止血の障害部位

第104回医師国家試験 C問題 第7問

国試問題にチャレンジ

第104回 C問題 第7問

点状出血斑が見られるのはどれか。

  1. a.血友病A
  2. b.ビタミンK欠乏症
  3. c.抗リン脂質症候群
  4. d.免疫性血小板減少性紫斑病〈特発性血小板減少性紫斑病〉〈ITP〉
  5. e.循環抗凝固因子による出血傾向

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は、出血傾向をきたす疾患のうち、どれが点状出血斑を起こすかを問う問題だ。病名を一つずつ暗記するより、「止血のどの段階が壊れているか」で考えるとすっきり解ける。まず、止血の仕組みを二段階に分けて説明できるかな。
医学生医学生
一次止血と二次止血ですね。一次止血は血小板が集まって栓をつくって、二次止血は凝固因子がフィブリンをつくって固める……だったと思います。
ドクタードクター
その通り。一次止血の主役は血管壁と血小板で、傷ついた血管内皮下のコラーゲンにフォン・ヴィレブランド因子を介して血小板が粘着し、凝集して血小板血栓をつくる。二次止血では凝固カスケードが進んでフィブリンができ、その血小板血栓を補強して強固な止血栓にするんだ。
医学生医学生
どちらが壊れても出血しやすくなるのは同じですよね。出血の見た目まで変わるんですか。
ドクタードクター
そこが今回の核心だ。一次止血が壊れると、皮膚や粘膜の表在性の小さな出血が目立つ。径数mm以下の点状出血、鼻出血、歯肉出血、月経過多などで、傷をつくった直後から血が止まりにくい。一方、二次止血の異常では関節内出血や筋肉内出血、広い斑状出血や皮下血腫といった深部の出血が主体で、いったん止まったあとに再出血しやすい。
医学生医学生
毛細血管レベルの小さな傷をふさぐのは血小板の仕事だから、血小板が足りないと「点」で漏れる、というイメージでしょうか。
ドクタードクター
いい捉え方だね。では選択肢を見ていこう。一次止血の異常にあたるのはどれだと思う?
医学生医学生
免疫性血小板減少性紫斑病、ITPは血小板が減る病気なので、これが一次止血の異常ですね。
ドクタードクター
正解。ITPでは血小板膜糖蛋白GPIIb/IIIaなどに対するIgG自己抗体が結合した血小板が脾臓などで破壊され、巨核球からの産生も障害されて血小板が減る。その結果、四肢や体幹の点状出血斑、鼻出血、歯肉出血、月経過多などがみられる。検査では血小板数減少と出血時間延長があり、凝固因子は保たれているのでPT・APTTは正常だ。
医学生医学生
血友病Aは、小児科の講義で関節内出血を繰り返して関節が変形する子の話を聞きました。
ドクタードクター
まさに典型だね。血友病Aは第VIII因子の先天的欠乏で、X連鎖劣性遺伝のため主に男性に発症する。二次止血の異常なので関節内・筋肉内出血が中心で、APTTは延長するが血小板数と出血時間は正常。点状出血は特徴ではない。
医学生医学生
ビタミンK欠乏症も凝固因子の問題なので、同じく二次止血側ですね。
ドクタードクター
そう。ビタミンKはII、VII、IX、X因子のγ-カルボキシル化に必要で、欠乏するとこれらが働けなくなる。半減期の最も短いVII因子の影響でPTが早期から延び、進行するとAPTTも延長する。新生児、抗菌薬の長期投与、閉塞性黄疸による脂溶性ビタミンの吸収障害などが原因になる。紫斑は斑状出血や広い皮下出血の形をとりやすい。
医学生医学生
抗リン脂質症候群はAPTTが延長するので、出血しやすいのかと思っていました。
ドクタードクター
CBTでもよく引っかかるポイントだね。ループスアンチコアグラントは試験管内でリン脂質依存性の凝固反応を邪魔するのでAPTTが延びるけれど、生体内ではむしろ血栓傾向を示す。動静脈血栓症や反復する流産・死産などの不育症が主病態だ。軽い血小板減少を伴うことはあっても、点状出血斑を起こす疾患とはいえない。
医学生医学生
循環抗凝固因子は聞き慣れない言葉です。
ドクタードクター
血液中に現れて凝固因子の働きを妨げる物質の総称で、主に凝固因子に対する自己抗体、つまりインヒビターだ。代表は第VIII因子に対する自己抗体による後天性血友病Aで、高齢者や自己免疫疾患、悪性腫瘍、分娩後などを背景に起こる。広範な皮下出血や筋肉内出血が多く、先天性の血友病と違って関節内出血はまれ。APTT延長が正常血漿を混ぜても補正されない、というクロスミキシング試験の結果が手がかりになる。
医学生医学生
整理すると、血小板や血管の問題なら点状出血、凝固因子の問題なら深部出血や斑状出血、ということですね。
ドクタードクター
その理解で大丈夫。発展として、両方が崩れる病態も押さえておこう。DICでは血小板と凝固因子がともに消費されるので、点状出血と斑状出血の両方がみられうる。フォン・ヴィレブランド病は一次止血も障害されるので皮膚粘膜出血をきたし、出血時間とAPTTがともに延長する。点状出血は再生不良性貧血や急性白血病などの血小板減少、アスピリン内服などの血小板機能異常、IgA血管炎や壊血病といった血管の異常でもみられる。
医学生医学生
臨床実習で紫斑の患者さんを診たら、まず血小板数とPT・APTTを確認すればいいんですね。
ドクタードクター
その通り。もう一つ、紫斑はガラス板で圧迫しても色が消えない点で、圧迫で消える紅斑と区別できる。出血の見た目と簡単な検査の組み合わせで、障害部位をかなり絞り込めるんだ。

まとめ

点状出血斑は径数mm以下の小さな皮膚出血で、血小板の減少・機能異常や血管の異常といった一次止血の障害を示唆します。選択肢の中で一次止血の異常にあたるのは、自己抗体により血小板が破壊されるITPで、血小板数減少・出血時間延長・PT/APTT正常が特徴です。血友病A、ビタミンK欠乏症、循環抗凝固因子(後天性血友病Aなど)はいずれも凝固因子の異常で、関節内・筋肉内出血や斑状出血が主体となり、抗リン脂質症候群はAPTTが延長しても臨床的には血栓症と不育症をきたす疾患です。DICのように一次・二次止血の両方が障害されると両タイプの出血が混在することもあります。出血のパターンと血小板数・PT・APTTを組み合わせて止血のどの段階が障害されているかを推定する考え方は、出血傾向の鑑別の基本となります。

解答・解説

正解はdです

本問は、出血傾向の原因(どの止血段階が障害されているか)と、出血症状のパターンとの対応を問う問題である。

止血の二段階

・一次止血:血管が傷つくと、血小板が血管内皮下のコラーゲンに粘着し(フォン・ヴィレブランド因子が仲介)、凝集して血小板血栓をつくる。主役は血管壁と血小板である。 ・二次止血:凝固因子が次々に活性化され(凝固カスケード)、最終的にフィブリンが形成されて血小板血栓を補強し、強固な止血栓となる。主役は凝固因子である。

障害部位と出血のパターン

・一次止血の異常(血小板減少、血小板機能異常、血管の脆弱性):皮膚・粘膜の表在性の小出血が特徴である。径数mm以下の点状出血(点状出血斑)、鼻出血、歯肉出血、月経過多などがみられ、傷をつくった直後から出血しやすい。 ・二次止血の異常(凝固因子の欠乏や阻害):深部組織の出血が特徴である。関節内出血、筋肉内出血、広い範囲の斑状出血・皮下血腫がみられ、いったん止まったあとに再出血する(遅発性出血)ことが多い。点状出血はみられにくい。

考え方

選択肢のうち一次止血の異常にあたるのは、血小板が減少する免疫性血小板減少性紫斑病(ITP)だけである。血友病A、ビタミンK欠乏症、循環抗凝固因子はいずれも凝固因子の問題(二次止血の異常)であり、抗リン脂質症候群は出血ではなく血栓をきたす疾患である。

選択肢考察

  1. ×a.  血友病A

    血友病Aは第VIII因子の先天的欠乏(X連鎖劣性遺伝で主に男性に発症)による二次止血の異常である。関節内出血や筋肉内出血といった深部出血が典型で、関節内出血を繰り返すと血友病性関節症に至る。検査ではAPTT(活性化部分トロンボプラスチン時間)が延長するが、血小板数と出血時間は正常であり、点状出血はみられない。

  2. ×b.  ビタミンK欠乏症

    ビタミンKは肝臓でII(プロトロンビン)、VII、IX、X因子が働けるようにする(γ-カルボキシル化)ために必要で、欠乏するとこれらのビタミンK依存性凝固因子の活性が低下する。半減期が短い順はVII、IX、X、II因子であり、半減期の最も短いVII因子の影響でPT(プロトロンビン時間)が早期から延長し、進行するとAPTTも延長する。二次止血の異常であるため、紫斑は斑状出血や広範な皮下出血となり、点状出血は通常みられない。新生児(新生児メレナ、頭蓋内出血)、抗菌薬の長期投与、閉塞性黄疸による脂溶性ビタミンの吸収障害などが原因となる。

  3. ×c.  抗リン脂質症候群

    抗リン脂質症候群は、抗カルジオリピン抗体、ループスアンチコアグラント、抗β2-グリコプロテインI抗体などの抗リン脂質抗体によって、動脈血栓症・静脈血栓症や妊娠合併症(反復する流産・死産などの不育症)をきたす自己免疫疾患である。ループスアンチコアグラントは試験管内でリン脂質依存性の凝固反応を妨げるためAPTTが延長するが、生体内ではむしろ血栓傾向を示す。軽度の血小板減少を伴うことはあるものの、主な病態は血栓であり、出血傾向の症状として点状出血斑をきたす疾患とはいえない。

  4. ○d.  免疫性血小板減少性紫斑病〈特発性血小板減少性紫斑病〉〈ITP〉

    ITPは血小板に対する自己抗体(主に血小板膜糖蛋白GPIIb/IIIaなどに対するIgG抗体)が結合した血小板が脾臓などで破壊され、さらに巨核球からの血小板産生も障害されて血小板が減少する疾患である。血小板減少は一次止血の異常であり、四肢や体幹の点状出血斑、鼻出血、歯肉出血、口腔粘膜出血、月経過多などの皮膚・粘膜出血が典型的にみられる。検査では血小板数が減少し出血時間が延長するが、凝固因子は保たれているためPT・APTTは正常である。

  5. ×e.  循環抗凝固因子による出血傾向

    循環抗凝固因子とは、血液中に出現して凝固因子の働きを阻害する物質(主に凝固因子に対する自己抗体=インヒビター)の総称である。代表例は第VIII因子に対する自己抗体による後天性血友病Aで、高齢者、自己免疫疾患、悪性腫瘍、分娩後などを背景に発症する。二次止血の異常であり、広範な皮下出血や筋肉内出血をきたしやすいが、先天性の血友病Aと異なり関節内出血はまれである。APTTが延長し、正常血漿を混ぜても延長が補正されない(クロスミキシング試験でインヒビターのパターン)ことが診断の手がかりとなる。点状出血は特徴ではない。

紫斑の分類

・点状出血(点状出血斑):径数mm以下(おおむね1〜5mm程度)の小さな出血斑。血小板の減少・機能異常や血管の異常など、一次止血の障害でみられやすい。 ・斑状出血:径数cm程度までの出血斑。凝固異常でみられやすい。 ・びまん性出血(皮下血腫を含む):広い範囲に及ぶ皮下出血。凝固異常でみられやすい。 紫斑は皮下・粘膜下の出血による赤紫色の斑であり、ガラス板で圧迫しても色が消えない点で、圧迫で消退する紅斑(血管拡張による)と区別される。

出血傾向と検査所見の対応

・血小板減少(ITPなど):血小板数↓、出血時間延長、PT・APTT正常。 ・血友病A・B:APTT延長、PT正常、血小板数・出血時間正常。 ・ビタミンK欠乏症:PT延長(早期から)、進行するとAPTTも延長。血小板数正常。 ・フォン・ヴィレブランド病:出血時間延長、APTT延長(VIII因子の低下による)、血小板数正常。一次止血の異常を伴うため皮膚粘膜出血をきたす。 ・播種性血管内凝固(DIC):血小板・凝固因子の双方が消費されるため、点状出血と斑状出血の両方がみられうる。

点状出血をきたす他の病態

血小板減少をきたす疾患(再生不良性貧血、急性白血病、血栓性血小板減少性紫斑病など)、血小板機能異常症(血小板無力症、アスピリン内服など)、血管の異常(IgA血管炎、壊血病など)でも点状出血・紫斑がみられる。

POINT

・点状出血=一次止血(血小板・血管)の異常、関節内・筋肉内出血や斑状出血=二次止血(凝固因子)の異常。 ・ITPは血小板数↓・出血時間延長・PT/APTT正常で、皮膚粘膜の点状出血をきたす。 ・血友病、ビタミンK欠乏症、凝固因子インヒビターは凝固異常で、点状出血は特徴でない。 ・抗リン脂質症候群はAPTTが延長するが、臨床的には血栓症と不育症をきたす。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。