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すねに浮かぶ痛い紅斑は全身からのサイン―結節性紅斑とBehçet病

第104回医師国家試験 B問題 第34問

国試問題にチャレンジ

第104回 B問題 第34問

結節性紅斑を伴うのはどれか。

  1. a.Behçet病
  2. b.アレルギー性紫斑病
  3. c.全身性強皮症〉
  4. d.Stevens-Johnson症候群
  5. e.全身性エリテマトーデス〈SLE〉

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は、結節性紅斑という皮疹がどの疾患に伴うかを問う問題だ。結節性紅斑はそれ自体が独立した病気というより、さまざまな基礎疾患に対する「反応性の皮疹」として現れることが多い。だから、各疾患の代表的な皮膚症状を思い浮かべて照らし合わせるのが近道になる。まず、結節性紅斑がどんな皮疹か説明できるかな。
医学生医学生
すねに出る赤いしこりで、押すと痛い、というイメージです。
ドクタードクター
いいね。典型的には下腿伸側に、径数cmほどの境界不明瞭な紅色の皮下結節が多発し、圧痛や熱感を伴う。潰瘍にはならず、打撲のあとのように紫から黄色へと色が変わりながら、瘢痕を残さず治るのが原則だ。
医学生医学生
皮膚科の講義で、病変の主座は皮下脂肪だと聞きました。
ドクタードクター
そう、皮下脂肪組織の中隔に炎症が起こる中隔性脂肪織炎だ。表皮の病気ではなく、もっと深いところの炎症だから、表面からは境界のはっきりしないしこりとして触れるんだね。では本題。結節性紅斑を伴う疾患はどれだと思う?
医学生医学生
Behçet病でしょうか。主症状に皮膚症状が入っていたはずです。
ドクタードクター
正解。Behçet病の主症状は、口腔内の再発性アフタ、皮膚症状、眼症状、外陰部潰瘍の4つ。皮膚症状の代表が結節性紅斑様皮疹で、ほかに皮下の血栓性静脈炎や毛包炎様皮疹がある。組織では血管炎を伴うことがあって通常の結節性紅斑とは少し違うけれど、臨床的には結節性紅斑を伴う疾患の代表として扱われる。
医学生医学生
針反応も特徴でしたよね。OSCEの採血練習のときに、ふとそれを思い出しました。
ドクタードクター
よく結びつけたね。針を刺した部位に膿疱や紅斑が出る、皮膚の被刺激性亢進を示す所見で、診断の参考になる。では、ほかの選択肢も確認しよう。アレルギー性紫斑病はどうかな。
医学生医学生
IgA血管炎のことですよね。小児科の実習で、下肢にぽつぽつ盛り上がった紫斑のある子を診ました。
ドクタードクター
それが触知できる紫斑、palpable purpuraだ。IgAを含む免疫複合体が小血管壁に沈着する血管炎で、下腿から臀部に紫斑が出て、腹痛・関節痛・腎炎を伴う。皮下の圧痛性結節である結節性紅斑とは別物だね。全身性強皮症は?
医学生医学生
皮膚が硬くなる病気で、Raynaud現象から始まることが多いと習いました。
ドクタードクター
そう、手指から近位へ広がる皮膚硬化、Raynaud現象、指尖の潰瘍や陥凹性瘢痕、爪上皮の出血点、毛細血管拡張などが特徴で、結節性紅斑は典型ではない。Stevens-Johnson症候群はどうだろう。
医学生医学生
薬剤性の重症な皮疹で、粘膜がひどくただれるものですよね。紅斑という言葉が共通しているので少し迷いました。
ドクタードクター
名前に惑わされやすいところだね。SJSは薬剤やマイコプラズマ感染を契機に、多形紅斑様の紅斑と水疱・びらんが広がり、口唇・眼・外陰部の粘膜が高度に障害される。表皮の壊死が病態の中心で、皮下脂肪の炎症である結節性紅斑とは層がまったく違う。最後にSLEは?
医学生医学生
蝶形紅斑や円板状皮疹、光線過敏ですね。でもSLEにも脂肪織炎があった気がします。
ドクタードクター
鋭いね。深在性エリテマトーデス、つまりループス脂肪織炎がある。ただこれは小葉性脂肪織炎で、顔面や上腕に好発し、陥凹を残しやすい。下腿に出て瘢痕を残さない結節性紅斑とは区別しておこう。
医学生医学生
皮疹の深さと分布で整理すると混乱しにくいですね。
ドクタードクター
その通り。発展として、結節性紅斑の背景疾患をまとめて覚えておくと臨床で役立つ。感染症なら溶連菌感染、結核、Hansen病、エルシニアなど。炎症性疾患ならBehçet病、サルコイドーシス、潰瘍性大腸炎やCrohn病。ほかに経口避妊薬などの薬剤や妊娠も誘因になる。サルコイドーシスで両側肺門リンパ節腫脹・発熱・関節炎と結節性紅斑を伴う急性型はLöfgren症候群と呼ばれる。
医学生医学生
下腿の痛いしこりを見たら、皮膚だけでなく全身の病気を探しにいく必要があるわけですね。
ドクタードクター
まさにそこが大事。喉の痛みの既往、腹部症状や下痢、口内炎や眼の症状、胸部X線での肺門リンパ節、内服薬などを確認しよう。Behçet病ならHLA-B51との関連が強く、腸管型・血管型・神経型といった特殊病型は予後に関わるから、皮疹をきっかけに全身を評価する姿勢が求められるんだ。

まとめ

結節性紅斑は下腿伸側に好発する有痛性・熱感のある紅色皮下結節で、皮下脂肪組織の中隔を主座とする脂肪織炎であり、潰瘍化せず瘢痕を残さずに治るのが特徴です。選択肢の中で結節性紅斑を伴うのはBehçet病で、口腔内アフタ、外陰部潰瘍、眼症状とともに、結節性紅斑様皮疹・皮下血栓性静脈炎・毛包炎様皮疹が皮膚症状の代表であり、針反応も参考になります。IgA血管炎は触知可能な紫斑、全身性強皮症は皮膚硬化とRaynaud現象、Stevens-Johnson症候群は表皮壊死と粘膜障害、SLEは蝶形紅斑や円板状皮疹が典型で、皮疹の深さと分布で整理すると区別しやすくなります。結節性紅斑は溶連菌感染、結核、サルコイドーシス、炎症性腸疾患、薬剤、妊娠など多様な背景をもつ反応性の皮疹であり、見つけたときに基礎疾患を探す姿勢が臨床で重要です。

解答・解説

正解はaです

結節性紅斑(erythema nodosum)は、皮下脂肪組織の中隔を主座とする炎症(中隔性脂肪織炎)によって生じる皮疹である。典型的には下腿伸側(すねの前面)に、径数cm程度の境界不明瞭な紅色の皮下結節が多発し、圧痛・熱感を伴う。潰瘍化せず、瘢痕を残さずに治るのが原則で、経過とともに打撲後のように紫〜黄色調へ色が変わっていく。 結節性紅斑はそれ自体が一つの疾患というより、さまざまな基礎疾患に対する「反応性の皮疹」として出現することが多い。したがって本問は、各選択肢の疾患でみられる代表的な皮膚症状を思い浮かべ、そのなかに結節性紅斑が含まれるものを選べばよい。 Behçet病では、口腔内アフタ・外陰部潰瘍・眼症状とともに皮膚症状が主症状の一つとされ、その代表が結節性紅斑様皮疹である。他の選択肢の疾患は、それぞれ紫斑、皮膚硬化、多形紅斑と粘膜障害、蝶形紅斑などが特徴的皮疹であり、結節性紅斑は典型的な所見ではない。

選択肢考察

  1. ○a.  Behçet病

    Behçet病の主症状は、口腔粘膜の再発性アフタ性潰瘍、皮膚症状、眼症状(ぶどう膜炎)、外陰部潰瘍の4つである。皮膚症状としては結節性紅斑様皮疹が最も代表的で、ほかに皮下の血栓性静脈炎、毛包炎様皮疹(ざ瘡様皮疹)がみられる。また、針を刺した部位に膿疱や紅斑が生じる針反応(皮膚の被刺激性亢進)も特徴である。Behçet病の結節性紅斑様皮疹は、下腿に好発し、組織学的には血管炎を伴うことがある点で通常の結節性紅斑とやや異なるが、臨床的には結節性紅斑を伴う疾患の代表として扱われる。

  2. ×b.  アレルギー性紫斑病

    アレルギー性紫斑病(IgA血管炎、Schönlein-Henoch紫斑病)は、IgAを含む免疫複合体が小血管壁に沈着して起こる血管炎である。皮膚症状は下腿〜臀部に好発する、わずかに隆起して触知できる紫斑(palpable purpura)が特徴で、点状出血や丘疹を伴い、ときに血疱(血液を含む水疱)を形成する。腹痛・関節痛・腎炎(IgA腎症類似の糸球体腎炎)を伴う。皮下の圧痛性結節である結節性紅斑は典型的所見ではない。

  3. ×c.  全身性強皮症〉

    全身性強皮症(全身性硬化症)は、皮膚や内臓の線維化と血管障害を特徴とする膠原病である。皮膚症状としては、手指から始まり近位へ広がる皮膚硬化、Raynaud現象、手指の潰瘍や陥凹性瘢痕、爪上皮(爪の甘皮)の出血点、毛細血管拡張、色素沈着・脱失などがみられる。結節性紅斑は本症の特徴的な皮疹ではない。

  4. ×d.  Stevens-Johnson症候群

    Stevens-Johnson症候群(SJS)は、主に薬剤(抗てんかん薬、解熱鎮痛薬、抗菌薬など)やマイコプラズマなどの感染を契機に発症する重症の皮膚粘膜障害である。高熱とともに、多形紅斑様の紅斑(中心が暗紅色の非典型的標的状病変)が全身に出現し、水疱・びらんを形成する。口唇・口腔、眼結膜、外陰部などの粘膜に高度のびらんを生じるのが特徴で、表皮剝離が体表面積の10%未満のものをSJS、30%以上を中毒性表皮壊死症(TEN)とする。表皮の壊死が病態の中心であり、皮下脂肪織の炎症である結節性紅斑とは異なる。

  5. ×e.  全身性エリテマトーデス〈SLE〉

    SLEの皮膚症状としては、頰部の蝶形紅斑、円板状皮疹(ディスコイド疹)、光線過敏症、脱毛、口腔内潰瘍(多くは無痛性)、手指の凍瘡様皮疹などが代表的である。皮下脂肪織の炎症としては深在性エリテマトーデス(ループス脂肪織炎)があるが、これは小葉性脂肪織炎で顔面や上腕に好発し、陥凹を残しやすい点で結節性紅斑とは異なる。結節性紅斑はSLEの典型的な皮疹ではない。

結節性紅斑の特徴

・病態: 皮下脂肪組織の隔壁(中隔)を主座とする脂肪織炎。原因物質に対する過敏反応と考えられている。 ・臨床像: 若年〜中年の女性に多い。下腿伸側に好発する、有痛性・熱感のある境界不明瞭な紅色皮下結節。発熱や関節痛を伴うことがある。潰瘍化せず、数週で瘢痕を残さず消退する。

結節性紅斑を伴う主な基礎疾患・誘因

・感染症: 溶連菌感染(上気道炎後に多い)、結核、Hansen病(らい性結節性紅斑はらい反応の一型)、ウイルス感染、エルシニア感染など ・炎症性疾患: Behçet病、サルコイドーシス(両側肺門リンパ節腫脹・発熱・関節炎と結節性紅斑を伴う急性型はLöfgren症候群と呼ばれる)、炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎、Crohn病) ・薬剤: 経口避妊薬、サルファ剤など ・その他: 妊娠、悪性腫瘍、骨髄異形成症候群(Behçet病類似の病態を合併することがある)など ・原因が特定できない特発性の例も少なくない。

Behçet病の概要

・HLA-B51との関連が強く、日本・中東・地中海沿岸(シルクロード沿い)に多い。 ・主症状: 再発性口腔内アフタ、皮膚症状(結節性紅斑様皮疹、皮下血栓性静脈炎、毛包炎様皮疹)、眼症状(虹彩毛様体炎、網膜ぶどう膜炎)、外陰部潰瘍。 ・副症状: 関節炎、副睾丸炎(精巣上体炎)、消化器病変(回盲部潰瘍)、血管病変、中枢神経病変。腸管型・血管型・神経型は特殊病型と呼ばれ予後に影響する。 ・針反応陽性が診断の参考となる。

疾患ごとの代表的皮疹の整理

・IgA血管炎: 触知可能な紫斑(下肢優位) ・全身性強皮症: 皮膚硬化、Raynaud現象、毛細血管拡張、指尖潰瘍 ・Stevens-Johnson症候群: 多形紅斑様皮疹、水疱・びらん、重篤な粘膜障害 ・SLE: 蝶形紅斑、円板状皮疹、光線過敏、脱毛

POINT

・結節性紅斑は下腿伸側の有痛性紅色皮下結節で、中隔性脂肪織炎である。 ・基礎疾患として、Behçet病、サルコイドーシス、炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎・Crohn病)、溶連菌感染、結核、Hansen病、薬剤、妊娠をまとめて覚える。 ・Behçet病の皮膚症状は、結節性紅斑様皮疹・皮下血栓性静脈炎・毛包炎様皮疹と針反応。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。